ラーメン屋の厨房で見かける、空の丼の底に醤油だれを大さじ1。そこへ熱くて澄んだ琥珀色のスープを注ぐと、濃い色のたれがほどけて、ひとつの色に溶け合います。湯切りしたばかりの縮れ麺をくぐらせ、チャーシュー、メンマ、ねぎ、海苔をのせれば完成です。ひと鍋に全部の味を入れない。スープ、たれ、麺を一杯ずつ合わせるのが、東京風醤油ラーメンの組み立て方です。
東京風醤油ラーメンは、スープ・たれ・麺を丼で合わせる
スープは澄んだまま保ち、塩気の強いたれは丼に入れるまで別にしておき、麺は最後にゆでます。一杯ごとの味は、丼で合わせる瞬間に決まります。
このレシピは、東京のラーメン店・備前亭(Bizentei)の店主が共有し、Just One Cookbookが紹介した醤油ラーメンの作り方をもとにしています。「日本のラーメン」全体の作り方ではなく、日本各地の醤油ラーメンを代表するものでもありません。澄んだ東京風の一杯を家庭で再現する、ひとつの例です。
作業は長いものの、難しくはありません。スープは6時間煮込み、その中で火を通した豚バラ肉は、別鍋の醤油だれで煮てチャーシューにします。スープとチャーシューは前日に仕込むのがおすすめです。そうすれば当日は、スープを温め、麺をゆで、丼ごとに味を調えるだけで済みます。
九州の白濁した豚骨スープを探している方には、狙いが正反対の別の一杯になります。そちらは豚骨ラーメンの記事をどうぞ。
この一杯が「東京風醤油」である理由
この記事が手本にした例では、東京風醤油ラーメンは、澄んだスープ、醤油ベースのたれ、中細の縮れ麺、チャーシュー、メンマ、ねぎ、海苔でできています。スープは豚の脚の骨、玉ねぎ、にんにく、生姜で組み立て、そこに豚バラ肉を入れて煮ます。後半には鶏脂と長ねぎの青い部分を加えます。
「醤油」の味のもとになるのが、たれです。しょうゆ、酒、みりん、塩にスープの一部を合わせ、豚バラ肉をここで煮て、その煮汁を丼ごとの味つけに使います。たれは濃くて塩辛い味のもとなので、そのままスープとして飲むものではありません。丼に少しずつ入れ、熱いスープで調整します。
道具
- 大きな寸胴鍋。水、骨、豚バラ肉を入れても、沸いたときに吹きこぼれない余裕があるもの
- チャーシューをたれで煮るための、もう一回り小さい鍋
- 落とし蓋、またはたれの表面に直接のせられる蓋
- アクを取るための目の細かい網じゃくし
- 骨や香味野菜をこすための丈夫な目の細かいこし器
- 豚バラ肉を縛るたこ糸
- 麺をゆでるための別の鍋と、湯切り用のざる
- 生肉用と加熱後用に分けたまな板と調理器具
- スープやチャーシューを早く冷ますための浅い容器
- 豚肉の中心温度を測るための温度計(あれば)
材料の選び方と代用
塩。 結晶の大きさが違うと、同じ大さじ1でも塩の量が変わります。手本のレシピは、ダイヤモンドクリスタルのコーシャーソルトで大さじ3、食卓塩や細粒の海塩ならその半量としています。この記事では細粒の塩の分量、大さじ1.5を採用しました。グラムに換算せず、手持ちの塩に合う量で作り、味つけは丼ごとに少しずつ進めてください。
しょうゆ。 濃口しょうゆを使います。薄口しょうゆは色と塩気が違うので、同量での置き換えはおすすめしません。
酒。 料理酒には塩が加えられているものがあります。ラベルを確認し、丼で味を調えるときにその分を考えに入れてください。
骨と鶏脂。 豚の骨や鶏脂が手に入らない場合は、鶏ガラを中心にスープを組み立てることもできますが、手本のレシピと同じ味にはなりません。
麺。 市販の中細縮れ生麺で問題ありません。ゆで時間は袋の表示に従ってください。
このレシピには小麦(麺、場合によってはしょうゆ)、大豆(しょうゆ)、豚肉が含まれます。麺、しょうゆ、市販のメンマの表示を確認してください。
作り始める前に:二つの鍋、6時間
スープの煮込みは6時間ですが、その間ずっと作業するわけではありません。3時間の時点から、スープの鍋とチャーシューの鍋が並行して動きます。チャーシューは2時間煮て、その間スープは残りの3時間を煮込みます。二つの鍋の時間を、一本の長い工程として足し算しないでください。
スケジュールはスープの鍋を軸に進みます。
- 沸いたら: 豚バラ肉を入れ、蓋をせず高めの火でアクを取る。
- 2時間の少し手前: たれ用にスープ480mlを取り分ける。
- 2時間の時点: 鶏脂と長ねぎの青い部分を加える。
- 3時間の時点: 豚バラ肉をたれに移し、2時間煮含める。スープは弱火にして、さらに3時間煮る。
- 6時間の時点: スープを濾す。
手本のレシピの水量が入る大きさの鍋を使ってください。鍋が小さい場合、6時間のあいだ水を足し続けても、同じ仕上がりにはなりません。長い煮込みの間は、火元を無人にしないでください。
生肉は洗わないでください。洗うと、細菌がシンクや台所に飛び散ります。生の豚肉に使った包丁、まな板、トングは、加熱後のチャーシューや盛り付けに使うものと必ず分けます。厚生労働省は、肉の中心部を75℃で1分以上加熱することを、多くの病原体への対策の目安として示しています。長く煮込んだからといって安全とは決めつけず、温度計があれば中心の温度を測ってください。加熱したスープやチャーシューを室温に置いたままにせず、浅い容器に小分けして早く冷蔵します。
うまくいかないとき
| 症状 | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| スープが濁る | 強く沸かしたか、かき混ぜた | 澄んだ東京風を狙うなら、穏やかな煮立ちに戻し、かき混ぜない。白濁させる豚骨は逆の狙い |
| 塩辛すぎる | たれを一度に入れすぎた | たれは丼ごとに少しずつ入れる。スープが煮詰まっている場合は、湯を足してから味を判断する |
| 麺が柔らかくふやける | 早くゆですぎた、または待たせた | 麺は最後にゆで、湯切りしてすぐ出す。ゆでた麺をスープに浸けて置かない |
| 吹きこぼれそう | 高めの火の段階で鍋がいっぱい | 収まるまで火を弱め、水は余裕ができてから足す |
アレンジ
東京風の型を保ったまま変えられるのは、次のような小さな変更です。
- 軽い仕上がりに: 鶏脂を入れない。
- 細めの麺に: もっと細い生麺を使い、袋の表示どおりにゆでる。
- 具を簡素に: ねぎと海苔を中心にする。
次のような変更は、別の料理になります。
- 味噌に: 醤油だれを味噌に替えると別の一杯になります。入れ替えではなく、専用のレシピが必要です。
- 白濁した豚骨スープに: 乳白色でとろりとした型は、豚骨ラーメンの記事を見てください。
数ある地域型のなかの一杯

日本のラーメンは、全国共通の一つのレシピではありません。日本政府観光局(JNTO)は、醤油、味噌、豚骨などの異なる型と、地域ごとの麺や具の違いを紹介しています。たとえば豚骨ラーメンは、久留米が発祥とされる九州の型で、一般的な醤油ラーメンとは区別されています。
東京都の観光ガイドは、ラーメンを中国由来の麺料理が日本各地で形を変えたものと説明し、東京では各地のラーメンが並んで食べられると伝えています。この記事のレシピは、その幅広い世界のなかの、東京風醤油という一例です。
醤油、味噌、豚骨は、同じ物差しの上の三点ではありません。 醤油と味噌はたれを、豚骨はスープを指す言葉なので、一杯のなかで重なることがあります。丼を「スープ、たれ、脂、麺の組み合わせ」と考えると、それぞれの型が何を変えているのかが見えてきます。
よくある質問
醤油ラーメンと豚骨ラーメンは何が違いますか?
名前の付け方の軸が違います。醤油はしょうゆのたれを指し、豚骨はスープの種類を指す言葉としても使われるため、二つは組み合わさることもあります。この記事の一杯は澄んだスープを、豚骨は白濁したスープを目指します。
スープは前日に作れますか?
作れますし、前日の仕込みをおすすめします。濾したあと浅い容器に小分けして早く冷まし、冷蔵庫に入れてください。チャーシューとたれも同じ衛生管理で扱い、麺は食べる直前にゆでます。
市販の麺でもいいですか?
かまいません。市販の中細縮れ生麺が合います。ゆで時間は袋の表示に従ってください。
薄口しょうゆで代用できますか?
同量での置き換えはおすすめしません。色も塩気も、濃口しょうゆとは違います。
6時間の煮込みは短くできますか?
短くすると、この記事が手本にした店主のレシピと同じ仕上がりにはなりません。短時間で作る版は、別のレシピとして組み立てる必要があります。













