晩夏から初秋、甘い赤ピーマンがたっぷり出回る頃、北マケドニアの台所には皮が焦げて膨らむ匂いが立ちこめます。焼いて、皮をむき、刻んで、塩と少しの油でゆっくり煮詰める。そうして出来上がる深い赤色のペーストが、アイヴァル(ајвар)です。秋の収穫を冬の食卓へ運ぶための仕事と言ってもよいでしょう。
手間のかかる作業で、FAO(国連食糧農業機関)は、こうしたピーマンの保存加工が家族や地域の人々を結びつけてきたと伝えています。この記事では、ピーマンだけで作るマケドニア式のレシピを、焼く、むく、水切り、挽く、油を加えながら煮詰める、鍋の上で木べらの筋が残るまで、という流れで最後まで追います。
入れるのは焼いた赤ピーマン、油、塩の3つだけです。大切なのは、水切りと鍋でのゆっくりした混ぜ作業でピーマンから水分を抜いていくこと。鍋底に筋が残るほど濃くなれば仕上がりです。
北マケドニアの秋とアイヴァル
アイヴァルは甘い赤ピーマンで作り、仕込みはそのピーマンがいちばん豊富な晩夏から初秋にかけての季節仕事です。FAOによると、できたものは冬の献立の一部になります。クロアチアのマケドニア人協会(Zajednica Makedonaca u Republici Hrvatskoj)も、アイヴァルを晩夏から初秋の焼きピーマンの名物として紹介し、多くの家庭が冬に備えて作ると書いています。
作業は分担されることが多いようです。北マケドニアの薬局系情報サイトPlusPharmaは、秋に近所で集まり、焼く人とむく人に分かれて作る様子を伝えています。毎年どの家庭でも必ず作るという意味ではありませんが、アイヴァルが気軽な平日の一品というより、季節の共同作業として語られる理由がわかります。
決まった唯一の配合があるわけではありません。FAOは、家庭の伝統に応じて焼きナス、トマト、にんじんを加える家もあると述べており、バルカンの他の地域にも似たピーマンのペーストがあります。この記事ではピーマンだけで作る型を紹介し、ナス入りは後ろで別にまとめます。同じ国の料理は北マケドニアのページからどうぞ。
分量は、レシピ投稿サイトТвојКуварの投稿者kristinaによるマケドニア式レシピに従っています。世界ごはん紀行ではこの配合を試作・計量しておらず、完成量や何人分かは示しません。ピーマン4kgは、焼いてへたや種を取る前の生の重さで、皮むき後の果肉の重さではありません。
途中で見つける、味の決め手
道具
- ピーマンを焼くための天板、グリル、または直火
- ふた付きの耐熱容器またはボウル
- 清潔なざると、下に置く深いボウル
- ざるにかぶせるふたまたは清潔な食品用カバー
- 手動のミンサー(なければ包丁とまな板)
- 底が厚く口の広い鍋
- 木べら
- 仕上がりを入れる、清潔で浅い容器
選び方と代用
ピーマン。 原典は「アイヴァル用のピーマン」、つまりこの料理のために育てられた肉厚の赤ピーマンを指定しています。PlusPharmaは、肉厚で平たいピーマンは焼きやすく、果肉がたくさん取れると説明しています。品種を一つに特定する資料はありません。日本で手に入りやすい代用は赤パプリカですが、現地のアイヴァル用ピーマンと同じではなく、水分や肉の厚みが違うため、取れる果肉の量も煮詰めにかかる時間も変わります。できるだけ重くて肉厚のものを選んでください。
油。 原典の「масло」は単に油という意味です。ピーマンの風味を邪魔しにくいくせのない植物油が無難ですが、これは編集部の提案で、原典の指定ではありません。オリーブ油など香りの強い油を使うと味が変わります。また、必要な油の量はピーマンによって変わると原典も述べているため、330mlは記載された分量であって、代用のピーマンでも同じ仕上がりになるという保証ではありません。
塩。 原典に数値はなく、「味を見て」とだけあります。煮始めに少量を入れ、終盤に味を見て調えてください。
3つの材料はいずれも、それ自体は主要なアレルゲンではありません。ただし、油の原料や同じ施設での製造に関する表示は、ラベルで確認してください。添えるパンには小麦が含まれます。アレルギーのある方に出すときは、ペーストと付け合わせを分けて考えてください。
水っぽい・焦げた・皮が残った、そんなとき
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 水っぽい | 水切り不足、または煮詰め不足 | 筋が残るまで混ぜながら加熱を続ける。油を足して補おうとしない |
| 鍋底が焦げる | 火が強すぎる、または混ぜ方が足りない | 火を弱め、鍋底をこそげながら混ぜ続ける。水を足すのは手順外で、濃縮と食感が変わる |
| 皮のかけらが混ざる | 焼き不足、または蒸らし不足 | 皮が全面にふくれるまで焼き、丁寧にむく。焦げた皮は果肉に混ぜない |
| 油が表面に浮く | 油を一度に入れた | 数回に分け、1回ごとに混ぜ込んでから次を加える |
| 味がぼんやりする | 塩が足りない | 終盤に少しずつ塩を足して味を見る。酢・砂糖・にんにくはこのレシピの範囲外 |
ナス入りとの違いと、ほかのバリエーション
ピーマンだけか、ナス入りか。 FAOは、焼きナス、トマト、にんじんを加える家庭があると述べています。ヴェレスの地域料理本には、ピーマンと一緒にナスも焼いて少量の砂糖を加えるナス入りの配合があります。どちらが本物ということではなく、家ごとの伝統の違いです。ナスを入れると風味も色も口当たりも変わるので、この鍋に足すのではなく、別のレシピとして扱ってください。
焼き方。 直火、グリル、オーブンで、煙の香りの強さも皮のはがれ方も違います。時間は道具次第です。
挽くか、刻むか。 挽くと原典のなめらかな仕上がりに、包丁で刻むと粒が残ります。刻むのは原典からの変更です。
赤パプリカ。 手に入りやすい一方、現地のアイヴァル用ピーマンとは水分や厚みが違うため、水切りと煮詰めに時間がかかるかもしれません。
食卓では。 パンに塗る、焼いた肉や白いチーズに添える、といった食べ方があります。どれも食べ方の一例で、全国共通の決まりではありません。
保存と食べ方

マケドニアのレシピには、熱いうちに瓶へ詰め、布で覆って冷ますものがいくつもあります。それは伝統的なやり方ですが、アイヴァルを常温で安全に保存できると確かめられた方法ではありません。米国のNational Center for Home Food Preservationが示す常温保存の缶詰は、プレーンなピーマンを対象にした特定の圧力缶詰の工程で、油を含むこのようなペーストには当てはまりません。このアイヴァルは、瓶に詰めて常温で保存しないでください。
食べる分を清潔で浅い容器に移して早く冷まし、冷蔵庫で保管して、早めに食べきります。厚生労働省も、残った料理は浅い容器に小分けして早く冷ますよう案内しています。長く置きたい場合は、小分けにして冷凍します。このレシピについて確認できた冷蔵・冷凍の日数はないため、ここでは日数を示しません。取り分けるときは、必ず清潔なスプーンを使ってください。
よくある質問
アイヴァルとは何ですか?
焼いた甘い赤ピーマンの皮をむき、水切りして挽き、煮詰めて作るペーストです。このレシピはピーマン、油、塩だけで作ります。
ナスは必要ですか?
必要ありません。家庭によって違いがあり、このレシピでは使いません。ナス入りは、分量も作り方も別のレシピです。
赤パプリカで作れますか?
代用はできますが、現地のアイヴァル用ピーマンとは別ものです。水分が違うので、決まった煮詰め時間ではなく、水切りと木べらの筋の見極めを頼りにしてください。
どこまで煮詰めればよいですか?
木べらで鍋底を横切ってみて、筋が開いたままで鍋底が見えたら出来上がりです。
瓶に詰めて常温で置けますか?
置けません。このレシピに対して、安全性が確かめられた缶詰の工程は確認できておらず、熱い瓶に詰めただけでは常温保存になりません。冷蔵庫に入れて早めに食べるか、小分けにして冷凍してください。













