きつね色に揚がったパン粉衣の鶏むね肉が、皿の上に載っています。ナイフを入れると、中央からパセリの緑が混ざったバターがとろりと流れ出します。キーウの観光ガイド Visit Kyiv は、チキン・キーウ(Chicken Kyiv)を、バターとハーブを詰めてパン粉をまとわせた鶏のフィレとして紹介し、ウクライナの食と深く結びついた料理だと述べています。
中からバターが流れ出すところがこの料理の楽しさで、同時に丁寧に作りたくなる理由でもあります。バターは衣の奥に隠れているので、時計や衣の色だけでは、鶏肉そのものに火が通ったかどうかが分かりません。このレシピは、シェフのトム・ケリッジ(Tom Kerridge)の「Classic Chicken Kyiv」(2人分)に沿っています。柔らかいハーブバターを、むね肉に作った空洞へスプーンで詰め、薄力粉・卵・細目パン粉の衣を一度だけ付け、フライパンでやさしく焼き色を付けてからオーブンへ。最後は、肉の厚い部分に温度計を差して判断します。
バターを鶏肉の中に閉じ込めること、パセリとにんにくの香りを生かすこと、衣を薄くカリッと仕上げることです。火が通ったかどうかは、衣の色ではなく肉の中心の温度で見ます。
同じ国の料理は、ウクライナのページにまとめています。
材料(2人分)|柔らかいバターと一重の衣

分量は2人分です。バター、薄力粉、卵、パン粉はあくまで準備する量で、バターは各むね肉の空洞に無理なく入る分だけ詰めるため、全部は入らないことがあり、衣も余ります。バターは無塩バターを使い、塩小さじ1を詰め物に加えます。
| --- | --- | --- | | 柔らかくしたバター(この記事では無塩) | 100 g | 中で溶ける詰め物。ハーブと調味料を混ぜ、入る分だけ詰める | | 平葉パセリ(flat-leaf parsley)のみじん切り | 大さじ3 | バターの青い香り。カーリーパセリでも作れるが、香りも刻みやすさも変わる | | にんにくのすりおろし | 2片 | バターの香り | | 塩 | 小さじ1 | バターに混ぜる。仕上げ用のフレーク塩とは別 | | カイエンペッパー(cayenne pepper) | 小さじ1/2 | 穏やかな辛味。ほかの唐辛子粉は風味も辛さも違うので、置き換えるとレシピが変わる | | 皮なしの鶏むね肉(大きめ) | 2枚 | バターを包む肉 | | 薄力粉(plain flour) | 150 g | 衣の1層目 | | 大きめの卵の溶き卵 | 2個 | 粉とパン粉をつなぐ | | 細目パン粉(fine panko breadcrumbs) | 150 g | 一重のカリッとした外側の衣。粗いパン粉は衣が粗くなり、付き方や焼き色も変わる場合がある | | 風味のない油(サラダ油、落花生油など) | 適量 | フライパンで焼き色を付けるための薄い油 | | フレーク状の海塩 | ひとつまみ | 焼き色が付いた後、オーブンに入れる前に振る | | シャキッとした葉物のサラダ | 添える分 | 付け合わせ |
この料理には鶏肉、乳(バター)、小麦(薄力粉とパン粉)、卵が含まれます。落花生油を選ぶと落花生も含みます。市販のパン粉は表示を確認してください。生の鶏肉に触れた残りの粉・卵・パン粉は捨て、加熱しない料理に使い回さないでください。サラダや仕上げ用の塩も、生肉とその器から離しておきます。
道具
- バターを混ぜるボウルと木べら
- ポケットを作る薄くて切れ味のよいナイフ
- 詰めるための小さじ(ティースプーン)
- 薄力粉・溶き卵・パン粉用の浅い皿3枚
- 生の鶏肉専用のまな板
- 冷蔵用の皿と覆い
- フッ素樹脂加工のフライパンとトング
- オーブンの天板
- 清潔で、先の細い瞬間読み取り式の温度計
- 塩とカイエンペッパー用の計量スプーン
選び方と代用
バター。 無塩バターに塩小さじ1を足しています。有塩バターを使うと詰め物がより塩辛くなります。
パセリ。 レシピが指定するのは平葉パセリです。カーリーパセリでも作れますが、香りが違い、刻み方の感じも変わります。
カイエンペッパー。 穏やかな辛味を足す役目です。ほかの唐辛子粉は風味も辛さも違うので、使うならレシピの変更になります。
パン粉。 細目パン粉だと、均一で目の詰まった衣になります。粗いパン粉だと衣が粗くなり、付き方や焼き色も変わる場合があります。
鶏肉。 レシピが使うのは皮なしの大きなむね肉です。ほかの部位はこのレシピの範囲外なので、ここに書いた時間や方法がそのまま通用するとは考えないでください。
作り方
詰めて、衣を付けて、焼き色を付け、オーブンで仕上げます。
フライパンとオーブンの時間は目安で、鶏肉の厚みや機器によって変わります。肉の最も厚い部分の中心の温度で、仕上がりを判断してください。
ボウルに柔らかくしたバター100g、みじん切りにした平葉パセリ大さじ3、すりおろしたにんにく2片、塩小さじ1、カイエンペッパー小さじ1/2を入れ、むらなく混ぜます。バターは硬く冷やさないでください。このレシピではスプーンで鶏肉に詰めるので、柔らかいままにしておきます。

- むね肉にポケットを作って詰める
生の鶏肉専用のまな板の上で、むね肉を1枚ずつ扱います。厚い側の端に細いナイフを差し込んで入り口を作り、刃を中で動かして、バターを入れるポケットを広げます。先端や側面を突き破って外に穴を開けないでください。外まで貫通すると、溶けたバターが逃げやすくなります。ナイフは脇に置きます。
スプーンで、各ポケットに無理なく入る分だけハーブバターを詰めます。全部を押し込む必要はありません。

- 薄力粉・卵・細目パン粉を一度ずつ付ける
薄力粉、溶き卵、細目パン粉を別々の皿に用意します。詰めたむね肉に薄力粉を均一にまぶし、余分をはたき落とします。次に溶き卵にくぐらせ、最後にパン粉を、端まで全面に押さえるように付けます。このレシピの衣は一重です。

- 覆って20分以上冷やす
衣を付けたむね肉を皿に載せ、覆いをして、冷蔵庫で20分以上、または使うときまで置きます。衣が落ち着きます。残った粉・卵・パン粉は捨て、手、まな板、ナイフを洗ってから次へ進みます。

- オーブンを予熱し、フライパンで両面に焼き色を付ける
オーブンを上下加熱の200°C(ガスマーク6)に予熱します。
フッ素樹脂加工のフライパンに風味のない油を薄く引いて、弱めの中火で温めます。鶏肉を入れ、両面を各3〜4分、衣がやさしい金色になるまで焼きます。オーブンでも加熱が進むので、濃い焼き色を急がないでください。両面に色が付いたら、フレーク状の海塩をひとつまみ振ります。

- オーブンで仕上げ、肉の中心を確認する
鶏肉を天板に移し、200°Cのオーブンで焼きます。目安は10〜15分です。厚みもオーブンも違うので、あくまで出発点と考えてください。
清潔な先の細い温度計を、肉のいちばん厚い部分の中心に差します。バターのポケットの中ではなく、そのすぐ脇です。溶けたバターは非常に高温になるので、バターだけの温度を測っても鶏肉に火が通った証拠にはなりません。このレシピでは、日本の厚生労働省が示す家庭向けの目安を使います。中心が75°Cで1分以上になるまで加熱してください。届いていなければ天板をオーブンに戻して、もう一度確認します。タイマーも衣の色も、それだけでは根拠になりません。


- すぐにサラダを添えて出す
焼き上がったらすぐに、シャキッとした葉物のサラダを添えて出します。フレーク塩は工程5で振り済みなので、ここでは足しません。温度を確かめてから切り、慎重に切ってください。流れ出るバターはとても熱いからです。
詰めるときは、厚い端の入り口1か所だけから、ナイフを肉の中に収めたまま空洞を広げます。衣は端まで粉・卵・パン粉を付けて閉じておくと、焼いている間にバターが逃げにくくなります。
切ったときに流れ出る溶けたバターは非常に熱くなっています。温度を確認してから、皿の上で慎重にナイフを入れてください。
食べ方|シャキッとしたサラダと、最初の一切り

トム・ケリッジは、チキン・キーウにシャキッとした葉物のサラダを添え、葉の種類も量も食べる人に任せています。濃厚なバターと揚げた衣のそばに、新鮮でシンプルなものを置くと、よく合います。
残りが出たときは、浅い容器に小分けして早く冷ましてください。食べるときは十分に再加熱します。これは厚生労働省の家庭向けの一般的な案内に沿ったものです。ここで使った資料には、この料理の安全な保存期間も特定の再加熱方法も書かれていないので、それらは案内しません。
うまくいかないとき
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 焼いている間にバターが漏れる | ポケットが外まで貫通した、または衣が端まで覆っていなかった | 次回は厚い端からだけ切り、ナイフは肉の中に収める。粉・卵・パン粉は端まで付け、急いで強火にしない |
| 衣がはがれる | 粉のむら・付けすぎ、または冷やしていない | 粉は薄く均一に付けて余分を落とし、それから卵とパン粉へ。覆って20分以上冷やす |
| 衣は濃い色なのに中心が温まっていない | フライパンの火が強すぎた | フライパンは弱めの中火で。オーブンではタイマーでなく温度計を見て、肉の最も厚い部分の中心が75°Cで1分以上になるまで加熱する |
| 温度計は熱いが、肉を測れているか分からない | プローブの先がバターのポケットの中にある可能性 | ポケットの脇の厚い肉にプローブを移して、もう一度測る |
| 切ってもバターがあまり流れない | いくつかの要因が考えられる | レシピは柔らかくしたバターを使い、オーブンから出したらすぐ出す。温度確認の後、早めに出すのがいちばん簡単な試し方 |
アレンジの考え方
どれも原典のレシピから離れる変更です。
- 辛さを控える。 カイエンペッパーが辛すぎると感じる方は、レシピの小さじ1/2より減らします。詰め物はまろやかになり、ピリッとした刺激は弱まります。
- ハーブを増やす。 パセリの香りを強くしたいときは、パセリを増やせます。何を変えたか分かるように、まず基本のレシピで作ってください。
- パン粉を変える。 粗めのパン粉は、細目パン粉よりも粗くザクザクした見た目の衣になります。付き方や焼き色も変わる場合があるので、フライパンで色を見てください。
- 骨付きのスプリーム。 ガーディアン紙のフェリシティ・クローク(Felicity Cloake)は、翼の半分が付いたむね肉であるチキン・スプリームを、伝統的な形として説明しています。彼女のレシピは作り方が別で、むね肉を開いて薄く延ばしバターを巻き、凍らせて、衣を二重にして揚げます。上の焼き時間とオーブンの時間は、この骨なしの作り方だけのものです。スプリームには当てはめないでください。
- サラダの代わりにマッシュポテト。 Visit Kyiv は、付け合わせの例としてマッシュポテトに触れています。好みで横に添えてください。レシピ自体は変わりません。
Kyiv と Kiev|ひとつではない、この料理の物語
ウクライナ語では、この料理は Котлета по-київськи(kotleta po-kyivsky)と呼ばれます。チキン・キーウ(Chicken Kyiv)は都市名の現在の綴りを使った表記で、古い英語の綴りである Chicken Kiev も広く使われています。たとえばガーディアン紙のレシピのタイトルは「kiev」です。どちらも同じ料理を指します。
発祥ははっきりしていません。Visit Kyiv は、正確な起源は不確かで、いくつかの説があると述べています。このガイドはフランスのコートレット・ド・ヴォライユ(côtelette de volaille)との類似にも触れつつ、レシピも詰め物も違うと指摘しています。似ているからといって、同じ起源の証拠にはなりません。ガーディアン紙は、チキン・キーウをソ連時代の定番として紹介しています。これは報道の文脈であって、誰が考案したかを示す証拠ではありません。
Visit Kyiv によると、この料理がキーウで広く出されるようになったのは1950年代です。同じガイドは、骨に紙のフリルを付けた骨付きの形と、付け合わせのマッシュポテトにも触れています。これらはこの料理が街で見られる姿のいくつかです。この記事のレシピは、骨なしで、サラダを添える家庭向けの形です。
よくある質問
チキン・キエフとチキン・キーウは同じ料理ですか?
はい。同じ名前の2通りの綴りです。この記事では、現在の綴りであるキーウ(Kyiv)を使っています。
オーブンの時間だけで信じてよいですか?
いいえ。オーブンの10〜15分は原典のレシピの目安で、厚みやオーブンによって変わります。バターではなく肉を測り、最も厚い部分の中心が75°Cで1分以上になっていることを確かめてください。英国の食品基準庁(Food Standards Agency)の案内には、75°Cで30秒など、ほかの時間と温度の組み合わせが英国の別の基準として載っています。このレシピは、工程6で説明した日本の目安を使います。
バターが漏れてしまったのはなぜですか?
ポケットが外まで突き抜けていたか、衣が端を閉じきれていなかったことが、最も考えられる理由です。厚い端からだけ切り込み、端まで衣を付けると防ぎやすくなります。
有塩バターを使えますか?
使えますが、レシピがすでに塩小さじ1を加えているので、詰め物はより塩辛くなります。原典はバターの種類を指定していないため、この記事では無塩バターにしています。
作り置きや冷凍はできますか?
レシピは、衣を付けたチキンを20分以上、または使うときまで冷やすとしていますが、上限の時間や冷凍の案内はありません。ここで使った資料には保存期間や冷凍の方法を裏付けるものがないので、示していません。





