銅鍋のスープに浮かぶ薄切りの牛肉ターフェルシュピッツと、アプフェルクレン、チャイブソースを添えた食卓
🔪下準備20分
🔥調理3時間10分
🌍料理オーストリア・ウィーン料理

ターフェルシュピッツの作り方|ウィーンの牛肉とスープの煮込み

約13分で読めます世界ごはん紀行編集部
Cooking flow

作り方を先に見る

STEP 11 / 6

玉ねぎの切り口を焦がす(約5分)

手順1: 玉ねぎの切り口を焦がす(約5分)

皮付きのまま横半分に切った玉ねぎを、油をひかないフライパンに切り口を下にして置き、中火で約5分焼きます。切り口が黒に近い濃い焦げ茶色になるまで焼くのがこつです。この焦げが、スープに香ばしさと琥珀色をつけます。玉ねぎの皮も色づけに役立つので、むかずにそのまま使います。

STEP 22 / 6

香味野菜を入れた湯に牛肉を沈める(約10分)

手順2: 香味野菜を入れた湯に牛肉を沈める(約10分)

大きな深鍋に水3Lを入れ、にんじん、セロリ、パセリの茎、長ねぎ、焦がした玉ねぎ、ローリエ、粒こしょうを加えて強火で沸かします。沸騰したら牛肉と牛骨をそっと沈めます。肉が湯から出ないよう、足りなければ湯を足してください。再び煮立ちかけたら、すぐに弱火に落とします。

STEP 33 / 6

沸騰させずに2時間煮る

手順3: 沸騰させずに2時間煮る

ふたを少しずらしてのせ、鍋の表面がときどき小さく揺れる程度の、沸騰する手前の火加減を保ちます。浮いてくる灰色のアクは、出てくるたびにお玉ですくい取ってください。ぐらぐら沸かすとアクと脂がスープに混ざって濁り、肉も縮んでかたくなります。水が減って肉の表面が出てきたら、そのつど湯を足します。

STEP 44 / 6

2時間たったら塩を入れ、やわらかくなるまで煮る(30分〜1時間)

手順4: 2時間たったら塩を入れ、やわらかくなるまで煮る(30分〜1時間)

煮始めて2時間たったら、塩大さじ1を加えます。ウィーンのレシピでも、塩は煮始めから2時間ほどたって、肉にある程度火が通ってから加えます。さらに30分〜1時間煮て、肉のいちばん厚い部分にフォークを刺し、抵抗なくすっと入ればできあがりです。まだかたければ15分ずつ延ばします。肉を取り出し、乾かないようにスープを少しかけて、ふたをした器で保温しておきます。スープは味を見て塩を調え、ざるで漉します。

STEP 55 / 6

アプフェルクレンとチャイブソースを作る(約15分)

手順5: アプフェルクレンとチャイブソースを作る(約15分)

肉を煮ている最後の30分で薬味を作ります。りんごの皮をむいて芯を取り、目の細かいおろし金ですりおろし、レモン汁、砂糖、ベーキングパウダー、塩をすぐに混ぜます。食べる直前に西洋わさびをすりおろして加え、もう一度混ぜます。チャイブソースは、サワークリーム200gに水100mlを少しずつ加えて泡立て器でなめらかになるまで混ぜ、塩とチャイブを加えます。

STEP 66 / 6

スープを先に出し、肉を切り分ける(約5分)

手順6: スープを先に出し、肉を切り分ける(約5分)

漉したスープを温め、まずはスープだけをチャイブを散らして出します。続けて牛肉を、繊維に対して直角に約1cmの厚さに切り分けます。繊維に沿って切ると、噛んだときに筋っぽく感じられます。温めた皿に肉を並べ、熱いスープを少しかけて乾かないようにし、アプフェルクレンとチャイブソースを添えます。

香味野菜も一緒に食べたい場合は、煮込み用とは別ににんじんやセロリを用意し、最後の45分ほどだけ鍋に入れてください。最初から入れた野菜は、3時間煮るうちにスープへ味を出しきって、くたくたになります。

肉は冷めたほうが薄く切りやすくなります。前日に煮ておく場合は、肉をスープから出してラップでしっかり包んで冷蔵し、食べるときに切ってから熱いスープに入れて温めます。温め直しでスープを再び沸騰させないほうが、肉がしっとりしたまま仕上がります。

西洋わさびをすりおろすと、強い刺激のある成分が立ちのぼり、目や鼻に強くしみます。顔を近づけすぎず、換気をしながら作業してください。アプフェルクレンには小麦などは入りませんが、チャイブソースのサワークリームには乳が含まれます。

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Ingredients

材料を分けて見る

材料表の分量4人分

表内の数値を目安として再計算します。塩、辛味、油は味を見ながら調整してください。

準備

買い出しの前に

牛かたまり肉、にんじん、セロリ、長ねぎ、皮付き玉ねぎ、ローリエ、粒こしょうを並べた材料

11品目

スープと牛肉

材料 分量 代替・備考
牛かたまり肉 1.5kg イチボ(ランプの一部)が近い部位。牛ももや牛すねのかたまりでもよい。脂の層は残す
牛骨 500g 手に入れば。なくても作れる
にんじん 1本 縦半分に切る
セロリ 1本 長さを半分に切る。葉も少し使う
パセリの茎 3〜4本 ヨーロッパの根パセリやパースニップの代わり
長ねぎ 1/2本 現地ではリーキ(ポロねぎ)
玉ねぎ 大1個 皮付きのまま横半分に切る
ローリエ 2枚 乾燥でよい
粒こしょう(黒) 10粒
水 3L 煮詰まったら足す
塩 大さじ1 煮始めて2時間たってから加え、味を見て調える
6品目

アプフェルクレン(りんごと西洋わさびの薬味・4人分)

材料 分量 代替・備考
りんご 3個 酸味のある品種が向く
レモン汁 大さじ1と1/2 りんごの変色を防ぐ
ベーキングパウダー ひとつまみ 色を保つため。なくてもよい
生の西洋わさび(ホースラディッシュ) 16g チューブなら少しずつ味を見て加える
砂糖 6g
塩 ひとつまみ
4品目

チャイブソース

材料 分量 代替・備考
サワークリーム 200g
水 100ml サワークリームの半量が目安
チャイブ 大さじ2 小口切り。万能ねぎで代用可
塩 ひとつまみ

ウィーンでターフェルシュピッツに使うのは、牛のもも肉の一部です。日本の精肉店でいえば、ランプの端にあたる「イチボ」がいちばん近い部位で、脂の層がついたかたまりで売られていることもあります。手に入りにくい場合は、牛ももや牛すねのかたまり肉でも作れます。すね肉はすじが多いぶん、長く煮るとゼラチン質がとろりと溶けて、スープにもコクが出ます。どの部位でも、脂の層は切り落とさずに残してください。

コツ

生の西洋わさび(ホースラディッシュ)は、輸入食品店や青果店、通販で根のまま手に入ることがあります。すりおろした瞬間がいちばん辛く、時間がたつと香りが抜けていくので、食べる直前にすりおろすのが理想です。チューブの西洋わさびでも代用できますが、辛さが商品によって違うので、少しずつ加えて味を見てください。


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Shop the pantry

材料からそろえる、味の決め手

買い出しガイド

ウィーンの老舗レストランでターフェルシュピッツを頼むと、湯気の立つ鍋ごとテーブルに運ばれてくることがあります。最初に注がれるのは、琥珀色に澄んだ牛肉のスープ。それを飲み終えてから、鍋の中で煮えていた牛肉を厚めに切り分け、りんごをすりおろした辛い薬味や、サワークリームのチャイブソースを添えて食べます。ターフェルシュピッツ(Tafelspitz)は、スープと肉を一度に味わうウィーンの牛肉料理です。

作り方は驚くほど単純で、牛のかたまり肉を香味野菜と一緒に、沸騰させないように3時間近く煮るだけ。焼き色をつけることも、ソースを煮詰めることもありません。そのぶん、沸騰させない火加減がスープの澄み具合を大きく左右します。

皇帝の食卓と、ザッハーの伝説

19世紀ウィーンの宮廷の食卓を思わせる、銀器と白いクロスの上に置かれた牛肉の煮込み

ウィーンの人たちと牛肉の付き合いは長く、オーストリア農林省の伝統食品データベースによると、中世の終わりごろから牛肉は街の人々の大切な食べ物でした。16世紀半ばには、ハンガリーの草原で育った牛が何十万頭もウィーンへ届いていたといいます。牛は鉄道のない時代に何日もかけて歩いて運ばれ、道中でやせてしまっても、なお太らせるのに向いた良い牛とされていました。19世紀には、ザンクト・マルクスの家畜市場がウィーンの肉の供給をまとめるようになります。

ゆでた牛肉は、1830年代には宮廷の食卓の定番になっていました。皇帝フランツ・ヨーゼフ1世もこの料理を好んだことで知られ、1912年の給仕の手引書には「陛下の私的な食卓に、上等なゆで牛肉が欠けることはない」と書かれています。そこから市民の家庭やレストランにも広まり、身分を問わずウィーンの誰もが食べる料理になりました。「ターフェルシュピッツ」という名前が記録に現れるのは、1911年のレシピ集が最初とされています。

豆知識

ターフェルシュピッツの誕生には、ホテル・ザッハーにまつわる伝説があります。皇帝フランツ・ヨーゼフは食べるのがとても速く、宮廷のしきたりでは皇帝が食べ終えると、ほかの客も食事をやめなければなりませんでした。腹をすかせたまま宮廷を後にした将校たちのために、アンナ・ザッハーが長く煮込んでおける料理を用意した、というものです。ホテル・ザッハーは店の歴史としてこの話を伝えていますが、オーストリア農林省のデータベースはあくまで「伝説」として紹介しています。

料理名の「ターフェルシュピッツ」は、もともと牛肉の部位の名前です。若い雄牛の後ろ脚、もも肉の一部で、上側のカーブに薄く風味のよい脂の層がついているのが目印です。この切り方そのものが料理の名前になりました。ウィーンでは、ゆでる牛肉の部位にそれぞれ細かい名前があり、ターフェルシュピッツのほかにも、ヒーファーシェルツェル(Hieferscherzel)、クルスペル(Kruspel)、カヴァリアシュピッツ(Kavalierspitz)など、ゆで牛肉のための部位名がいくつも使われています。

第二次世界大戦のあと、ゆで牛肉の文化はいったん下火になりましたが、1950年代以降、何軒かのレストランがこの伝統を復活させました。今ではウィーンの伝統料理を出す店の看板料理として、観光客にもよく知られています。


スープから始まる、ウィーンの食べ方

小さな団子を浮かべた牛肉のスープと、薄切りの牛肉、ローストポテト、ほうれん草のクリーム煮を並べたウィーンの食卓
スープを先に、肉と付け合わせを後に楽しむ

ターフェルシュピッツは、二皿の料理を一度に作るようなものです。最初にスープ、次に肉。オーストリア政府観光局のレシピでは、スープにセモリナ粉の小さな団子グリースノッケル(Grießnockerl)や、細切りのクレープ、フリターテン(Frittaten)を浮かべ、刻んだチャイブを散らして前菜として出すように書かれています。日本の台所なら、細く切った薄焼き卵やクレープを浮かべると、フリターテンの雰囲気に近づきます。

肉の皿に添える付け合わせも、ウィーンではほぼ決まっています。りんごと西洋わさびのアプフェルクレン、パンと西洋わさびを合わせたゼンメルクレン(Semmelkren)、チャイブソース、薄切りのじゃがいもを焼いたレスターデップフェル(Rösterdäpfel)、そしてほうれん草のクリーム煮やディル風味のいんげん。オーストリアの公共放送ORFのレシピでも、伝統的な付け合わせとしてほうれん草のクリーム煮やローストポテトが挙がっています。全部そろえなくても、アプフェルクレンとチャイブソースの2つがあれば、ウィーンの食卓らしさは十分に出ます。

同じように牛肉と香味野菜をゆでる料理は、ヨーロッパ各地にあります。フランスのポトフ、イタリアのボッリート・ミスト。お隣ドイツ・シュヴァーベン地方のガイスブルガー・マルシュも、牛肉のスープにじゃがいもとシュペッツレを合わせた料理です。食べ比べてみると、スープを先に出して肉を薬味で食べるウィーンの流儀が、いかに独特かが分かります。

よくある質問

牛のかたまり肉の上側についた脂の層を見せた様子

イチボが手に入らないときは、どの部位がよいですか?

牛もも、牛すね、牛肩のかたまり肉で作れます。すね肉はすじが多いぶん、長く煮るとやわらかくなり、スープにもコクが出ます。脂の少ない部位なら、煮込み時間を短めにして、フォークがすっと入ったところで火を止めてください。

スープが濁ってしまいました。

ぐらぐらと沸騰させると、アクと脂がスープに混ざって濁ります。次からは、表面が小さく揺れる程度の弱火を保ち、アクをこまめにすくってください。濁ったスープも、キッチンペーパーを敷いたざるで漉すと、ある程度澄みます。

残った肉とスープはどうすればよいですか?

肉はスープに浸したまま保存せず、ラップで包んで冷蔵庫に入れ、早めに食べきってください。スープに浸けておくと、肉がかえってぱさつきます。スープは別の容器で冷蔵し、温め直すときは中まで十分に熱くしてから使います。

アプフェルクレンは作り置きできますか?

前日に作ると、西洋わさびの辛みが少し弱まります。作り置きするなら、密閉容器に入れて冷蔵し、食べる直前に西洋わさびを少し足すと香りが戻ります。

主な参考リンク

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