蓋をした一鍋に、豚肉と赤ワインと砕いたコリアンダー
赤ワインと軽く砕いたコリアンダーシードに一晩漬けた豚肉を、穏やかに焼き色づけてから、蓋をして柔らかくなるまで煮る。ソースは濃く、少し煮詰まった状態になります。玉ねぎもにんにくも、ほかの香辛料も入れません。味を担うのはワインとコリアンダーだけです。
煮込みの終わりごろに蓋を持ち上げると、ワイン色のソースが豚肉にまとわりつき、コリアンダーシードの温かく柑橘めいた香りが鍋から立ちのぼります。アフェリア(Αφέλια)は、豚肉を赤ワインとコリアンダーで調理するキプロスの料理です。現代に刊行されたレシピでは、ブルグルピラフと水切りヨーグルトを添えて食卓に出されます。
この記事で扱うのは、2026年にキプロス共和国が刊行した『Traditional Dishes of Cyprus』のアフェリアのレシピ、ひとつだけです。分量も手順も刊行版のとおりにして、ほかの版の配合は混ぜていません。古い版や家庭ごとの違いは後半で紹介しますが、レシピとは分けて扱います。
このレシピは、世界ごはん紀行編集部での試作はしていません。キプロス政府が刊行したレシピをそのまま再現したものです。肉は肩肉(ももではなく)にするといった編集上の選択は、その旨を明記しています。家庭で作る人向けに、食品衛生上の確認事項も加えました。
アフェリアは、ワインとコリアンダーで煮るキプロスの豚肉料理
キプロス食文化博物館(Cyprus Food Museum)は、この料理をΑφέλια(Afélia)として記録しています。小さく切った豚肉に焼き色をつけ、赤ワインとコリアンダーで調理する料理です。味の軸はほぼこの二つだけなので、どんなワインを選ぶか、コリアンダーをどう扱うかが、余分な香辛料よりもずっと仕上がりを左右します。
名前の由来や、料理が生まれた時代については、今回使った資料からは確かめられません。そのため、ここでは推測を書きません。資料からはっきり分かるのは、料理の姿と食べ方です。キプロスのほかの料理はキプロスの国別ページも見てみてください。
ブルグルを添える、キプロスの食卓

キプロス食文化博物館が集めた回想のなかに、ファマグスタ地方のソティラで聞き取られたものがあります。話し手は、豚をつぶした日にアフェリアを作ったこと、首の下の脂身を使ったこと、ブルグルピラフと一緒に食べたことを覚えていました。これはひとつの土地の、ひとりの記憶です。この料理が家のリズムのなかでどんな位置にあったかを垣間見せてくれますが、島全体の習慣や、今のすべての家庭のやり方と受け取ってはいけません。
2026年のキプロス政府のレシピは、現代に刊行された版として、アフェリアにポルクーリ(pourkoúri、ブルグルピラフ)と水切りヨーグルトを添えることを勧めています。博物館の資料にも、ブルグルピラフとヨーグルトを添える例があります。皿の上で考えると分かりやすい組み合わせです。ワインのソースを受け止める穀物と、温かくスパイスの効いた豚肉のそばに置く、冷たくて酸味のあるもの、という役割分担です。
途中で見つける、味の決め手
道具
- 蓋つきのボウル(または覆いをかけられるボウル)。冷蔵庫でのマリネ用
- マリネ液を取り分けておく、別のボウル
- すり鉢とすりこ木。コリアンダーシードを軽く砕くのに使います
- 蓋つきの大きな厚手の鍋
- フォーク。柔らかさの確認用
- 肉用温度計。豚肉の中心温度を測るのに使います
選び方と代用

コリアンダーは粒で、粉末は使わない。 刊行されたレシピは、軽く砕いたコリアンダーシードを使っています。同量の粉末に置き換えてよいとする根拠は資料にありません。粒のまま用意し、マリネの直前に砕くのがよいでしょう。
ワインは、まずキプロス産の赤を。 刊行元が勧めているのは、コクのあるキプロス産の赤ワインです。見つからなければ、ふつうの辛口の赤ワインで代用できますが、同じ味にはなりません。資料は品種や銘柄を指定していません。
豚肉は肩肉で。 原本は肩肉かももを挙げています。以下の手順は肩肉で書いていて、ももを使う場合も、柔らかさと温度の確認は同じようにします。
柔らかく仕上げるコツと安全な加熱
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 豚肉に焼き色がつかない | 鍋が詰まって肉が蒸れている | 何回かに分けて焼く。マリネ液は手順4のために取っておき、捨てない |
| コリアンダーの香りが弱い、にごる | 粉末のコリアンダーを使った | 粒を軽く砕いて使う。粉末への同量置き換えの根拠はない |
| 45分たってもまだ肉が硬い | 時間だけでは仕上がりを判断できない | 蓋をしたまま弱火で煮続け、フォークがすっと入り、ソースが少し煮詰まるまで待つ |
| ソースがゆるい | まだ煮詰まっていない | 肉だけでなくソースの状態も見る。原本は、ソースが濃く少し煮詰まった状態を仕上がりとしている |
| 安全に火が通ったか分からない | 煮込み時間では温度は確認できない | 豚肉の中心が75°Cで1分以上になっているか確かめる |
生の豚肉の汁がほかの食品にかからないようにし、生肉に触れた包丁、まな板、器具は洗ってから使います。マリネ液は必ず鍋に戻して十分に加熱し、生のまま出してはいけません。また、煮込んでもワインのアルコールが完全になくなるとは限りません。
残ったとき
残りは浅い容器に小分けして、早めに冷まして冷蔵庫へ入れます。食べる前に十分に再加熱してください。一般的な目安は75°C以上です。このレシピの保存期間は資料に示されていないため、日数は書きません。
ブルグルピラフとヨーグルトを添えて
2026年のキプロス政府のレシピは、アフェリアにポルクーリ(ブルグルピラフ)と水切りヨーグルトを合わせています。ヨーグルトを添えるかどうかは食卓での選択で、別の器に盛り、鍋の中には入れません。
2012年に刊行された『Traditional Dishes of Cyprus』は、添え物として揚げじゃがいもまたはブルグルピラフを挙げています。ブルグル以外のものがよければ、揚げじゃがいもを添えるのは、この刊行物の提案に沿った方法です。
資料に残る家庭ごとの違い
アフェリアに、ひとつだけの決まったレシピはありません。キプロス食文化博物館は、大きく二つの作り方を記録しています。ひとつは、肉を先に脂で焼いてから、乾燥コリアンダーと辛口の赤ワインで煮る方法で、事前のマリネはしません。もうひとつは、豚肉を先にワインとコリアンダーに漬けてから調理する方法です。この記事は、2026年の刊行版と同じく、後者に従っています。
政府の刊行物どうしでも違いがあります。2012年版は、豚肉1kg、赤ワイン1カップ、砕いたコリアンダー大さじ2、油½カップ、塩とこしょうを挙げ、手順は、一晩マリネして肉を焼き、マリネ液と水を加えて蓋をし、柔らかくなるまで煮る、という簡潔なものです。カップの大きさ、水の量、調理時間は詳しく書かれていないため、その分量は、ここで使った2026年のレシピには混ぜていません。
自分の鍋で試すときの選択肢は、次のとおりです。
- マリネせず、先に焼く。 博物館が記録しているやり方です。一晩漬けられない日の近道としてではなく、別の版として扱ってください。
- 肩肉ではなく、ももを使う。 2026年のレシピが挙げているもうひとつの部位です。
- キプロス産の赤ワインを探す。 刊行元の推奨で、原本により近づけたい人向けです。
- 揚げじゃがいもを添える。 2012年版にある、ブルグルに代わる添え方です。
- ヨーグルトを添えるか添えないか。 食卓での選択で、鍋の中身は変わりません。
よくある質問
アフェリアとは何ですか?
豚肉を赤ワインとコリアンダーで調理するキプロスの料理です。キプロス食文化博物館は、Αφέλια(Afélia)として記録しています。
マリネは必ずしないといけませんか?
このレシピでは、豚肉を冷蔵庫で一晩マリネします。博物館には、マリネせず先に肉を焼く作り方も記録されていますが、それは別の版で、この分量と手順の変形ではありません。
コリアンダーは粉末でもよいですか?
刊行されたレシピは、軽く砕いたコリアンダーシードを使っています。同量の粉末に替えてよいという根拠は資料にありません。マリネの直前に粒を砕いて使ってください。
何を添えて食べますか?
2026年のキプロス政府のレシピは、ブルグルピラフと水切りヨーグルトを勧めています。2012年版は、揚げじゃがいもまたはブルグルピラフを挙げています。
何人分できますか?
刊行されたレシピに、人数の表示はありません。豚肉1kgで仕込む分量として書かれています。











