Ræst kjøt|鍋に入る前に、羊肉はもう変わっている
ræst kjøtの風味は、発酵した羊肉そのものから生まれます。調理はその枠組みにすぎません。静かな煮立ち、味つけしないじゃがいも、そして味見をするまで調味しないこと。この3つだけを守ります。
ræst kjøtが冷たい水の鍋に入るころには、この料理の物語のほとんどはもう終わっています。フェロー諸島では伝統的に、肉をhjallur(ヤッルル)に吊るします。板を隙間をあけて張った木造の乾燥小屋で、海風が通り抜けます。肉はそこで、島々の気候がつくる条件のもと、乾燥と発酵が進みます。できあがるのは、軽く風乾され発酵した、強くて個性的な風味の羊肉です。台所に残る仕事は最後のひとつだけ。加熱して、ゆでじゃがいもと食卓に出すことで、多くはゆでて食べます。
表記はræst kjøtで、ræstkjøtと続けて書かれることもあります。Ræstはこの発酵の段階とその伝統を指します。探すときはフェロー語の表記のまま検索してください。普通のラム料理ではなく、実際の商品にたどり着くいちばん確実な方法です。
この記事が扱うのは、調理用として市販されているræst kjøtを加熱する方法です。羊肉を家庭で乾燥・発酵させる方法は紹介しません。伝統的な工程は土地の気候と乾燥小屋の条件に左右されるもので、安全な家庭向けの方法は示せないためです。
この記事で参考にしたフェロー諸島の文化資料は、ræst kjøtの作り方や食べ方を説明していますが、計量されたレシピは載せていません。下の肉600 gとじゃがいも500 gは、編集部が考えた家庭向けの目安で、フェロー諸島の伝統的な配合ではありません。また、このレシピは世界ごはん紀行では試作していません。調理時間は資料に見つからなかったので書いていません。時間は部位や乾燥の進み具合で変わります。パッケージに加熱の説明があればそれを最優先にし、火の通りは柔らかさで判断してください。分量は2〜3人分のおおよその見積もりです。
skerpikjøtとの違い|乾燥の段階と食べ方
フェロー諸島には、保存した羊肉の料理が有名なものとして2つあり、混同しやすいところです。ræst kjøtは半乾燥の発酵肉で、加熱してから食べます。skerpikjøtはさらに乾燥が進んでいて、薄切りにして食べるのが一般的です。Visit Faroe Islandsは、ræst kjøtをskerpikjøtよりおだやかな味と説明しています。一方でTvøroyrar Municipality(トヴォイロイ町)は、強くて個性的な風味とも述べています。どちらも成り立ちます。はっきりした味ではあるけれど、保存肉の中でいちばん強烈というわけではない、ということです。
どちらも単純に「生」か「加熱済み」かで分けるのは避けたほうがよいでしょう。乾燥と発酵の段階が違い、食べ方も違う別のものです。買うときに実際に確かめたいのは、薄切り用のskerpikjøtではなく、調理して食べるræst kjøtとして売られているかどうかです。
ræst kjøtは、シェトランド諸島のreestit mutton(リースティット・マトン)とも混同しないでください。この記事では別の料理として扱います。
道具
- 肉を煮る、蓋つきの中型〜大型の厚手の鍋
- じゃがいも用に別の小鍋
- 調理用トング
- 柔らかさを確かめる小さなナイフとフォーク
- ざる
- まな板と普通の包丁
選び方と代用
ræst kjøtは、フェロー諸島、北欧、輸入食品の専門店で探します。検索するときはræst kjøt、ræstkjøt、「Faroese fermented mutton」の語を使います。これは探し方の方針であって、見つかる保証ではありません。フェロー諸島以外で手に入るかは確認できていませんし、合法的に販売されている場所でのみ購入してください。ラベルを読み、skerpikjøtではなく調理用のræst kjøtであることを確かめます。
生のラム肉は代わりになりません。生のラム肉をじゃがいもとゆでれば、おいしいラム料理になりますが、発酵の風味はありません。それこそがræst kjøtの個性です。ræst kjøtとは呼ばないでください。本物が見つからないときは、この料理は今は読んで知るもの、フェロー諸島で味わうのは将来に、と割り切るのが誠実です。北大西洋圏のほかの土地のゆでた羊料理を作りたいなら、ノルウェーのフォーリコールがあります。作り方の違う別の料理です。
小ぶりで煮崩れしにくいじゃがいもは、ゆでても形が保てます。粉質のじゃがいもでも作れますが、崩れやすくなることがあります。
うまくいかないとき
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 塩辛すぎる、または味が強すぎる | 味見の前に塩を足した、または肉そのものの強さ | 味見をするまで味つけしない。 味つけしないゆでじゃがいもをたっぷり添えて食べる |
| 肉がまだ固い | この部位や乾燥の度合いに対して加熱が足りない | 静かな煮立ちに戻し、ナイフでもう一度確かめる |
| じゃがいもが崩れる | 粉質のじゃがいもを使った、または強く沸かしすぎた | 次回は小ぶりで煮崩れしにくいものを使い、ナイフがすっと通ったら火を止める |
| 買ったものがわからない | ræst kjøtとskerpikjøtは近い関係で似ている | ラベルを確認する。この方法は調理用のræst kjøt向け |
アレンジ
以下は食べ方の工夫で、特に断りのあるもの以外は、フェロー諸島に確立した伝統ではありません。
- 肉とじゃがいもを別々に出し、煮汁は薄いまま別添えにします。強い風味をどれだけ取るかを、食べる人が選べます。
- 残りを小さなスープにします。 フェロー諸島では、ゆでたræst肉を野菜入りのスープ、røst súpan(ルスト・スーパン)に使います。野菜はビーツが多いようです。煮汁と残りの肉、根菜でつくる小さなスープは、それにヒントを得たアレンジで、ここでの主役のレシピではありません。
- かぶやビーツはスープにだけ入れます。ゆでた肉とじゃがいもには加えません。
- じゃがいもは肉の量に合わせて調整します。パッケージの実際の重さがわかってから、比率で増減してください。
- 味つけは最小限に。 味つけしないじゃがいもなら、発酵の風味がはっきり伝わります。

季節と食卓|秋のラム、ゆでるか焼くか
民族学者ヨアン・パウリ・ヨエンセン(Jóan Pauli Joensen)が書いたTrap The Faroe Islandsによると、ræst kjøtは季節の食べ物で、秋の屠畜から数週間後につくって食べます。ゆでても焼いても食べられます。 ゆでた場合は、その肉でrøst súpanをつくれます。野菜入りで、ビーツがよく使われるスープです。ræst肉のスープは、フェロー諸島で知られた食べ方のひとつです。この記事で扱うのは、ゆでる食べ方だけです。
Visit Faroe Islandsは、ræstを、気候に形づくられたフェロー諸島の発酵と屋外乾燥の広い伝統の中に位置づけています。また、じゃがいもと根菜がフェロー諸島の食文化の一部であることも述べています。Tvøroyrar Municipalityは、ræst kjøtを半発酵の羊肉で、強くて個性的な風味があり、ゆでたじゃがいもを添えて食べると説明しています。島や村、家庭による違い、料理の歴史の細かい点は、ここで使った資料からは確かめられないため、この記事では触れません。
よくある質問
ræst kjøtとskerpikjøtの違いは何ですか?
ræst kjøtは半乾燥の発酵羊肉で、加熱してから食べます。skerpikjøtはより乾燥していて、薄切りにして食べるのが一般的です。Visit Faroe Islandsは、ræst kjøtのほうがおだやかな味だと説明しています。
ゆでるのですか、焼くのですか?
どちらも記録されています。このレシピは、じゃがいもを添えるゆでる食べ方です。
ræst kjøtはスープですか?
スープにもなります。ゆでたræst肉は、野菜入りのスープ、røst súpanに使われます。野菜はビーツがよく使われます。ゆでた肉にじゃがいもを添えるのも、それ自体ひとつの食べ方で、ここでの主役のレシピがそれです。
生のラム肉で代用できますか?
ゆでたラム料理はつくれますが、ræst kjøtにはなりません。発酵の風味がこの料理の中心で、生のラム肉ではそれが出せません。
家庭でラム肉を発酵させられますか?
この記事では家庭向けの方法を示しません。伝統的な工程はフェロー諸島の気候と乾燥小屋の条件に左右されます。ここで使った資料には、安全な家庭向けの手順は見つかりませんでした。
加熱時間と、残りの保存はどうすればよいですか?
信頼できる加熱時間は見つかりませんでした。部位と肉の乾燥具合で変わるので、静かに加熱して柔らかさで判断し、パッケージに説明があればそれに従ってください。この商品の保存期間は、使った資料からは確かめられません。商品のラベルと、お住まいの地域の公的な食品安全の案内に従ってください。
このレシピは試作されていますか?
いいえ。分量は2〜3人分の編集部の家庭向けの目安で、世界ごはん紀行では試作していません。











