粉の様子を見ながら焼く、アイルランドのパン
材料は粉類と塩、重曹、そしてバターミルク。バターミルクは生地がべたつきながらまとまるところまで加え、こねずに手早く成形します。焼き上がりは、焼き色と底の空洞音で判断します。
Visit Dublin によると、アイルランドの家庭には、かつて家ごとに受け継がれたソーダブレッドのレシピがありました。重曹とバターミルクは、秤ではなく手と目で量ることも多かったそうです。この記事のレシピにも、その目分量に通じる判断が少し残っています。バターミルクを一度に全部注がず、少しずつ加えて、粉がまとまったところでやめるのです。
ソーダブレッドはイーストを使わずに膨らみます。バターミルクの酸と重曹が反応するので、生地を発酵させて待つ時間はありません。液体を入れてからは作業が一気に進みます。混ぜて、成形して、十字に切り込みを入れ、そのままオーブンへ入れます。
この記事で作るのは、National Dairy Council Ireland が公開しているブラウンソーダブレッドのレシピです。白い小麦粉(plain white flour)と全粒粉(plain wholemeal flour)を同じ重さずつ使います。ソーダブレッドの作り方は数ある中のひとつで、これだけが正統というわけではありません。
このレシピは、編集部ではキッチンで試作していません。分量、温度、時間は元のレシピのとおりです。粉もバターミルクも家庭のオーブンも条件が違うので、時間だけでなく、作り方の中に書いた焼き上がりの目安も見て判断してください。
アイリッシュ・ソーダブレッドとは
イーストではなく、重曹とバターミルクで膨らませるパン、それがアイリッシュ・ソーダブレッドです。National Dairy Council Ireland のレシピは、バターミルクの酸と重曹の反応で生地が膨らむと説明しています。この反応は両者が出会ったときから始まります。そのため、レシピは生地を長くいじらず、手早くまとめるよう求めています。
「ソーダブレッド」は幅の広い呼び名です。全粒粉を軸にしたブラウン(茶色い)タイプや、白い小麦粉が中心のもの、家庭ごとの配合など、さまざまな種類があります。アイルランドの食品庁 Bord Bia は、卵と蜂蜜を加えてパン型で焼く別のブラウンソーダブレッドを公開しています。King Arthur Baking は、4つの材料で作る伝統的なタイプと、卵、バター、砂糖、ドライフルーツを加えるアメリカ風のものを分けて紹介しています。粉の量、水分、焼き時間はどれも少しずつ違うので、ここでは配合や時間を混ぜていません。
Visit Dublin は、種を入れたものや、スタウトとトリークル(糖蜜)を使ったものなど、新しい工夫にも触れています。これらはパンの発展形で、基本のレシピではありません。まずは下の素朴な配合で作ってみてください。かつての家庭で行われていたのと同じ、液体を足しながら生地の状態を見るという技が練習できます。
道具
- 大きめのボウル
- 計量スプーン
- バターミルクを量る計量カップ
- 粉を混ぜる丸刃のナイフ(または指)
- 平らな天板
- ベーキングペーパー
- 十字の切り込み用の、大きくてよく切れるナイフ
- 冷ますためのワイヤーラック
選び方と代用
全粒粉は味の中心であり、生地が必要とする水分の量も左右します。 全粒粉は挽き方の粗さが製品ごとに違い、粗さによってバターミルクの吸い方も変わります。バターミルクの濃さも商品によってまちまちです。400mlは「用意しておく上限」で、そのまま注ぐ量ではないのはこのためです。使う全粒粉の表示を確かめ、生地を見ながら加減してください。
白い小麦粉には、plain flour(中力粉にあたる汎用の小麦粉)を使います。日本では薄力粉が代用の候補ですが、アイルランドの plain flour と同じように焼き上がるかは確かめておらず、試作もしていません。
バターミルクは、膨らむための酸と、生地の水分の多くを担っています。牛乳をレモンなどで酸っぱくした自家製の代用品は、このレシピでは検証しておらず、同じものとしてはおすすめしません。
重曹とベーキングパウダーは別の商品です。このレシピは重曹を使い、ベーキングパウダーへの置き換えは案内しません。
よくあるトラブルと対処
| 状態 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 生地が硬く、粉っぽい部分が残る | 使っている粉に対してバターミルクが足りない | 用意した分から、べたつく生地になるまで少しずつ足す |
| 生地がとてもゆるい | バターミルクを一度に全部入れた | 次回は半量ほどから始めて残りを少しずつ加え、まとまったらすぐやめる |
| 焼き上がりが重く、硬い | 生地をこねた、または触りすぎた | 手早く丸くまとめてすぐオーブンへ。こねない |
| 焼き上がりが4つに分かれた | 十字の切り込みが底まで届いた | 深く切るが、底でつながった状態を残す |
| 約30分焼いても底が空洞音にならない | オーブンや粉が元のレシピの条件と違う | 元のレシピは焼き色と音で判断するとしていて、追加の時間は示していない。焼けたと決めつけず、パンの状態を確かめる |
いちばん大切なのは、計量カップではなく生地を見ることです。400mlは上限であって目標ではありません。 どれだけのバターミルクが合うかは、使う粉が決めます。
アイルランドの食卓

Tourism Ireland は、ソーダブレッドをアイルランドの伝統的なパンとして紹介しています。アルスター・フライ(Ulster Fry)の一品としてソーダブレッドが挙がっているほか、シーフードチャウダーにブラウンブレッドを添える例もあります。Visit Dublin は、ダブリンでブラウンソーダブレッドが卵料理やスモークサーモンと一緒に出される例を紹介しています。どれも食べ方の例であり、地域や家庭を問わない決まりではありません。
同じアイルランドの料理は、アイルランドのページでも紹介しています。
食べ方とアレンジ
ここで挙げるのは、食べ方の案と別の試みです。基本のレシピには含まれません。
- 翌日にトーストする。元のレシピが勧める食べ方です。
- 有塩バターを塗る。バターは食卓で切ったパンに塗るもので、生地には混ぜません。
- スモークサーモンを添える。Visit Dublin が紹介するダブリンの例にならったものです。
- チャウダーに添える。Tourism Ireland が、シーフードチャウダーにブラウンブレッドを添える例を挙げています。
- 白い小麦粉と全粒粉の割合を変える。元のレシピとは別の試みです。粉の水分の吸い方が変わるので、バターミルクの量は、ここでも生地を見て決めてください。
よくある質問
バターミルクは400ml全部入れますか?
いいえ。400mlは用意しておく量です。少しずつ加え、粉がべたつく生地になったらそこでやめてください。粉によっては、バターミルクが余ることもあります。
重曹の代わりにベーキングパウダーを使えますか?
このレシピは、バターミルクの酸と反応する重曹で書かれています。ベーキングパウダーへそのまま置き換えられるという根拠は元のレシピになく、ここでもおすすめしません。
生地はこねますか?
こねません。手早く丸くまとめて、少し平たくします。バターミルクを入れた時点で反応が始まるので、長く触るとレシピの意図に反します。
十字の切り込みは底まで入れますか?
深く入れますが、底までは切りません。パンはひとつのままで、表面が4つの区画に分かれた状態にします。
1個で何人分ですか?
元のレシピには、はっきりした収量の記載がありません。作るのは丸いパン1個で、何人分になるかは食べ方次第です。
翌日も食べられますか?
元のレシピは、焼いた当日に食べるか、翌日にトーストして食べることを勧めています。それ以上の保存期間は示していません。












