焼き進むうちに、天板の上でチーズの表面がふつふつと泡立ち、縁がだんだん色づいていきます。そこへ青かびチーズの鋭い香りと、熟成チーズの香ばしい匂いが重なってくる。クワットロ・フォルマッジは、名前がそのまま「4種のチーズ」を意味するピザです。quattro が4、formaggi がチーズ(formaggio)の複数形です。
名前からわかるのは数だけで、どの4種かまでは決まっていません。顔ぶれはレシピごと、メニューごとに変わるので、最初に迷うのは「結局どの4つを買えばいいのか」という買い物の問題でしょう。この記事では、イタリアのレシピサイト Piccole Ricette の、生地と4種のチーズの量がはっきり書かれたトマトなしの白い1枚分のレシピに沿って進めます。ほかの選び方も並べて紹介するので、レシピどおりの部分と、自分で調整する部分の境目がわかるはずです。
4つの名前、顔ぶれはひとつではない
チーズ4種にそれぞれ役目があること。やさしく溶けるもの、青かびの個性が強いもの、なめらかなもの、熟成してうま味の濃いもの。4種は同じ量にそろえ、焼き上がりは時間だけでなく縁と底の状態で判断します。
クワットロ・フォルマッジは、レストランのメニューや料理書で広く知られたピザの名前です。 イタリア語のウェブマガジン Treccani(Istituto della Enciclopedia Italiana)は、クワットロ・フォルマッジをクワットロ・スタジョーニと並べて、メニューや料理書に現れる料理名として取り上げています。商標や固定された商品名とは別のものとして論じられ、数を冠したピザの名前に幅広い例があることも触れられています。ただ、これは名前の使われ方の話です。誰がいつどこで考え出したピザなのかは、今回確認した資料からはわかりません。4種のチーズを定める保護された規格も、確認できていません。
レシピを見ても幅があります。Piccole Ricette の著者は、チーズの組み合わせは地域や手に入るものによって変わると説明し、一例としてゴルゴンゾーラ、モッツァレラ(またはフィオル・ディ・ラッテ)、フォンティーナ、グラナ系のチーズを挙げています。ゴルゴンゾーラはその常連のひとつだそうです。一方、GialloZafferano のブログにある別の家庭レシピは、赤い仕立てです。下にトマトを敷き、モッツァレラ、青かびチーズ、バイエルン産のエメンタール、熟成チーズをのせます。同じ名前でも、できあがるピザは違います。
そこでこの記事では、「本物の4種」を探すのではなく、チーズをピザの中での役割で整理します。よく溶ける穏やかなチーズ、香りの立つ青かび、フォンティーナのようになめらかなチーズ、そして熟成チーズです。これは買うときや比べるときに役立つ実用的な見方で、イタリアの公式な分類ではありません。
4種のチーズの選び方 ― 4つが同じ声で叫ぶ必要はない
4種は、同じ強さで主張させるものではありません。モッツァレラは穏やかな土台として溶け、ゴルゴンゾーラは青かびの香りと塩気を運び、フォンティーナは丸みを足してよく溶け、グラナ・パダーノは熟成チーズの濃いうま味と表面の焼き色を担います。この4つに黒こしょうを合わせるのが、元のレシピの指定です。グラナ・パダーノとパルミジャーノ・レッジャーノは、どちらかを選ぶ形で書かれています。
ゴルゴンゾーラには、穏やかでクリーミーなタイプ(ドルチェ)と、より刺激の強いタイプ(ピカンテ)があります。元のレシピの著者はどちらも認めていて、どちらかが必須というわけではありません。迷ったらラベルを見てください。ドルチェはやさしく、ピカンテはくっきりとした味わいです。
「4種なら何でもよい」というのも、少し違います。買うときは3点を見てください。ゴルゴンゾーラのような青かびチーズが入っているか。とても強い青かびと塩気の強い熟成チーズを重ねすぎていないか。ピザをまとめてくれる、よく溶けるチーズがきちんと残っているか。
見つからないとき
フォンティーナは、ほかの3種に比べて店で見つけにくいことがあります。元のレシピの著者は代わりにアジアーゴを挙げています。妥当な代用ですが、味も溶け方も同じにはなりません。モッツァレラの代わりにフィオル・ディ・ラッテを使う案も、同じ著者のものです。探すときの検索語は、「フォンティーナ チーズ」「ゴルゴンゾーラ ドルチェ」「グラナ・パダーノ」のようにチーズ名そのままで、生地は「ピザ生地 冷蔵」で十分です。
道具
- グリル(上火)機能のあるオーブン
- 天板。オーブンとピザストーンの説明書が許すなら、ピザストーンでも(入る大きさか、庫内のどこに置くかを確認します)
- キッチンスケール(生地とチーズを量る)
- 包丁とまな板
- おろし金(粗くおろす用と細かくおろす用)
- ペッパーミル
- ピザカッターまたは大きめの包丁、切り分けと盛りつけに使う耐熱の台
- オーブン用温度計(庫内の実際の温度を知りたい場合に。任意)
家庭のオーブンで失敗を防ぐ
上面が先に色づくと、時計を見て焼き続けたくなります。そんなときこそ、表面と底の両方を見てください。元のレシピの合図、縁の色づきと乾いた底が基準です。棚の位置やグリルの使い方はオーブンによって違うので、説明書がいちばんの手引きになります。
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| チーズが水っぽい | モッツァレラの水分、生地の厚み、焼成条件 | 元のレシピに水切りの指示はありません。モッツァレラが水に浸かった状態で売られていたら、表面の水分を軽く押さえて取るのは家庭向けの工夫で、元の手順ではありません |
| 上は焦げるのに底が白い | オーブンのグリルが強い | 縁と底の両方を確かめます。棚の位置は説明書に従い、時間に届かせるためだけに焼かない |
| 重たい、塩辛い | ゴルゴンゾーラが強い、または強い青かびと塩気の強い熟成チーズの組み合わせ | 最初は量を減らさず、穏やかなタイプのゴルゴンゾーラを選ぶ。1枚目は各50gのまま作り、次に変えるのは1点だけにする |
| 4種の違いがわからない | 大きさや散らし方で、一口に入る比率が変わる | 土台全体にむらなく広げ、青かびが固まらないようにする |
焼きたてのチーズは非常に熱く、切るとき流れ出ます。耐熱の台の上で切り、口に入れる前に少し冷ましてください。
チーズを替えるなら ― 変奏とトマトの赤いピザ
- フォンティーナをアジアーゴに。 フォンティーナが見つからないときの、元のレシピの著者による提案です。入手のための置き換えなので、風味も溶け方も変わります。
- グラナ・パダーノをパルミジャーノ・レッジャーノに。 元のレシピが選択肢として挙げています。50gをどちらか一方だけ使い、両方入れて5種にしないでください。
- モッツァレラをフィオル・ディ・ラッテに。 これも著者の提案です。フィオル・ディ・ラッテは、モッツァレラ系の牛乳でつくるフレッシュチーズ。量は50gのままにします。
- 青かびをおだやかに。 ゴルゴンゾーラは、ピカンテよりドルチェのような穏やかなタイプを選ぶ方法があります。著者はどちらも認めているので、正式な代用ではなく好みの問題です。
- トマトを使う赤いピザ。 GialloZafferano のブログのレシピは、トマトにモッツァレラ、青かびチーズ、エメンタール、熟成チーズを合わせ、4人分の量と、230°Cで30分という独自の焼成条件があります。別のレシピなので、作りたいときはこの記事にトマトを足すのではなく、そのレシピを直接見てください。
名前に幅がある料理
イタリア料理の中で、このピザはまず名前から理解するのがよさそうです。クワットロ・フォルマッジは、決まったひとつのレシピというより、「4種のチーズのピザ」というメニュー上の呼び名として働いています。だから顔ぶれは地域や店、手元の材料で動き、白いものと赤いものが同じ名前を名乗ることもあります。
発祥の地や年代、考案者は、今回の資料からはわかりません。特定の地域の伝統や祭りとの結びつきも確認できなかったので、この記事では触れません。それでも、作るには十分な材料がそろっています。はっきりした1枚分のレシピ、著者自身が挙げる置き換え、そして別の作り手が別の4種を組む例です。
よくある質問
チーズの顔ぶれは変えられても、焼き加減は勘で決められません。何を選んでも、取り出す前に縁の色づきと底の乾きを確かめてください。
4種のチーズは決まっていますか?
唯一の公式な組み合わせは確認できませんでした。名前はメニューや料理書で使われ、顔ぶれは地域、入手のしやすさ、レシピによって変わります。この記事は、モッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、フォンティーナ、グラナ・パダーノという、ひとつのレシピの選択に沿っています。
トマトソースは入れますか?
トマトなしの白いものも、トマト入りの赤いものもあります。この記事は Piccole Ricette の白いピザです。赤いものは量も焼成条件も違う別のレシピです。
フォンティーナが見つからないときは?
元のレシピの著者はアジアーゴを提案しています。味は同じにならないので、同一の置き換えではなく近い代用と考えてください。
焼き時間はいつも15分ですか?
250°Cでグリルを使って約15分は、元のレシピの目安です。予熱の具合、生地の厚み、家庭のオーブンによって変わるので、縁が色づき、底が乾いて、生の生地が残っていないかを確かめてください。
残ったら保存できますか?
このレシピは焼きたてをすぐ食べるものです。保存の日数や温め直しの条件は、今回の資料では扱われていないため、この記事でも案内しません。
まとめ
クワットロ・フォルマッジは、唯一の正解の4種を当てる料理ではなく、役割の違う4種のチーズを組み合わせる料理です。まずはレシピどおり各50gで1枚焼き、次からチーズをひとつずつ替えて、味の違いを確かめてみてください。











