スプーンが、苦いココアの粉をくぐり、淡いクリームを抜け、コーヒーを含んだビスケットに届きます。さらにもう一段、同じ層を通って皿に着きます。口に入れて最初に来るのはコーヒーとココアの苦み、続いてマスカルポーネと卵黄と砂糖のこっくりした甘さです。ヴェネト州トレヴィーゾのレストラン、Ristorante Le Beccherieが公開しているティラミスは、まさにこの6つの要素だけでできています。
トレヴィーゾのティラミス、コーヒーとクリームの2段重ね
卵黄、砂糖、マスカルポーネ、サヴォイアルディ、コーヒー、無糖ココアの6つだけです。しっとりしていても形を保つビスケットと、固まらずに塗り広げられる柔らかいクリームが目標です。
Le Beccherieは名前をTiramisù、方言形のTiramesùの両方で書いています。店の説明では、Tiramesùは1971〜72年頃にレシピとして書き留められ、1972年にメニューに載ったとされています。ティラミスがどこで最初に作られたのかについては、ヴェネト州内の別の地域やフリウリからも名乗りが上がっていて、今も議論が続いています。そのためこの記事は、トレヴィーゾを疑いのない唯一の発祥地とは呼びません。Le Beccherieが成文化し、広めた版に沿って作ります。
店は盛り付けについても書いています。円形に組み、くさび形に切り分け、一切れごとに店の印をココアで付けていたそうです。円形でやわらかい側面が、このレシピの目指す姿です。同じイタリアの料理はイタリアのページからどうぞ。
道具
- コーヒーを淹れる道具(モカポットなど)
- コーヒーを冷まし、ビスケットを浸すための、広くて浅い器
- ボウル
- ハンドミキサーまたは泡立て器
- ゴムべら
- 丸い盛り皿(角皿でも作れます。「アレンジ」を参照)
- ココアをふるう茶こしまたは細かい網
- 仕上がりにかけるラップやふた
選び方と代用
殺菌済み卵黄製品。 無糖で卵黄のみ、非加熱のデザートに使えると表示されたものを選びます。全卵の製品や加糖の製品を、違いを考えないまま同量で置き換えるのは避けてください。卵黄を全卵や卵白に替えることもしません。開封後は、メーカーの保存方法と期限に従ってください。
マスカルポーネ。 味の中心です。クリームチーズは酸味、塩気、硬さが違うので、同じ代わりにはならず、別のデザートになります。
サヴォイアルディ。 コーヒーを吸っても形を保つ乾いたビスケットで、層がくっきり分かれるのはそのおかげです。ほかの細長いビスケットは厚みも吸い方も違うため、浸す時間ではなく、見た目と手触りで判断してください。スポンジケーキに替えると食感が変わります。製品ごとに大きさも重さも大きく違うので、30本というカウントをほかのビスケット向けにgへ換算することはしません。
砂糖。 ふつうのグラニュー糖で十分です。粉砂糖に同量で替えることは、確認できていないので勧めません。砂糖を減らすのは店のレシピからの変更になるので、自分なりのアレンジとして扱ってください。
コーヒーとココア。 原典にはコーヒーの濃さも量も書かれていません。やや濃いめに淹れて冷ますのが無難です。砂糖もお酒も入れません。ココアは純粋な無糖のものを使います。加糖ココアでは、甘さも仕上がりも変わります。
Le Beccherieの原典は、加熱しない生の卵黄を使います。サルモネラ対策についての厚生労働省の手引書では、卵は冷蔵する、割ったらすぐに使う、十分に加熱する、生卵を提供しない、といった取り扱いが示されています。新鮮な卵なら安全とは言えません。そこでこのレシピでは、非加熱用の殺菌済み卵黄製品だけを使います。殻付きの生卵を混ぜたり、開封した製品に新しい製品を継ぎ足したりしないでください。殺菌済みの卵黄でも、すべてのリスクがなくなるわけではありません。器具を清潔にし、丁寧に扱い、冷たく保つことは欠かせません。食中毒のリスクが高い人に出すかどうかは、慎重に考えてください。
このデザートには卵と乳が入り、サヴォイアルディにはたいてい小麦が含まれます。ビスケットと卵黄製品の表示を確認してください。
うまくいかないとき
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| ビスケットが崩れる | 浸す時間が長い、またはコーヒーが熱かった | コーヒーを十分に冷まし、さっとだけ浸す。1本ずつ、並べる直前に浸す |
| クリームが緩い、分離する | マスカルポーネを加えてから混ぜすぎた | 均一になった時点で混ぜるのをやめる。冷やすと落ち着くが、時間は出典に示されていない |
| 味が重く感じる | コーヒーが薄い、またはココアが少ない | 苦いコーヒーと無糖ココアが甘いクリームを引き締める構成。どちらも無糖か確認する |
| 表面が湿っている | ココアが置いている間にクリームの水分を吸う | 食べる直前にココアをふる(「アレンジ」参照) |
冷たいまま保つ
作り始める前に、ボウルや道具を清潔にしておきます。組み上がったらすぐに覆い、4°C以下の冷蔵庫に入れ、室温に置かないようにしてください。店のレシピにも、ここで参考にした食品衛生の案内にも保存期間は書かれていないため、この記事でも示しません。長く取っておく前提にはしないでください。食べる分だけ取り出し、残りはすぐ冷蔵庫に戻します。ティラミスは再加熱しない料理です。
食べ方、円形から切り分けてコーヒーを添える

Le Beccherieは、ティラミスを円形に作ってくさび形に切り分けていました。丸い皿を使えば、家でも同じように切れます。一切れの断面には、湿った2段のビスケットと、その間の淡いクリームが見えます。角皿のほうが均等に切りやすいのですが、店の円形からは離れます。
コーヒーとココアの苦みがあるから、クリームが甘すぎずに食べられます。淹れたての小さなコーヒーを添えるとよく合います。
アレンジ
主レシピとは分けて紹介します。どれも、店の版から何かを変えるものです。
- 小さなグラスで作る。 材料も層の順番も同じで、グラスに盛ります。店の円形とは見た目が変わります。
- 角皿で作る。 家庭では切り分けやすいですが、円形やココアの店印からは離れます。
- 浸し方をさらに浅くする。 ビスケットをより素早くくぐらせ、形を硬めに保ちます。そのぶんコーヒーを増やしたりはしません。
- ココアは食べる直前に。 冷やす前ではなく食卓でふると、ココアが湿るのを避けられます。
- お酒を加える。 リキュールを使う版もありますが、6材料のレシピの外で、味も香りも変わります。ここでは分量を示しません。
トレヴィーゾ、Le Beccherie、ひとつのデザートの多くの版
Le Beccherie自身の説明によると、店のTiramesùは1972年にメニューに載り、2010年にはレシピをトレヴィーゾのAccademia Italiana della Cucinaに登録したそうです。地域紹介サイトのWOW Venetoは、Tiramesùをトレヴィーゾの方言形とし、方言の「tireme sù」と結びつけています。同じ記事は、起源をめぐってヴェネトの各地とフリウリの間で議論があることにも触れ、1970年代初めにこの料理を成文化して広めたのがLe Beccherieだと書いています。これらは店と地域の出版社による説明であり、独立した歴史研究の結果ではありません。
同じ店のレシピとされるものでも、数字は違います。La Cucina Italianaは、Le Beccherieのレシピとして10人分、マスカルポーネ1 kg、卵黄125 g、砂糖110 g、サヴォイアルディ24本を載せ、8〜9時間冷やすとしています。WOW Venetoには、マスカルポーネ500 g、卵黄6個、砂糖150 g、サヴォイアルディ300 g、エスプレッソ300 mlという別の配合があります。この記事は店の公開PDFだけを半量にしたもので、ほかの版の数字は混ぜていません。唯一の正しい比率があるわけではなく、どの版に従うかを選ぶ、ということです。
家庭では、卵白や生クリーム、お酒を加える版も多く見られます。ここで作るのは、卵黄、砂糖、マスカルポーネ、サヴォイアルディ、コーヒー、ココアだけの版です。
よくある質問
原典には生クリームや卵白、お酒は入りますか?
Le Beccherieが公開しているレシピには入りません。材料は卵黄、砂糖、マスカルポーネ、サヴォイアルディ、コーヒー、ココアの6つです。生クリーム、卵白、リキュールを使う版もありますが、それは別のレシピです。
サヴォイアルディが見つからないときは?
ほかの細長いビスケットやスポンジも使えますが、コーヒーの吸い方が違い、食感も変わるので、同じ仕上がりにはなりません。浸すときは時計ではなくビスケットの様子を見てください。
どれくらい冷やしますか?
Le Beccherieは、食べるまで冷蔵する、としか書いていません。La Cucina Italianaのレシピにある8〜9時間は、別の分量の別の版の話で、この記事の配合の確かな時間ではありません。その間は、覆って4°C以下に保ってください。
どれくらい日持ちしますか?
参考にした資料に保存期間は示されていないので、この記事でも示しません。殺菌済み卵黄製品を使っても、覆って4°C以下に保ち、室温に置かず、食べる分だけ取り出してください。
店と同じ生の卵黄を使えますか?
店のレシピは生の卵黄を使いますが、新鮮であることは安全の保証にはなりません。このレシピは、香港食品安全センターがティラミスについて案内しているとおり、非加熱用の無糖の殺菌済み卵黄製品を使い、生卵は混ぜません。












