ビファナ ― 薄切りの豚肉と温かいパン、取っておきたくなる煮汁
柔らかく仕上げた薄切りの豚肉、にんにくとローリエの香り、ワインとビールの煮汁、そして煮汁を吸ってもくずれない小さな白いパンです。
リスボンのカフェやタスカ(大衆食堂)では、ビファナはカウンターでさっと食べる軽食であることが多いようです。にんにくとワインの香りがする鍋の汁から、薄切りの豚肉をそのまま小さな皮の固いパンへ。肉の上から煮汁を少しかけると、やわらかい中身にじんわり染みていき、カウンターにはマスタードが置いてあって、好みで足せます。街のカフェだけでなく、道路沿いの食堂や、人が集まる祭りでも食べられるサンドイッチです。
ところがポルトガルの各地でビファナのことを聞くと、答えは少しずつ違います。肉の部位も、火の通し方も、煮汁の量も、地域や店によって変わるからです。このレシピは、リスボン風の家庭向けの一例にそろえました。白ワインに漬けた薄切りの豚ロースを短く焼き、ビールで煮るやり方です。家庭で作るための一案であり、リスボンの公式な、あるいは唯一の配合ではありません。特定の店の味を再現したものでもありません。
ビファナとは ― ポルトガルの豚肉サンド
ビファナ(bifana)という言葉は、薄切りの豚肉そのものを指すことも、それをはさんだサンドイッチを指すこともあります。 パンにはさんで出せば「bifana no pão」、皿に盛れば「bifana no prato」です。この記事で扱うのはサンドイッチ版だけで、皿盛り版は別の出し方なので触れません。
ビファナは日常の、手早く食べる料理です。カフェやタスカのカウンターで食べるサンドイッチ、道路沿いの食堂での一品、人が集まる祭りの屋台など。英語で書かれたリスボンの紹介では、小ぶりのパポ・セコ(papo-seco)というパン、煮汁を含んだ中身、マスタード、立ったままカウンターで食べる様子が結びつけられています。全国で決まった食べ方があるわけではなく、どの土地でも身近な軽食として、それぞれの形で作られているのがビファナです。
材料は豚肉とパンだけに見えます。違いが出るのは、肉の切り方と火の通し方、そして煮汁です。
リスボン、ヴェンダス・ノヴァス、ポルト ― 三つの違うビファナ
アレンテージョ地方のヴェンダス・ノヴァス(Vendas Novas)は、叩いてのばした豚ロースを1枚、脂で焼いてパポ・セコにはさむビファナで知られます。主役は焼いた肉で、煮汁ではありません。
リスボン風は、薄切りの豚肉を短時間で火を通し、にんにく、ローリエ、白ワインや肉を焼いた汁を使います。パンにしみる煮汁の量は店ごとにまちまちです。
ポルト風は逆の方向に進みます。極薄の肉を、辛いソースをたっぷり使って長めに煮ます。ほかに、火であぶる祭りの屋台版もあります。どれもそれぞれが一つの料理なので、一つのレシピに混ぜると、どれもぼやけてしまいます。
起源はヴェンダス・ノヴァスやアレンテージョと結びつけて語られがちですが、資料はこれを言い伝えとして扱っています。正確な生まれた場所、年代、元祖の店は確認されていないので、この記事ではどれも挙げません。以下のレシピがリスボン風から取り入れたのは、薄切りの豚肉、にんにく・ローリエ・ワインのマリネ、そしてパンを湿らせる程度の煮汁です。パンをびしょびしょにはしません。
途中で見つける、味の決め手
道具
- マリネ用の蓋つきのボウル(または蓋つきの容器)
- 広めのフライパン
- 料理用温度計(プローブ式)
- 肉たたきまたは麺棒と、紙2枚(豚肉が厚い場合のみ)
- トングと皿を2組(生肉用と、加熱後の肉・盛り付け用)
- 煮汁をかけるスプーン
選び方と代用
豚肉。 元のレシピは豚ロースなので、薄切りのロースがいちばん近い選択です。薄切りがふぞろいだったり厚かったりしたら、均一な薄さになるまで叩きます。肩肉などほかの部位でも作れますが、脂の量と食感が変わります。同じ仕上がりの置き換えではなく、別の結果になる代用と考えてください。
パン。 皮の固い小さな白いパンで、ポルトガルのパポ・セコやカルカッサに近いものを探します。食パンのようなやわらかいパンや大きなバゲットでは、食感も煮汁の抱え方も変わります。
ワインとビール。 辛口の白ワインを使います。ぶどうの品種は指定されていません。ビールの種類も指定がありません。苦味や香りの強すぎるビールを避けるのは、買い物のときの実用的な目安にすぎず、元のレシピにあるものではありません。ビールの代わりにノンアルコールの麦芽飲料を使うのは、風味の違う別の選択肢です。
脂。 レシピはラードとオリーブ油を併用しています。ラードがなければ同量のオリーブ油で作れますが、豚の脂のコクは弱くなります。
パプリカ。 甘口を使います。辛口やスモークタイプは同じものではなく、風味が別の料理に寄ります。
辛味。 ピリピリソースは任意です。ほかのチリソースでも代わりになりますが、辛さと酸味は違ってきます。
うまくいかないときの対処
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 豚肉に焼き色がつかない | フライパンに肉を入れすぎて、水分が出ている | 数回に分け、1層で焼く |
| パンが崩れる | 一度に煮汁をかけすぎている | はさむときに少しずつかけ、残りは鍋に置いて追加したい人用にする |
| 肉が硬い | 厚さがふぞろい、火が強すぎる、または煮汁が足りない | 次回は均一な薄さに叩き、煮立ちは穏やかに保ち、鍋を乾かさない。元のレシピの時間は目安で、安全の確認は温度計で行う |
| 鍋が乾きそう | 煮汁が早く減っている | 火を弱め、追加用のビールか辛口白ワインを少し足す |
| パンがぱさつく | 冷たいパンは煮汁をうまく吸わない | はさむ前に切り口を鍋で温め、そのあと煮汁をかける |
アレンジ
- ピリピリを食卓で足す。 鍋全体は穏やかなままで、各自が辛さを選べます。バッチ全体を辛くしたいときは、手順4でマリネ液とビールと一緒に鍋に加えます。そうすると全員のサンドが辛くなり、パンにかける煮汁も辛くなります。
- イエローマスタードを添える。 元のレシピにある、仕上げの任意の一品です。マリネには入れません。
- パンの温め加減を変える。 切り口を少し長めに、または短めに温めると、煮汁の吸い方が変わります。
- 脂のバランスを変える。 ラードの一部をオリーブ油に替えると、豚の脂のコクが減って軽くなります。
- ポルト風は別のレシピ。 極薄の肉、たっぷりの辛いソース、長めの調理が必要です。このレシピにソースを足しても近づかないので、別のレシピとして設計し直してください。
保存と残り物
ビファナは、組み立ててすぐに食べるのがいちばんです。このレシピの保存期間は確認されていません。加熱済みの豚肉と煮汁が残ったら、清潔な浅い容器に分けて速やかに冷まし、冷蔵庫に入れます。再加熱は、中心が75°C以上になるまで十分に熱くしてください。パンは食べる直前まで別にしておきます。これは一般的な家庭の食品衛生の目安で、この料理で試した結果ではありません。
同じ国のほかの料理は、ポルトガルのレシピ一覧からどうぞ。
よくある質問
ビファナの発祥はどこですか?
ヴェンダス・ノヴァスやアレンテージョと結びつけて語られることが多いものの、これは言い伝えです。確かな年代も、元祖の店も、正確な生まれた場所もわかっていないので、一つの起源の話は慎重に受け止めてください。
ロースの代わりに肩肉などほかの部位を使えますか?
できる可能性はありますが、元のレシピは豚ロースを使っています。ほかの部位では脂、厚み、食感が変わるので、同じ結果にならない代用だと考えてください。
ビールは必要ですか?
この家庭版の規定量に含まれていて、煮込みのときに加えます。抜いたり、ノンアルコールの麦芽飲料にしたりすると風味が変わります。同じレシピではなく、別の選択肢です。
ビファナは作り置きできますか?
組み立てたてを食べるのがいちばんで、このレシピの保存期間は確認されていません。残り物を取っておくなら、上の冷まし方と再加熱の目安に従い、パンは別にしてください。
マリネ液はなぜ加熱が必要ですか?
生の豚肉に触れているからです。このレシピでは手順4で肉と一緒に煮ます。生のマリネ液をパンや加熱後の豚肉にかけることは、絶対にしないでください。













