サルモレホ ― コルドバのバーとタベルナで出る、濃くて冷たい前菜
土台はトマト、パン、オリーブオイル、にんにく、塩だけです。パンはトッピングでも付け合わせでもなく、スープの骨格です。そしてオリーブオイルが、それをスプーンですくって食べるものに変えます。
冷蔵庫から出した器の中に、深い赤橙色のスープ。あまりに濃くて、スプーンを引くと表面に筋が残ります。その上に刻んだ白いゆで卵と、小さく切った赤いハムが少し。コルドバ市の観光ガイドは、サルモレホ・コルドベス(salmorejo cordobés)を街を代表する料理のひとつとして紹介しています。トマト、パン、オリーブオイルを土台にしたクリーム状の冷製スープで、バー、タベルナ、レストランで前菜として出されるそうです。
初めて作る人が驚くのは、パンの量でしょう。ここで使う配合では、トマト1kgに対して、コルドバの白いパンtelera(テレラ)が200g、エキストラバージンオリーブオイルが100g入ります。パンはスープに浮かぶのではなく、溶け込んで濃度をつくります。
この記事で扱うのは、アンダルシア地方コルドバの冷たいトマトとパンの料理、サルモレホ・コルドベスです。「サルモレホ」という言葉は、スペインの別の地域では煮込み料理のソースなど、違う料理にも使われます。正式名に「コルドベス」と付くのはそのためです。
このレシピは、コルドバのサルモレホ同好会(Cofradía Gastronómica del Salmorejo Cordobés)が公開している「Salmorejo Cordobés」の一版に従っています。資料にはコルドバ大学の食文化講座(Aula de Cultura Gastronómica)のクレジットがあります。材料と順序は公開されたとおりに守り、スペイン国外の台所向けに代用品を提案する箇所では、その旨を明記します。
ガスパチョとの違いは、パンとオイルが作る濃さ
どちらも冷たくて、トマトが主役で、アンダルシアの料理なので、よく比べられます。違いをいちばんはっきり見るには、この記事で使う具体的なレシピを見るのがよいでしょう。このサルモレホには、きゅうりも、ピーマンも、酢も、加えた水も入りません。入るのは、こしたトマトと一緒に攪拌するパン200gとオリーブオイル100g。これが、スプーンで食べる濃密なクリーム状の口当たりを作ります。
ただし、これはすべての一皿に当てはまる決まりではありません。パンを入れるガスパチョもあり、レシピは作る人によっても町によっても違います。「ガスパチョはいつもさらさらの飲み物で、サルモレホはいつも濃い」と言い切るのは正確ではないのです。それでも、この公開レシピを野菜のたっぷり入った典型的なガスパチョと並べると、材料の少なさと、パンとオイルの存在感の差がはっきり見えてきます。
途中で見つける、味の決め手
道具
- ブレンダー(パワーのあるものほど、トマトとパンを均一に攪拌しやすい)
- 目の細かいこし器
- こしたピュレを受ける大きめのボウル
- まな板と包丁
- キッチンスケール(オイル、パン、塩を重さで量るため)
- 冷やすための、ふたつきの清潔な容器
コルドバ以外でのパン・トマト・にんにくの選び方
パン。 テレラはコルドバのパンです。スペインのテレビ番組が取り上げたコルドバの店では、料理人がテレラを勧め、白い内相(miga)がたっぷりあるパンだと説明していました。手に入らない場合の現実的な代用は、密度のある白い食事パンや田舎パンの内相を、200gに量って使うことです。ただしこれは入手のための代用で、同じパンではないため、スープの食感は変わる可能性があります。
ひとつ注意があります。資料の指定は「テレラ200g」であって、「内相だけ200g」ではありません。代用のパンの耳を取る場合は、耳を取ったあとの重さで200gを量ってください。取る前の丸ごとの重さと取り違えないためです。食パンを使うなら、ふわふわで空気を含んだ薄切りより、詰まったものを選びます。前者は水分の吸い方が違い、同じ食感になりにくいからです。パンをあらかじめ水や牛乳に浸すこともしません。公開されたレシピには、そうした工程はありません。
トマト。 生で食べておいしい、香りのよい完熟トマトを選びます。サルモレホ同好会のレシピは品種を指定していないので、特定の品種はレシピの条件ではありません。トマトが水っぽいときも、パンやオイルを足して補わないでください。別のレシピになってしまいます。プリエゴ・デ・コルドバの地域観光レシピは、洋ナシ型のトマトを勧め、余分な水分を除くとスープが濃くなると述べています。試すなら、基本のレシピではなく、その地域資料から借りた任意の調整として扱ってください。
にんにく。 資料の指定は、コルドバ県の町モンタルバンのにんにく1片です。日本では、通常の生にんにくを1片使うのが現実的な代用です。片の大きさや辛みにはばらつきがあるので、生のにんにくが苦手な人は、小さめの片を選ぶと個体差に対処しやすくなります。それでも、レシピ自体は1片です。
オリーブオイルと塩。 加熱しないので香りがそのまま味になります。好みの香りのエキストラバージンオリーブオイルを選んでください。塩は、まず公開されている10gで作ります。上にのせるハムも塩気があるため、塩を減らすなら、それはレシピに対するご自身の変更です。
ざらつく、ゆるい、にんにくが強いとき
ここに書くのは一般的な台所の説明で、公開レシピに書かれていることではありません。レシピの分量を変える前に、まずこちらを試してください。パンやオイルを足すのは基本の直し方ではありません。別のレシピになってしまうからです。
| 症状 | 考えられる理由 | 試すこと |
|---|---|---|
| ざらざらする | 攪拌が足りない、またはパンの内相が粗く不ぞろい | ブレンダーの説明の範囲で、もう少し攪拌する。次回は密度のある白いパンを選ぶ |
| 皮や種の粒が残る | こし器の目が粗い、または一度に押し通す量が多すぎた | 目の細かいこし器で、少量ずつ、もう一度こす |
| 思ったよりゆるい | トマトが水っぽい、またはパンが軽くて空気を含んでいる | 冷やすと多少締まる。次回は、パンやオイルを足すのではなく、より熟して風味のあるトマトと、詰まったパンを選ぶ |
| にんにくが強い | 片が大きい、または辛みが強い | 次回は小さめの片を選ぶ。レシピ上は1片のまま |
| 攪拌後に温かい | ブレンダーのモーターの熱 | しっかり冷えるまで冷蔵してから出す |
| ハムをのせると塩辛い | スープにも付け合わせにも塩気がある | ハムを減らす。塩10gを減らすのは、資料からの変更になる |
地域差と、ほかの版
サルモレホ同好会のレシピは公開されている一版であって、唯一の版ではありません。ほかの版が間違いなのではなく、単に別のレシピです。分量を混ぜずに、分けて考えるのがよいでしょう。
| 版 | 使うもの | この記事のレシピとの違い |
|---|---|---|
| サルモレホ同好会のレシピ(この記事) | トマト1kg、テレラ200g、エキストラバージンオリーブオイル100g、モンタルバン産にんにく1片、塩10g | トマトを先に攪拌してこし、残りと2回目の攪拌をする。ゆで卵とハモン・セラーノを添える |
| プリエゴ・デ・コルドバ(スブベティカ地域の観光レシピ) | 完熟トマト1kg、緑ピーマン50g、硬質小麦のパン400g、にんにく2片、エキストラバージンオリーブオイル150ml | 緑ピーマンが入り、パンもオイルも多い。攪拌前に、トマトやパンなどを2時間置く |
| RTVEの番組(Ahora o Nunca) | テレラ200g、トマト1kg、エキストラバージンオリーブオイル150ml、にんにく1片、塩 | オイルが多く、容量で量る。冷やしてから、卵とハムをのせる |
| コルドバ市の観光ガイド | パン、オイル、にんにく(パンとオイルの分量は固定していない) | パンを前夜から、オイルとにんにくに漬けておく |
豚肉を食べない場合。 卵だけをのせて出すこともできます。ただし、サルモレホ同好会のレシピの伝統的な付け合わせは、卵とハモン・セラーノの両方です。
パンを入れない場合。 トマト、オイル、にんにく、塩だけを攪拌することはできますが、できあがるものは、このレシピが作るサルモレホではありません。別の料理として考えるほうがよいでしょう。
ハムの代用。 ほかの生ハムでもハモン・セラーノの代わりにはなりますが、塩気と香りは違います。
コルドバの食卓で

コルドバ市の観光ガイドは、サルモレホ・コルドベスを街を代表する料理のひとつとし、バー、タベルナ、レストランで前菜として出されると述べています。家庭でも役割は同じ。小ぶりの器によく冷えたスープをよそい、卵とハムをのせて、食事のはじまりに出す一皿です。
主役はトマトだけではありません。完熟トマトと、パンの白い内相と、オリーブオイルの釣り合いこそがこの料理の中心です。コルドバでパン選びがこれほど注目されるのも、公開されたレシピがオイルを注ぐのではなく重さで量るのも、そのためでしょう。
料理の起源や名前の由来には、ここでは触れません。このレシピに使った資料では、確かなことが決められないからです。スペインのほかの料理は、スペインのページでご覧ください。
よくある質問
サルモレホとガスパチョはどう違いますか?
このレシピのサルモレホは、トマト、パン、オリーブオイル、にんにく、塩だけで作り、きゅうり、緑ピーマン、酢、水は入りません。パン200gとオイル100gで、スプーンで食べられる濃さになります。ガスパチョはレシピによってさまざまで、パンを入れるものもあるため、違いは絶対的な決まりではなく、典型的なレシピの傾向です。
パンなしで作れますか?
ほかの材料だけを攪拌することはできますが、パンがないと、このレシピを特徴づける濃さが失われます。ここで紹介したサルモレホではなく、別の料理になります。
テレラのパンが手に入らないときはどうしますか?
密度のある白い食事パンや田舎パンの内相を、200gに量って使ってください。現実的な代用ですが、同じパンではないので、食感は変わる可能性があります。ふわふわで軽い食パンは避け、パンを水や牛乳に浸すこともしません。
緑ピーマンや酢は入れないのですか?
ここで使ったサルモレホ同好会のレシピには入りません。公開されているほかの版には違うものもあり、たとえばプリエゴ・デ・コルドバの地域観光レシピには緑ピーマンが入ります。
何日持ちますか?
このレシピに使った資料には日数が書かれていないため、ここでも示しません。加熱しない生の料理です。清潔なふたつき容器に入れてすみやかに冷蔵し、5°C以下に保ち、常温に2時間より長く置かず、早めに食べきってください。
仕上げにオリーブオイルをかけますか?
サルモレホ同好会のレシピは、オリーブオイル100gを全量攪拌に使い、仕上げは卵とハムだけです。最後にオイルをかけることは、このレシピには含まれません。













