金色に焼けた縁と、とろりとしたチーズのピデ
細長い楕円の生地、内側へ折られた長い辺、こんがり色づいた縁。開いた真ん中には、刻んだパセリの緑が散った淡い色のチーズが溶けています。これがペイニルリ・ピデ、つまりチーズ入りのピデです。トルコ共和国文化観光省は、イースト生地で作るチーズ入りのパンとしてトルコで広く好まれ、家庭でもパン屋でも作られていると紹介しています。
ヨーグルト入りの柔らかい生地を薄い楕円にのばし、両側を折って開いた舟形に整え、縁と底に火が通り、チーズ・パセリ・卵の具が中まで熱くなるまで焼きます。具には、原本のレシピが求めるもの以外は加えません。
「ピデ」は、ひとつに決まったレシピの名前ではありません。トルコ各地で、形も具も違う焼き生地の料理がこの名前で呼ばれています。この記事ではその幅を紹介しますが、作り方として載せるのは1種類だけです。文化観光省の英語サイトに「Pitta Bread with Cheese」の題で掲載されているペイニルリ・ピデに限ります。トラブゾン風やナジッリ風のピデにはそれぞれ独自の規定があり、その具・分量・焼成温度は、下のレシピにはいっさい混ぜていません。
このレシピを基準にしたのは、材料の重さ、作り方、出来上がりの個数、人数の表記がそろっていて、家庭で作り始める出発点としてはっきりしているからです。
英語圏ではピデが「Turkish pizza」と呼ばれることがあり、最初のイメージをつかむ助けにはなります。ただし、イタリアのピザと同じ料理でも、同じ起源でもありません。
ピデとは何か:ひとつの名前、いくつもの地域の姿
ピデは、発酵させた生地に具をのせて焼く料理で、形は地域によって変わります。 文化観光省のチーズ入りピデは、その中の広く作られている一例です。地域によっては、自分たちのピデを細かく定義しているところもあります。
| ピデ | 資料が伝える内容 | このレシピとの関係 |
|---|---|---|
| ペイニルリ・ピデ(チーズ入り) | ヨーグルトと油を加えたイースト生地。具はチーズ・パセリ・卵。縁を1cm残した楕円形。中温のオーブンで約10分 | この記事のレシピ |
| ナジッリ・ピデシ(Nazilli Pidesi) | 2020年11月18日に登録された地理的表示。ひき肉、卵とチーズ、円形でひき肉入りのナジッリ・ギュリュ、タヒニの4つの型がある。地元の生地と具の規定、長時間の発酵、薪窯焼きが特徴 | 地域の個性としてだけ紹介。このレシピには移していない |
| トラブゾン・ピデシ(Trabzon Pidesi) | ひき肉と卵の版、トラブゾンのテル・チーズの版がある。紹介されている例は280°Cで10分焼き、焼いたあとにバターを塗る | 地域の一例としてだけ紹介。280°Cもバターも、ここでは使わない |
ナジッリのピデはナジッリ自身の規則で、トラブゾンのピデはトラブゾン自身の生地とオーブンで定義されています。どちらも「ピデ」全体を代表する定義ではありません。別々に扱っておくからこそ、下のチーズ入りピデを原本に忠実なまま作れます。
ピデは、ラフマジュンとも別の料理です。ラフマジュンは、薄い生地に細かく刻んだ肉のたねを広く塗って焼く料理で、ここではピデの一種としては扱いません。
道具
- 粉をふるうためのざる
- 大きめのボウル
- イーストを起こす小さな器
- 発酵中のボウルにかける布やふた
- 具を混ぜるボウル
- めん棒(なくても可。原本は手でのばしても、めん棒を使ってもよいとしています)
- 天板
- オーブン
- 調理用温度計(あれば。具の中心の温度を確かめるときに使う)
日本でチーズ・油・ヨーグルトを選ぶ
原本が「チーズ」「油」「ヨーグルト」としか書いていないため、以下は手に入りやすさを考えた編集部の提案です。原本が特定のトルコの商品を指定していて、それを置き換えるという話ではありません。
チーズ。 チーズは塩気も水分も溶け方も違うので、「これが本場と同じ」と言える市販のチーズはありません。実用的なのは、塩気があって、よく溶けるチーズです。フェタのように塩気の強いチーズを使う場合も、原本どおり、具に塩は足さないでください。水分の多いチーズだと具がゆるくなることがあります。作り方7で縁を1cm空けておくのは、具を所定の位置にとどめる助けにもなります。
油。 種類の指定はありません。クセのない無香の油なら、チーズとパセリの味が引き立ちます。
ヨーグルト。 この塩味の生地には、砂糖の入っていないプレーンヨーグルトが合います。ヨーグルトは含む水分量に差があり、生地の柔らかさが変わることがあります。
食べ方:焼きたてを熱いうちに

文化観光省のページには、チーズ入りピデに合わせる飲み物の例として、アイランか果汁が挙がっています。これは例であって、必ずそうしなければならない組み合わせではありません。アイランを添えるなら、市販のものを使うか別に作ってください。生地に使うヨーグルト330gから分けるものではありません。
このレシピは8個できて、6人分と表記されています。1人何個と決めず、食卓の人数に合わせて取り分けてください。
残った場合の保存については、原本に案内がないため、保存期間は書きません。家庭の食品衛生の一般的な方法に従い、浅い容器に小分けして速やかに冷まし、冷蔵庫に入れてください。食べるときは、75°C以上になるまでしっかり温め直します。
うまくいかないとき
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 生地が硬すぎる、柔らかすぎる | ヨーグルトの水分量や、小麦粉の吸水の違い | 7〜8分しっかりこねてから判断する。粉は生地へ大量に足さず、打ち粉として使う |
| 具が生地から流れ出る | 具を縁いっぱいまで広げた。水分の多いチーズを使った | 縁を1cm残す。卵を増やしたり、別のチーズを足したりするのを標準的な対処にしない |
| 焼いている間に側面が開く | 折り込みが深すぎる、または不ぞろい | 具の上へ浅く、左右そろえて折る。このレシピには、塗り卵も接着用の液もない |
| 10分でも色が薄い | オーブンの温度が低め。天板が混み合っている | そのまま焼いて、また確認する。ピデの間が4〜5cm空いているかも見る |
| 焼き色が早くつきすぎる | オーブンが高温気味。天板の位置 | 最初の確認から色をよく見て、オーブンに合わせて調整する。それでも中の生地と具に火が通っているか確かめる |
| 外は金色でも中が不安 | 生地や具が厚い | 底と、具の下の生地を見る。色だけでは、中心が75°Cで1分以上になったとは言えない |
知っておきたい地域のバリエーション
ピデで知っておきたい違いは地域ごとのもので、このレシピに手を加えるアレンジとしてではなく、背景として読むのがよいでしょう。
- ナジッリ。 地理的表示に登録されているナジッリ・ピデシには、ひき肉、卵とチーズ、円形でひき肉入りのナジッリ・ギュリュ、タヒニの4つの型があります。定義には地元の生地と具の規定、長時間の発酵、薪窯焼きが含まれていて、家庭のオーブンのレシピで再現できると言えるものではありません。
- トラブゾン。 ひき肉と卵の例、トラブゾンのテル・チーズの例があります。紹介されているレシピは280°Cで10分焼き、焼いたあとでバターを塗ります。この温度はトラブゾン版とその生地のためのもので、ここのチーズ入りピデのものではありません。
このレシピの中で大きな選択になるのは、チーズそのものです。チーズの塩気と溶け方が、仕上がった具の味を何より左右します。
文化観光省は、チーズ入りピデをトルコで好まれる一般的なイースト生地のパンとして紹介し、町のパン屋でも家庭でも作られているとしています。そうした日常的なピデのほかに、ナジッリのように自分たちのピデを正式に定義した町もあり、トラブゾンのような地域版は、地元の文化資料にも記録されています。
今回使った資料からは、ピデ全体の起源や古い歴史は確認できないので、それについては何も主張しません。資料から言えるのは、国じゅうで親しまれていて、地域や家庭によって姿が変わる料理だということです。同じ食卓の別の料理は、トルコの料理からどうぞ。
よくある質問
ピデとラフマジュンは何が違いますか?
このレシピのピデは、柔らかいイースト生地を楕円にのばし、具をのせて両側を折り、開いた舟形にしたものです。ラフマジュンは別の料理で、薄い生地に細かく刻んだ肉のたねを広く塗ります。ピデの一種ではありません。
チーズは何を使えばよいですか?
原本は「チーズ」とだけ書いていて、種類は指定していません。トルコ国外では塩気があってよく溶けるチーズが実用的ですが、これは編集部の提案であり、特定のトルコのチーズの代わりというわけではありません。塩気の強いチーズなら、具に塩を足さないでください。
オーブンは何度にすればよいですか?
原本は「中温のオーブン」としか書いておらず、数値はありません。上下加熱・ファンなしの180°Cに予熱して始めることを提案します。これは一般的なオーブンの温度表にある中温の範囲から選んだもので、レシピそのものの数値でも、検証済みの設定でもありません。各回とも約10分で様子を見て、生地と卵入りの具に中まで火が通るまで続けてください。
6人分ですか、8個ですか?
どちらも原本の数字です。生地と具は8等分し、レシピ全体は6人分と表記されています。1人分が何個にあたるかは書かれていません。
8個を一度に焼けますか?
天板に、ピデの間を4〜5cm空けて8個すべて並べられるなら焼けます。多くの家庭用の天板では、何回かに分けて焼くことになります。原本の10分は1回ごとの目安で、8個まとめての時間ではありません。待っている間の具は冷蔵庫に入れておきます。
塗り卵やごま、バターを加えてもよいですか?
この版では加えません。文化観光省のチーズ入りピデには、どれも使われていません。焼いたあとにバターを塗るのは、別の地域のレシピであるトラブゾンの例です。












