小鍋の牛乳に、半分に切った玉ねぎ、皮をむいたにんにく1片、ローリエ1枚。ごく弱く温めたら火から下ろして蓋をし、香りが移ったところで具を濾し取ります。その牛乳をバターと小麦粉のルーに少しずつ混ぜて白いソースにし、チェダーとマスタードを溶かし、短いマカロニをからめて耐熱皿へ。上からパルメザンと粗めの白いパン粉を散らして、オーブンに入れます。ミルクの香りをまとった柔らかいパスタと、こんがり色づいたカリカリの表面。二つの食感がぶつかり合うのが、この一皿の楽しみです。
先に牛乳に香りを移します。マカロニは少し歯ごたえが残る程度にゆでます。ソースはスプーンにまとわる濃度にします。そして、表面がきつね色になり、縁がふつふつと泡立つまで焼きます。
このレシピは、英国の家庭向けにBBC Good Foodが紹介している「Easy mac and cheese」(4人分)に沿っています。分量、工程の順序、オーブンの設定は、この1本のレシピのものを使い、ほかのレシピとは混ぜていません。
同じ名前の料理は多くの国にあり、中身はそれぞれ違います。ここで作るのは、英国の家庭でよく見る焼きタイプの一例です。
英国の家庭で親しまれる、焼きマカロニチーズ
これは英国の家庭レシピの一例であって、唯一の正統な作り方ではありません。 BBC Good Foodのレシピは焼き料理です。チェダーとマスタードでコクを出した白いソースに、パルメザンとパン粉をのせ、オーブンで焼き上げます。英国では「macaroni cheese」という呼び名がよく使われます。米国でよく見る「mac and cheese」は、コンロで作る濃厚なチーズソースのものまで、さまざまなスタイルを含みます。二つの呼び名は重なる部分がありますが、名前だけでレシピが決まるわけではありません。ここでは、英国風の焼き版のひとつとして読んでください。
スコットランドのマカロニ・パイ(macaroni pie)は別の食べ物です。チーズ入りのマカロニをパイ生地のケースに詰めたものです。スコットランドの地域史を掘り下げるサイトThreadinburghは、新聞広告や地域の記録をたどって、スコットランドでマカロニやマカロニチーズが広まっていった様子を紹介しています。1920年にダンディーのパン屋が現代的な形のマカロニ・パイを売っていた記録にも触れています。ただしこれは筆者が紹介している記録で、記事の一部は筆者の推測です。パイの発祥を示す証拠ではありません。この記事のレシピは、パイではなく、ふつうの耐熱皿で焼く料理です。
マカロニとチーズは、記録のなかでどう現れるのか
早い時期の記録はいくつかの土地に見られるので、この料理を英国だけの功績にはできません。 ギネス世界記録は、14世紀初頭のイタリアの料理書『Liber de coquina』に、チーズとパスタを合わせた料理があると紹介しています。英国については、1769年のエリザベス・ラファルド(Elizabeth Raffald)の英語の料理書に、マカロニとチーズの詳しいレシピがあると述べています。どちらも「記録に残る早い例」であって、起源の証明ではありません。
ケンブリッジ大学のフィッツウィリアム博物館は、20世紀の料理研究家エリザベス・デイヴィッドよりずっと前から、英国とイタリアの間に食の行き来があったと説明しています。18世紀初頭までに、ロンドンのイタリア系食料品店でパルメザンが買えました。1783年には、ウェールズ出身の画家トーマス・ジョーンズが、帰国の航海のためにマカロニとチーズを注文した記録があります。大陸の食材は、こうした交易を通じてすでに英国の食卓へ届いていました。今日の一皿の上にのるパルメザンは、その歴史をささやかに思い出させてくれます。
途中で見つける、味の決め手
材料の選び方と代用
チェダー: 熟成した英国産のチェダーを使うと、元の味にいちばん近づきます。手に入らない場合は、熟成したゴーダで代用できますが、これは編集部の代案です。溶け方も塩気も香りも違うので、同じ味にはなりません。粉チーズを主体にしてソースを作るのは避けてください。
マスタード: このレシピではイングリッシュマスタードの粉末を小さじ1使います。ペースト状のイングリッシュマスタードも売られていますが、商品によって違いがあり、粉末と同じ風味や辛さにはなりません。同量で置き換えられるとは考えないでください。
牛乳: 成分無調整の牛乳を使います。低脂肪の牛乳に替えると、コクもソースの濃度も変わります。
小麦粉: 資料はplain flourを使っています。薄力粉は編集部の代案で、同じように仕上がる保証はありません。まず同じ50gで始め、粉っぽさが残らないよう、炒める1分間をきちんと取ってください。
バター: チーズ自体にかなり塩気があるので、無塩バターだと塩加減を判断しやすくなります。
パルメザン: パルミジャーノ・レッジャーノなど、硬質の熟成チーズを使います。伝統的なパルメザンは動物性レンネットで作られます。気になる方は、ベジタリアン向けと表示された硬質チーズを探してください。風味は少し変わります。
パン粉: レシピが求めるのは、白いパンから作った粗めの生パン粉です。乾燥パン粉は早く色づくので、表面を早めに確認してください。ただし、パスタとソースにもオーブンの熱が必要なので、表面の色だけで焼き上がりを決めないでください。
マカロニ: 短い管状のマカロニなら何でも使えます。太さは銘柄によって違うので、袋のゆで時間に従ってください。
使う道具
- 蓋つきの小鍋(牛乳に香りを移す用)
- ざる(濾す用)
- 大きな鍋とざる(パスタ用)
- ソースを作る鍋
- 木べらまたは泡立て器
- おろし器
- 25×18cmの耐熱皿
- キッチンスケールと計量スプーン
ソース・パスタ・表面の失敗を直す
| 状態 | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| ソースがゆるい | 牛乳を一度に入れた、または煮立てる時間が足りない | 牛乳を少しずつ加え、静かな煮立ちで混ぜ続ける。スプーンに線の跡が残る濃さが目安 |
| ソースがかたい | 煮詰まった、またはパスタが水分を吸った | 牛乳か水を少しずつ加えてゆるめる。型に入れる前は、ゆるめのコーティング状態にしておく |
| マカロニがくっつく | 湯切りしてから時間が空いた | ソースの仕上がりに合わせてゆで上げ、すぐ合わせる。必要なら流水で1本ずつ離す |
| 表面が焦げる | オーブンの個体差。乾燥パン粉は早く色づく | 15分を過ぎたら、色と縁の泡を確認する。乾燥パン粉なら、さらに早めに見る |
| ソースが油っぽくなる、分離する | ソースが煮立っているところにチーズを入れた | チーズを加える前に火から下ろし、ソースを煮立て続けない |
アレンジ
| アレンジ | 変わる点 | 考え方 |
|---|---|---|
| 英国風の基本の焼き版 | なし | 上記のレシピ |
| ベジタリアン向けの表面 | パルメザンを、ベジタリアン向け表示のある熟成硬質チーズに替える | 風味は少し変わる。動物性レンネットを使わずに作られたチーズになる |
| 一部をグリュイエールに | BBC Good Foodの提案どおり、チェダーの一部をグリュイエールに替える | ソースのチーズの総量は175gのまま、その範囲内で置き換える |
| 乾燥パン粉 | 粗い生パン粉を乾燥パン粉に替える | 早く色づくので表面を早めに確認する。それでもパスタとソースには十分な時間を与える |
| スコットランドのマカロニ・パイ | マカロニチーズをパイ生地のケースに入れて焼く | 別の料理。生地や焼き方には別のレシピが必要で、ここでは扱わない |
よくある質問
マカロニチーズとmac and cheeseは同じ料理ですか?
重なる部分はあります。「macaroni cheese」は英国でよく使われる呼び名、「mac and cheese」は米国でよく見る呼び名です。どちらも、このレシピのような焼き料理から、コンロで作る濃厚なチーズソースまで、幅広いレシピを含みます。名前だけではレシピは決まりません。
マカロニを少し歯ごたえが残る状態でゆでるのはなぜですか?
オーブンの中でも火が入り続けるからです。BBC Good Foodは、柔らかくなったけれど少し歯ごたえが残る状態まで、とすすめています。表面がきつね色になるころに、ぐずぐずになるのを防ぐためです。
チェダーが手に入らないときはどうしますか?
第一候補は熟成した英国産のチェダーです。熟成したゴーダは編集部の代案ですが、溶け方も塩気も香りも違うため、まったく同じとは言えません。粉チーズを主体にするのは避けてください。
スコットランドのマカロニ・パイと同じですか?
違います。マカロニ・パイは、チーズ入りのマカロニをパイ生地のケースに入れて焼く料理で、耐熱皿で焼くこの料理とは別の食べ物です。
作り置きはできますか?
このレシピの元になった資料には保存や温め直しの案内がないため、この記事では保存期間も再加熱の温度も示しません。焼いて、熱いうちに食べる形で書かれたレシピです。残りを取っておきたい場合は、お住まいの地域の食品安全機関の案内に従ってください。
同じ国の料理は、英国の料理もご覧ください。














