屋台のカウンターの上に、具を入れたボウルがずらりと並んでいます。こんがり焼いたなす、輪切りのゆで卵、細かく刻んだきゅうりとトマト。店主がピタの袋をひらき、手早く具を詰めて、白いタヒニソースと黄色いマンゴーのソースをたっぷりかけてくれます。ずっしり重いピタにかぶりつくと、とろりとしたなすとタヒニのこく、マンゴーの酸味が一度に広がる。サビーフ(sabich)は、イスラエルの屋台で親しまれている、なすと卵のピタサンドです。
安息日の朝ごはんが、ピタに収まった

サビーフのもとになったのは、イラクのユダヤ人家庭の安息日(シャバット)の朝ごはんです。ユダヤ教の安息日には火を使った調理を控えるため、室温のままで食べられる料理が食卓に並びました。ユダヤ文化を伝えるサイトMy Jewish Learningの料理コラム「The Nosher」で、ジョエル・ハーバーは、イラクのユダヤ人が土曜日の朝にこうした料理をビュッフェのように並べて食べていたと書いています。
1950年代を中心に、イラクのユダヤ人の多くがイスラエルへ移り住むと、別々の皿に並んでいた朝ごはんの料理が、ピタの中にまとめて詰められるようになりました。こうして、気軽に食べられるサンドイッチが生まれたのです。ハーバーはサビーフを、イスラエルでもっとも人気のある屋台料理の一つとして紹介しています。
サビーフという名前の由来には、いくつかの説があります。よく知られているのは、テルアビブ近郊の町ラマト・ガンで、サビーフというあだ名の男性がこれを屋台で売り出した、という話です。一方でハーバーは、アラビア語で「朝」を意味する言葉から来ているという説のほうが、イラクのユダヤ人がこれを朝に食べていたことから、もっともらしいと書いています。
ラマト・ガンのバス停から

ユダヤの食文化を記録している米国の団体Jewish Food Societyには、自分の父親の名前がまさにサビーフだった、というタミ・シェムトヴの話が載っています。彼女の父はイラクから移り住んだ人で、サビーフという名前は、イラクのユダヤ人の言葉で「夜明け」「最初の光」を意味するのだそうです。
同じ記事は、この料理がイスラエルを代表する一品になったのは、ラマト・ガンのバス路線の終点にあった屋台で、イラクから移り住んだサビーフ・ツヴィ・ハラビという人がバスの運転手たちに売ったのが始まりだと伝えています。屋台が始まった年については、この記事は1980年代としていますが、もっと早い時期とする資料もあり、はっきりとはわかっていません。確かなのは、イラクの家庭の朝の味が、イスラエルの街角で手に持って食べる屋台の味へと姿を変えたことです。
途中で見つける、味の決め手
よくある質問

なすは揚げないのですか?
屋台では揚げたなすが使われることも多いのですが、このレシピのもとにしたJewish Food Societyのレシピは、オリーブオイルを塗ってオーブンで焼く作り方です。揚げるよりも油の量が少なく、家庭で一度にたくさん作れます。
アンバがない場合はどうしますか?
アンバなしでも作れます。その場合は、タヒニソースのレモン果汁を少し多めにしたり、刻みサラダの酸味を強めにしたりすると、味が単調になりません。
作り置きはできますか?
焼きなすとタヒニソースは、別々の保存容器に入れて冷蔵し、早めに使いきってください。サビーフはもともと室温で食べられる料理なので、食べる少し前に冷蔵庫から出しておくと、なすの香りが戻ります。刻みサラダは、食べる直前に作るのがおすすめです。
卵は半熟とかたゆで、どちらがいいですか?
どちらでもかまいません。Jewish Food Societyのレシピでは、とろりとした半熟なら7分、かたゆでなら12分ゆでるとされています。半熟はタヒニソースとからんでこくが増し、かたゆでは輪切りにしやすく、ピタに詰めやすくなります。












