クリスマスの昼、親戚が集まる家の台所で、大きな焼き型がオーブンから出てきます。中には、濃い琥珀色に焼けた、ぷるんとつやのあるバナナの生地。大人がスプーンですくって器に取り、温めたココナッツクリームを上からたっぷりかけると、子どもたちが待ちきれずに手を伸ばします。南太平洋のクック諸島の人たちが、祝いの日に作るデザートポケ(Poke)です。
クック諸島の祝いの日には、ポケが並ぶ

クック諸島は、ニュージーランドの北東、南太平洋に浮かぶ15の島々からなる国です。ニュージーランドの新聞「Otago Daily Times」の記事で、クック諸島にルーツを持つケリ・テアヴァエさんは、ポケはクリスマスやイースター、誕生日のような特別な日に作る料理だと話しています。テアヴァエさんは、このレシピをオークランドに住むおばたちと祖母から教わりました。記事によると、クック諸島に暮らす人はおよそ2万人で、ニュージーランドとオーストラリアには、クック諸島系の人が5万8,000人以上暮らしています。故郷を離れた家族の台所でも、ポケは受け継がれているのです。
材料は、熟しきったバナナ、でんぷん、ココナッツクリームの3つだけ。バナナを煮てつぶし、アロールートなどのでんぷんで練って、オーブンでじっくり焼きます。焼き上がりは、もちのような弾力とゼリーのようなつやのある、透き通った琥珀色の生地。そこに温めたココナッツクリームをかけて食べます。
ポケという名前は、ポリネシアの古いことばで「混ぜる」「こねる」を意味する言葉から来ているとされます。タヒチでは「k」の音が消えて「ポエ(po'e)」と呼ばれ、クック諸島、タヒチなどのフランス領ポリネシア、イースター島で食べられています。ハワイの魚のサラダ「ポケ」とは、名前が同じでも別の料理です。
かつては、この生地をバナナの葉で包み、地面に掘ったかまどで蒸し焼きにしていました。今ではオーブンで焼くのが一般的で、バナナの代わりにパパイヤやマンゴー、かぼちゃで作ることもあります。ニュージーランドのラジオ局RNZでレシピを紹介している、アイトゥタキ島生まれのマイネ・アンドリュースさんは、ポケは熟したバナナの分だけ少し甘いと書いています。砂糖を入れず、バナナの甘さだけで作るのが基本です。
日本の台所で作るときに知っておきたいこと

ポケのおいしさは、バナナの熟し具合で決まります。テアヴァエさんは、皮がほとんど茶色になったバナナを使うよう勧めていて、熟していなければ日なたに置いて熟させるそうです。スーパーで買ったバナナなら、皮に黒い斑点がたくさん出て、全体が茶色っぽくなるまで、室温で数日置いてください。熟すほど甘みが強くなり、焼き色も濃くなります。
クック諸島で使う「ピア(pia)」は、アロールートやタピオカの粉です。日本ではアロールートはあまり見かけませんが、タピオカ粉は製菓材料店や通販で手に入ります。この記事では、手に入りやすいタピオカ粉で作ります。
Heart Foundation NZのレシピでも、タピオカ粉(アロールートのでんぷん)を使っています。タピオカ粉は焼くと透き通ったつやと弾力が出るので、ポケらしい食感にするならこの粉がおすすめです。
ココナッツクリームは、ココナッツミルクより脂肪分が多く、濃厚なものです。缶やパックで売られています。手に入らなければ、ココナッツミルクを使い、温めるときに少し長めに煮詰めてとろみを出せば、近い仕上がりになります。
途中で見つける、味の決め手
温かいうちに、ココナッツクリームと

焼きたてのポケは、もっちりとやわらかく、スプーンですくえるほどです。そこにココナッツクリームがからむと、バナナの甘い香りとココナッツのこくが合わさって、素朴なのに濃厚な味になります。テアヴァエさんは、ポケはデザートにも、付け合わせにも、サラダにもなると話しています。
冷めたポケは、しっかりかたまります。テアヴァエさんによると、冷やしたものは切り分けて、ココナッツクリームを足して食べるそうです。四角く切り分けたポケは、羊羹やういろうのようなもちもちとした歯ごたえになり、温かいときとは違うおいしさがあります。
ニュージーランドの心臓病予防団体「Heart Foundation」は、ポケをクック諸島の伝統料理として、バナナかかぼちゃで作るレシピを紹介しています。そこでは、ポケはふだんパンやじゃがいもの代わりの付け合わせとして食べられることが多く、デザートにもなると説明されています。
アレンジの楽しみ方

テアヴァエさんは、バナナの代わりにかぼちゃやタロイモでもポケが作れると話しています。かぼちゃで作る場合は、皮と種を除いて蒸し、やわらかくなったらつぶして、バナナと同じ量(約800g)を使います。かぼちゃは甘みが控えめなので、好みで砂糖大さじ2〜3を加えてください。
パパイヤやマンゴーで作るのも、ポリネシアではよく知られたアレンジです。果肉をつぶして同じように作ると、色も香りも南国らしいポケになります。バナナにマンゴーを半量混ぜると、さわやかな酸味が加わります。
よくある質問

砂糖を入れなくても甘くなりますか?
完熟バナナを使えば、砂糖を入れなくても十分に甘くなります。バナナがあまり熟していないと甘みが足りず、焼き色も薄くなるので、皮が茶色くなるまで待ってから作ってください。甘さが足りないと感じたら、ココナッツクリームを温めるときに砂糖を少し溶かしてもかまいません。
作り置きはできますか?
粗熱が取れたら切り分けて保存容器に入れ、冷蔵で2日以内に食べきってください。冷蔵するとかたくなりますが、電子レンジで30秒〜1分ほど温めると、もっちりした食感に戻ります。ココナッツクリームは別に保存し、食べる直前に温めてかけます。
中心が白く濁ったまま、透き通りません。
焼き時間が足りないか、生地が厚すぎる可能性があります。ホイルをかぶせたまま、10分ずつ追加で焼いてください。タピオカ粉は加熱すると透き通るので、中心まで火が通れば、全体が琥珀色に変わります。













