日曜の朝4時、まだ暗いタヒチ島の首都パペーテの市場は、もう人でいっぱいです。タロイモの発酵ソース、ラグーンの魚、焼いた豚肉。人気の品は早いうちに売り切れてしまうので、みんな少しでも早く来ようとします。その袋の中に、たいてい入っているのが、8の字にねじれた揚げたてのドーナツ。砂糖をまとったきつね色の生地からは、ココナッツの甘い香りがします。タヒチの日曜の朝ごはんに欠かせないフィリフィリ(Firi firi)です。
日曜の朝は、市場でフィリフィリを買う

タヒチは、南太平洋に118の島が散らばるフランス領ポリネシアの中心の島です。ポリネシアの島々を巡る船旅を紹介するMoana Voyagesのブログは、日曜の朝ごはんをポリネシアの「制度」とまで呼び、日曜だけは、フィリフィリをいくつ続けて食べても許される日だと書いています。フィリフィリは市場の屋台だけでなく、町の小さな商店や道ばたでも売られています。
生地は、小麦粉と砂糖にイーストを加え、水の代わりにココナッツミルクで溶いたものです。何時間か発酵させてふくらませた、とろりとした生地を、8の字に絞って油で揚げ、砂糖をまぶします。外はカリッと、中はもっちりとした、ふんわり甘い食感。コーヒーと一緒に食べるのが、タヒチの朝の定番です。
フィリフィリの8の字の形について、Moana Voyagesのブログは、タヒチの踊り「オリ・タヒチ」で腰を8の字に回す「ヴァル(varu、数字の8)」という動きとの結びつきを紹介しています。太平洋の料理を紹介するサイト「The Coconet」は、フィリフィリを朝ごはんにもデザートにも食べるタヒチのココナッツドーナツとしています。
フランス領ポリネシアは、パンやお菓子にフランスの影響が色濃く残る土地でもあります。それでも、ココナッツミルクで溶いた生地をねじって揚げるフィリフィリは、島の台所から生まれたおやつです。同じポリネシアの甘いもの、サモアのパニポポも、ココナッツクリームを使ったパンです。ココナッツと小麦粉の組み合わせは、南太平洋の島々に共通する味といえます。
日本の台所で作るときに知っておきたいこと

フィリフィリの材料は、ココナッツミルク以外はすべてスーパーでそろいます。ココナッツミルクは缶入りや紙パック入りのものが手に入ります。缶の中で固まった脂肪分と水分が分かれていることがあるので、よく振ってから、または器に出してよく混ぜてから計量してください。
この記事の分量は、Moana VoyagesのブログとThe Coconetに載っている同じ配合(小麦粉350g、ココナッツミルク200ml、ぬるま湯80ml)を基にしています。どちらも生地を約3時間発酵させ、170℃の油で揚げる作り方です。日本の台所では、生地を直接油の中に8の字に絞るのは難しいので、この記事ではクッキングシートの上に絞ってから、紙ごと油に入れる方法にしています。
小麦粉は、薄力粉でも中力粉でも作れます。薄力粉だとふんわり軽く、強力粉を半量まぜると、もっちりした歯ごたえが強くなります。最初は薄力粉だけで作るのがおすすめです。
揚げ油の温度を正確に保つことが、フィリフィリをおいしく作るいちばんの決め手です。The Coconetのレシピは、油の温度が低いと油っぽくべたつき、高すぎると中が生のまま外側が焦げると注意しています。料理用温度計があると安心です。
途中で見つける、味の決め手
コーヒーと一緒に、温かいうちに

フィリフィリは、揚げたての温かいうちがいちばんおいしい食べ物です。外のカリッとした食感と、中のもっちりした食感が楽しめます。タヒチの人がそうするように、熱いコーヒーと一緒にどうぞ。コーヒーに少し浸して食べるのもおすすめです。
砂糖をまぶさずに揚げたものに、メープルシロップやはちみつを添えてもおいしく食べられます。ココナッツミルクの香りを強くしたいときは、まぶす砂糖にココナッツファインを同量混ぜると、島らしい香りが増します。
Moana Voyagesのブログでは、フィリフィリと並ぶ日曜の朝の味として、ココナッツを使った甘いパン「ココナッツブレッド」の作り方も紹介されています。市場が開くのは早朝で、人気の料理は朝のうちに売り切れてしまうため、地元の人は朝4時ごろから市場に集まるそうです。
アレンジの楽しみ方

まぶす砂糖にシナモンパウダーを小さじ1混ぜると、シナモンシュガーのドーナツになります。8の字ではなく、長さ10cmほどの棒状に絞って揚げると、チュロスのような形で食べやすくなります。
生地に、すりおろしたライムの皮1個分を加えると、さわやかな香りが加わります。タヒチではバニラも名産なので、バニラビーンズのさやからこそげた種を少し加えるのも楽しいアレンジです。
よくある質問

前日の夜に生地を作っておけますか?
できます。生地を混ぜたら、ラップをかけて冷蔵庫に入れ、一晩(8〜10時間)かけてゆっくり発酵させます。翌朝、冷蔵庫から出して室温に30分ほど置き、生地がふくらんで泡が出ているのを確かめてから絞ってください。
揚げたものは保存できますか?
当日中に食べきるのがいちばんです。残ったら、砂糖をまぶす前のものをラップで1個ずつ包み、冷凍用の保存袋に入れて冷凍し、2週間をめやすに食べきってください。食べるときは、凍ったままオーブントースターで3〜4分温め、温かいうちに砂糖をまぶします。
生地がゆるすぎて形になりません。
発酵しすぎたか、ココナッツミルクの水分が多かった可能性があります。薄力粉を大さじ1〜2ずつ加えて混ぜ、絞ったときに形が保てるかたさに調整してください。8の字にこだわらず、スプーンですくって丸く落とし、丸いドーナツにしても味は同じです。












