冷やした魚の角切りに、搾りたての柑橘の汁をかける。そこへ濃い白のココナッツクリームを加え、赤ピーマン、きゅうり、赤玉ねぎの小さな角切りと一緒に、崩さないようにそっと混ぜて冷たいまま食卓に出します。クック諸島のレシピは、細部こそ料理人ごとに違っても、魚・柑橘・ココナッツの組み合わせに行き着きます。それがイカ・マタです。
イカ・マタ(Ika Mata)は、ラロトンガ島などで使われるマオリ語で「生の魚」を意味すると説明されている、クック諸島の料理です。この記事では、分量がはっきりしている家庭のレシピを1つ選び、マグロとレモンで4人分を作ります。ほかのクック諸島の作り手がどう違うやり方をしているかも、あわせて紹介します。生の魚を使う料理なので、最初に魚の選び方を説明し、柑橘にはできないことも先に書いておきます。酸で魚が白くなっても加熱したことにはならず、安全になるわけでもありません。
クック諸島の料理ガイドもご覧ください。
魚は冷たくて締まっていること、柑橘は明るい酸味があること、ココナッツクリームは濃いこと、きゅうりと赤玉ねぎはまだ歯ざわりが残っていること。これが目指す仕上がりです。ただし、これは料理の姿を表したもので、安全の保証ではありません。魚は生食用として売られているものを選び、ずっと冷たく保ってください。
魚と柑橘とココナッツを重ねる料理
名前が料理の中身をそのまま言い表しています。 クック諸島の家庭料理を紹介するある書き手は、イカ・マタをラロトンガのマオリ語で「生の魚」と説明しています。クック諸島のコミュニティのレシピページも同じ名前を題にしています。同じ書き手は、太平洋の島々にはそれぞれ土地ごとの生魚料理があるとも書いています。イカ・マタは太平洋に広がる生魚料理の仲間の1つですが、独立した料理であり、近隣の料理の別名というわけではありません。
魚は土地や季節で変わります。ラロトンガのコミュニティのレシピは、伝統的な魚としてマロロ(トビウオ)を挙げ、夜に明るい光を使って獲ると説明しています。白身魚でもよいとも書かれています。キハダマグロもよく知られた選択肢で、別のクック諸島のレシピにはカハワイ(kahawai)を使うものもあります。唯一の正しい魚があるわけではなく、海と市場にあるものが選ばれてきたのです。
ココナッツクリームは、殻つきのココナッツから作ることもあります。アバルア(Avarua)での観光週間の実演では、地元の料理人ンガメトゥア(トゥア)・ンガロ・タリアウさんが、ココナッツの殻をむき、果肉を削り、絞って生のココナッツクリームを作り、この料理に使いました。毎回すべての家庭がそうするわけではありません。島から遠い日本の台所では、濃くて無糖の缶入りココナッツクリームで、後のレシピと同じ役目を果たせます。
太平洋のほかの場所にも、似た生魚の料理があります。フィジーのココダ(kokoda)がその1つで、海を越えればペルーのセビチェも柑橘で魚の見た目を変えます。名前も作り方も家庭ごとの版もそれぞれ違い、イカ・マタはどちらとも同じ料理ではありません。
途中で見つける、味の決め手
クック諸島の台所で見られる変化
基本のレシピは家庭の1つの版にすぎず、クック諸島のほかの作り手は別の方向に展開しています。以下は資料に書かれている変化です。
| 変化 | 変わること | 備考 |
|---|---|---|
| レモンの代わりにライム | 観光週間の実演のように、香りが明るく青みを帯びる | 果汁は果実ごとに違うので、漬け時間は食感を見て決める |
| 白身魚 | ラロトンガのあるレシピは白身魚またはマロロ、別のクック諸島のレシピはカハワイを使う | マグロより淡白でやわらかいことが多い。生食用として売られていることが条件 |
| トマトを足す | 実演やほかの家庭のレシピのように、果汁感と酸味が増す | きゅうりの種を除き、クリームは少しずつ加えて水っぽくならないようにする |
| しょうが、パクチー、青ねぎ | アバルアの実演のように、ハーブとしょうがで香りが前に出る | 赤玉ねぎだけのシンプルな版とは後味が違う |
| にんじんとチャイブ | リゾート風のレシピは、にんじんとチャイブを加え、ココナッツの殻の器にライムのスライスを添えて出す | このレシピは先に魚を冷たい塩水(水600mlに塩大さじ1.5)に30分浸す |
| 柑橘の汁を切る | 魚に塩をして冷やし、柑橘をほんの数分だけ加えて汁を切り、それから野菜とクリームを加えるレシピもある | 酸味が穏やかになり、食感もやわらかい。ABCのレシピは5〜10分漬けて、漬けすぎないよう注意している |
| 加熱した「イカ・マタ風」 | 生魚を食べたくない人向け。魚を十分に加熱して冷まし、同じ要領で和える | 伝統的な生のイカ・マタとは別の料理。「イカ・マタ風」として区別して出す |
生のココナッツクリームはどこから来るのか

アバルアで開かれたクック諸島の観光週間の実演では、料理は魚ではなくココナッツから始まりました。トゥア料理人はココナッツの殻をむき、白い果肉を削り、絞って生のココナッツクリームを取り出しました。魚はライムと塩に通して、トマト、赤玉ねぎ、ピーマン、青ねぎ、しょうが、パクチーと合わせます。これは1人の料理人のある日の版であり、すべての家庭に共通する決まりではありません。それでもこの料理の風味の多くが、ココナッツそのものから来ていることがよく分かります。
生のクリームは缶入りより香りが立ち上がりますが、削り器と手間が要ります。日常の家庭の台所では、濃い缶入りクリームから始めるのが無理のないところです。ココナッツと道具があるときに、生のクリームを試してみてください。
食卓に出す:根菜を添えて、祝いの日にも普段にも

資料に出てくる添え物は、タロイモ、キャッサバ、さつまいも(kumara)、パンノキの実、茹でた青いバナナです。イカ・マタに混ぜるのではなく、横に添えて食べます。ABCは、イカ・マタをクック諸島の祝いの席で食べる料理と紹介しています。祝いの席にも並びますが、特定の行事だけの料理だと決まっているわけではありません。島の外では、これらの根菜がそのまま手に入らないこともあります。ほかの茹でたでんぷん質の野菜を同じ皿に添えることはできますが、同じ食材ではないので、味も食感も変わります。
安全と食べ残し
寄生虫。 厚生労働省は、アニサキスによる食中毒は、寄生された魚介類を生で食べることで起こると説明しています。目で見て確かめることと、内臓を速やかに取り除くことを勧め、−20℃で24時間以上冷凍するか、70℃以上、または60℃で1分加熱すると幼虫が死ぬと述べています。ただし、この案内は、ある魚が生で食べられると保証するものではありません。家庭の冷凍庫で処理することは、生食用として売られた魚を買い、売り場で確かめることの代わりにはなりません。
冷凍と加熱。 米国食品医薬品局(FDA)は、生の魚には寄生虫がいることがあり、あらかじめ冷凍すれば寄生虫は死ぬことがあると述べています。一方で、冷凍ではすべての有害な菌が死ぬわけではなく、魚介類を十分に加熱するのがいちばん安全だとも述べています。迷うときは、加熱した別案を選んでください。
ヒスタミン。 特にマグロは、買ってから食卓に出すまで冷たく保ち、常温に置かないでください。いったんできたヒスタミンは、加熱しても取り除けません。
食べ残し。 イカ・マタは作り置きの料理ではありません。食べる分だけ作ってすぐ出し、残りを翌日に回さないでください。作ったイカ・マタの保存期間は、資料に書かれていません。
よくある質問
マグロの代わりに白身魚を使えますか?
使えます。クック諸島のレシピには、マグロのほかに白身魚、マロロ、カハワイを使うものがあります。どれを選ぶにしても、生食用として売られている魚が条件です。淡白な白身魚はマグロとは味も食感も違い、どちらもクック諸島の海の魚と同じにはなりません。
レモンの代わりにライムを使えますか?
使えます。ここの基本レシピはレモンで、ほかのクック諸島のレシピにはレモンのものもライムのものもあります。レモンは酸味が鋭く直接的で、ライムは香りが明るく青みがあります。
どのくらい漬ければよいですか?
このレシピでは、蓋をして冷蔵庫で30〜45分です。ほかのレシピでは数分、5〜10分、2時間ほどと幅があります。長いほど身が締まり、長く漬けると硬くなると感じる人もいます。時間は食感で選んでください。長く漬けても、魚が安全になるわけではありません。
柑橘で生魚は安全になりますか?
なりません。魚が白くなるのは酸のせいで、加熱や殺菌のせいではありません。生食用として売られた魚を選び、冷たく保つことから始めてください。迷うときは魚を十分に加熱して、イカ・マタ風の別案にしてください。
作り置きや食べ残しの保存はできますか?
しないのが無難です。食べる分だけ作って、冷たいうちにすぐ出してください。作ったイカ・マタの安全な保存期間は資料に書かれていないので、取っておく前提にはしないでください。
イカ・マタには何を添えて食べますか?
茹でたタロイモ、キャッサバ、さつまいも(kumara)、パンノキの実、茹でた青いバナナが添え物として挙がっています。横に添えると、魚とココナッツの味がそれぞれはっきりします。











