ココナッツフィッシュ:ライムの香りと三層の衣、さくっと香ばしいきつね色
淡白な白身魚、ライムの酸味、揚げたココナッツの香ばしい歯ざわり。ライムの下味は短く、衣は決まった順にまとわせ、魚は衣の色ではなく中心の火通りで仕上がりを判断します。
白身魚の切り身を、海塩と黒こしょうを溶かしたライム果汁にしばらく浸します。そのあと浅い皿を3枚、小麦粉、溶き卵、ココナッツの順にくぐらせ、中火にかけた油のフライパンへ。両面がきつね色になったらペーパータオルで油を切り、フレーク状の塩をふって、くし切りのライムとともに食卓に出します。
これは、アメリカの Daughters of the British Empire in the USA(DBE)が、ナウルの料理として紹介しているココナッツフィッシュのレシピです。DBEのページには「Recipe courtesy of Slofoodgroup」と添えられていて、同じ文章と分量が Slofoodgroup 自身のブログにも載っています。つまり、ナウルからの独立した2つの記録ではなく、1つのレシピが2か所で公開されているということです。
「ココナッツフィッシュ」という名前の料理は、作り方がひとつとは限りません。料理ブログの One World Whisk は、生のマグロに新鮮なココナッツミルクまたはココナッツウォーターとライムを合わせるナウルのココナッツフィッシュを紹介しています。筆者は、ネットでよく見かけるココナッツをまぶして焼き揚げにする版は、自分が見つけたナウルの作り方とは合わなかったと書いています。この記事では、DBE掲載の揚げ版を順を追って紹介します。ナウルの公式な国民料理だとも、唯一の伝統的な形だとも言いません。
ライムとココナッツミルクで生の魚を和える料理は、材料も食品衛生上の注意点も別物です。太平洋の別の地域の、生魚とココナッツミルクの料理を知りたい方は、フィジーのココダをご覧ください。以下の作り方は、火を通すココナッツ衣の版だけを対象にしています。
道具
- 下味用の浅い器
- 小麦粉・溶き卵・ココナッツ用の浅い皿またはボウル 3つ
- フライパン
- 魚を返す薄いフライ返し
- 油切り用のペーパータオル
- 揚げた魚を置く、清潔な別の皿
- 中心温度を測る瞬間温度計(なくても作れますが、あると便利です)
特別な道具はいりません。薄い魚用のフライ返しは、衣をはがさずに下へ差し込みやすいのですが、ふつうの金属のフライ返しでも作れます。
魚、ココナッツ、小麦粉、ライムの選び方と代用
魚。 レシピに挙がっているのはタラかティラピアです。手に入らなければ、淡白で骨がなく、厚すぎない白身魚の切り身が代わりになりますが、食感は同じとは限りません。皮と骨を取ってから下味をつけると、衣もつけやすく、食べやすくなります。
ココナッツ。 Slofoodgroup は、本来の想定は新鮮なすりおろしココナッツで、市販のフレークは手軽な選択肢だと説明しています。生のすりおろしと乾燥フレークは、水分、香り、フライパンでの色づき方が違い、乾燥フレークのほうが早く色づくことがあります。ここで無糖を選ぶのは、衣に甘みを入れたくないための編集上の判断で、レシピ自体は「coconut flakes」としか書いていません。
小麦粉。 オールパーパスの小麦粉のままにしてください。片栗粉やコーンスターチに替えると、魚と卵の間での付き方が変わります。薄力粉はグルテンが少なく、衣のつき方が変わります。
ライムと塩。 新鮮なライムがいちばん香りが立ちます。市販の果汁でも作れますが、香りは弱くなることがあります。塩は粒の大きさで塩味が変わるので、小さじを山盛りにしないでください。味を見るときは、しっかり火を通した魚だけで確かめ、生の魚や、生の魚に触れた漬け汁は味見しないでください。
うまくいかないときの見直し:衣、色、火通り
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 衣がはがれる | 下味の汁が多く残っている、または層を飛ばした | 粉の前に漬け汁をよく落とし、小麦粉、卵、ココナッツの順を守る |
| 魚が焼けないうちにココナッツが焦げる | 火が強い。乾燥フレークは早く色づくことがある | 火を弱め、温度計かフォークで中心を確かめる |
| 衣はきつね色なのに中心が半透明 | 厚い切り身、または色だけで判断した | 中心が 145°F(63°C)、または不透明でフォークでほぐれるまで加熱を続ける |
| ココナッツがまだらにつく | フレークを押さえていない | 卵のあと、ココナッツを軽く押さえて全体につける |
| 衣がしんなりする | 揚げたあと放置した | ペーパータオルで軽く油を切り、すぐ出す |
食品衛生:生の魚、生の卵、残り
- 冷やしておく。 魚は買ったらすぐ冷蔵し、下味の間も冷蔵庫に入れます。
- ライムは加熱の代わりにならない。 短いライムの下味は風味づけで、火を通す工程の代用にはなりません。
- 生と加熱後を分ける。 生の魚や卵に使った皿や道具と、揚げた魚に使うものは分けます。生の魚に触れたあとは手を洗います。
- 仕込みの残りは捨てる。 下味の汁や卵液を、仕上がった料理に再利用しません。
- 出しっぱなしにしない。 FDAは、魚介類は2時間以内(気温が 90°F(32°C)を超えるときは1時間以内)に冷蔵するよう案内しています。これは待ってよい時間ではなく上限です。すぐに食べ、食べきれない分は冷蔵してください。衣は揚げたてがいちばんで、保存するとしんなりします。
レシピの範囲内でできるバリエーション
- フレークの代わりに生ココナッツ。 公開レシピは、フレーク2カップの別案として小さめのすりおろしココナッツ1個を挙げ、Slofoodgroup は生ココナッツが本来の想定だと説明しています。衣はしっとりして香りも変わるので、色づき方を見ながら揚げてください。
- タラまたはティラピア。 どちらもレシピに挙がっています。厚い切り身は火が通るまで時間がかかるので、時間ではなく中心で判断します。
- 食卓でのライムの量。 くし切りのライムは食べる直前に添えると衣がさくっとしたままです。搾る量は各自で調整してください。
- 市販のライム果汁。 生のライムが手に入りにくいときの実用的な代用です。香りはやや平板になります。伝統的な材料ではなく、あくまで便宜上のものです。
なお、One World Whisk が紹介している生のマグロとココナッツミルクまたはココナッツウォーターの料理は、このレシピのバリエーションではなく別の料理です。この手順に混ぜないでください。
ナウルのココナッツ、ライム、魚
FAO(国連食糧農業機関)の太平洋島嶼サブ地域事務所によるナウルの農業評価は、ナウル語でイニ(Ini)と呼ばれるココナッツを挙げ、ココナッツクリームがさまざまな料理に使われると記しています。ライムはデレム(Derem)と呼ばれ、現地では飲み物や生魚のマリネに使われると書かれています。魚、ココナッツ、ライムがナウルの食の風景に属することは確かです。ただし、同じ資料には、小麦粉・卵・ココナッツで衣をつけて揚げる魚の記録はありません。現地の食材が使われていることだけでは、この揚げ方がどのくらい古く、どのくらい現地のものなのかは分かりません。
海も食卓に影響しています。南太平洋大学(USP)の事例研究は、ナウルの人びとがミルクフィッシュの稚魚を採り、汽水や海水の池で育てていると述べ、海流や天候の変化による影響も報告しています。環境や気候の圧力のもとで、食料の確保や地元の食べ物へのアクセスが変わりつつあることが分かります。これは島の食の背景であって、ココナッツフィッシュの歴史ではありません。
料理そのものについては、DBEも Slofoodgroup もナウルの国民料理として紹介しています。しかし、今回確認した資料にそれを裏づける公式な指定はなく、2つのページは同じレシピです。One World Whisk は生の版を紹介しています。こうした違いが記録されているため、この記事ではココナッツフィッシュを「公開されている揚げ版」として紹介し、唯一の正統な形があるのかという問いは開いたままにしておきます。
よくある質問
このココナッツフィッシュにココナッツミルクは使いますか?
使いません。この版はすりおろしココナッツかフレークを衣にします。One World Whisk が紹介している生魚の料理は、新鮮なココナッツミルクまたはココナッツウォーターとライムを使う別の料理です。
魚は何に替えられますか?
レシピに挙がっているのはタラかティラピアです。淡白で骨がなく、厚すぎない白身魚の切り身なら代わりになりますが、食感は変わることがあります。
加糖のココナッツフレークでもよいですか?
レシピには「coconut flakes」としか書かれていません。衣が甘くならないよう無糖を使うのは編集上の判断で、出典の指定ではありません。
中まで火が通ったかどうかは、どう見分けますか?
FDAの一般的な目安に従い、中心温度 145°F(63°C)、または身が不透明でフォークで簡単にほぐれる状態を目安にしてください。衣の色だけで判断しないでください。
何人分ですか?
DBEのレシピには記載がありません。同じレシピに対する Slofoodgroup のレシピカードには4人分とありますが、その数字はそのカードだけのものです。
ナウルの伝統的な国民料理ですか?
DBEと Slofoodgroup はそう紹介していますが、確認できる記録にはココナッツフィッシュの形が複数あり、公式な指定も唯一の伝統的な形も確認できませんでした。この記事では、公開されている揚げ版として紹介しています。











