牛肉と玉ねぎを、黄金色の焼き生地に包んで
やわらかく甘くなるまで炒めた玉ねぎ、中まで完全に火を通した牛肉、そしてどの1個にも入るゆで卵ひと切れと黒オリーブ1粒。縁をしっかり閉じて、こんがり焼き色がつくまで焼きます。
9月、チリはフィエスタス・パトリアス(独立記念の祝祭期間)を迎えます。人々は、食事や催しをみんなで分け合う「フォンダ(fonda)」に集まります。この時期にとくによく食べられる料理のひとつが、エンパナーダ・デ・ピノです。焼きたてを手渡され、小麦の生地を割ると、牛肉と玉ねぎの香りがふわりと立ちのぼります。味つけはクミンと、チリの赤い調味料 ají de color(アヒ・デ・コロル)。Chile Travel は、祝祭の時期に消費が増えるものの、エンパナーダ・デ・ピノは一年を通して食べられていると伝えています。お祭りの料理であり、ふだんの料理でもあるのがこの一品です。
中の具は「ピノ(pino)」と呼ばれます。この記事でピノと言えば、牛肉と玉ねぎを中心に炒めた具のことです。言葉の由来は、今回使った資料では確認できていないので、語源の話は書きません。
レシピは Gourmet Chile が公開している12個分の版に沿っています。分量は原典の単位のままで、玉ねぎの大きさや塩・こしょうの量のように、原典が決めていない点も決めていないままにしています。このレシピは、この記事のために試作したものではありません。各工程に書いた見た目の目安を手がかりに、生地と焼き具合は目と手で判断してください。
チリの料理をほかにも知りたい方は、チリの国のページもご覧ください。
チリのエンパナーダを、チリのものにしている点
エンパナーダは多くの国で作られ、生地も具も調理法も土地ごとに変わります。この記事のエンパナーダ・デ・ピノは、チリの特定のタイプです。小麦の生地で、牛肉と玉ねぎのピノ、ゆで卵、黒オリーブを包んでオーブンで焼く(empanada de horno)もので、レーズンは入れても入れなくてもかまいません。
そのため、アルゼンチン風の一般的なエンパナーダとは別ものですし、チリで揚げて作るチーズ入りのエンパナーダとも別の料理です。チリ国内でも、公開されているレシピは生地に使う油脂、スパイスの量、レーズンの数、焼き方がそれぞれ違います。この記事は一つのレシピで最後まで通しますが、これが国全体の唯一の正解というわけではありません。
味の組み立ては、次のいくつかの点に支えられています。
- 玉ねぎ:透き通って十分やわらかくなるまで炒めて、甘みを出します
- 牛肉:小さな角切りにして、完全に火を通します
- クミンとají de color:温かみのある香りと赤い色を足します
- 黒オリーブは塩気のアクセント、ゆで卵はやわらかくまろやかな口当たりを加えます
- 黄金色のレーズン(入れる場合):ところどころで小さな甘みがはじけます
途中で見つける、味の決め手
道具
- ピノを炒めるフライパン(スキレット)
- 生地をこねる大きめのボウル
- めん棒
- 縁を湿らせるための水を入れた小さなボウル
- 天板
- 刷毛
- つまようじ
- オーブン
選び方と代用
材料表の略号は、原典の表記のままです。cdta は小さじ(teaspoon)、cda は大さじ(tablespoon)、taza はカップ(cup)のことです。ただし原典はどの規格のカップかを書いていないので、水は書かれたとおりの量だけを示しています。玉ねぎの大きさや、塩・こしょうの量も原典に指定がありません。
植物性ショートニング(manteca vegetal)。 このレシピでは、溶かして温かい状態の植物性ショートニングを使います。ラードとは別のもので、バターも同じ扱いにはなりません。油脂を替えると生地の食感も風味も変わり、このレシピとは違う仕上がりになります。植物性ショートニングが手に入るなら、そのまま使ってください。原材料表示の確認もお忘れなく。
ají de color。 チリの赤い唐辛子系の調味料です。見つからないときはパプリカパウダーで代用できますが、色・辛み・香りは変わります。同じものではなく代用品として考えてください。
白ワイン。 お酒を避けたい場合は、ワインを水に替える方法もあります。ただしレシピの変更になり、生地の風味や食感が変わる可能性があります。
牛肉。 原典が挙げているのは、チリの部位である posta rosada か posta negra です。日本では、煮込みに向く赤身の牛肉が候補になりますが、同じ部位にはなりません。原典のとおり、小さな角切りにします。
小麦粉。 原典は harina(小麦粉)とだけあり、種類を示していません。小麦粉によって吸水が違うので、水の量があくまで目安なのもそのためです。
このレシピには小麦と卵が入ります。植物性ショートニングなど加工食品の原材料表示を確認してください。牛肉は、具に使う前に完全に火を通します。表面に塗る生の溶き卵は焼く前に塗るもので、塗ったあとの刷毛や溶き卵がほかの食品に触れないようにしてください。
うまくいかないときは
生地がべたつくときは、水を少しずつ加えたかを、具が漏れるときは縁を汚さず湿らせて折り込んだかを見直します。いずれも、材料の基本の分量は変えずに調整してください。
| 困ったこと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 生地がべたつく | 水を一度に入れた。小麦粉の吸水が思ったより少ない | ぬるま湯は少しずつ加え、やわらかくてべたつかなくなったところで止める。約¾ tazaは固定量ではなく目安 |
| 具を包むときに生地が扱いにくい | ピノがまだ熱かった | ピノを冷ましてから包む(実用的な助言で、原典のレシピにはない) |
| 縁が閉じない | 縁に具や汁気がついている | 水気のある具を縁につけない。縁を水で湿らせ、しっかり折り込む |
| 焼いている間に破裂した | 具が多すぎる、または縁の閉じ方が甘い | レシピどおり表面に穴をあける。次回は1個あたりの具の量と閉じ方を調整し、基本の分量は変えない |
| 上は黄金色なのに底が白っぽい | オーブンによる差 | 上だけでなく底も確認する。レシピは「40分、または焼き色がつくまで」 |
食卓では:お祭りの料理であり、ふだんの料理でもある

Chile Travel は、エンパナーダ・デ・ピノを、肉、玉ねぎ、卵、オリーブを詰めて焼いたパイとして紹介しています。レーズンは入れても入れなくてもよいとされています。フィエスタス・パトリアスには、人々が食事や祝いを分け合うフォンダでとくによく食べられますが、一年を通しても食べられます。9月のためにとっておく必要はありません。
レーズンの数は、資料によって違います。Gourmet Chile は12個に24粒、Típico Chileno は別の、より大きな分量のレシピで「好みで」48粒としています。どちらも全国共通の標準ではありません。後者は生地の油脂、スパイスの量、焼き方も違うため、この記事では二つを混ぜずに、Gourmet Chile のレシピ一本で通しています。
アレンジ
別の料理にならない範囲で、次のように変えられます。
- レーズンなし。 レーズンは任意です。具をすべてしょっぱい味にしたいなら、入れなくてかまいません。
- レーズンあり。 Gourmet Chile の版のように、1個につき黄金色のレーズンを2粒入れます。
- 辛みを足す。 ピノに入れる ají de color とは別に、食卓で辛みを足します。
- 牛肉の切り方。 少し粗く、または細かく切ると食感が変わります。分量は変えず、どの切り方でも具に使う前に一つひとつ中まで完全に火を通してください。
- 形。 四角く折る形や半月形にするなど、見た目が変わります。見た目の違いとして楽しむもので、どれかがその地域の唯一の形というわけではありません。
保存
このレシピに使った資料には、残ったものの保存方法、保存できる期間、温め直し方についての記載がありません。そのため、この記事では保存期間や温め直しの温度は示しません。
よくある質問
ピノとは何ですか?
この記事でのピノは、牛肉と玉ねぎを中心にした具のことです。ここではガーリックパウダー、ají de color、オレガノ、クミン、塩、こしょうで味つけします。言葉の由来は、今回使った資料では確認できていません。
レーズンは必ず入れますか?
いいえ。レーズンは任意で、好みで決めます。 Gourmet Chile のレシピでは、黄金色のレーズン24粒(1個につき2粒)を任意の材料としています。
ají de color が見つからないときは?
パプリカパウダーで代用できますが、色・辛み・香りは変わります。同じ材料ではなく、代用品として扱ってください。
何度で焼きますか?
このレシピは、予熱した180°Cのオーブンで40分、または焼き色がつくまで焼きます。ほかの公開レシピには別の焼き方もあり、たとえば Típico Chileno の版は中温のオーブンで約15分としていますが、それは別のレシピのものなので、ここには混ぜていません。
ピノはなぜ冷ましてから包むのですか?
生地が扱いやすくなるからです。これは実用的な助言で、原典のレシピが時間や温度を示している工程ではありません。
植物性ショートニングの代わりにラードやバターを使えますか?
植物性ショートニングとは別のものなので、生地の食感も風味も変わります。このレシピでは、手に入るなら植物性ショートニングを使ってください。













