鍋の油に砂糖をひとさじ落とすと、ぱちぱちと泡立ちながら琥珀色に変わっていきます。そこへ下味をつけた鶏肉を一気に入れると、じゅっという音とともに甘く香ばしい匂いが立ち、肉の表面が濃い茶色に染まります。トマトソースと野菜、水、そして米を加え、最後はふたをしてごく弱火で。炊き上がって米を器に移したあと、鍋底に残った黄金色のおこげをこそげ取る音が、ドミニカ共和国の昼の台所に響きます。鶏と米をひとつの鍋で炊き上げる家庭料理、ロクリオ・デ・ポジョ(locrio de pollo)です。日本の鍋とスーパーの材料で作れます。
スペインの黄色い米が、ドミニカの鍋料理になった

ロクリオは、肉や魚介を米と一緒に炊き込むドミニカ共和国の料理です。サントドミンゴを拠点にドミニカ料理の記録と普及に取り組むサボレス・ドミニカーノス財団は、その源流を、サフランやビハ(アナトー)で色をつけた黄色い米を好んだスペイン人にさかのぼると説明しています。同じ財団は、ロクリオを「ドミニカ共和国の国民食とみなされるべき料理」とまで書いています。
名前の由来ははっきりしていません。財団は「ロクロ(locro)」と「クリオージョ(criollo)」が合わさった言葉かもしれないとしつつ、南米のアンデスで食べられる煮込みのロクロとは、料理としてほとんど関係がないとも述べています。最も古い記録は18世紀のもので、19世紀のサントドミンゴでは鳩のロクリオが名物として知られていたそうです。
ロクリオは鶏肉だけの料理ではありません。サボレス・ドミニカーノス財団によると、これまでに確認されたドミニカのロクリオのレシピはおよそ20種類あり、鶏肉、豚肉、魚介など、さまざまな具で作られています。ソーセージで作る「ロクリオ・デ・ロンガニサ」も定番です。
鶏のロクリオの特徴は、最初に砂糖を焦がした油で肉を色づけることです。ドミニカ料理の発信で知られるクララ・ゴンサレス(通称ティア・クララ)は、砂糖をどこまで濃く焦がすかで肉の色が決まり、それは好みの問題だとしたうえで、ドミニカ人に白っぽい鶏肉を出してはいけないと書いています。この一手間が、甘く香ばしい香りと、食欲をそそる濃い色をつくります。
鍋底の宝物「コンコン」

ドミニカ共和国で米を炊くと、鍋底に黄金色のぱりっとしたおこげができます。これが「コンコン(concón)」です。クララ・ゴンサレスは、コンコンを料理そのものではなく、ドミニカ式の炊き方から生まれる副産物だと説明し、その味をバター風味のポップコーンにたとえています。名前は鍋底をこそげるときの音から来ているといわれ、プエルトリコでは「鍋にくっついた」という意味の「ペガオ(pegao)」と呼びます。
コンコンは限られた量しかとれない、ちょっとしたごちそうです。ロクリオもコンコンができる米料理のひとつで、昼どきに鍋底をこそげる音は、ドミニカ共和国ではおなじみの「大合唱」だと、ゴンサレスは書いています。日本のおこげと同じく、焦がさず黄金色に仕上げるのがこつです。
コンコンをうまく作るには、鋳鉄や鋳造アルミの厚い鍋が向いています。ドミニカをはじめカリブの台所では「カルデロ(caldero)」と呼ばれる鍋が米炊きの定番ですが、コンコンはどんな鍋でも作れるとされています。日本なら、厚手の鍋や土鍋が向いています。
途中で見つける、味の決め手
焦がさず、べたつかせないコツ

ロクリオでいちばん難しいのは、米を入れてから水分を飛ばすまでの見極めです。汁気が多いままふたをすると米がべちゃっとし、飛ばしすぎると鍋底が焦げてコンコンが黒くなります。表面の汁気がちょうど消えた瞬間にふたをするのが合図です。
鍋は、米が鍋の3/4を超えない大きさのものを選んでください。クララ・ゴンサレスも、詰めすぎない鍋で炊くことを勧めています。鍋に余裕があると、熱が均一に回り、底のコンコンも均一に色づきます。
ごく弱火で炊いている間に焦げた匂いがしてきたら、火をさらに弱めます。ガス火が強い場合は、焼き網やフレームプレートを鍋の下に挟むと、火が直接当たらず焦げにくくなります。
炊き上がったらすぐに器へ移すのが、コンコンをぱりっと保つ一番のこつです。鍋のまま蒸らし続けると、底の米が湯気を吸って柔らかくなってしまいます。
ソーセージで、えびで — アレンジのしかた

ドミニカ共和国のロクリオは、具を替えていくつもの版があります。鶏肉の代わりに、輪切りにしたスモークソーセージを炒めてから同じ手順で炊けば、ロンガニサ(ドミニカのソーセージ)のロクリオに近い味になります。ソーセージは塩気が強いので、塩は少なめから調えてください。
魚介で作るなら、殻をむいたえびを使い、米を加える直前に鍋へ入れると、えびが固くなりすぎません。具を替えても、砂糖で色をつける手順は同じです。かぼちゃを省いてにんじんにすると、甘みが控えめのすっきりした仕上がりになります。
食べ方

器に盛ったロクリオには、薄切りのアボカドや野菜のサラダを添えると、さっぱりとバランスがとれます。鍋底からこそげたコンコンは、別の小皿にのせて、みんなで分け合ってください。ぱりぱりの食感と香ばしさは、ロクリオの一番の楽しみです。
ドミニカ共和国の料理をもっと知りたいなら、青いプランテンをつぶして朝ごはんに食べるマングもおすすめです。カリブの炊き込みごはんなら、プエルトリコの木豆の炊き込みごはんアロス・コン・ガンドゥレスと食べ比べると、島ごとの違いがよく分かります。
よくある質問

炊飯器で作れますか?
鶏肉を色づけて煮るところまでを鍋で行い、米と一緒に炊飯器の内釜へ移して炊くこともできます。ただし、コンコンはほとんどできません。おこげを楽しみたいなら、鍋で炊いてください。
骨なしの鶏肉でも作れますか?
骨なしの鶏もも肉でも作れます。骨付きのほうがうまみが出ますが、骨なしなら食べやすく、子どもにも出しやすくなります。大きめの一口大に切ってください。
砂糖を焦がさずに作れますか?
砂糖を省いても作れますが、ドミニカらしい濃い色と香ばしさは出ません。焦がすのが不安なら、砂糖が溶けて薄い茶色になった段階で鶏肉を入れても、十分に色がつきます。
作り置きできますか?
冷めたら密閉容器に入れて冷蔵し、電子レンジで中心まで熱くなるよう温め直します。保存日数のはっきりした目安は示せないので、早めに食べきってください。コンコンは時間がたつと湿気るので、その日のうちに食べるのがおすすめです。













