朝のグアヤキル。屋台の鉄板の上で、テニスボールほどの大きさの団子がじゅうじゅうと音を立てています。表面はこんがりときつね色、割ると中から湯気と一緒にとろけたチーズがのぞく。カップに注いだ熱いコーヒーを片手にかじりつけば、外はかりっと、中はもっちり。エクアドルの海岸地方で朝ごはんの定番になっている、青いプランテンの団子ボロン・デ・ベルデ(bolón de verde)です。「ベルデ(verde)」は緑のこと。熟す前の青いプランテン(料理用バナナ)を使います。
コーヒーと一緒に食べる、海岸地方の朝ごはん

ボロン・デ・ベルデは、エクアドルの太平洋側の海岸地方で生まれた料理です。グアヤキルの新聞エル・ウニベルソは、正確な起源を示す記録はないとしたうえで、複数の歴史家が、海岸地方のモントゥビオの人々の伝統料理だという点で意見をそろえていると伝えています。モントゥビオは、エクアドル海岸地方の農村に暮らしてきた人々のことです。
同じ記事によると、ボロンはマナビ県からグアヤス県の北部へ、そしてグアヤキルへと広がりました。かつては、裕福な家がパンとチーズでコーヒーを飲む一方、庶民はプランテンの料理で朝を迎えたといいます。歴史家ロドルフォ・ペレス・ピメンテルは、エクアドルに小麦が入ってくる1852年より前、海岸地方の人々はパタコンやユカのパン、ボロンでコーヒーを飲んでいたと述べています。
プランテンは、もともと南米の植物ではありません。エル・ウニベルソによると、1516年にフライ・トマス・デ・ベルランガが南米へ持ち込んだとされ、ボロンはそれから何世紀もあとに生まれたと考えられています。キューバの民族学者フェルナンド・オルティスは、ゆでたプランテンをつぶして豚の皮揚げと合わせるキューバの「フフ・デ・プラタノ」と同じく、アフリカに祖先をもつ料理だとしています。
チーズか、豚の皮揚げか、両方か

ボロンの中身は、大きく分けて三つです。チーズを練り込んだ「ボロン・デ・ケソ」、豚の皮揚げチチャロンを混ぜた「ボロン・デ・チチャロン」、そして両方を入れたミクスト(mixto)。エクアドルの誌面ビスタソは、ボロンを海岸地方の伝統料理として紹介し、チチャロン、チーズ、ミックスといった種類があると書いています。
いまのボロンは、グアヤキルの屋台や売店、食堂のどこででも売られています。焼いたり揚げたりした熱々のボロンに、目玉焼きや牛肉のステーキを添えて、ボリュームのある朝ごはんにすることも少なくありません。2025年には、スペインの配信者イバイ・ジャノスが主催した朝ごはんの人気投票「朝食ワールドカップ」に、エクアドル代表として選ばれました。エクアドル観光省がSNSで投票を呼びかけるほど、国を挙げて推す朝ごはんです。
エクアドル観光省は、この投票に合わせて「ドン・ボロン」というキャラクターを国の食の大使として登場させました。ボロンは、同じ海岸地方の魚のスープ、エンセボジャードと組んで勝ち進んだそうです。
日本の台所で作るときの一番の壁は、青いプランテンです。スーパーではまず見かけませんが、輸入食材店や通販で手に入ります。生食用のバナナは柔らかく甘いので、代わりにはなりません。チーズは、現地の塩気のある白いフレッシュチーズ「ケソ・クリオージョ」の代わりに、日本で買いやすいチーズを組み合わせます。
途中で見つける、味の決め手
割れずに、外はかりっと焼くコツ

ボロンづくりでいちばん多い失敗は、焼いている途中で割れることです。原因の多くは、プランテンが冷めてからつぶしたことにあります。冷めたプランテンはでんぷんが固まり、粘りが出ません。熱いうちにつぶして練ることが、割れない生地の土台です。
丸めるときは、ただ転がすのではなく、両手で押し固めて中の空気を抜くようにしてください。空気が残っていると、焼いている間に膨らんでひびが入ります。
焼き方は、揚げてもかまいません。グアヤキルでは揚げて作るのが一般的ですが、高地の都市クエンカには、健康を気にする客のために揚げずに作る店もあります。家庭では、少なめのラードで転がしながら焼くほうが手軽です。
多めに作ったら、焼く前の丸めた状態でラップに包み、冷蔵庫に入れておけます。焼くときは常温に少し戻してから、同じように中火で転がしながら焼いてください。
豚バラで、目玉焼きをのせて — アレンジのしかた

チチャロン入りのボロンにするなら、日本では豚バラ肉で代用します。豚バラ肉225gを1cm角に切り、フライパンで脂が出てカリカリになるまで焼いてから、チーズの代わりに生地へ練り込んでください。チーズと豚バラを半量ずつにすれば、ミクストになります。豚バラから出た脂を、生地に練り込むラードの代わりに使うと、香ばしさが増します。
朝ごはんらしく仕上げるなら、焼きたてのボロンに目玉焼きをのせ、牛肉の薄切りステーキを添えましょう。クエンカで長年ボロンを作ってきた人も、客に人気なのはミクストに目玉焼きと肉を添えた一皿だとエル・メルクリオに語っています。
よくある質問

普通のバナナで作れますか?
作れません。生食用のバナナは柔らかく甘いため、つぶすとペースト状になり、丸めても形を保てません。ボロンには、でんぷんが多くて甘みの少ない青いプランテンが必要です。
チーズは何を使えばいいですか?
現地のケソ・クリオージョは、塩気のある白いフレッシュチーズです。日本では、溶けて伸びるモッツァレラと、塩気とうまみのある粉チーズを合わせると使いやすくなります。
揚げてもいいですか?
揚げても作れます。170℃の油で4〜5分、きつね色になるまで揚げてください。揚げるときは、表面のひびをしっかり整えておかないと、油の中で割れやすくなります。
作り置きできますか?
焼いたボロンは、冷めると固くなります。食べる直前に焼くのがいちばんです。冷蔵した場合は、トースターやフライパンで中まで温め直してください。保存日数のはっきりした目安は示せないので、早めに食べきってください。














