チルン(Cilung)|卵ひとさじ、生地ひとおたま、そして串
卵とタピオカ生地は、鍋の中で出会うまで別々にしておきます。溶き卵をひとさじ先に入れ、その上に乳白色の薄い生地をおたま1杯分傾けて流し、生地が固まって縁が乾いたら、竹串で巻き取ります。
油を塗ったノンスティックパンに、溶き卵が少しだけ広がります。その上に淡い色のタピオカ生地を流し、鍋を傾けると、生地が卵の上へ薄く伸びていきます。生地が固まって縁が乾いて見えたら、竹のサテ串を片端に当てて、くるりと巻き取り、鍋から持ち上げます。でんぷんの生地と卵でできたこの軽食が、チルン(Cilung)です。
西ジャワの市場菓子の語彙を調べた研究は、チルンを短い言葉で説明しています。でんぷんを調理して小さな竹串に巻いたもの、という説明で、チロル(Cilor)、チロック(Cilok)、チレン(Cireng)といった近い名前も別の項目として並んでいます。この記事は、チルンのあらゆる作り方を網羅しようとはしません。Cookpad Indonesiaに載っているWawa Wiatiさんの「Cilung (aci digulung)」という家庭のレシピ1つをたどり、その投稿に書かれていることだけで組み立てます。
チルンは、でんぷん生地と卵を巻いたもの
投稿のタイトル Cilung (aci digulung) が、すでに料理の姿を言い表しています。digulung は「巻かれた」という意味で、aci は生地のもとになるでんぷんです。Wawa Wiatiさんの版では、生地は粉と水に塩を加えただけのものです。卵は生地に混ぜません。卵は別に溶いておき、鍋にまず卵を入れます。だから巻き上がったチルンは、淡いタピオカの層に黄色い卵の細い筋が通った姿になります。
この層の重なりが、クレープやオムレツとの違いです。生地は小麦粉の生地ではなく、卵だけを厚く焼いたものでもありません。少量の卵の上にのったでんぷんの薄い生地を、油を塗った鍋で焼き(揚げるのではありません)、まだしなやかなうちに巻くのが、このレシピの特徴です。
ひとつの家庭レシピ|Wawa Wiatiさんの版
Wawa WiatiさんのCookpadプロフィールには、Garut, Jawa Barat(西ジャワ州ガルット)と書かれています。投稿の中で、以前食べた軽食を思い出し、子どものおやつとして作ったと説明しています。つまり、名前のある家庭料理人の投稿であって、プロの料理人のレシピでも、考案者の主張でも、公式の標準でもありません。ほかの人は違う配合でチルンを作りますし、これはそのなかのひとつの家庭版です。
投稿は、はっきり決めている分量と、決めていない分量があります。粉、水、卵1個は計量されています。塩は、生地では「適量」、卵では「少量」です。油は鍋に塗るためだけで、仕上げの唐辛子粉も計量されていません。鍋の大きさ、火力、加熱時間、おたまの容量、巻いた本数、何人分かも、投稿には書かれていません。この記事も、それらを補いません。
作り方はWawa Wiatiさんの投稿のとおりで、この記事のための試作は行っていません。投稿に分量・時間・火力の記載がない箇所は、この記事でも示しません。
道具
- ノンスティックのフライパン(投稿では teflon pan)
- 竹のサテ串(tusuk sate)。本数は書かれていません
- おたま(sendok sayur)。容量は書かれていません
- 溶き卵を量る大さじ(sdm)
- 生地用と卵用の器2つ
- 生地を混ぜるスプーンと、卵を溶くための道具
選び方と代用
でんぷんの粉。 元の材料欄は tepung kanji/sagu/tapioka で、3種類のでんぷんを100 gの候補として並べています。この版ではタピオカ粉を使います。日本では「タピオカ粉」や「タピオカでんぷん」という名前で売られているものです。ほかの粉がどう違うかは投稿に説明がなく、ポテトスターチ、コーンスターチ、小麦粉にも触れていないので、この記事も入れ替えについては何も言えません。
この版で省くもの。 投稿には、このレシピに含めない任意の追加が載っています。
- 生地に加える調味粉末(penyedap rasa)。「お好みで」とあり、この版では省きます。
- 乾煎りしたパン粉、揚げエシャロット、Bon Cabe、atom の調味料を混ぜた衣。この版では付けません。
- バラド味やチーズ味などの風味粉、添えるソースやマヨネーズ。どれも使いません。
投稿には、混ぜた衣を付けず、唐辛子粉を振るだけで出す方法も書かれています。以下の作り方は、その仕上げにしています。
鍋の中で見るところ
投稿に失敗対策の項目はありません。書かれているのは、決まった単位と見た目の目安だけで、迷ったときの頼りになるのはそこです。
| 迷いやすい点 | レシピに書かれていること |
|---|---|
| 巻くタイミング | 生地が焼けて固まり、縁が乾いてから。時間の記載はないので、2つの目安を見る |
| 鍋1回に入れる卵の量 | 溶き卵1 sdm。卵1個ではない |
| 鍋1回に入れる生地の量 | おたま1杯。おたまの容量は書かれていない |
| 卵を生地に混ぜるか | 混ぜない。卵は別に溶いて、先に鍋に入れる |
| 卵に水を入れるか | 入れない。水250 mlは全量を生地に使う |
| 塩、油、唐辛子粉の量 | 計量されていない。塩は「適量」と「少量」、油は鍋に塗るだけ |
変えられる点と、ほかのレシピとの違い
投稿には、任意の枝分かれがいくつか載っています。この版はそれらを使わず、味や食感がどう変わるかも投稿には書かれていません。
| 投稿にある枝分かれ | この版では |
|---|---|
| 生地に調味粉末を加える(お好みで) | 省く。分量の記載なし |
| 乾煎りパン粉、揚げエシャロット、Bon Cabe、atom の調味料を混ぜた衣 | 使わない。分量の記載なし |
| バラド味やチーズ味などの風味粉 | 使わない。分量の記載なし |
| ソースやマヨネーズ | 使わない |
| 混ぜた衣を付けず、唐辛子粉だけ | この版で採用 |
ほかのレシピでは、作り方が違います。ResepKokiの Papeda Gulung (Cilung) は、タピオカ粉100 gに水200 ml、卵2個を水で溶いたもの、青ねぎ、計量した塩、だしの素、こしょうを使い、仕上がりは串12本としています。卵に水を加える点も、Wawa Wiatiさんの版と違います。2つは別のレシピなので、分量を混ぜないでください。12本という数字はResepKokiのレシピのもので、この版で何本巻けるかとは関係がありません。
西ジャワの軽食の言葉の中のチルン
チルンは、西ジャワの市場菓子(jajanan pasar)を扱った2022年のエトノセマンティクス(民族意味論)研究に登場します。著者は話し言葉と書き言葉の資料を使い、現地語の話者に意味の確認を求めながら、菓子の名前を記述し分類しています。この研究のチルンの短い説明は、熱い油で調理したでんぷんを小さな竹串に巻いたもの、という内容で、チロル、チロック、チレンはそれぞれ別の項目です。ただし研究の対象は語彙であってレシピではなく、短い説明の書き方は、Wawa Wiatiさんの投稿にある油を塗った鍋で卵を先に入れる作り方とは違っています。この研究が示すのは、チルンが西ジャワの軽食名のなかに位置づけられているということまでで、標準のレシピも、いつどこで生まれたかも定めてはいません。
名前が重なる別の料理もあります。ResepKokiのレシピはチルンを Papeda Gulung と呼んでいますが、パペダ(papeda)は東インドネシアで魚のスープと食べるサゴ粥で、別の料理です。同じ言葉が入っていても、同じ食べ物にはなりません。インドネシアのほかの料理は、インドネシア料理もご覧ください。
よくある質問
卵は生地に混ぜますか?
混ぜません。Wawa Wiatiさんの版では、卵は少量の塩と一緒に別に溶き、鍋にはそのうち1 sdmを先に入れて、その上に生地をおたま1杯流します。
1本ごとに卵を1個使いますか?
使いません。鍋1回に使うのは溶き卵1 sdmと生地おたま1杯で、卵1個は全体の分です。何本巻けるのか、1本あたり卵がどれくらいになるのかは、投稿に書かれていません。
塩、油、唐辛子粉はどれくらい使いますか?
投稿には書かれていません。塩は生地が「適量」、卵が「少量」で、油は鍋に塗るだけ、唐辛子粉は好みの量です。
何本、何人分できますか?
投稿には本数も串の数も人数も書かれていません。ResepKokiのレシピにある12本は別の配合のもので、ここには当てはまりません。
別のでんぷんを使えますか?
投稿は kanji、sagu、tapioka の粉を100 gの候補として挙げていて、この版ではタピオカ粉を使っています。それぞれの違いや、ほかのでんぷんについては投稿に書かれていません。
チルンとパペダは同じですか?
違います。チルンを Papeda Gulung と題したレシピはありますが、東インドネシアの魚のスープと食べるサゴ粥のパペダは、別の料理です。














