カオパット・アメリカン — オレンジ色のごはんと、3つの揚げ焼きの添え物
ハム、レーズン、グリーンピースを散らしたケチャップ色の炒飯に、中まで火を通した目玉焼き、ソーセージ、揚げた鶏のドラムスティックを添えます。添え物はそれぞれ別に火を通し、ごはんは最後に炒めます。
皿の上のごはんは、ケチャップでオレンジがかった赤色。角切りのハムと緑のグリーンピース、レーズンが混じっています。その横に、目玉焼きと、両端に切れ目を入れたソーセージ、揚げた鶏肉。これがカオパット・アメリカン(ข้าวผัดอเมริกัน)、直訳すれば「アメリカン炒飯」です。名前に反して、れっきとしたタイの料理です。
「アメリカン」が指しているのは皿の組み立て方です。ケチャップ味のごはんに、タイでは「アメリカ風」と受け止められた添え物を合わせます。卵とソーセージの朝食プレートに近い発想です。アメリカ合衆国の定番料理ではありません。バンコクでは揚げ鶏ではなくローストチキンを添える店もあり、卵や肉の種類、レーズンを入れるかどうかも作り手によって違います。この記事では、冷やしたごはんから皿に型抜きして盛るところまで、ひとつの家庭の作り方を順にたどります。同じ国の料理はタイのページにまとめています。
このレシピについて — ある家庭の配合
ここで使うレシピは、タイ外務省が発行する刊行誌『Saranrom』41号に載っているものです。記事に名前の出ている筆者、พิษณุ โสภณ(ピスヌ・ソーポン)の個人的な家庭のレシピで、外務省が定めた料理の基準や公式の配合ではありません。世界ごはん紀行では、このレシピを台所で試作していません。
調理の前に知っておきたい点を挙げます。
- 人数の記載がありません。 何人分か、どれだけできるかはレシピに書かれていません。下の分量は、一皿に盛り合わせた形として示すもので、収量を示すものではありません。
- ごはんは「1 ถ้วย」と書かれています。 容器の種類も容量もレシピに定義がないため、米国のカップや日本のカップ、グラムには換算せず、書かれたまま残しています。
- 鶏肉には2つの選択肢があります。 ドラムスティック1本、または手羽元4個(ドラムエット)です。この記事ではドラムスティック1本だけを使い、両方を混ぜません。
- にんじんの投入時点が書かれていません。 角切りのにんじん大さじ1が材料に挙がっていますが、入れる場面の指示はありません。ここでは玉ねぎと一緒に炒め、加熱時間は増やしません。
- 塩と黒こしょうは合計量です。 塩は小さじ1/2、こしょうは小さじ1/2。ここでは塩の全量を鶏の下味に一度だけ使います。こしょうは下味と、ごはんの最後の味つけに分けます。正確な配分は示されておらず、どちらの合計量も二重には使いません。
- 書かれていないことがあります。 バターと油の量、揚げ時間、鶏肉の衣については記載がなく、この記事でも足していません。
安全面では、鶏肉を「火が通るまで」揚げるという指示に、FoodSafety.govの案内を組み合わせます。家禽肉はすべて、食品用温度計で測って165°F(74°C)に達していることが目安です。卵も、FoodSafety.govに従い、白身と黄身の両方が固まるまで加熱します。
途中で見つける、味の決め手
道具
- 卵、ソーセージ、鶏を調理するフライパン
- ごはんを炒めるための、別の清潔なフライパンまたは中華鍋
- 食品用温度計(瞬時に測れるタイプ)
- 鶏肉に下味をつけるふた付きの容器
- 生の鶏肉専用のまな板、包丁、調理道具
- 火を通した添え物をのせる清潔な皿
- ごはんを型抜きする小さなボウル
- しゃもじまたはへら
選び方と代用
ごはん。 すでに炊いて冷やしてあるごはんを使います。冷やしておくと、粒がほぐれやすくなります。生米からは作りません。炊いたごはんは、室温に長く置かず冷蔵庫で保管してください。
2種類のしょうゆ。 鶏の下味には薄口のしょうゆ(light soy sauce)、ごはんにはしょうゆ(soy sauce)を、別々の材料として使います。できれば分けて用意してください。手持ちの1本で両方をまかなうと味が変わるため、自分なりの調整として考えましょう。日本の薄口しょうゆ・濃口しょうゆは、この2つの表記とそのまま一対一で対応するわけではありません。
ケチャップ。 ケチャップはごはんの主な味つけです。味が好きなものを選んでください。
バター。 香味野菜には無塩バターを使います。塩はすべて鶏の下味に入っているので、有塩バターにするとごはんがその分しょっぱくなります。
この料理には、通常、卵、大豆(しょうゆ)、乳(バター)が含まれます。しょうゆ、ハム、ソーセージには、製品によって小麦などのアレルゲンが入っていることもあるため、購入した品の表示を確認してください。生の鶏肉と、それに触れたものは、加熱済みの食べ物や、このあと加熱しない食べ物から離しておきます。
うまくいかないとき
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 鍋の中でごはんがかたまる | ごはんを冷やしていない、または炒める前にほぐしていない | 次回は炊いたごはんを冷やし、炒める前にほぐします。今回は、混ぜながらへらでかたまりを押しほぐします |
| ごはんに白とオレンジのむらがある | ごはんを入れてからの混ぜ方が足りない | すべての粒にまんべんなく色がつくまで、混ぜ続けます |
| 鶏の温度が165°F(74°C)に届かない | 揚げ時間が足りない。中心が厚い | 油に戻して揚げ続け、清潔な皿の上でまた測ります。決まった時間ではなく、必要なだけ揚げます |
| 卵の黄身がまだやわらかい | 火から早く下ろしすぎた | 白身に加えて黄身も固まるまで、弱火に置きます |
| ごはんが塩辛い | しょうゆ、ハム、ソーセージがどれも塩気を持っている | ごはんには塩を足しません。次回は、ハムとソーセージの塩気を確かめておきます |
出会うバリエーション
この皿は、作り手によって姿が変わります。作家・写真家のオースティン・ブッシュ(Austin Bush)が紹介するバンコクのレストランでは、レーズン入りのケチャップ炒飯に、目玉焼きとローストチキンを添えて出しています。Thai Nippon Foodsのレシピページでは、スクランブルエッグと市販の揚げ鶏を使い、レーズンは入れても入れなくてもよいとしています。ThaiFoodCookbook.netの英語のレシピも、炊いたごはん、玉ねぎ、トマトソース、レーズン、ソーセージ、卵、バターと似た顔ぶれで、卵とソーセージをごはんより先に火を通しています。
この記事のもとにした家庭のレシピには、ドラムスティックの代わりに、手羽元4個を使う案もあります。ほかの炒飯との違いが気になるなら、中国の家庭風炒飯と比べてみてください。鶏とごはんを組み合わせた別のタイの一皿としては、カオマンガイもあります。
名前の由来 — 2つの説、決着はついていない
カオパット・アメリカンがどうやって生まれたのかは、はっきりしていません。タイの科学技術知識センター(Science and Technology Knowledge Centre)のページは、2つの仮説を並べて紹介しています。ひとつは、東北部イサーン出身の料理人がアメリカ軍の兵士のために作ったという説で、ふつうはベトナム戦争の時代に結びつけられます。もうひとつは、ラーチャターニー(Ratchathani)というレストランのスリーパン・マニーワット(Sureepan Maneewat)が、フライトが欠航になったあと、朝食用の食材で考え出したという説です。この話の別の版では、舞台はドンムアン空港の食堂とされています。
『Saranrom』の記事も複数の由来に触れ、筆者はどれにも歴史的にはっきりした証拠がないと書いています。いずれにしても、名前の「アメリカン」が指すのは、ごはんを取り巻く卵、ソーセージ、揚げ鶏です。料理がアメリカから来たという意味ではありません。
よくある質問
カオパット・アメリカンはアメリカの料理ですか?
いいえ、タイの料理です。『Saranrom』の記事も科学技術知識センターも、タイの料理として説明しています。名前は、ケチャップ味のごはんに添えるアメリカ風の添え物を指しています。
空港の食堂が始まりですか?
そう伝える説のひとつですが、証明はされていません。もうひとつの説は、アメリカ軍の兵士に出す料理人が作ったとするものです。どちらも一次的な歴史資料で確かめられておらず、『Saranrom』の筆者も明確な証拠はないと書いています。
レーズンは欠かせませんか?
ここで使っている家庭のレシピには大さじ1が入っています。入れる店やレシピもあれば、入れなくてよいとするものもあるので、省いても姿の変わった、けれど十分にそれとわかる一皿になります。
鶏は何分揚げればよいですか?
レシピに揚げ時間はなく、「中火で火が通るまで」とあるだけです。決まった時間の代わりに、揚げたあとのドラムスティックを清潔な皿に移し、いちばん厚い部分が165°F(74°C)に達していることを食品用温度計で確かめてください。家禽肉についてのFoodSafety.govの案内に従っています。
2種類のしょうゆは何ですか?
レシピは、鶏用に薄口のしょうゆ(ซีอิ๊วขาว)、ごはん用にしょうゆ(ซอสถั่วเหลือง)を、別々の材料として小さじ1ずつ挙げています。この記事は2つの表記をそのまま保ち、日本のしょうゆなど特定の品に対応づけてはいません。
何人分ですか?
レシピには書かれていません。ここでは、挙げた分量を一皿に盛り合わせた形にしています。これは盛り付け方の選択であり、収量を示すものではありません。
日本の厚生労働省は、鶏肉の温度について別の数字を示しています。どちらを使えばよいですか?
厚生労働省は、中心部を75°C以上で1分以上加熱するという独自の案内を出しています。これは別の基準です。このレシピでは、FoodSafety.govの165°F(74°C)の確認を使っているので、2つを混ぜて1つの決まりにしないでください。厚生労働省は、生の肉をほかの食品や器具と分けておくようにも勧めており、この料理にも当てはまります。















