紅糟鶏 — 揚げ生姜と、赤い米酒で煮る鶏肉
紅糟の発酵した香りと深い赤色、薄切り生姜を油で揚げた香ばしさ、もち米酒の香り、そして小さく切った鶏もも肉にからむ控えめな煮汁です。
薄切りの生姜6枚が中華鍋の中でカリッと揚がり、取り出されて小皿で待ちます。同じ油には、紅糟で赤く染まった小さめの鶏もも肉が入り、まもなくもち米の赤酒が注がれて蓋が閉まります。紅糟鶏(紅糟鶏 / 红糟鸡 / 紅糟雞)のリズムはこれだけです。赤い米の発酵から生まれる酒粕と酒を土台にした、短時間で仕上げる温かい煮込みです。
このページで紹介するのは、シンガポールの家庭料理家wiffyがレシピブログNoob Cookで公開している、鶏もも肉500gの煮込みです。wiffyはこれを、現地の福州系(Foo Chow、Hock Chew)の華人コミュニティで知られる素朴な家庭料理と紹介し、母親を通して好きになったと書いています。つまりディアスポラの一家庭の版であって、福建の公式な標準でも、この料理の発祥を示す証拠でもありません。
そのレシピに、家庭での安全のために2点を加えました。生の鶏肉は冷蔵庫でマリネすること、そして火が通ったかどうかは時間ではなく温度計で確かめることです。なお、このレシピは世界ごはん紀行では試作していません。
よく使われる表記は红糟鸡(簡体字)と紅糟雞(繁体字)で、ローマ字では Hong Zao Ji です。Noob Cookでは红槽鸡とも書かれていますが、これは表記の揺れです。英語名の「red wine chicken」が指すのは、ぶどうから作るワインではなく、赤いもち米酒です。
ぶどうのワイン煮ではありません — 紅糟とは何か
紅糟(hong zao)は、蒸したもち米を紅麹で発酵させて酒を造ったあとに残る、赤くペースト状の酒粕です。食文化の書き手である焦桐(Jiao Tong)が、2011年にMerit Timesへ寄せた随筆でこう説明しています。店やラベルでは、赤いもち米酒の酒粕(red glutinous rice wine lees)、紅糟、紅槽、ang chow などと書かれていることがあります。同じ種類の発酵から造られる酒、つまりもち米の赤酒(红槽酒)が、この料理の煮汁になります。
どちらも、ぶどうの赤ワインとは別のものです。紅麹米の粒や粉、サプリメントとも別のものです。それらは違う製品なので、このレシピでは代用品として使いません。レシピページのコメント欄でも、wiffyはぶどうの赤ワインでは味が近くならないと答えています。
鶏もも肉500g分の材料

| --- | --- | --- | | 鶏もも肉 | 500g | 主材料。小さめに切る | | 紅糟(红糟 / ang chow。赤いもち米酒の酒粕) | 山盛り大さじ1 | マリネ用。赤い色と発酵の香りのもと | | ごま油 | 小さじ1 | マリネ用 | | 生姜汁 | 大さじ1/2 | マリネ用。生姜をすりおろして搾り、その汁を量る | | ごま油 | 大さじ1 | 生姜、続いて鶏肉を炒める油 | | オリーブ油または植物油 | 大さじ1 | 炒め用。ごま油と合わせて使う | | 生姜(薄切り) | 6枚 | カリッと揚げて取り分け、上にのせる | | もち米の赤酒(红槽酒) | 200ml | 煮汁 | | 生姜(薄切り) | 4枚 | 鶏肉と一緒に煮る | | 中国の淡色しょうゆ(生抽) | 大さじ3/4 | 煮込みの味付け | | 熱湯 | 100ml | 2回目の煮込みで加える | | 淡色しょうゆまたは塩 | 適量 | 煮汁の味を見てから最後に調える |
紅糟の塩気は製品によって違うので、しょうゆや塩を足すのは煮汁を味見してからにします。しょうゆは大豆を含み、ごま油は2か所で使います。紅糟や赤酒には、それぞれの原材料とアレルゲン表示があるので、ラベルで確認してください。
道具
- ふた付きの中華鍋
- マリネ用の、ぴったり閉まるふた付きガラスボウル
- 生姜汁用のおろし器
- 揚げた生姜を取り出す箸
- ヘラとトング
- 味見用の小さなスプーン
- 差し込み式の食品用温度計
- 小皿と盛り付け用の皿
選び方と代用
下に挙げる代用は、酒か油を替えるものだけです。この料理の色と発酵の個性をになう紅糟は、どれでも替えられません。
紅糟
「紅糟」「紅槽」「red glutinous rice wine lees」「ang chow」と表示された食品を探し、パッケージの保存方法に従います。紅麹米の粒や粉、サプリメントでは代用できません。使うのは、食品として作られた市販の紅糟です。
もち米の赤酒
見つからないときは、普通の中国の米酒か水で代えます。どちらも香りと色が変わります。ぶどうの赤ワインは代用になりません。
淡色しょうゆ
中国の淡色しょうゆ(生抽)を使います。日本の薄口しょうゆは別の製品なので、同じ量でそのまま置き換えられるとは考えないでください。
炒め油
ごまの香りを弱めたいときは、炒め用のごま油大さじ1を普通の食用油に替えます。マリネに入れる小さじ1のごま油は、そのままにします。
温度計
鶏肉が煮えたかどうかを教えてくれるのは、差し込み式の食品用温度計です。この煮込みの煮る時間は目安であり、安全に食べられるかを判断する基準ではありません。
作り方
生の鶏肉とその汁は、ほかの食品に触れないようにし、触れたボウル・まな板・道具は洗います。鶏肉に火が通ったとみなせるのは、いちばん厚い部分が75°Cに達し、そのまま1分以上保たれたときだけです。温度計で測ってください。色、表面の焼き色、煮た時間だけで判断してはいけません。
清潔なガラスボウルに鶏肉を入れ、紅糟山盛り大さじ1、ごま油小さじ1、生姜汁大さじ1/2を加えます。手で、どの肉も赤くなるまで混ぜます。

ボウルにぴったり合うふたをします。

ふたをしたボウルを、そのまま食べられる食品から離して冷蔵庫に入れ、30分マリネします。生の鶏肉が触れた手と道具は洗ってください。

- 生姜を揚げて取り分ける
中華鍋にごま油大さじ1とオリーブ油(または植物油)大さじ1を熱します。薄切りの生姜6枚を入れ、カリッとして薄く色づくまで揚げます。

生姜を箸で小皿に取り出し、油は鍋に残します。

- マリネした鶏肉を炒める
鍋に残った油にマリネした鶏肉を入れ、どの肉も表面に火が通るまで炒めます。そのまま煮込みへ進み、最後に温度計で中心を確かめます。

- 赤酒・生姜・しょうゆを加え、蓋をして煮る
もち米の赤酒200mlを注ぎ、煮込み用の生姜4枚と淡色しょうゆ大さじ3/4を加えます。

鍋に蓋をして、約5分煮ます。

- 鶏肉を返し、熱湯を加え、火が通るまで煮てから味を調える
蓋を開け、トングで鶏肉を返して、裏側も煮汁に浸します。

熱湯100mlを注ぎます。

もう一度蓋をして、さらに約5分、または鶏肉の中まで火が通るまで煮ます。

いちばん厚い鶏肉に温度計を差し込みます。中心が75°Cに達し、そのまま1分以上保たれていれば煮上がりです。届いていなければ蓋をして煮続け、もう一度測ります。

鶏肉にすっかり火が通ったら、小さなスプーンで煮汁を味見します。

塩気が足りなければ、淡色しょうゆか塩を適量加えます。

- 盛り付けて揚げ生姜をのせる
鶏肉と煮汁を盛り付け用の皿に移します。

取り分けておいた揚げ生姜を散らして、できあがりです。

仕上がりがおかしいとき
| 状態 | 考えられる理由 | 対処 |
|---|---|---|
| 2回の煮込みのあとでも鶏肉が75°C未満 | 約5分ずつの煮込みは目安で、肉の大きさや火力で変わる | 蓋をして煮続け、いちばん厚い1切れをもう一度測る。75°Cが1分以上保たれるまでは出さない |
| 煮汁がしょっぱい | 紅糟の塩気は製品によって違う | 最後のしょうゆや塩は足さない。次回は大さじ3/4を超えて加える前に味見する |
| 煮汁の味がぼやける | 最後の味付けが足りない | 淡色しょうゆか塩を少しずつ加え、そのつど味見する |
| ごまの香りが強すぎる | マリネと炒め油の両方にごま油を使っている | 次回は、炒め用のごま油大さじ1だけを普通の食用油に替える |
| もち米の赤酒が手に入らない | 専門的な食材である | 普通の中国の米酒か水を使う。香りと色は変わる。ぶどうのワインは使わない |
同じレシピの中の変え方
ここに挙げる変え方は、いずれも、このレシピの元になったNoob Cookのページに載っている選択肢です。上の基本の作り方とは分けて考え、いくつもまとめて取り入れないでください。
- 赤酒の代わりに、普通の中国の米酒を使う。紅糟は残します。香りと色が変わります。
- 米酒の代わりに水を使う。米酒の香りは弱まりますが、紅糟は残ります。そこに含まれるアルコールの量は不明で、アルコールを含まない料理になるわけではありません。
- 炒め油を普通の油にする。替えるのは中華鍋で使う大さじ1のごま油だけで、マリネの小さじ1はそのままにします。
- もも肉ではなく鶏半羽を使う。著者が代わりの選択肢として挙げています。半羽から切り出した肉は大きさも厚みも違うので、もも肉の時間をあてにせず、いちばん厚い1切れで75°Cが1分以上保たれるかを測ります。
- 仕上げに赤酒とコリアンダーをかける。著者は、盛り付けた料理に赤酒大さじ2をかけ、コリアンダーを添える方法も挙げています。どちらも好みで、ここの基本の作り方では使っていません。仕上げの酒はまったく加熱されないので、アルコールを避けたい人には向きません。
福州周辺の紅糟鶏 — 関連する料理であって、ひとつのレシピではありません
福州周辺とかかわる鶏料理には、紅糟を使うものが複数あります。名前も作り方も、ひとつの標準にはそろいません。焦桐の随筆は、この煮込みとはまったく違う作り方を含め、地域や調理法による変化をいくつも挙げています。
長楽区人民政府がホストする「Changle News」の特集記事には、紅糟で煮込む鶏として红糟焖鸡が紹介されています。鶏半羽に紅糟50g、生姜、油、水を使い、手順の順序も違います。記事には、お祝いの食卓に並ぶ赤い料理と書かれています。これは別のレシピで、その分量はここでは使っていません。
閩侯県人民政府は、料理人Lin Changshengと、閩侯・荊溪の醉糟鸡を紹介しています。この版では、火を通した鶏を氷水に入れて、皮をパリッと仕上げます。この冷やす方法は、このページの温かい煮込みとは別の料理です。記事が述べる地元の由来も、その特定の調理法についてのものです。
これらを合わせてみると、紅糟鶏は福州周辺の台所にも、このレシピのシンガポールの一家のように、海外の福州系コミュニティにも根づいていることが分かります。ただ、単一の発祥の地や、省全体の標準形までは確かめられません。中国のほかの料理は、中国のレシピでも紹介しています。
産後の食卓で
Noob Cookは、この料理を産後の食事(confinement food)の文脈で触れていて、ほかの資料にも似た記述があります。ただし、これは伝えられている習慣です。紅糟に結びつけられることのある健康や回復への効果は、ここで使った資料では裏づけられていないので、このページでは主張しません。
残りものの扱い
調理した鶏肉を、室温に長く置かないでください。残りは浅い容器に小分けして早く冷まし、冷蔵庫に入れ、食べる前にしっかり再加熱します。
よくある質問
紅糟鶏の「赤ワイン」は、ぶどうのワインですか?
いいえ。使うのは紅糟ともち米の赤酒で、どちらも、もち米を紅麹で発酵させて造ったものです。レシピの著者は、ぶどうの赤ワインは味が近くないと答えています。
普通の中国の米酒や水でも作れますか?
作れます。どちらも、著者が赤酒の代わりとして挙げている選択肢です。どちらの場合も紅糟は残し、香りと色が変わることを見込んでください。
加熱すればアルコールは飛びますか?
飛ぶとは約束できません。この煮込みは米酒を200ml使い、仕上がりに残るアルコールは測られていません。水を使っても、紅糟がアルコールをまったく含まないと言えるわけではありません。アルコールを厳密に避けなければならない人には、このレシピは向きません。
紅麹米や紅麹のサプリメントを、紅糟の代わりに使えますか?
使えません。それらは紅糟(酒粕)とは別の製品で、この料理の代用にはなりません。
安全のためには、何分煮ればよいですか?
レシピでは、熱湯を加える前に約5分、あとにも約5分煮ます。所要時間は、準備約10分、加熱約20分、これに30分のマリネが加わります。ただ、これらの時間は目安です。安全の基準は、鶏肉のいちばん厚い部分が75°Cに達して1分以上保たれることです。
醉糟鸡(酔っ払い糟鶏)と同じ料理ですか?
同じとは限りません。名前も作り方も、資料によって違います。閩侯県人民政府が紹介する閩侯の醉糟鸡は、火を通した鶏を氷水で冷やす方法で、この温かい煮込みとは別です。
産後の回復によいのですか?
産後の養生期間(confinement)に食べられる料理として伝えられてはいますが、ここで使った資料では、健康や回復への効果は確認されていません。
何人分になりますか?
鶏肉500gのレシピには人数が書かれていないので、ここでも人数は示しません。







