阿給(a-gei、a-geh)を割ると、中に三つの層が現れます。油をまとった柔らかな揚げ豆腐の壁、その中に詰まった短い春雨、そして上を閉じる淡い色の蒸した魚のすり身です。仕上げに甘辛いたれをかけ、淡水の老舗の一例では、袋を割って春雨にたれを吸わせながら食べるのだそうです。豆腐の袋を開くと、春雨がたれを待っている。それが阿給です。
豆腐の袋を開くと、春雨がたれを待っている
この料理で守りたいのは三つです。形を保てる厚手の揚げ豆腐、豚肉と干しえびで味付けした春雨、蒸すあいだ具を閉じ込める魚のすり身の蓋。たれは最後にかけ、春雨にしみ込む薄さにします。
仕組みは単純ですが、どの部分にも役目があります。豆腐は器であり外皮でもあるので、中をくり抜ける厚みが必要です。魚のすり身は蓋なので、豆腐の縁にしっかり貼りつけます。春雨は具の味を運ぶ役です。この記事では、豚ひき肉と干しえびを使う台湾の家庭向けレシピ一版に従い、分量も公開されたとおりに使います。原典が「適量」「少々」としている箇所は、数字を補わずそのまま書きます。
作る前に、阿給がどこの料理で、名前が何を指すのかを押さえておきましょう。
阿給は、淡水の揚げ豆腐の名物
阿給は、台湾北部の海沿い、新北市の淡水(Danshui)に結びつく名物です。 新北市の観光局も、淡水にある淡江大学(Tamkang University)も、町を代表する食べ物のひとつとして紹介しています。台湾のほかの料理や食材は台湾の国ページもご覧ください。
名前は、どちらの資料も日本語の油揚げ(abura-age)、その「あげ」に由来すると説明しています。ただ、これは名前と揚げ豆腐の外皮についての話です。阿給は日本の油揚げと同じ料理ではありませんし、豆腐の袋に何かを詰めた料理すべてを指すわけでもありません。淡水の阿給は、揚げ豆腐に味付けした春雨を詰め、魚のすり身で封じて蒸すものです。
新北市観光局が紹介する淡水の一軒では、春雨を醤油、揚げねぎ、香料で炒めて揚げ豆腐に詰め、口を魚のすり身で閉じて蒸します。仕込みは朝のうちに済ませるそうです。これはあくまでその店のやり方で、どの店にも共通する決まりではありません。
阿給がいつ生まれ、誰が最初に作ったのかは、今回確認した資料からは分かりません。そのため、起源の逸話はここでは取り上げません。
この料理に使える食材・調味料
選び方と代用
揚げ豆腐。 切り開いてくり抜ける、厚手で四角い揚げ豆腐を探してください。いなり寿司用の薄い油揚げは形も厚みも違い、袋の仕上がりがまったく変わります。
春雨。 冬粉には緑豆春雨がいちばん近い候補です。1束の重さは商品によって違うので、「2束」はグラムに換算せずそのまま使います。
魚のすり身。 魚団子(つみれ)用に売られている、味のついていない生のすり身を使います。味付き製品でも封じられますが、塩分が加わるので、詰め物の塩は控えめにしてください。商品によって硬さも違い、口を覆うときののびやすさが変わります。
紅蔥頭。 小型の赤エシャロットです。日本で「エシャレット」として売られているのは若採りのらっきょうで、別の植物ですから混同しないでください。小さなエシャロットが見つからなければ玉ねぎでも代用できますが、香りは変わります。同じものではなく、代用と考えてください。
醤油膏。 ふつうの醤油より濃度が高く、甘みがあります。同量のふつうの醤油に替えて同じ味になるかは確認されておらず、甘みもとろみも変わります。買った製品の原材料と塩分を確かめてください。
米酒。 塩が加えられている料理酒もあります。表示を見て、詰め物の塩加減を調整してください。
でんぷん水。 でんぷんと水の割合は決まっていません。日本の片栗粉を使えますが、コーンスターチと同じ働きをするとは考えないでください。
豚肉と干しえび。 豚肉を抜くと、詰め物から肉の旨みと脂が減ります。別の肉に替えると、レシピそのものが変わります。干しえびを抜くと、風味は穏やかになります。
道具
- 豆腐をゆでる鍋
- 春雨用の耐熱ボウル、ざる、キッチンばさみ
- 豆腐を切り開いてくり抜くための小さな包丁と小さじ
- 詰め物を炒めるフライパンか中華鍋
- 台湾式の電鍋と蒸し皿(手持ちの蒸し器でも可)。水は製造元の説明書のとおりに入れる
- たれ用の小鍋
- 清潔な細い食品用温度計
袋が崩れず、春雨の味が残るコツ
阿給をまとめているのは魚のすり身の封です。失敗の多くは、特定の工程に原因があります。以下は工程から導いた家庭向けの判断で、原典に書かれた数値ではありません。
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 豆腐の袋が破れる | 豆腐が薄い、切り込みが深い、くり抜きすぎ | 厚手の豆腐を選び、切り込みを貫通させず、少しだけくり抜く。詰めすぎない |
| 魚のすり身の蓋がはがれる | 豆腐の縁に押しつけていない | 口と縁をぐるりと、しっかり押しつける |
| 春雨の味が薄い | 春雨を入れる前に汁気が飛んだ | 春雨を入れる前に少し汁気を残す。塩や醤油膏は、製品の塩分を見て判断し、一律に増やさない |
| 詰め物がしょっぱすぎる | 味付きの魚のすり身、塩分の高い醤油膏 | 次回は詰め物の塩をまず減らす |
| たれが固くて、しみ込まない | でんぷん水の入れすぎ | スプーンから流れ落ちる薄さに保つ。原典に割合はないので、少しずつ加える |
| 詰め物の味が思っていたものと違う | 醤油膏をふつうの醤油に替えた | 甘みもとろみも違う。同量での代用は確認されていない |
魚のすり身は、豆腐の口だけでなく縁まで覆うように貼りつけます。蒸すあいだ詰め物を閉じ込めるのは、この蓋です。
淡水での食べ方と、家庭でできる変化

新北市観光局が紹介する淡水の一軒では、阿給を割って、春雨にたれを吸わせながら食べます。魚丸湯(魚団子のスープ)を添える例も紹介されています。これはその店の組み合わせで、台湾全体の決まった献立ではありません。
家庭で作るときは、次のような変え方でも阿給らしさは保てます。
- たれを別添えにする。 一口ごとの濃さを調整できます。
- チリソースの量を調整する。 辛みと甘みは製品によって違うので、辛いものなら減らします。
- 香菜を省く。 飾りなので、なくても成り立ちます。
- 菜食にする。 豚肉を抜くだけでは足りず、干しえびと魚のすり身も置き換える必要があります。そうなると阿給の再現ではなく、別のレシピです。
- 厚手の揚げ豆腐が手に入らない場合。 薄い油揚げは袋の形を保ちにくく、食感も変わります。試作の扱いにしてください。
保存と温め直し
このレシピ自体には、保存や温め直しの記載はありません。家庭向けの一般的な目安として、厚生労働省は、残った料理を浅い容器に小分けして速やかに冷まし、冷蔵すること、温め直すときは75°C以上を目安に加熱することを案内しています。この料理が何日もつかは確認できていないので、保存期間は示しません。
よくある質問
阿給と油揚げは何が違いますか?
名前は日本語の油揚げ(abura-age)に由来すると説明され、外皮も揚げ豆腐です。ただ、阿給は一つの完成した料理で、厚手の揚げ豆腐に味付けした春雨を詰め、魚のすり身で封じて蒸し、たれを添えたものです。
春雨はどれでもよいですか?
冬粉には緑豆春雨がいちばん近い候補です。1束の重さは商品によって違い、原典にも重さの記載がありません。グラムに換算せず、書かれたとおり2束で作ってください。
魚のすり身の代わりは何を使えますか?
魚団子用の、味のついていない生のすり身が想定されている材料です。味付きのものも封としては使えますが、塩分が加わるので詰め物の塩を減らします。魚を使わない形にすると、別のレシピになります。
蒸し時間は何分ですか?
ここで従ったレシピは電鍋で約10分ですが、機器によって差があります。魚のすり身のいちばん厚い部分と詰め物の中心が、75°Cで1分以上に達しているか確認し、届いていなければ電鍋の説明に従って加熱を続けてください。
たれは台湾の「海山醤」と同じですか?
味噌、チリソース、砂糖、ごま油、醤油で作るこのたれは、その方向の甘辛い味に近いものですが、この家庭版が海山醬(海山醤)や、どこかの店のたれと同じだとは言いません。
















