赤いパプリカソースにサワークリームを添えた鶏肉の煮込みと、小さなすいとん状のノケドリ
🔪下準備15分
🔥調理55分
🌍料理ハンガリー料理

チルケパプリカーシュの作り方|ハンガリーの鶏肉パプリカ煮込み

約16分で読めます世界ごはん紀行編集部
Cooking flow

作り方を先に見る

STEP 11 / 6

玉ねぎをラードで蒸らす(約10分)

手順1: 玉ねぎをラードで蒸らす(約10分)

厚手の鍋にラード大さじ2を入れて弱火で溶かし、みじん切りの玉ねぎを加えて塩小さじ3/4をふります。蓋をして、ときどき混ぜながら約10分。玉ねぎが透き通ってつやが出て、かさが半分ほどになれば十分です。色はつけません。縁が茶色くなりかけたら火をさらに弱め、大さじ1の水を加えて温度を下げます。

STEP 22 / 6

火を止めてパプリカを溶かす(約3分)

手順2: 火を止めてパプリカを溶かす(約3分)

鍋をいったん火から下ろし、パプリカパウダー大さじ2を加えて、玉ねぎ全体に赤い色が回り、油とパプリカがなめらかになじむまで10秒ほど混ぜます。すぐにトマトと水120mlを加えてください。パプリカは熱い油に直接当たるとすぐに焦げ、ソースが苦くなります。火を止めてから入れて、すぐに水分が鉄則です。水分が入ってから鍋を弱火に戻し、ふつふつと煮立つまで2〜3分温めます。

STEP 33 / 6

鶏肉を入れて蓋をして煮る(約30分)

手順3: 鶏肉を入れて蓋をして煮る(約30分)

鶏肉を皮を下にして並べ入れ、残りの塩小さじ3/4をふります。蓋をして弱火で約30分煮ます。数分おきに蓋を開けて鍋底を確かめ、ソースが煮詰まって鍋底に張りつきそうなら水を大さじ2ずつ足します。肉が半分ほど浸かる水分量を保ち、表面が小さく揺れる程度の火加減で煮ると、身がかたくなりません。途中で一度、肉の上下を返します。

STEP 44 / 6

ピーマンを加えて仕上げ煮する(約10分)

手順4: ピーマンを加えて仕上げ煮する(約10分)

蓋を外し、輪切りのピーマンを加えて、さらに約10分煮ます。蓋を外すことで余分な水分が飛び、ソースにとろみが出てきます。ピーマンがしんなりして、鶏肉の骨のまわりの身が箸でほぐれるくらいになれば煮上がりです。いちばん厚い部分に温度計を差し、中心が75°Cで1分以上加熱されていることを確かめます。

STEP 55 / 6

ノケドリをゆでる(約10分)

手順5: ノケドリをゆでる(約10分)

鶏肉を煮ている間にノケドリを作ります。ボウルで強力粉140gと塩小さじ1/4を混ぜ、卵2個とサワークリーム大さじ2を加えて混ぜ、牛乳を大さじ1ずつ足して、粉気がなくなり、なめらかで粘りのある生地にします。へらですくうとゆっくり帯になって落ちるくらいのやわらかさが目安です。時間があれば30分休ませると、口当たりがやわらかくなります。たっぷりの湯に塩を入れて強火で沸かし、ぐらぐら沸騰した状態を保ちながらスパッツレメーカーや穴の大きいおろし金から生地を少しずつ落とします。浮き上がってから30秒ほどゆでたら網じゃくしで引き上げ、バター10gをからめます。

STEP 66 / 6

サワークリームでソースをとじる(約2分)

手順6: サワークリームでソースをとじる(約2分)

鶏肉を取り出して器に移します。小さなボウルでサワークリーム大さじ2、小麦粉大さじ1、生クリーム大さじ2をだまがなくなるまで混ぜ、鍋の熱いソースをおたま半分ほど加えてのばします。これを鍋に戻し、弱火で混ぜながら1〜2分温めて、ソースにとろみがつけば完成です。煮立たせないでください。鶏肉にソースをかけ、好みで盛り付け用のサワークリームとパプリカパウダーを少し添えます。

鶏肉は中心部を75°Cで1分以上加熱してください。カンピロバクターによる食中毒を防ぐための目安です。骨のまわりは火が通りにくいので、色だけで決めず温度計で確かめます。生の鶏肉を切ったまな板や包丁は、ほかの食材に使う前に洗ってください。

クリームが分離してソースがぽつぽつと粒立ったら、火を止めて生クリームを大さじ1足し、手早く混ぜます。分離のいちばんの原因は沸騰なので、クリームを入れたあとは鍋のふちが小さく泡立つ程度までにとどめます。

ノケドリの生地がかたすぎると、おろし金の穴を通りません。逆にゆるすぎると湯の中で散ってしまうので、牛乳は一度に入れず、大さじ1ずつ様子を見て足します。木のまな板に生地をのせ、ナイフで少しずつ湯へ削り落とす方法もあります。

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Ingredients

材料を分けて見る

材料表の分量4人分

表内の数値を目安として再計算します。塩、辛味、油は味を見ながら調整してください。

準備

買い出しの前に

骨付き鶏肉、玉ねぎ、パプリカパウダー、トマト、ピーマン、サワークリーム、ラードを並べた材料

8品目

煮込み

材料 分量 代替・備考
骨付き鶏もも肉(皮付き) 1kg ぶつ切り。手羽元を混ぜてもよい。骨なしもも肉なら800g
玉ねぎ 大2個 みじん切り
ラード 大さじ2 サラダ油で代用可
パプリカパウダー(甘口) 大さじ2 色と香りを強めたいときは大さじ3まで
塩 小さじ1と1/2 半量ずつ2回に分けて使う
トマト 1個 ざく切り。皮が気になる場合は湯むきする
ピーマン 1個 輪切り。ハンガリーの淡い緑色のパプリカの代わり。黄パプリカ1/2個でもよい
水 120ml 煮詰まったら少量ずつ足す
3品目

仕上げのクリーム

材料 分量 代替・備考
サワークリーム 大さじ2 盛り付け用に別に大さじ4ほど用意する
小麦粉 大さじ1 薄力粉
生クリーム 大さじ2 乳脂肪分の高いもの
6品目

ノケドリ(添えるすいとん)

材料 分量 代替・備考
強力粉 140g 中力粉でも作れる
塩 小さじ1/4 ゆで湯用の塩は別
卵 2個 Lサイズ
サワークリーム 大さじ2 プレーンヨーグルトで代用可
牛乳 大さじ2 生地のかたさを見て加減する
バター 10g ゆで上がりにからめてくっつきを防ぐ。オリーブオイルでもよい

このソースは、ほとんどパプリカパウダーの味でできています。日本のスーパーで売っているパプリカパウダーはたいてい辛みのない甘口で、そのまま使えます。ハンガリー産の甘口(édesnemes、エーデシュネメシュ)が手に入れば、色も香りもいっそう深くなります。辛口(csípős、チーペーシュ)を少し混ぜるかどうかは好みで決めてかまいません。ひとつだけ気をつけたいのは、開封から時間がたったパプリカは香りが抜けること。棚の奥で茶色っぽくなった瓶なら、新しいものに替えたほうが仕上がりがはっきり変わります。

コツ

鶏肉は皮付きのまま煮ると、ソースにうまみとコクが出ます。皮が苦手なら、皮付きで煮てから盛り付けのときに外してください。骨付き肉が手に入らない場合は、骨なしもも肉800gにし、煮込み時間を5分ほど短くするのが目安です。

注意

この料理には乳(サワークリーム、生クリーム、バター、牛乳)、小麦(小麦粉、強力粉)、卵(ノケドリ)が入ります。アレルギーのある人に出すときは、該当する材料を確認してください。


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Shop the pantry

材料からそろえる、味の決め手

買い出しガイド

昼どきのブダペスト。ハンガリーの街角には、エートケズデ(étkezde)と呼ばれる昔ながらの軽食堂があり、その定番の一皿が、鶏肉を赤いソースで煮たパプリカーシュ・チルケ(paprikás csirke)です。ハンガリー語ではチルケパプリカーシュ(csirkepaprikás)とも呼ばれ、どちらも「パプリカで煮た鶏」という意味になります。玉ねぎをラードで甘く蒸らし、火を止めてからパプリカパウダーを溶かし込み、鶏肉を静かに煮る。仕上げにサワークリームを混ぜると、鮮やかな赤がやわらかなサーモン色に変わります。赤いソースをクリームでまとめるところが、同じパプリカの国のグヤーシュとはっきり違う点です。

材料はスーパーでほぼそろいます。難しいのは2か所だけで、パプリカを焦がさないことと、サワークリームを煮立たせて分離させないこと。この2点さえ押さえれば、家庭の鍋で1時間ほどの煮込みです。

大平原の鍋から、町の食堂の定番へ

ハンガリーの家庭の食卓に置かれた鶏肉のパプリカ煮込みの鍋

ハンガリー東部に広がる大平原アルフェルド(Alföld)では、19世紀ごろ、農民たちが牛肉や羊肉を玉ねぎとパプリカで煮込んでいました。そこへしだいに鶏肉が加わり、家禽の煮込みが広く食べられるようになったといわれます。1840年代のハトヴァンでは、農奴の農家が牛、羊、鶏で作る「プルクルト・フース」や「パプリカーシュ・フース」を日常的に食べていた、という記録も残っています。平原の煮込みに鶏が入ったところから、この料理の歴史が始まります。

文字で残る最古のレシピは、1830年に出版された料理書のものとされています。著者はヨーゼフ大公の宮廷料理人だったチフライ・イシュトヴァーン(Czifray István)。バターかラードで玉ねぎとパプリカ、オールスパイスを炒め、鶏肉を加え、小麦粉、だし、サワークリームでソースにとろみをつけるという内容で、骨組みは今の作り方とほぼ変わりません。4年後の1834年には、ニーレジハーザの宿屋の主人が出した価格表に「パプリカーシュ・チルケ(Paprikás Tsirke)」が18クライツァールで載っています。同じ表の肉のパプリカ煮込み「パプリカーシュ・フース」は15クライツァールで、鶏のほうが少し高い値段でした。

豆知識

パプリカには古い呼び名がいくつもあります。「トルコの胡椒(törökbors)」「赤い胡椒(vörösbors)」「スペインの胡椒(spanyol bors)」など、どれも「どこかから来た胡椒」という意味です。新大陸の唐辛子がヨーロッパを回ってハンガリーにたどり着いた道のりが、名前に残っています。

サワークリーム(ハンガリー語でtejföl、テイフル)を入れるかどうかは、料理の格にも関わりました。サワークリームで仕上げる煮込みは、農民の鍋から市民階級の台所へ上がった料理の印になり、そこから再び庶民の食卓にも広がっていったといわれます。19世紀末にはすでにレストランのメニューに載り、ハンガリーを訪れた旅行者が勧める一皿になっていました。

ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』(1897年)にも、この料理は登場します。トランシルヴァニアへ向かう途中、ジョナサン・ハーカーは「パプリカ・ヘンドル(paprika hendl)」を食べて気に入り、婚約者のミナのためにレシピを手に入れようとメモに書きとめます。旅人がレシピを持ち帰りたくなる料理だったことは、19世紀の小説の中でも変わりません。

パプリカーシュとプルクルトは、クリームで分かれる

パプリカとサワークリームで仕上げた鶏肉のソースと、クリームを入れないパプリカの煮込みを並べた様子

ハンガリー料理には、パプリカを使った煮込みが4つあります。料理研究家ジョージ・ラング(George Lang)は著書『The Cuisine of Hungary』で、グヤーシュ(gulyás)、プルクルト(pörkölt)、トカーニ(tokány)、パプリカーシュ(paprikás)をハンガリー料理の4本柱に挙げています。なかでもパプリカーシュとプルクルトはよく似ていて、違いはひとつ。パプリカーシュは甘いクリームかサワークリームで仕上げるのに対し、プルクルトにはクリームを入れません。ラングは「グヤーシュやプルクルトには、どんなクリームも使ってはいけない」とまで書いています。

肉の選び方にも傾向があります。ラングによると、パプリカーシュに向くのは仔牛肉と鶏肉で、牛肉、羊肉、ジビエ、ガチョウ、鴨、豚肉はプルクルトのほうでよく使われます。淡白な肉にクリームのまろやかさを合わせ、脂や個性の強い肉はクリームなしで煮る、という分け方です。同じ作り方で、仔牛肉やきのこ、魚を煮ることもあります。

豆知識

パプリカーシュの煮汁を残しておくと、翌日はホルトバージ風パラチンタ(Hortobágyi palacsinta)に姿を変えます。肉入りのクレープを巻き、パプリカーシュのソースにサワークリームを足したものをかける料理です。


ノケドリと、きゅうりのサラダを添えて

チルケパプリカーシュとノケドリを皿に盛り、きゅうりのサラダを添えた食卓
鶏肉とノケドリにソースをたっぷりかけ、サワークリームを添えて盛り付ける

ハンガリーでは、チルケパプリカーシュにはほとんど必ずノケドリがつきます。ノケドリはガルシュカ(galuska)とも呼ばれる卵入りの小さなすいとんで、ドイツのシュペッツレの仲間です。シュペッツレより短くずんぐりしていて、ソースをよく吸います。皿の半分に鶏肉、もう半分にノケドリを盛り、上からソースをたっぷりかけると、ノケドリが赤いソースを吸ってくれます。

付け合わせには、甘酸っぱいきゅうりのサラダがよく合います。こってりしたソースのあとに酢の酸味が口をさっぱりさせてくれます。ノケドリを作る時間がない日は、パセリをふったゆでじゃがいもや、やわらかく煮たポレンタでも合います。市販の卵入りのショートパスタでも、ソースをからめる役目は十分に果たします。

翌日にソースが残ったら、前の節で紹介したホルトバージ風パラチンタに使うか、ノケドリにからめて軽い昼食にしてもおいしい。同じパプリカで牛肉を煮るグヤーシュと食べ比べると、クリームがあるかないかでソースの印象がまったく違うことがよく分かります。じゃがいもとソーセージを重ねて焼くラコットクルンプリも、同じサワークリームを使うハンガリーの家庭料理です。

国境を越えると、付け合わせも中身も変わる

ポレンタやじゃがいも、ダンプリングなど地域ごとに異なる付け合わせを添えた鶏肉のパプリカ煮込み

チルケパプリカーシュは、ハンガリーの外でもかたちを変えて食べられてきました。ルーマニアではトウモロコシ粉の粥ママリガ(mămăligă)を添えるのが昔からの組み合わせで、チェコではクネドリーキ(knedlíky)と呼ばれるパン状のダンプリングと一緒に出されることが多いといいます。ドナウ川流域に暮らしたドナウ・シュヴァーベン人(ドイツ系の移民)の家庭料理にもなっています。

ハンガリーとチェコスロバキアのユダヤ系の家庭では、安息日の料理として受け継がれました。肉と乳製品を一緒に食べない食の決まりがあるため、サワークリームを使わず、トマトでソースをまとめる作り方が多いとされています。ブルガリアのパプリカシュ(паприкаш)は、パプリカパウダーを控えめにして、角切りの甘いピーマンを主役にした別の料理になっています。

コツ

乳製品を使わずに作るなら、トマトを2個に増やし、仕上げのクリームを入れずにピーマンを加えたあと10分ほど長めに煮詰めると、ソースにとろみが出ます。ユダヤ系の家庭の作り方にならった日本の台所向けのアレンジです。

よくある質問

鶏肉のいちばん厚い部分に温度計を差して中心温度を確かめる

鶏むね肉で作ってもよいですか?

作れますが、もも肉よりかたくなりやすい肉です。骨なしのむね肉なら一口大のそぎ切りにし、手順3の煮込みを15分ほどに短くしてください。どの部位でも、中心部が75°Cで1分以上加熱されていることを温度計で確かめます。

辛口のパプリカパウダーを使ってもよいですか?

使えます。ハンガリーでも甘口と辛口のどちらでも作られています。辛口だけにすると辛みが強く出るので、甘口大さじ2のうち小さじ1を辛口に替えるくらいから試すと、辛さの加減をつかみやすいです。

ソースが分離してしまいました。戻せますか?

火を止めて、生クリームを大さじ1加えて手早く混ぜると、なめらかさが戻ることがあります。分離を防ぐには、サワークリームと小麦粉を先によく混ぜ、熱いソースで少しのばしてから鍋に戻し、そのあとは煮立たせないことです。

作り置きはできますか?

煮込みは粗熱を取ってから冷蔵庫に入れ、早めに食べきってください。温め直すときは弱火でゆっくり温め、クリーム入りのソースを強く沸騰させないようにします。鶏肉の中心まで十分に温まっていることを確かめてから食べてください。

ノケドリの代わりになるものはありますか?

ゆでじゃがいも、ポレンタ、卵入りのショートパスタが手軽です。ソースをよく吸うものを選ぶと、ノケドリに近い食べ心地になります。

主な参考リンク

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