卵の生地を切り分け、真ん中に具をひとさじ置き、折るか重ねるかして縁を閉じる。ラビオリの基本の姿はそれだけですが、イタリア全土に通じる「ひとつのラビオリ」があるわけではありません。イタリアの辞書Treccaniは、具が肉からリコッタとほうれん草、香草まで地域によって変わり、形も長方形や円形があると説明しています。包む具と形が一つではない料理、それがラビオリです。
この記事では、その中から一つのレシピを最後まで作ります。La Cucina Italianaに掲載されたファブリツィオ・ボカ氏のリコッタとほうれん草のラビオリ(ravioli di ricotta e spinaci)です。生地は再挽きの硬質小麦セモリナと00粉に全卵を合わせ、詰め物は焼きリコッタとリコッタにほうれん草を加え、低温で焼いたダッテリーニトマトのクリームで和えて、揚げたバジルの葉をのせます。分量は4人分です。同じ国の他の料理はイタリアのページもご覧ください。
単数形はraviolo、ふつうは複数形のravioliで使います。Treccaniによると語源は不確かで、中央イタリアの一部では似たパスタをagnellotti、agnolotti、tortelliとも呼びます。
リコッタとほうれん草のラビオリとは
ラビオリは、卵の生地で具を包んだパスタです。Treccaniは、卵入りの生地を長方形や円形に切り、具の上に重ねたり折り返したりしたものと説明しています。肉、リコッタとほうれん草、香草などが具として挙げられ、地域によって違うので、「ラビオリ」は一つの決まったレシピというより料理の仲間と考えたほうがしっくりきます。
具が似ていても、地域によって名前も形も変わります。南チロルのシュルツクラプフェンは半月形でほうれん草とリコッタを詰め、ピアチェンツァのturtei cu la cuaは尾のように編んで閉じます。この記事のレシピはそのどちらでもなく、生地を8×12cmの長方形に切り、小さな四角に閉じます。分量と手順はこの一つのレシピに沿っていて、他のレシピは混ぜていません。冷蔵での休ませ方、ほうれん草を生の重さで量ること、閉じ方やゆで加減の実用的な目安は、原典とは別に、編集部の選択または一般的な目安として分けて書きます。
材料(4人分)

分量は原典どおり、生地・詰め物・ソース・仕上げに分けています。原典は4人分としていて、ラビオリが何個できるかは書かれていません。打ち粉とゆでる湯・塩は、レシピとは別の作業用の分量です。
| --- | ---: | --- | | 再挽きの硬質小麦セモリナ(semola rimacinata di grano duro) | 350g | 生地。主になる粉で、生地にこしを与える | | 00粉(farina 00) | 150g | 生地。細挽きの小麦粉で、セモリナと合わせる | | 卵 | 5個 | 生地。全卵。原典に卵のサイズの指定はない | | 焼きリコッタ(ricotta infornata) | 150g | 詰め物。生のリコッタと合わせてふるいで裏ごす | | リコッタ | 150g | 詰め物。具のやわらかい土台 | | ほうれん草 | 90g | 詰め物。このレシピでは、洗って十分に水気を切った生の葉を細かく刻む | | パルミジャーノ(すりおろし) | 10g | 詰め物。コクを足す | | ナツメグ | 適量 | 詰め物。香りづけ | | 塩(詰め物用) | 適量 | 詰め物。ソースの塩5gとは別 | | ダッテリーニトマト | 600g | ソース。半分に切って焼き、裏ごす | | きび糖 | 10g | ソース。焼く前のトマトにふる | | 塩(ソース用) | 5g | ソース。焼く前のトマトにふる | | 揚げバジルの葉 | 適量 | 仕上げ。あらかじめ用意してのせる | | 打ち粉 | 少々 | 伸ばしたり切ったりするときの作業用。生地の配合には加えない | | ゆでる湯と塩 | 適量 | ラビオリをゆでるため。レシピの分量とは別 |
このレシピには小麦、卵、乳が含まれます。粉やチーズ、買ってきた加工品の表示もあわせて確認してください。生地には生卵が入り、具は乳製品なので、どちらも室温に長く置かないようにします。
道具
- こねるためのボウルまたは作業台
- 冷蔵庫で休ませるときに生地を覆うもの(ボウルやラップ)
- パスタマシン(なくてもよい。均一に薄く伸ばしやすい)
- 麺棒(パスタマシンを使わない場合)
- パスタカッターまたはカード、8×12cmを測る定規
- 細かい目のふるい(リコッタと、焼いたトマトを裏ごすため)
- 100℃を保てるオーブンと天板
- ゆでるための大きな鍋、網じゃくし
粉・リコッタ・トマトの選び方と代用
semola rimacinataは、粗びきのセモリナとは別物です。 「rimacinata」は再び挽いたという意味で、ほかの用途で売られている粗いデュラムセモリナとは挽き方が違うことがあります。イタリア食材店や通販で、「semola rimacinata di grano duro」や「再挽き硬質小麦セモリナ」と書かれたものを探してください。
00粉も専用の粉です。 薄力粉など別の粉に置き換えられると決めつけないでください。このレシピでは確かめていません。
焼きリコッタ(ricotta infornata)は見つけにくい食材です。 専門食材にあたります。生のリコッタだけで代えると、具の食感、水分、塩気が変わるので、原典のレシピではなく自分なりのアレンジとして扱ってください。置き換える分量は試していません。焼きリコッタが手に入るなら、原典の分量どおりに作ります。
ダッテリーニトマトは小ぶりで甘いトマトです。見つからなければミニトマトで代えることもできますが、味や水分は変わります。味を補正しようとせず、塩と砂糖はレシピの分量を守ってください。
揚げバジルの葉は、あらかじめ用意しておく仕上げの材料として扱います。原典には油の量、揚げる温度、揚げる時間が書かれていないので、揚げ方はこのレシピの一部としては紹介しません。
作り方
原典には、生地の厚さ、ラビオリ1個あたりの具の量、できあがる個数、ゆで時間が書かれていません。数字を作って埋める代わりに、各段階で見るべき状態を書き、全部をゆでる前に試しゆでをします。
セモリナ(semola rimacinata)350g、00粉150g、卵5個を合わせ、表面がなめらかになるまでこねてまとめます。原典は粉を取り分けることも水を足すことも書いていないので、この3つの材料だけで作ります。作業中に乾きそうなら、レシピを変えず、触っていない部分を覆っておきます。

- 覆って冷蔵庫で2時間休ませる
生地を覆って2時間休ませます。原典は休ませる温度を書いていませんが、生地に生卵が入っているので、このレシピでは冷蔵庫で休ませます。伸ばすときは、扱いやすい状態に戻してから、少しずつ取り分けて作業します。残りは覆って冷やしておき、室温に長く置かないでください。

- 薄く伸ばして8×12cmの長方形に切る
パスタマシンか麺棒で生地を薄いシート状に伸ばします。必要なら軽く打ち粉をします。原典に厚さの数字はないので、薄く均一になるようにします。パスタカッターかカードで8×12cmの長方形に切ります。定規で測るとそろえやすくなります。切った生地は、具を詰める前に乾かないよう覆っておきます。

- 詰め物を混ぜる
ほうれん草を洗い、水気をよく切って、生の葉90gを細かく刻みます。原典はこの90gが生の重さかゆでた後の重さかを書いていません。このレシピでは水気を切った生のほうれん草を使います。ゆでて絞った90gとは同じではありません。焼きリコッタ150gとリコッタ150gは細かい目のふるいで裏ごします。これにほうれん草、パルミジャーノ10g、ナツメグ、塩を好みの量で合わせます。詰める前に、スプーンにのせて形を保てる状態か確かめてください。

- 具を置いて四角く閉じる
長方形の生地の真ん中に具を少量置きます。縁は汚さず、乾いた状態にしておきます。

具を包むように小さな四角に閉じ、縁をしっかり押さえて閉じます。原典は折る位置、生地の重ね方、できあがりの大きさを指定していません。原典にはない実用的な補助として、閉じるときは具のまわりの空気を押し出し、閉じ目に具をつけないようにします。破れたものは生地を引っ張って直さず、乾かないようにして早めにゆでます。

- ダッテリーニを焼いてクリーム状に裏ごす
ダッテリーニ600gを半分に切り、塩5gときび糖10gをふって天板に広げます。100℃で30分焼きます。焼けたトマトをふるいで裏ごし、なめらかなトマトのクリームにします。原典にソース用の油はありません。ここでいう「クリーム」は裏ごしたトマトそのもので、乳製品のクリームは加えません。

- ゆでて、1個試してからソースで和える
大きな鍋に湯を沸かして塩を加え、ラビオリを数個ずつゆでます。原典にゆで時間はないので、まず1個を試しにゆでて切り開き、中心が熱く、生地に粉っぽい芯がないことを確かめます。浮いてきたというだけでは火が通った証拠になりません。家庭での一般的な目安として、厚生労働省は中心を75℃で1分以上加熱することを示しています。これは一般的な目安で、このレシピで確かめた結果ではありません。

湯を切ったラビオリをトマトのクリームでやさしく和え、揚げバジルの葉をのせます。

ほうれん草の水切りが、具の締まりを決めます。スプーンにのせて形を保てるかを包む前に確かめ、ゆるければ次回はもっとよく水気を切ってください。
破れた、漏れた、生焼けだった ― よくある失敗の直し方
| 起きたこと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 伸ばしている間に生地が乾いてひび割れる | 覆わずに置いた | 少量ずつ取り分けて作業し、残りは覆う。水を足したり、配合を変えたりしない |
| 具がゆるくて置きにくい | ほうれん草の水切りが足りない | 詰める前にスプーンで形を保つか確かめ、次回は水気をよく切る |
| 閉じ目が開く、具が漏れる | 縁に具がついた、中に空気が残った | 縁を清潔に保ち、空気を押し出してしっかり閉じる |
| ラビオリが破れた | 生地を引っ張った、乾いた | 引っ張って直さず、乾かないようにして早めにゆでる |
| 生地に粉っぽい芯が残る | ゆでる時間が足りない | ゆで続けて、別の1個で確かめ直す。浮いたことだけを目安にしない |
残ったときは
原典には保存や温め直しの条件が書かれていないので、保存期間は示しません。家庭の食品安全の一般的な案内として、厚生労働省は、残ったものを浅い容器に小分けして速やかに冷まして冷蔵し、温め直すときは十分に加熱する(目安は75℃以上)としています。
地域で変わる詰め方と形
以下は、それぞれの名前と形をもつ地域の例です。この四角いレシピに、形や材料を混ぜてはいません。
ピアチェンツァのturtei cu la cua。 エミリア=ロマーニャ州ピアチェンツァのturtei cu la cuaは、リコッタ、ほうれん草または香草、粉チーズの詰め物を、尾のように編んで閉じます。溶かしバター、グラナ、セージで食べるそうです。イタリア政府観光局は、1351年にペトラルカに供されたという話を伝えていますが、これは伝説として紹介されたもので、ラビオリ全体の起源とは書かれていません。パルマやレッジョ・エミリアにも、それぞれ別の詰め物パスタがあります。
南チロルのschlutzkrapfen。 南チロルのシュルツクラプフェンは、ほうれん草とリコッタを詰めた半月形の包みです。具はこのレシピに近いものの、形と地域の呼び名が違います。
地域、街、家庭ごとに。 イタリア政府観光局は、イタリア料理を地域や街、家庭ごとに解釈が違うモザイクにたとえ、食卓を囲んで分かち合うこと、日曜の昼食、世代を超えて受け継がれる料理の習慣を中心に紹介しています。これはイタリアの食文化全体の説明で、このラビオリが決まった日曜の料理だという意味ではありません。ただ、生地を伸ばして一つずつ手で閉じるこのレシピのような作業は、食卓を囲む人たちで分け合いやすい仕事だといえそうです。
アレンジ
- 地域の形で作る: turtei cu la cuaやschlutzkrapfenを試したいときは、このレシピの分量で形だけ変えるのではなく、その料理のために書かれたレシピを探してください。
- 生のリコッタだけで作る: 焼きリコッタが手に入らないときに生のリコッタで代えるのは、自分なりのアレンジです。食感、水分、塩気が変わります。確かめた分量はありません。
- ミニトマトでソースを作る: ダッテリーニの代わりになりえますが、味と水分は変わります。
よくある質問
何個できますか?
原典は4人分で、ラビオリの個数は書かれていません。生地の厚さや具の量でも変わるので、ここでは人数だけを示します。
何分ゆでればよいですか?
原典にゆで時間はありません。1個を試しにゆでて切り開き、中心が熱く、生地に粉っぽい芯がないことを確かめてから、残りをゆでてください。
焼きリコッタ(ricotta infornata)が見つかりません。どうすればよいですか?
生のリコッタだけにすると食感、水分、塩気が変わり、原典のレシピではなくなります。置き換える分量は試していません。焼きリコッタが手に入るなら、原典の分量どおりに作ってください。
トマトのクリームには生クリームが入りますか?
入りません。ここでいうクリームは、焼いたダッテリーニを裏ごしたものです。原典に乳製品のクリームはなく、ソース用の油もありません。
トルテッリーニやシュルツクラプフェンと同じですか?
トルテッリーニ、ラビオリ、シュルツクラプフェンはどれも詰め物パスタの仲間ですが、地域の呼び名、形、具が違います。たとえばシュルツクラプフェンは半月形で、このレシピは8×12cmの長方形を閉じて四角にします。






