ニエール・ブール、バターの入っていない「黒いバター」
先に甘いりんごを柔らかく煮て、酸味のあるりんごはあとから加えます。砂糖とレモンは、果実がかなり煮詰まるまで待ちます。香辛料は最後です。とても濃く、色が深く、つやが出たら仕上がりです。
ジャージー島には、近所の人たちが何百ポンドものりんごの皮をむき、サイダーを煮詰め、大きな鍋を交代で夜通し混ぜる「ブラックバターの夜」がありました。Delicious Jerseyは、その情景とあわせて、ずっと小さなレシピも紹介しています。家庭の台所の厚手の鍋ひとつに、水、りんご、砂糖、レモン、3種類の香辛料を入れて作るものです。
驚くのは名前です。ジャージーの言葉(ジェリア語)では Lé Nièr Beurre、または Nièr beurre と呼ばれ、Slow Food in the UK は Beurre Nièr という表記を記録しています。意味は「黒いバター」ですが、Delicious Jersey も Slow Food も、これを乳製品ではなく濃縮したスパイス入りのりんご保存食として説明しています。このレシピにも、バターや乳製品は一切入りません。黒い色は、水分が飛んでいく長い煮詰めのなかで、色と風味が深まってできたものです。
この記事で使うレシピは1つだけです。Delicious Jerseyに載っている、ジャージー女性協会(Jersey Women's Institute)の料理本をもとにした水を使う家庭版で、約6〜8瓶分になります。共同の大釜を小さくしたものではありませんし、あとで触れるサイダーと甘草の版とも別物です。
世界ごはん紀行では、このレシピを実際に作って確かめてはいません。Delicious Jerseyには調理時間、温度、完成時の重さ、家庭での保存期間の記載がないため、この記事にもありません。作り方8の瓶詰めの処理時間は、National Center for Home Food Preservationが示すアップルバター一般の手順によるもので、このレシピで試された数値ではなく、安全を保証するものでもありません。
途中で見つける、味の決め手
選び方と代用
りんごは品種を指定せず、甘いりんごと酸味のある調理用りんごの2タイプで考えます。甘いりんごが柔らかい土台になり、酸味のある調理用りんごが、仕上がりを甘いだけの味にしません。手に入る甘いりんごと酸味のあるりんごで作ってください。日本では酸味のあるりんごの候補として紅玉がありますが、特定の品種と同じになるとは言いきれません。
砂糖は1.25〜1.5kgの範囲で選びます。レモンは、皮の黄色い部分を使ってから果汁を加えます。
サイダーと甘草根は、より伝統的な別の版の材料なので、このレシピには入れません。試したい場合は、あとの「アレンジと食べ方」を見てください。
主要なアレルゲンを意図して使ってはいませんが、砂糖と香辛料のラベルで、ほかの食品との交差接触の表示を確認してください。
道具
- 大きくて深い厚手の鍋
- 柄の長い木べら
- ピーラー、包丁、まな板
- ゼスターまたはおろし器、レモンしぼり器
- ふたつきの瓶
- 瓶詰めの処理に使う沸騰水用の鍋(ボイリングウォーター・キャナー)
保存について、確認できていること・いないこと
Delicious Jerseyは、熱い保存食を清潔で殺菌した瓶に詰めて密封するよう書いていますが、処理時間、温度、保存期間は示していません。その空白の一部を補うため、作り方8ではNational Center for Home Food Preservationが示すアップルバターの一般的な手順に従っています。
この手順はこのレシピを試験したものではないので、従ったからといってこの配合の安全が保証されるわけではありません。アップルバターの手順にも保存期間の記載はなく、ほかでも確認できなかったため、この記事では日数や月数を示しません。砂糖とレモンと長い煮詰めがあるというだけでは、常温で安全だとは言えません。処理をしない場合は、冷蔵して早めに食べきってください。
鍋の中のトラブルと対処
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 鍋底が焦げついている、焦げたにおいがする | 火が強い、鍋が薄い、濃くなったのに混ぜ方が足りない | 火を弱め、鍋底からすくうようにこまめに混ぜる。次回は厚手の鍋を使う。焦げると苦みが出る |
| 中身がはねる | 濃くて糖分が多く、泡立っている | 火を弱め、柄の長いへらを使い、鍋の真上から顔を遠ざける |
| まだ色が薄く、ゆるい | 煮詰まりが足りない | ごく弱火で、混ぜながら煮続ける。時計ではなく、濃さ・色の深さ・つやで判断する |
| 甘すぎる | りんごと砂糖の甘さが重なった | 次回は砂糖の範囲の下限を選ぶ |
アレンジと食べ方

まずは保存食だけを味見して、甘酸っぱさと香辛料のバランスを確かめます。そのあとで、ほかの食べ物と合わせてみてください。
- りんごの比率を変える。 酸味のあるりんごを増やしたり減らしたりするのは、上のレシピからの変更で、試していません。そのため、別の分量は示しません。
- ジャージーのサイダーを使う。 Delicious Jerseyは、水の一部または全部をジャージーのサイダーに替える、より伝統的な版に触れています。甘さ、酸味、アルコールの残り方がどう変わるかは確認していません。
- 甘草根を加える。 同じページが、その伝統的な版の一部として小さな甘草根を挙げています。独特の香りがあり、探すのに手間がかかるかもしれません。
- トーストに塗る。 Delicious Jerseyの食べ方の提案で、いちばん手軽な始め方です。
- 塩気のある料理に合わせる。 Delicious Jerseyは、熟成チーズ、ローストポーク、グレービーや煮込みにも、甘みと酸味を添えるものとして提案しています。まずは少量から試してください。
ほかのヨーロッパのりんご料理なら、オーストリアのapfelküchleもどうぞ。
ブラックバターの夜から、家の鍋まで
ブラックバターは、ジャージー島の秋のものです。Visit Jerseyは、この季節に収穫される伝統的なりんごの品種を紹介し、その用途にサイダーとブラックバターを挙げています。Slow Food in the UKも、サイダーの季節の伝統的な保存食として扱っています。
作ることは、長いあいだ共同の仕事でした。Atlas Obscuraは séthée d'nièr beurre を、秋から冬の共同作業として説明しています。rabot と呼ばれる柄の長い木の道具で、何時間も混ぜ続けるそうです。Visit Jerseyは、National Trust for Jerseyが運営するThe Elmsでの3日間のBlack Butter Festivalを紹介しています。近所の人たちが薪火にかけた大鍋を囲み、りんご、砂糖、甘草、レモンを煮るというものです。開催日は年によって変わるので、参加したい場合は最新の予定を確認してください。こうした集まりの記録には歌や会話も出てくるので、この伝統はレシピと同じくらい、みんなで集まる場でもあるのでしょう。
規模はまるで違います。Slow Foodの例では、りんご14ハンドレッドウェイト、サイダー113ガロン、砂糖30ポンドに、甘草、シナモン、香辛料を加え、巨大な共同の鍋で24〜30時間混ぜます。家庭のレシピは、サイダーの代わりに水を使って約6〜8瓶分です。これは大釜版を比例して縮めたものではなく別のレシピなので、分量も時間も、大釜版から換算してはいけません。
よくある質問
このレシピは試作していません。以下の答えは、確認できた範囲に限っています。
ニエール・ブールにバターは入りますか?
この記事のレシピには、バターも乳製品も入りません。「ブラックバター」は、濃い色で塗り広げられる保存食を指す名前で、Delicious Jerseyは乳製品を含まないものとして説明しています。
サイダーと甘草は必須ですか?
この家庭版には要りません。Delicious Jerseyは、より伝統的な版の選択肢として挙げていて、共同の大釜の版でも使われています。
何時間煮ますか?
家庭版に決まった時間はないので、仕上がりで判断します。とても濃く、色が深く、つやが出た状態です。Slow Foodが伝える24〜30時間は巨大な共同の鍋の話で、家庭の鍋には当てはまりません。
何瓶できますか?
Delicious Jerseyは約6〜8瓶としていますが、瓶の大きさと完成時の重さは書いていません。おおよその目安として受け取ってください。
常温で保存できますか?
そうお約束することはできません。Delicious Jerseyは瓶に詰めて密封することを書き、National Center for Home Food Preservationはアップルバターの一般的な処理時間を示していますが、どちらもこのレシピの保存期間を確認していません。瓶詰めの処理をしない場合は、冷蔵して早めに食べてください。














