やわらかな小麦粉トルティーヤに、塩気のある牛肉と卵
乾いたフライパンで大判の小麦粉トルティーヤが温まっていく横で、玉ねぎと青唐辛子、トマトがじゅうじゅうと音を立てています。そこへほぐした乾燥牛肉を入れ、溶き卵を流すと、具はひとまとまりになって、片手で持てる形に巻けるようになります。ソノラ風のマチャカ・コン・ウエボ(machaca con huevo)を、ブリートに仕立てた一品です。
やわらかく曲がる小麦粉トルティーヤ、乾燥肉ならではの塩気と繊維のある歯ごたえ、そして卵と青唐辛子が肉とひとつにまとまった具。中に入れるのはこれだけで足ります。
ブリートと聞くと、ごはん、豆、チーズをぎっしり詰めた大きな巻き物を思い浮かべる人も多いでしょう。けれどもメキシコ北部では、小麦粉トルティーヤで火の通った具をひとつだけ巻いたものがよくあり、その具は地方ごとに変わります。この記事で作るのはそのうちの一例で、Recetas Mexasが公開しているソノラ風のレシピに沿った、牛肉のマチャカと卵のブリート4個です。北部のブリートの唯一の形でも、メキシコ全体の基準でもありません。家庭で作りやすい、はっきりした素朴な一例として紹介します。
国別ガイドはメキシコをご覧ください。トルティーヤを使うほかのメキシコ料理に興味が出たら、タコスやチラキレスも合わせてのぞいてみてください。
マチャカはひき肉でもジャーキーでもない
マチャカは、乾燥させてほぐした牛肉です。牛ひき肉とは別のもので、ビーフジャーキーと同じ扱いにもできません。探すときは「machaca de res」「beef machaca」といった一般名で、専門店や輸入食材店を当たってみてください。調理の前に、商品ラベルで塩分の量と、加熱が必要かどうかを確かめます。
見つからなければ、牛の薄切り肉を炒めて使う手があります。ただし乾燥肉ならではの塩気と繊維の歯ごたえはなくなり、マチャカ・コン・ウエボの再現ではなく、別の家庭風の具になると思っておいてください。
青唐辛子は、北部の青唐辛子が手に入らなければ、入手できる別の青唐辛子を味を見ながら加えます。香りも辛さも同じにはならないので、量は調整するものとして考えてください。
トルティーヤは大判の小麦粉のものを選びます。小さいものや硬いものは、巻くときに割れやすくなります。コーントルティーヤではこのやわらかく包む食感にならないので、同じ具でも別の食べ方になります。
玉ねぎとトマトは、ふつうの玉ねぎで白玉ねぎの代わりにできますが、甘みと水分は玉ねぎごとに違います。トマトも品種や大きさがまちまちなので、火の通し加減は時計だけでなく、目で見て決めます。
使う道具
- 大きめのフライパン(またはコマル)。具がこぼれない広さのもの
- トルティーヤを温めたり、巻いたあとに軽く焼き色をつけたりするための、平らで乾いたフライパン(拭いてきれいにすれば、同じフライパンで構いません)
- 包丁とまな板
- 卵を溶くボウル
- ヘラ
- あれば食品用の温度計
専用の器具は要りません。家にあるフライパンで十分作れます。
割れる、漏れる、塩辛い、水っぽい
原因は、皮の温度、具の量、マチャカの塩気、水分と火入れ、のどれかです。症状から原因をたどれば、鍋の中で直せます。
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| トルティーヤが割れる | 皮が冷たい、または乾いている | 包む直前に両面を温め、らくに曲がるようにする |
| 巻いた具が漏れる | 具が多すぎる、広げすぎている | 1個分を小さく中央にまとめ、周囲に折り込む余白を残す |
| 塩辛い | マチャカの塩気 | 完全に火が通った具を味見してから塩を加える。トマト、卵、トルティーヤとの割合でも調整する |
| 卵が水っぽい | トマトの水分が飛んでいない | 卵を入れる前にトマトをもう少し炒め、そのあと卵が完全に固まるまで加熱する |
| 具がぱさつく | マチャカを炒めすぎた | マチャカを入れたあとは炒め続けない。卵を完全に固めたら、具が乾く前に止める |
食べ方と残った具

ブリートはこれ一つで完成しています。サルサを小さな器に添えるのは好みで、基本のレシピには含みません。TV Aztecaの別のマチャカのブリートのレシピは、サルサを添えて出しています。
卵の入った具は、室温に置いたままにしないでください。余った場合は、浅くて清潔な容器に小分けして早めに冷蔵し、食べるときは十分に再加熱します。食べるタイミングや冷やし方で日持ちは変わるため、このレシピでは保存日数を決めて示すことはしません。
変えてみる楽しみ、基本とは分けて
基本の味わいが変わるアレンジなので、意図して試してください。基本のレシピには混ぜません。
- 豆を塗る。 TV Aztecaのマチャカのブリートは、トルティーヤにリフライドビーンズ(フリホレス・レフリトス)を塗ります。試すなら薄く塗るところから始めてください。豆の水分で巻きやすさが変わり、重い味わいにもなります。
- チーズを足す。 溶けるチーズを使うなら、具が熱いうちに巻きます。チーズ自体に塩気があるので、塩の足しすぎに注意してください。
- 薄切り牛肉を使う。 手に入りやすい反面、マチャカの乾燥した塩気と繊維の歯ごたえはなくなります。別のアレンジとして楽しんでください。
- 唐辛子の辛さを調整する。 少しずつ加えます。辛さを抑えるには種とワタを取りますが、香りも弱くなります。
- 小さめに包む。 具を小さなトルティーヤに分けると巻きやすくなりますが、具と皮の割合や食べ応えは、大判のものとは変わります。
- フアレス風の具にする。 フリホレス・コン・ケソ(frijoles con queso)、バルバコア、アサード、赤や緑のグイサード(煮込み)は、それぞれ別の具です。マチャカに混ぜず、別のブリートとして作ってください。
持ち歩けるメキシコ北部の食事
ブリートは、小麦粉トルティーヤでグイサード(guisado、火を通した煮込みや炒めの具)を包み、紙やアルミなどにくるんで持ち歩く食事です。皿もカトラリーも要らず、働く人が携えていける食事だと説明されていて、それが北部の食べ方として根づく一因になりました。ごはんや豆、チーズは必須ではありません。
シウダー・フアレスでは、ブリートは街の個性の一部です。市の広報は、市制363周年の記念パレードを伝える記事で、ブリートを「フアレスの誇り」と呼んでいます。市はまた、ロバで食べ物を運んでいた売り手フアン・メンデスの話を、名前の由来として語っています。ただしこれは地元の言い伝えであって、確定した歴史ではありません。由来には別の説明もあり、革命期のロバ売りの話より前から辞書に載っていたことを示す資料もありますが、その資料ごとに年が食い違っています。地域によっては burro(ブロ)や burrita(ブリータ)とも呼ばれます。
フアレスの紹介には、フリホレス・コン・ケソ、バルバコア、アサード、赤や緑のグイサードが挙がります。ソノラにはマチャカ・コン・ウエボがあり、マチャカはチワワやバハ・カリフォルニアでも見られます。シナロアにはチロリオがあります。ソノラは、非常に大きな小麦粉トルティーヤ「トルティーヤ・ソバケラ(tortilla sobaquera)」や、肉やチーズ、野菜などを詰める大きな巻き物「ブロ・ペルチェロン(burro percherón)」の土地でもあります。
北部でも具は地域ごとに違います。このページのレシピは、そのうちのソノラ風マチャカ・コン・ウエボという一例で、フアレスの標準的なブリートではありません。
米国で一般的になった、ごはんや豆、チーズなどをまとめて包んだ大きな巻き物は、ブリートが独自に発展したものです。知っておく価値はありますが、メキシコのすべてのブリートの型ではありません。
よくある質問
メキシコのブリートにごはんは普通に入っていますか?
決まりではありません。具は地域によって違い、米国で広まったごはんと豆を詰めた大きなタイプが、メキシコ北部のブリート全体の基準になっているわけではありません。このソノラ風の一品に入るのは、マチャカと卵と野菜だけです。
コーントルティーヤでも作れますか?
具をコーントルティーヤで食べることはできますが、大判の小麦粉トルティーヤのようにしなやかではないので、このように巻いた形にはなりません。同じ具の、別の食べ方になります。
ブリートはフアレス発祥と決まっているのですか?
決まっていません。フアレスは由来を力強く、誇りをもって語りますが、料理と名前の由来には複数の説明があり、どれも事実として言い切ることはできません。
余った具はどうすればいいですか?
早めに浅くて清潔な容器に移して冷蔵し、食べるときは十分に再加熱してください。ここでは、安全といえる保存日数を一律には示せません。
マチャカが見つからないときは何を使えばいいですか?
牛の薄切り肉を炒めて使うのが現実的な方法ですが、別の具になります。マチャカのような乾燥肉の塩気と繊維の歯ごたえはありません。牛ひき肉やビーフジャーキーも、代わりにはなりません。















