蟹の身と野菜を、甲羅に戻して焼く
蟹は粗いまま、にんじんとじゃがいもは細切りのまま、具がペースト状になる前に混ぜるのをやめます。焼き色は表面の合図、具の中心が仕上がったかどうかは温度計が教えてくれます。
サン・バルテルミー(Saint-Barthélemy、通称サン・バルト)の観光公式の紹介は、フランスの調理技法と島の産物が出会う食卓を描き、島で味わいたいカリブの料理の一つとして crabes farcis(詰め蟹)の名を挙げています。情景は思い浮かべやすいはずです。蟹自身の甘い身を甲羅にたっぷり詰め、上にはパン粉の香ばしい焼き色。具には根菜の細切りが走り、なめらかにつぶしてはありません。
ただし、その紹介は料理名を挙げているだけで、レシピは載っていません。島の分量つきレシピは見つけられなかったので、この記事は、2人分のフランス語の一般的なレシピ、Meilleur du Chefの「Crabe farci」をもとに組みました。家庭で蟹を詰めて焼くには確かな方法ですが、サン・バルテルミー島の唯一の伝統配合ではなく、そう紹介するつもりもありません。
このレシピは、編集部ではまだ試作していません。もとにしたレシピには内部の食い違いもあります。材料欄は卵1個、作り方は卵黄を加える、という書き方です。この記事では卵を1個用意し、卵黄を使います。これは編集上の選択で、理由は「この料理と、このレシピの出どころ」の節で説明します。
この料理に使える食材・調味料
道具
- 大きな鍋
- 蟹を冷ますバットまたは網
- キッチンばさみとシーフード用のピック
- 包丁とまな板(千切り器があれば使ってもかまいません)
- ソテー用のフライパン
- ボウル
- オーブンと天板
- 料理用温度計
選び方と代用
以下の代用は、いずれも試していない提案です。
- ほかの蟹。 ブラウンクラブはどこでも売っているわけではありません。魚屋の丸ごとの蟹でも作れますが、身の量、塩気、食感は種類で変わります。
- 加熱済みの蟹、蟹の身。 生きた蟹を加熱したくなければ、すでに加熱された蟹を買い、手順2から始めます。蟹の身だけを使うのがいちばん手軽ですが、料理としては別物になります。甲羅がなければ耐熱皿で焼くことになり、皿に盛ったときの見た目が変わります。
- 冷凍の蟹。 解凍と加熱はパッケージの表示に従い、使うまで冷たく保ちます。
- パン。 白いパンが無難です。ほかの種類のパンでは具の仕上がりが変わります。
- エスプレット唐辛子。 手に入らなければ省くか、好みのほかの乾燥唐辛子を使います。どちらにしても、クールブイヨンの味は少し変わります。
- じゃがいも。 品種によって、具の水分と食感が変わります。
食べ方:焼きたてを

温度の確認に合格したら、熱いうちに甲羅ごと出します。食べる前に、具と甲羅の境目に殻の破片が残っていないか見てください。このレシピには決まった付け合わせはないので、添えるものはお好みで決めてかまいません。
うまくいかないとき
| 気づくこと | 考えられる理由 | 対処 |
|---|---|---|
| 具がペースト状に見える | 混ぜすぎ | 全体がまとまるまでやさしく混ぜるだけにし、蟹は粗いまま残す |
| 野菜に焼き色がつく | 火が強すぎる | 火を弱める。細切りは淡い色のまま、わずかに透き通る程度に |
| パンがべたつく | 牛乳が多すぎる | もう一度絞る。次回は牛乳を少なめに始め、パンが吸う分だけ足す |
| 殻のかけらを感じる | 殻出しで見落とした | 混ぜる前に、身をもう一度ていねいに探って取り除く |
| 表面は焼けたのに中心が75°C未満 | 表面のほうが中心より早く色づいている | 範囲の低いほうの180°Cで焼き、中心が75°Cで1分以上になるまで続ける |
安全な扱い、アレルゲン、残りの扱い
卵黄は生のまま具に入り、オーブンで初めて火が通ります。75°Cの確認は省かないでください。 高齢の方、2歳以下の乳幼児、妊娠中の方、免疫機能が低下している方に出す場合は、とくに大切です。日本の食品安全委員会は、これらの方には生卵を避け、十分に加熱した卵料理を選ぶよう勧めています。生や加熱不十分の甲殻類も、これらの方には出さないでください。
- 加熱。 厚生労働省は、家庭での調理のめやすとして、中心部が75°Cで1分以上としています。
- 手と道具。 同じ手引きでは、肉、魚、卵を扱う前と後に手を洗うようにとあります。生の肉や魚を切ったあとの包丁やまな板は洗い、熱湯をかけてから使い直します。
- 魚介を冷たく保つ。 まず表示と販売元の保存方法に従います。家庭の冷蔵庫については、厚生労働省のめやすは10°C以下です。フランス農業省は、冷蔵の魚介類についてより厳しい上限を表で定めていて、+2°Cまたは融けつつある氷の温度としています。また、低温でもリステリアが増えうると注意しています。
- 残り。 浅い容器に小分けして早く冷まし、10°C以下で冷蔵します。温め直すときは75°C以上にします。保存日数は決めていません。使った資料に、この料理についての日数が書かれていないからです。
- アレルゲン。 この料理には甲殻類、卵、乳(バターを含む)が入ります。パンとパン粉は小麦を含む場合があるので、市販品は表示を確認してください。
アレンジ
以下はどれも地域の伝統ではなく、編集上の案で、試してもいません。
- 蟹を粗めに。 蟹を大きめの塊で残すのがこのレシピにいちばん合い、おすすめの形です。
- 加熱済みの蟹の身を耐熱皿で。 いちばん手軽ですが、甲羅に盛る見せ方はなくなります。
- ラルドンを加える。 もとにしたレシピには、ラルドン(脂身つきのベーコン)が任意の材料として載っています。この記事のレシピには入れていませんが、フランス風の比較として気になる方の参考になります。
- グルテンを避ける。 パンとパン粉を替えたり省いたりすると、食感もつなぎも変わるので、別の料理と考えてください。
この料理をよりカリブらしく見せるために、トマトやウスターソースなどの味をあえて足していません。アンティル風の一皿は、きちんと記録された完全なレシピで、あらためて取り上げる価値があります。
この料理と、このレシピの出どころ
フランスの公式観光サイトFrance.frは、サン・バルトの食を、フランスの調理技法と地元の産物の組み合わせとして紹介しています。そこにはcrabes farcisが、魚のブーダン、アクラ、塩鱈入りのクリストフィーヌと並んで挙げられています。これは、島の食卓を訪れる人に紹介するとき、この料理が含まれているということを示すにとどまります。料理の起源を示すものではありません。 由来の話、家庭の伝統、祭りとの結びつき、漁の季節も確かめられなかったので、書いていません。比べられる島のレシピも見つけていないため、サン・バルトの味つけがほかとどう違うかについても、何も言えません。
ここで使ったレシピは、Meilleur du Chefの2人分「Crabe farci」(Chef Philippe)に従っています。フランスの一般的なレシピで、分量と手順が具体的なことから選びました。Éditions Larousseにも、かなり違うcrabes farcisがあります。蟹4匹分で、クールブイヨンに白ワインを使い、きのこ、生クリーム、カレー、パプリカ、パルメザンも入ります。これらは混ぜず、一つの筋の通ったレシピにしました。
もとのレシピに空白があった箇所と、食品衛生のために変えた箇所は、編集上の判断です。
- 卵。 フランス語の材料欄は 1 œuf entier(全卵1個)、発行元の英語版は「1 egg」です。作り方は、どちらの言語版も卵黄を加えます。その手順の写真には、卵黄1個の周りに透明でつやのある液体が写っているため、卵白が少し混じっている可能性は否定できません。Larousseの別のレシピは、つなぎが卵黄のみで、蟹4匹に3個です。これらを根拠に卵黄を使いますが、疑問が解消されたわけではありません。
- 味見。 もとのレシピは、卵黄を加えたあとに味を調えます。生卵入りの具を誰も味見しないよう、味見を卵黄の前に移しました。
- ブーケガルニ。 材料欄にはありますが、鍋に入れるものとして手順には名前が出てきません。鍋に入れるのは編集部の補いです。
- 仕上げ。 もとのレシピには焼き時間がありません。時間を作らず、温度計での確認を終点にしました。
よくある質問
クラブ・ファルシはサン・バルト独自の料理ですか?
そうだとは言えません。France.frは、島で味わえるカリブの料理の一つとして紹介していますが、独自の起源や島だけの配合は確認できませんでした。
ブラウンクラブ以外の蟹でも作れますか?
作れます。ただし、もとのレシピが認めている代用ではなく、編集上の代用です。魚屋の丸ごとの蟹や加熱済みの蟹の身でも作れますが、種類によって身の量、塩気、食感が変わります。
甲羅がない場合はどうしますか?
耐熱皿で焼きます。食卓での見た目は変わりますが、75°Cの確認は同じように必要です。
焼き時間は何分ですか?
もとのレシピに分数はなく、180〜200°Cで表面に焼き色がつくまで、とあるだけです。焼き色がついたら、中心が75°Cで1分以上保たれていることを確かめてください。レシピ全体の所要時間は1時間と書かれていますが、蟹の冷却と殻出しに、もっとかかるかもしれません。
卵は全卵ですか、卵黄だけですか?
もとのレシピの材料欄は卵1個、作り方は卵黄を加える、となっています。この記事は、作り方の記述とLarousseの卵黄のみのつなぎに従います。卵白の使い道はレシピにないので、提案もしていません。全卵にしたい場合は、その材料とその手順だけを替えてください。試していないので、具の仕上がりがどう変わるかはわかりません。
このレシピは試作済みですか?
いいえ、この版は試作していません。時間だけに頼らず、見た目の合図と温度計を頼りにしてください。
















