ミキサーの中で、トマティーヨとパクチー、青ねぎ、青唐辛子が回りはじめると、あっという間に鮮やかな緑のソースができあがります。そこへ炒ったかぼちゃの種とごまの粉、水に浸したトルティーヤを加えると、ソースは少しくすんだ深い緑色に変わり、とろりと重くなります。ほぐした鶏肉を鍋に戻してこのソースで煮込めば、グアテマラのマヤの人々が受け継いできた緑のシチュー、ホコン(jocón)のできあがりです。白いごはんとトルティーヤを添えて食べます。
「緑のソース」を意味する、マヤの煮込み

ホコンという名前は、マヤ系の言語のひとつキチェ語の「jok om」に由来し、「緑のソース」を意味するといわれます。グアテマラの新聞プレンサ・リブレは、ホコンをミルトマテ(トマティーヨ)、ピーマン、青ねぎ、パクチー、セロリといった緑の材料で作る料理として紹介しています。名前のとおり、皿の上の色がそのまま料理の個性です。
グアテマラでは、こうした煮込みのソースを「レカド(recado)」と呼びます。古都アンティグアの写真家ルディ・ヒロンは、ブログの中で、茶色いレカドで煮るペピアンを「茶色いマヤのカレー」、ホコンを「緑のマヤのカレー」と呼び分けています。カレーという言い方はたとえですが、炒った種と香味野菜をすりつぶしてソースにするという作り方は、たしかにスパイスを炒ってすり合わせるカレーにも通じます。
グアテマラで「ミルトマテ(miltomate)」と呼ばれるのは、メキシコでいうトマティーヨのこと。ほおずきのような薄い皮に包まれた緑の実で、さわやかな酸味があります。パクチー(コリアンダー)は、グアテマラでは「クラントロ(culantro)」と呼ばれることもあります。
儀礼の料理から、ウェウエテナンゴの名物へ

プレンサ・リブレによると、ホコンはもともと儀礼の場でだけ作られる料理でした。それが時代とともに日常の食卓へ広がり、グアテマラ北西部、メキシコと国境を接するウェウエテナンゴ県を代表する料理になったといいます。
伝統的なホコンは、雌鶏(ガジーナ)の肉で作り、トウモロコシの小さなタマル(タマリート)を添えて食べます。一方、スペインの影響を受けた版では、若鶏を使い、白いごはんと合わせます。タマリートかごはんかで、料理がたどってきた歴史の層が見えるのが面白いところです。今回は、日本で作りやすい鶏肉とごはんの組み合わせで紹介します。
日本の台所で再現するときの一番の壁は、トマティーヨです。生の実は日本ではほとんど見かけませんが、缶詰や瓶詰めのトマティーヨなら通販で手に入ります。これがあれば、グアテマラの緑のソースにかなり近づけます。
途中で見つける、味の決め手
ソースの色ととろみを決めるコツ

ホコンのソースの色は、パクチーと青ねぎの量でほぼ決まります。パクチーは茎ごとたっぷり入れるのがこつです。茎にも香りがあり、ソースの色も濃くなります。長く煮込むほど緑色はくすんでいくので、煮込み時間は20分前後にとどめましょう。
とろみは、トルティーヤと種の粉が担当しています。ソースが薄いと感じたら、トルティーヤ1枚を追加で水に浸してミキサーにかけ、鍋に加えてください。逆に濃すぎるときは、ゆで汁でのばします。
味見をして酸味が物足りなければ、ライム果汁を小さじ1〜2加えると、さわやかさが足せます。
種とごまは、炒りすぎると苦みが出て、ソースの色も茶色っぽくなります。薄く色づいた段階で火から下ろすのが、緑色を保つためのポイントです。
豚肉で、ごまだけで — アレンジのしかた

鶏肉の代わりに、角切りの豚肩ロースでも作れます。豚肉はほぐさずにそのまま使い、柔らかくなるまで鶏肉より長めにゆでてください。脂のうまみがソースに溶け込み、こってりとした仕上がりになります。
かぼちゃの種が手に入らないときは、ごまを1/2カップに増やします。ごまの代わりに練りごまやタヒニを使う場合は、量を少し控えめにしてください。どちらの場合も、香ばしさの軸は炒った種にあるので、炒る工程は省かないのがおすすめです。
よくある質問

トマティーヨがなくても作れますか?
トマティーヨの酸味と青い香りがホコンの味の土台なので、できれば缶詰を用意してください。トマティーヨの代わりになる食材は日本では見つけにくいので、缶詰か瓶詰めを通販で取り寄せるのが確実です。
辛さは調整できますか?
青唐辛子の本数で調整します。辛いのが苦手なら1本にし、種とわたをきれいに除いてください。辛くしたいときは本数を増やします。
作り置きできますか?
冷めたら密閉容器に入れて冷蔵し、温め直すときは水かゆで汁を少し足してのばします。保存日数のはっきりした目安は示せないので、早めに食べきってください。温め直すと緑色はさらに落ち着くので、刻んだパクチーを散らすと見た目が戻ります。
ミキサーがない場合は?
ハンドブレンダーでも作れます。深めの容器に材料を入れ、少しずつ攪拌してください。すり鉢で作る場合は、種の粉とパクチー、青ねぎを先にすりつぶしてから、トマティーヨとトルティーヤを加えます。













