マヤの血を引くシチュー、ペピアン
グアテマラシティの旧市街。石畳の路地にある小さな食堂に入ると、焦がしたスパイスの複雑な香りが充満しています。鉄鍋の中で赤褐色のソースがゆっくりと煮えている。ソースの表面にはかぼちゃの種のオイルが光り、その中に鶏肉の塊と野菜が沈んでいる。これがペピアン(Pepián)、グアテマラの国民食です。
ペピアンはかぼちゃの種(ペピタ)とごまをベースにした種子ソースで鶏肉と野菜を煮込む料理です。トマト、唐辛子、シナモン、クローブなどのスパイスを焼いてからすり潰し、かぼちゃの種・ごまと合わせて濃厚なソースを作る。このソースが他のどの料理とも似ていない、独特の風味を生み出します。ナッツのコクとスパイスの複雑さが融合した味わいは、一度食べたら忘れられません。
ペピアンはマヤ文明から受け継がれた古代の料理です。スペイン植民地化以前から、マヤの人々はかぼちゃの種を料理に使っていました。ペピアンの名前自体が「ペピタ(pepita=かぼちゃの種)」に由来しています。グアテマラは中米で最もマヤ文化が色濃く残る国であり、ペピアンはその食文化の結晶です。
スペイン語の「pepita(かぼちゃの種)」が語源。グアテマラの祝祭料理で、結婚式・洗礼式・聖人祝日などの特別な日に作られる。かぼちゃの種・ごま・唐辛子・トマトをベースにした赤褐色のソースで鶏肉(または七面鳥)と野菜を煮込む。メキシコのモレ・ポブラノと同じ「種子ベースのソース」文化圏に属するが、味わいは全く異なる。

材料(4人分)
メイン
| 材料 | 分量 | 代替・備考 |
|---|---|---|
| 鶏もも肉(骨付き) | 600 g | 骨なしでも可。骨付きの方がダシが出る |
| チャヨテ(はやとうり) | 1 個 | ズッキーニで代用可 |
| じゃがいも | 2 個(中) | 4等分 |
| いんげん | 100 g | 5cm長さに切る |
| にんじん | 1 本 | 乱切り |
| 水 | 800 ml | 鶏ガラスープでも可 |
ペピアンソース
| 材料 | 分量 | 代替・備考 |
|---|---|---|
| かぼちゃの種(殻なし) | 80 g | ロースト済みでも可 |
| 白ごま | 30 g | — |
| トマト | 2 個(中) | またはホールトマト缶200 g |
| 玉ねぎ | 1/2 個 | — |
| にんにく | 3 片 | 皮付きのまま焼く |
| 赤唐辛子(乾燥グアヒージョ) | 3 本 | 韓国産乾燥唐辛子で代用可 |
| シナモンスティック | 1/2 本 | シナモンパウダー小さじ1/4 |
| クローブ | 2粒 | — |
| 黒こしょう(粒) | 小さじ1/2 | — |
調味料
| 材料 | 分量 | 備考 |
|---|---|---|
| 塩 | 小さじ1 | 味を見て調整 |
| サラダ油 | 大さじ2 | — |
かぼちゃの種(パンプキンシード/ペピタ)はカルディ、成城石井、Amazonで購入できます。「殻なし」「ローストなし」のものが理想ですが、ローストかぼちゃの種でも問題なく使えます。製菓用のかぼちゃの種は量が少ないので、ナッツ・シード類のコーナーで大袋を探してください。100 gあたり200〜400円程度です。

この料理に使う食材・道具


調理手順
フライパンを中火で熱し、かぼちゃの種を乾煎りする。ぷっくりと膨らんで香ばしい匂いがしてきたら取り出す(約3分)
焦がさないように常にフライパンを振り続ける。焦げると苦味が出てソース全体が台無しになる。

同じフライパンで白ごまを乾煎りする。きつね色になったら取り出す(約2分)。続けてシナモン、クローブ、黒こしょうも30秒ほど乾煎りして取り出す
ごまは焦げやすいので目を離さない。スパイス類は香りが立った瞬間に取り出す。

乾燥唐辛子のヘタと種を取り除き、フライパンで両面を30秒ずつ焼く。焼けたら水に10分浸けて柔らかくする
唐辛子は焦がすと極端に苦くなる。数秒で色が変わるので注意。種を取り除くと辛さがマイルドになる。

トマトと玉ねぎを半分に切り、にんにくは皮付きのまま、フライパンで焼く。表面に黒い焦げ目がつくまでしっかり焼く(片面5分ずつ)
焦げ目がソースの「スモーキーさ」を生む。グアテマラでは直火で焼くが、フライパンでも十分。

焼いた材料を全てブレンダーに入れる。水戻しした唐辛子も加え、水150mlと一緒に滑らかになるまで撹拌する
粒が残らないようしっかり撹拌する。ブレンダーが回りにくい場合は水を少し足す。滑らかなペースト状になったらOK。

鍋にサラダ油を熱し、ブレンドしたソースを一気に流し入れる。中火で10分、時々かき混ぜながら炒め煮する。色が濃くなり油が浮いてきたらソース完成
ソースを炒めることで水分が飛び、味が凝縮される。これはメキシコの[モレ・ポブラノ](/recipes/south-america/mexico/mole-poblano)と同じ技法。

ソースに水650mlを加え、鶏肉・にんじん・じゃがいも・チャヨテを入れる。蓋をして中火で40分煮込む。最後にいんげんを加えて5分煮込み、塩で味を調えて完成
チャヨテ(はやとうり)がなければズッキーニで代用。煮崩れやすいので大きめに切る。

この料理の歴史 — マヤ文明から続く種子ソースの伝統
ペピアンの歴史はマヤ文明に遡ります。3,000年以上の歴史を持つ料理です。
マヤの人々は紀元前からかぼちゃを栽培していました。かぼちゃは「ミルパ(milpa)」と呼ばれるマヤの三姉妹農法(トウモロコシ・豆・かぼちゃの混作)の一角を担う重要な作物でした。かぼちゃの実は食用に、種は料理のソースや栄養源として使われました。マヤの古典期(250〜900年)の遺跡から出土した食器の残留物分析で、かぼちゃの種を使ったソースの痕跡が確認されています。

1524年、スペインのコンキスタドール、ペドロ・デ・アルバラードがグアテマラを征服しました。スペイン人は豚肉、牛肉、シナモン、クローブ、黒こしょうなどを持ち込みました。マヤの先住民料理にスペインのスパイスが融合し、現在のペピアンの形が生まれました。ペピアンはメスティーソ(先住民とスペイン人の混血)文化の象徴です。マヤの種子ソースにスペインのスパイスが加わることで、どちらの文化にも属さない独自の味が誕生しました。
植民地時代のグアテマラでは、ペピアンはカトリックの祝祭日に作られる特別料理でした。マヤの先住民はカトリックに改宗させられましたが、食文化まで征服されることはありませんでした。カトリックの聖人祝日にマヤ由来のペピアンを食べる。これは先住民の静かな文化的抵抗であり、食を通じたアイデンティティの維持です。
グアテマラは1821年にスペインから独立しますが、先住民の政治的・経済的周縁化は続きました。20世紀後半の内戦(1960〜1996年)は先住民マヤに壊滅的な打撃を与えました。しかしペピアンは消えませんでした。避難先でも、亡命先でも、マヤの人々はペピアンを作り続けました。料理は人間が最後まで手放さない文化の一つです。
1996年の和平合意後、グアテマラ政府はマヤ文化の復興を推進しました。ペピアンはグアテマラの無形文化遺産として認定され、国の公式行事でも提供される料理となりました。アンティグア(旧首都)の料理学校では、ペピアンの伝統的な調理法を学ぶコースが人気を集めています。
近年、グアテマラ出身のシェフたちがペピアンを国際的な舞台で紹介しています。ニューヨーク、ロサンゼルス、マドリードのレストランで「古代マヤのシチュー」として提供され、フードジャーナリストの注目を集めています。しかしペピアンの本質は高級レストランにはありません。グアテマラの村の台所で、おばあちゃんが石臼でかぼちゃの種を潰す、その音と香りの中にあります。
メキシコのモレ・ポブラノは30種以上のスパイスとチョコレートを使う複雑な料理。ペピアンはかぼちゃの種とごまが主役で、チョコレートは使いません。味の方向性も異なります。モレは「甘い・辛い・苦い」が渾然一体。ペピアンは「ナッツのコク・スモーキーさ・穏やかな辛み」が主軸。どちらもメソアメリカの種子ソース文化に属しますが、別系統の料理です。
調理のコツ — 完璧なペピアンを作るための5つの技術

1. 「焼き」が全てを決める
ペピアンの味の8割は焼きの工程で決まります。かぼちゃの種、ごま、唐辛子、トマト、玉ねぎ、にんにく――全ての材料を焼いてから使う。この「焼く」行為がメイラード反応を引き起こし、生のまま使った場合とは次元の異なる味の深みを生み出します。グアテマラの料理人は「ペピアンは焼きの料理だ」と言い切ります。
2. かぼちゃの種は「パチパチ」が完了の合図
かぼちゃの種を乾煎りすると、最初は何も起きません。2分ほどするとフライパンの中でパチパチと音がし始めます。この音は種の内部の水分が蒸発している証拠。パチパチが始まったら20秒後に火を止めて取り出す。色がきつね色に変わっていればOK。焦がすと苦味が出て取り返しがつきません。
3. ソースは「炒め煮」する
ブレンドしたソースを鍋にそのまま入れて水で伸ばす人がいますが、それは間違いです。ソースは油で10分間炒め煮してから水を加える。炒めることでソースの水分が飛び、味が凝縮されます。色が暗い赤褐色に変わり、表面に油が浮いてきたらソースの「炒め」は完了。モレ・ポブラノでもソースを炒める工程がありますが、同じ原理です。
4. チャヨテ(はやとうり)は大きめに切る
グアテマラのペピアンに欠かせない野菜がチャヨテ(はやとうり)です。日本では沖縄や九州のスーパーで見つかることがあります。入手できない場合はズッキーニで代用。チャヨテは火が通りやすいので大きめに切り、煮崩れを防ぎます。エンパナーダの具材のように細かく刻む必要はありません。
5. トルティーヤと一緒に食べる
ペピアンの正式な食べ方は、温かいコーントルティーヤを添えて食べることです。トルティーヤでソースをすくい、鶏肉と一緒に口に運ぶ。白いご飯にかけて食べても美味しいですが、トウモロコシの香りとペピアンの種子ソースの組み合わせは3,000年の歴史が証明した最適解。市販のトルティーヤで十分です。
ペピアンのバリエーション — グアテマラの「ソース文化」
グアテマラには「レカド(recado)」と呼ばれるスパイスソースの伝統があり、ペピアンはその一つです。

グアテマラの代表的なソース料理
| 名称 | ソースの主成分 | 特徴 |
|---|---|---|
| ペピアン | かぼちゃの種・ごま | 本記事のレシピ。最も伝統的 |
| ホコン(Jocón) | トマティーヨ・コリアンダー | 緑色のソース。爽やかな酸味 |
| カクイック(Kaq'ik) | トマト・唐辛子 | ケクチ族の七面鳥スープ。赤い |
| プラターノス・エン・モレ | チョコレート・唐辛子 | メキシコのモレに近い甘辛ソース |
グアテマラの「レカド」文化はメキシコの「モレ」文化と同じルーツを持ちます。メソアメリカ(中米先住民文明圏)では、種子・唐辛子・トマトを石臼で潰してソースを作る伝統が数千年続いています。メキシコがモレを極端に複雑化させた(30種以上のスパイス)のに対し、グアテマラのペピアンは素材の数を絞ってそれぞれの味を際立たせる方向に進化しました。
ペピアンの姉妹料理であるホコンは、トマティーヨ(緑のトマト)、コリアンダー、青唐辛子をブレンドした緑のソースで鶏肉を煮込みます。日本ではトマティーヨの代わりに青いトマト(または酸味の強いトマト)にレモン汁を足して代用可能。ペピアンとホコンを両方作れば、グアテマラの食卓が完成します。
ペピアンの食文化 — グアテマラの祝祭と日常
ペピアンはグアテマラの祝祭と日常の両方に存在する料理です。
結婚式のペピアン。 グアテマラの伝統的な結婚式では、ペピアンが最も重要な料理です。花嫁の母親と祖母が数日前から準備を始め、石臼でかぼちゃの種を潰し、トマトを直火で焼き、大鍋でソースを仕込む。結婚式当日、大勢の招待客のために大鍋いっぱいのペピアンが振る舞われます。「良いペピアンを出す家は良い家族だ」とグアテマラ人は言います。
万聖節(11月1日)のペピアン。 グアテマラではメキシコと同様に「死者の日」を祝います。墓地で凧を揚げ、花を供え、そして家族でペピアンを食べる。亡くなった家族のために一皿余分に盛り付け、食卓の空席に置く。ペピアンは生者と死者を繋ぐ料理でもあります。
セマナ・サンタ(聖週間)のペピアン。 キリスト教の復活祭前の一週間、グアテマラでは壮大な行列が街を練り歩きます。アンティグアのセマナ・サンタは世界的に有名で、石畳の上に花びらやおがくずで精巧な「絨毯(アルフォンブラ)」が敷かれます。この祝祭期間中もペピアンは食卓に登場しますが、断食の金曜日には魚で作るペピアンが提供されます。

先住民マヤの誇り。 グアテマラの人口の約40〜50%が先住民マヤです。ペピアンはマヤのアイデンティティの食の表現。特にケクチ族やキチェ族の村では、古代の石臼(メタテ)でかぼちゃの種を潰す伝統が今も守られています。電動ブレンダーを使えば数分の作業ですが、メタテで30分かけて潰すソースの方が「味が違う」と年配者は主張します。
屋台のペピアン。 観光地アンティグアの中央市場には、ペピアンを売る屋台が並びます。一皿25〜40ケツァル(約450〜720円)。白いご飯とコーントルティーヤが添えられ、ボリューム満点。地元の労働者から観光客まで、あらゆる人がペピアンの鍋の前で立ち止まります。セビーチェがペルーの屋台の顔であるように、ペピアンはグアテマラの屋台の顔です。
本場グアテマラでは鶏肉ではなく**七面鳥(chompipe)**で作るペピアンが最も格式が高い。七面鳥はメソアメリカ原産の家禽で、マヤの時代から飼育されていました。日本では七面鳥は入手困難なため鶏肉で代用しますが、クリスマスシーズンに七面鳥が手に入ったらぜひペピアンに挑戦してください。
食材の入手ガイド — ペピアンの材料を日本で揃える

ペピアンの材料はほぼ日本のスーパーで入手可能ですが、かぼちゃの種と乾燥唐辛子は少し探す必要があります。
主要材料の入手先
| 材料 | 入手先 | 価格目安 |
|---|---|---|
| かぼちゃの種(殻なし) | カルディ・Amazon・成城石井 | 800〜1,500円/500g |
| 白ごま | スーパー | 200〜300円/100g |
| 乾燥唐辛子(グアヒージョ) | カルディ・Amazon・業務スーパー | 500〜800円/100g |
| シナモンスティック | スーパー | 200〜400円 |
韓国産の乾燥唐辛子(粉唐辛子ではなく丸ごとの乾燥唐辛子)で代用する場合は、辛さがマイルドなので本数を5本に増やしてください。
代用テクニック
| 材料 | 代用品 | 仕上がりの違い |
|---|---|---|
| グアヒージョ唐辛子 | 韓国乾燥唐辛子(5本) | やや甘い仕上がり。十分代用可 |
| チャヨテ | ズッキーニ | 食感は近い。味はやや異なる |
| シナモンスティック | シナモンパウダー小さじ1/4 | 香りの広がり方が微妙に異なる |
| 石臼(メタテ) | フードプロセッサーorブレンダー | 粒感の違い。ブレンダーの方が滑らか |
よくある質問

Q1. ペピアンはモレの一種?
厳密には異なります。モレはメキシコ固有の呼称で、30種以上のスパイスとチョコレートを使う極めて複雑な料理。ペピアンはグアテマラの料理で、かぼちゃの種とごまが主役。チョコレートは使いません。ルーツは同じメソアメリカの種子ソース文化ですが、別の進化を遂げた別系統の料理です。
Q2. かぼちゃの種の代わりにナッツは使える?
カシューナッツや松の実で代用できますが、味は大きく変わります。かぼちゃの種特有の青っぽい風味がペピアンの核心。ナッツで代用すると「美味しいけどペピアンではない」別の料理になります。できる限りかぼちゃの種を使ってください。
Q3. 辛さは調整できる?
乾燥唐辛子の種を取り除けばマイルドになります。唐辛子の本数を減らすことでも調整可能。グアテマラのペピアンは激辛ではなく「穏やかな辛み」が特徴です。モレ・ポブラノのように複雑なスパイスの奥に辛みが隠れるのではなく、ペピアンの辛みは種子のコクの後ろに静かに存在します。
Q4. 翌日は美味しくなる?
はい。ペピアンは翌日が最も美味しい料理です。種子ソースが一晩かけて鶏肉に染み込み、味の一体感が増します。冷蔵で3日間保存可能。温め直しは弱火で。水分が飛んでいたら水を足してください。
Q5. ご飯とトルティーヤ、どちらが正式?
トルティーヤが正式です。マヤ文明のトウモロコシ文化圏であるグアテマラでは、コーントルティーヤが主食。ご飯にかけるスタイルはスペイン植民地化以降の習慣です。どちらでも美味しいですが、トルティーヤの方がペピアンの風味を引き立てます。
Q6. グアテマラ料理をもっと知りたい
ペピアンの姉妹料理であるホコン(緑のソースの鶏煮込み)、カクイック(七面鳥のトマトスープ)がグアテマラの三大料理。中米圏ではモレ・ポブラノ(メキシコ)、モフォンゴ(プエルトリコ)、ジャークチキン(ジャマイカ)など、先住民・アフリカ・スペインの文化が融合した料理群が豊富です。
Q7. ペピアンに合う飲み物は?
グアテマラコーヒー(アンティグア産やウエウエテナンゴ産)が最高の組み合わせ。食後のコーヒーとして。食事中にはオルチャタ(米と砂糖とシナモンのドリンク)が伝統的。アルコールならグアテマラのラム酒「ロン・サカパ」のソーダ割りが合います。
参考文献

英語圏の文献・記事を中心に、以下を参考にしました。
- Pepián - Wikipedia (English) — ペピアンの歴史・バリエーション・文化的文脈の包括的解説
- Guatemalan Pepian Recipe - Serious Eats — 調理科学に基づくレシピ解説
- Pepian de Pollo - 196 Flavors — グアテマラの食文化コンテキスト
以下の書籍も参考にしました。
- Coe, S. D. (2015). America's First Cuisines. University of Texas Press. — メソアメリカの食文化史
- Pilcher, J. M. (2012). Planet Taco: A Global History of Mexican Food. Oxford University Press. — 種子ソース文化の比較研究
関連記事 — 中南米のスパイス煮込み

メソアメリカの種子ソース: モレ・ポブラノはメキシコの代表料理で、30種以上のスパイスとチョコレートを使う極めて複雑なソース。ペピアンと同じ「種子ソース」の系譜だが、味わいは全く異なる。両方作り比べることでメソアメリカの食文化の幅が理解できる。
カリブ海・中米の料理: ジャークチキンはジャマイカのスパイスグリル。モフォンゴはプエルトリコのプランテンのマッシュ。エンパナーダはアルゼンチンの包みパイで、スペイン経由で中南米全域に広まった料理。
南米の伝統料理: セビーチェはペルーの魚介マリネ。ロモサルタードはペルーの牛肉炒め。フェイジョアーダはブラジルの黒豆シチュー。パステル・デ・チョクロはチリのトウモロコシパイで、ペピアンと同じくトウモロコシ文化圏の料理。
まとめ — 3,000年の種子ソースをあなたのキッチンで

ペピアンはかぼちゃの種とごまから生まれる、世界でも類を見ない独特のシチューです。3,000年以上前、マヤの人々がかぼちゃの種を石臼で潰してソースを作ったその日から、ペピアンの歴史は始まりました。スペインの征服、植民地時代、内戦、そして現代のグローバル化を経ても、グアテマラの人々はペピアンを作り続けています。
日本のキッチンでかぼちゃの種をフライパンで乾煎りするとき、パチパチと弾ける音がします。その音は3,000年前のマヤの台所でも同じように響いていたはずです。かぼちゃの種を焼き、トマトを焼き、唐辛子を焼く。焼いた全てをすり潰してソースにする。その素朴な工程の中に、メソアメリカ文明の食の叡智が凝縮されています。スーパーで手に入る材料で、マヤから続く種子ソースの伝統を自宅で再現できる。それがペピアンの面白さです。



