大鍋からパスタをゆでる湯気が立ち、フライパンではバターでマッシュルームが音を立てています。イタリア系の移民が多く暮らしてきたウルグアイの首都モンテビデオで、レストランのメニューにも家庭の食卓にも登場するのが、肉を包んだ小さなパスタ、カペレッティに、ハムとマッシュルームのクリームソースをたっぷりからめた一皿。イタリアではなくウルグアイで生まれたパスタ料理、カペレティス・ア・ラ・カルーソ(capeletis a la Caruso)です。
ソースの名前は、20世紀初めに世界的な人気を誇ったイタリアのテノール歌手、エンリコ・カルーソにちなみます。とはいえ、カルーソ本人はこの料理を一度も食べていません。市販の肉入りトルテッリーニかカペレッティを使えば、ソースは20分ほどで仕上がります。
テノール歌手の名をもらったモンテビデオのソース

スペイン語版ウィキペディアによると、ナポリ出身のテノール歌手エンリコ・カルーソがモンテビデオを訪れたのは1915年のことです。街は大歓迎で迎え、新聞は熱のこもった賛辞を並べました。イタリア人で美食家だったカルーソは、滞在中にパスタを中心にさまざまな料理を味わったといいます。
ソースが生まれたのは、それからおよそ40年後の1954年です。モンテビデオのコンスティトゥジェンテ通りとタクアレンボ通りの角にあったレストラン「マリオ・イ・アルベルト」で、ピエモンテ出身の料理長ライモンド・モンティが、生クリーム、刻んだハム、バターで炒めたマッシュルーム、そして大さじ1杯のビーフエキスでソースを作り、カルーソに敬意を表して名前をつけました。こうしてカペレッティにこのソースをかけた料理が生まれた、と同じ記事は伝えています。
アメリカの料理メディア、テイスティング・テーブルによると、モンティのソースで特に新しかったのは、リービッヒ社のビーフエキスを使ったことでした。肉の濃縮エキスで、モンテビデオの近くで製造され、20世紀を通じてウルグアイの主要な産業のひとつだったといいます。ウルグアイの牧畜とイタリアの料理が、ひとつのソースの中で出会ったわけです。
その後、料理講習会などを通じてカルーソソースは近隣の国々にも広まり、アルゼンチンやブラジルでも食べられるようになりました。テイスティング・テーブルは、このソースがウルグアイのガストロノミー協会によって文化遺産に登録されていると書いています。イタリア料理を土台にしながら、ウルグアイにしかない一皿として受け継がれているのです。
レストランや家庭によって、作り方には幅があります。英語版ウィキペディアは、ナッツや玉ねぎを加える版や、ベシャメルソースにスパイス、くるみ、ハムを加えた簡単な版もあると紹介しています。テイスティング・テーブルは、白ワインを加える作り方や、ビーフエキスを入れない作り方にも触れています。
途中で見つける、味の決め手
ソースを分離させないコツ

カルーソソースは、材料が少ない分、火加減がそのまま仕上がりに出ます。生クリームを入れてからは弱めの中火で静かに煮詰めること、そしてチーズはパスタと合わせる最後に入れることが、なめらかに仕上げる2つの決まりです。
パルミジャーノは、ソースが煮立っているところに入れると固まってだまになります。パスタを入れて火を弱めてから加え、余熱で溶かすつもりでからめてください。
ソースが分離してしまったら、火を止めてゆで汁を大さじ2加え、木べらで手早く混ぜます。水分と脂肪がもう一度なじみ、つやが戻ることがあります。
くるみ入りや、ベシャメル仕立ての版

英語版ウィキペディアが紹介するように、くるみを加える版もあります。からいりして粗く刻んだくるみ30gを、仕上げにソースへ混ぜると、こくと香ばしさが加わります。ハムとくるみの組み合わせは、クリームの重さに歯ざわりを足すよいアクセントです。
テイスティング・テーブルによると、バターと小麦粉で作るルーに牛乳とチーズを合わせた、ベシャメル寄りの作り方もあります。生クリームを牛乳に替えたいときは、バター20gと薄力粉大さじ2を炒めてから牛乳400mlでのばし、とろみがついたら同じようにハムとマッシュルームを合わせてください。軽い仕上がりになります。
よくある質問

ビーフエキスがないときは?
顆粒のビーフコンソメ小さじ2で代用できます。テイスティング・テーブルによると、ビーフエキスを入れない作り方もあります。その場合は、仕上げに塩で味を調えてください。
白ワインを使わずに作れますか?
作れます。スペイン語版ウィキペディアが伝えるモンティの元のソースは、生クリーム、ハム、マッシュルーム、ビーフエキスで作られていて、白ワインは入っていません。同量の水に替えるか、省いてください。
作り置きできますか?
クリームソースは温め直すと分離しやすく、パスタも水分を吸ってやわらかくなるので、作りたてを食べるのがいちばんです。ソースだけなら冷蔵しておき、牛乳を少し足して弱火で温め直せます。保存日数のはっきりした目安は示せないので、早めに食べきりましょう。
アレルギーで気をつける材料は?
パスタに小麦と卵、ソースに乳(バター・生クリーム・チーズ)を使います。肉入りのパスタには、商品によって大豆などが含まれることもあるので、表示を確かめてください。












