小さく丸めた生地の真ん中を指でぎゅっと押し、油を張った鍋にそっと滑り込ませます。しばらくすると、生地はゆっくり浮かび上がってきます。弱めの火で淡い金色から深い金色へ。そこへ、カルダモンとサフランの香りをまとわせた温かいシロップが待っています。網の上で冷めていくうちに、表面のシロップはつやのある膜から細かな砂糖の殻へと変わり、菓子の輪郭がすっと変わっていきます。
これがバルシャヒ(बालूशाही)です。中央のくぼみはドーナツに少し似ていますが、中身は別物です。生地はmaida(中力〜薄力にあたる小麦粉、英語でall-purpose flour)、半固形のギー、冷たいダヒ(ヨーグルト)で作り、ほとんどこねません。低めの火でじっくり揚げ、やや濃いめの砂糖シロップに浸して仕上げます。目指すのは、外は砂糖の薄い結晶に包まれてさっくり、中はほろりとやわらかい食感です。
このレシピは、Dassana's Veg Recipesで公開されている一つの配合と手順に沿っています。配合の違うバルシャヒは他にもあり、文化の節で別の例として紹介しますが、このレシピとは混ぜていません。同じ国の料理はインドのページからどうぞ。
生地はこねずに軽くまとめ、低〜中弱火でじっくり中まで揚げ、熱いうちに温かいシロップへ浸します。そうすると、外側に薄い糖衣だけがつきます。
このレシピは世界ごはん紀行編集部では試作していません。分量、15分の休ませ時間、1回分12〜15分の揚げ時間、14〜15分の浸し時間は、いずれも元のレシピの目安です。鍋やコンロ、生地の大きさで結果は変わるので、時計だけに頼らず、色、固さ、生地の様子で判断してください。
この料理に使える食材・調味料
道具
- ボウル
- 生地を休ませるときにかける清潔な布またはふた
- シロップ用の小鍋
- 冷ましたシロップを試すスプーンと小皿
- カダイ(インドの揚げ鍋)または深めの鍋
- 穴あきお玉
- キッチンペーパー
- 冷ますための網または皿
選び方と代用
- 小麦粉: maida(all-purpose flour)を使います。強力粉は避けてください。やわらかい粉のほうがこの生地には向きますが、違う粉では食感が変わる可能性があります。
- ギー: 練るとなめらかになる程度の、溶けていない半固形のものを使います。無塩バターは香りも水分も違うため、同量で置き換えられるとは確認できていません。
- ヨーグルト: プレーンヨーグルトをダヒの代わりにできます。ホエイの量によって冷水の必要量が変わるので、水は少しずつ加えます。
- サフラン: 省いてカルダモンだけにしてもかまいません。シロップの香りは変わります。
- 揚げ油: 油でもギーでもかまいません。クセの少ない植物油は、ギーよりも香りが軽くなります。
- ピスタチオ: なくてもかまいません。ナッツなしでも菓子として成り立ちます。
うまくいかないとき
| 症状 | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 生地が固くなった | こねた、または強く押した | 粉気がなくなったら混ぜるのをやめ、軽い力で扱う |
| 生地がべたつく | 使ったヨーグルトに対して水が多い | 次回は水を少しずつ加える。元のレシピは粉を大さじ1〜2足して直すことを勧めている |
| 外側だけ先に色づき、中まで火が通らない | 油が熱すぎた | 生地片がゆっくり浮く状態を確かめ、火は低〜中弱火を保つ |
| 浸したあと、表面がべたべたする | シロップが薄く、吸いすぎた | 冷ましたしずくが指の間でべたつくまでシロップを煮詰める |
| 鍋の中でシロップが結晶化した | 浸す前または浸している間にシロップが固まった | 元のレシピは水大さじ2〜3を加え、弱火で温め直すことを勧めている |
| 冷めたら白い砂糖の殻ができた | 想定どおりの仕上がり | 元のレシピが描く、結晶化した糖衣そのもの |
バリエーション
- カルダモンだけにする: サフランを省いてカルダモンを残します。元のレシピはサフランを任意としています。香りと色は変わります。
- ピスタチオなし: 飾らなくても菓子として成り立ちます。
- ギーではなく油で揚げる: 元のレシピはどちらでもよいとしています。油はギーより香りが軽くなります。
- 水の量を調整する: 冷水大さじ8〜9のうち、ヨーグルトのホエイの量に応じて減らしたり増やしたりします。
後で紹介するチェナとセモリナ粉のバルシャヒは、この配合の代わりではなく別のレシピです。
バルシャヒ、バドゥーシャ、そして地域ごとのかたち
ここでは、バルシャヒを北インドの呼び名として扱います。Dassana's Veg Recipesは、南インドでバドゥーシャ(badusha)と呼ばれるごく近い菓子があると説明し、地域によって違いがあるとしています。これはそのサイトの説明であり、どの地域でも同じ配合・食感の菓子を作っているとは言いません。
同じ名前でも、まったく違う作り方が存在します。ビハール州政府観光局(Department of Tourism, Government of Bihar)は、シータマリー県ルンニ・サイドプルのバルシャヒを、チェナ(フレッシュなカード状のチーズ)、小麦粉、セモリナ粉で作り、砂糖シロップに浸す土地の菓子として紹介しています。観光局はこれを「centuries-old tradition(何世紀も続く伝統)」と呼んでいますが、年代や史料は示されていないため、確定した歴史としては扱いません。さらにNDTV Foodには、ヨーグルトを使わず、maida 1/2 kg、ギー300g、砂糖1/2 kg、重曹1/8 tspで作る別のレシピ(英語版とヒンディー語版)もあります。高火力で揚げはじめてから火を弱め、one-thread(1本糸)のシロップに5〜10分浸す方法です。どれも「これが唯一の本物のバルシャヒ」とは言えません。
同じ「バルシャヒ」でも、ヨーグルト入りの生地、チェナ入りの生地、ヨーグルトなしの生地と、土地や家庭によって中身が違います。北のバルシャヒと南のバドゥーシャも、近縁の菓子として並べて語られます。
バルシャヒという名前の由来や意味は、今回確認した資料からは分からなかったため、ここでは未確認としておきます。
食べ方と保存

室温まで冷めて、砂糖の衣が落ち着いてから供してください。
保存について、元のレシピの筆者は密閉容器に入れて室温で5〜6日という案を挙げています。これは筆者自身の提案であり、独立して確認された食品安全の基準ではありません。保存環境によっても変わります。作り置きするときは、清潔な密閉容器を使い、食べる前に状態を確かめてください。
よくある質問
ドーナツとどう違いますか?
中央のくぼみは似ていますが、このバルシャヒは低めの火でゆっくり揚げ、シロップに浸して薄い砂糖の衣を作ります。くぼみは指で押して作るもので、穴は貫通しません。
生地はこねたほうがいいですか?
こねません。粉気がなくなるまで軽く押してまとめ、覆って15分休ませます。強く扱うと生地が固くなりやすくなります。
1回に何分揚げますか?
元のレシピの目安は、低〜中弱火で1回分12〜15分です。返す前に片面が固まって淡い金色になること、全体がきつね色でかりっとすることも合わせて見てください。鍋や生地の大きさで差が出るので、時間だけでなく色や固さでも判断します。
シロップはどのくらい煮詰めればいいですか?
元のレシピが目指すのは、half-string(半糸)かone-string(1本糸)のとろみです。少量を皿にとって冷まし、指の間でべたつくか確かめてください。熱いシロップには触れないでください。シロップが薄いと菓子が吸いすぎて、外側がべたつきます。
バドゥーシャは別の菓子ですか?
南インドでの近縁の菓子の呼び名として説明されています。呼び名が重なっていても、どの地域でも同じレシピという意味ではありません。
どのくらい日持ちしますか?
元のレシピの筆者は、密閉容器で室温5〜6日を提案しています。これは筆者の提案であり、保証ではありません。容器を清潔に保ち、食べる前に状態を確かめてください。
















