広くて厚い鍋に全脂牛乳を入れ、弱火にかけます。縁には薄い膜が張り、数分おきにへらで牛乳へ押し戻します。そうしているうちに牛乳は少しずつ温かいクリーム色に変わり、鍋肌に張りつき、柔らかくふぞろいな粒が混ざってきます。これがバスンディ(グジャラート語で બાસુંદી。デーヴァナーガリーの बसुंदी など、表記には揺れがあります)、牛乳をじっくり煮詰めて作る甘いお菓子です。
米も、とろみをつける粉も使いません。とろみは蒸発だけで生まれ、食感は戻し入れた乳皮が作ります。バスンディについての乳製品科学の論文は、柔らかなフレークが散らばった煮詰め乳の菓子で、西インド、とくにマハーラーシュトラ州とグジャラート州で親しまれていると説明しています。この記事は「グジャラート風バスンディ」として公開されているレシピ1つに沿っています。地域のどの家庭にも当てはまる配合ではなく、ほかの公開レシピは分量も順序も違います(後半で比べます)。
このレシピは公開されている出典に沿ったもので、世界ごはん紀行編集部が試作したものではありません。時間は出典の目安です。時計だけに頼らず、量と、スプーンへのまとわりつき方で仕上がりを判断してください。
同じ国のほかの料理は、インドの国別ページからどうぞ。
西インドの台所で、牛乳が半分になるまで
バスンディの仕事は、ほとんどが「待つこと」と「底をこすること」です。コンロのそばを離れず、数分おきに鍋底をこそげて、縁の乳皮を牛乳に戻す。急がず、鍋のそばにいるのがこの菓子の作法のようなものです。
ここで紹介する論文は、バスンディを水牛または牛の乳を部分的に脱水し、砂糖を加えて、カラヒ(インドの深めの中華鍋のような鍋)で直火にかけて作る菓子と述べています。仕上がりには柔らかなフレークが散らばるとされます。マハーラーシュトラ州では祝宴や祭礼で供されることが多いとも書かれていますが、これは論文の記述であって、現在のすべての家庭の作り方を表すものではありません。
米を使う似た名前のお菓子と混同されやすいのですが、ドゥードパクやフィルニは米が入る別の料理です。バスンディは米を使わず、牛乳の濃縮だけでコクを作ります。ドゥードパクについては ドゥードパク、フィルニについては フィルニ をどうぞ。
名前の由来や、この菓子がいつどこで生まれたかは、今回確認した資料では確かめられませんでした。ここでは推測で書きません。
この料理に使える食材・調味料
道具
- 広くて底の厚い鍋またはカダイ(幅広で底の厚い片手鍋や浅めの鍋でも可)
- 底と側面をこそげるシリコンべらまたは木べら
- サフランを戻す小さなカップ
- ナツメグおろし(ナツメグを使う場合)
- 冷ましたり盛ったりするための、清潔で浅い容器や小鉢
選び方と代用
牛乳。 全脂牛乳を使ってください。仕上がりのコクととろみはそこで決まります。乳脂肪の少ない牛乳では、どちらも変わります。水で薄めたり、練乳、生クリーム、片栗粉やコーンスターチ、米を足したりしません。このレシピにはどれも入っていません。水で薄めず、全脂牛乳だけが基本です。
サフラン。 必要なのはひとつまみだけです。抜いても煮詰める工程は変わりませんが、花のような香りと金色は失われます。同じ味になる代わりのスパイスはありません。
カルダモン。 挽いたグリーンカルダモンの種を、さじで量ります。さやの個数ではありません。
ひとつまみとひと削り。 サフランは「ひとつまみ」、ナツメグは「ひと削り」が目安です。グラムには換算しません。
ナッツ。 アーモンドとピスタチオは好みで添える飾りです。好みやアレルギーで外してかまいません。
鍋。 広い面は蒸発を助け、厚い底は焦げつきを和らげます。細くて深い鍋は煮詰まるのに時間がかかり、焦げやすくなります。新しく買う前に、手持ちでいちばん広くて厚い鍋を選んでください。
牛乳はバスンディのすべての土台なので、別のものに替えるとまったく違う料理になります。アーモンドとピスタチオは木の実です。避けている人に出す場合は、両方とも外し、器具・器・調理台も清潔なものを使って、混入を防いでください。
焦がさず、止めどきを見分ける
次の表は、牛乳が鍋の中でどう動くかから導いた一般的な目安です。出典の引用ではありません。
| 見た目 | 考えられる理由 | 対処 |
|---|---|---|
| 茶色や黒い点、焦げたにおい | 牛乳の固形分が底に沈んで焦げついた | 火を弱め、底をこそげる回数を増やす。固まって黒ずんだ部分は牛乳にこそげ込まない。次はもっと広くて厚い鍋にする |
| なめらかで粒が少ない | 乳皮を戻さず、強く泡立て器で混ぜた | 強く混ぜず、縁の乳皮をへらで牛乳へ押し戻す |
| 砂糖のあとに色が濃くなる | 砂糖が早すぎて焦げついた | 牛乳が約半量になってから入れる(手順5) |
| 冷めたら固すぎる | 冷やす前に煮詰めすぎた | 冷めるとさらにとろみが増す。約半量でスプーンにまとわりつく程度で止める |
| 55分たってもまだ緩い | 鍋が細いか火が弱く、蒸発が遅い | 静かな煮立ちを続け、時計ではなく量とまとわりつきで判断する |
鍋は「広さ」が肝心です。同じ1.5litresでも、浅くて広い鍋のほうが蒸発が速く、底全体を見張りやすくなります。縁の乳皮は捨てず、牛乳に戻すのが食感の決め手です。
家庭や出典で違う配合
バスンディの作り方は1つではありません。以下は別々の公開レシピで、分量も順序も違います。上のレシピと混ぜず、初めて作るときはグジャラート風をそのまま作ってください。
| 版 | 牛乳 | 砂糖 | ナッツ・スパイス | 主な違い |
|---|---|---|---|---|
| グジャラート風(本記事) | 1.5 L | 100 g | サフラン、挽いたカルダモン、任意のナツメグ。アーモンドとピスタチオは任意の飾り | 約半量に煮詰め、砂糖は終盤、ナッツは食べるときだけ |
| 大学の地域料理テキスト、マハーラーシュトラ州の節 | 2 L | 1/2 cup | カシューナッツ、アーモンド、ピスタチオ、サフラン、カルダモン | 煮詰める量とナッツを入れる時機が違う。冷たくも温かくも出す |
| 家庭向けレシピサイト | 1 L | 3 tbsp | カルダモン2粒、サフラン、数種のナッツ | ナッツは煮ている間に入れる。約半量まで煮詰め、温かくも冷たくも、プーリーとも |
テキストの砂糖は cup 表記で、1カップが何グラムかは示されていないため、換算しません。これらは、公開レシピのあいだで甘さ、ナッツの使い方、手順の順序が違うことを示すだけで、グジャラートのすべての台所、マハーラーシュトラのすべての台所を代表するわけではありません。
本記事のレシピの中で選べるのは次の2点です。
- 冷たくするか温かくするか。 出典は両方を挙げています。冷たいとぽってりしてスプーンですくえ、温かいとゆるく、プーリーと食事向きになります。
- ナッツをのせるか、のせないか。 アーモンドとピスタチオは任意です。木の実を避ける方は、原材料表示の確認と混入の防止も忘れずに。
よくある質問
バスンディはドゥードパクと同じですか?
いいえ。同じグジャラートの牛乳菓子でも、ドゥードパクには米が入ります。このバスンディは米を使わず、牛乳を煮詰めるだけでとろみを作ります。インドの米のプディングであるフィルニとも同じ理由で別物です。
ラブリー(ラブディ)と同じですか?
どちらも牛乳を煮詰める菓子ですが、今回の資料からは同一とは言えません。レシピや食感、呼び名は地域や家庭で異なるため、この記事ではバスンディを独立した料理として扱います。
サフランがない場合は?
煮詰める工程はそのまま作れます。サフランは香りと色を足す少量のアクセントなので、なければ素朴で淡い仕上がりになります。同じ味になる別のスパイスはありません。
温かくても冷たくても食べられますか?
どちらも可能です。出典のレシピは、冷やして小鉢で出す食べ方と、温めてプーリーと一緒に出す食べ方の両方を挙げています。
冷蔵庫でどのくらい持ちますか?
この記事では日数を示しません。清潔で浅い容器に小分けして早く冷まし、ふたをして速やかに冷蔵し、室温に長く置かず、早めに食べてください。温める場合は食べる分だけを、中まで十分に熱を通して温め直します。
















