豆を水に浸けるのは前の晩です。翌日には、小さな黒ウラド豆はふっくらとふくらみ、そばに置いた少量の赤いラジマも皮がやわらかくなっています。ここからが本番で、豆をやわらかく煮てから、クミン、玉ねぎ、トマトを炒めた鍋に戻します。弱火でじっくり煮るうちに、形を残す豆と、ソースに溶けていく豆が分かれていき、バターの香りをまとった黒い煮込みが食卓の真ん中に座ります。
ダルマカニ(दाल मखनी)は、皮つきの黒ウラド豆を土台に、バターで奥行きを出す料理です。難しいのはスパイスの配合ではなく、豆を中までやわらかく煮ることです。しかもラジマには、圧力鍋に入れる前に済ませる沸騰加熱が欠かせません。この記事ではその手順と、笛の回数ではなく豆をスプーンで押して確かめる見分け方を、順を追って説明します。
この鍋で守りたいのは、芯の残る豆を一粒も作らないことです。黒ウラド豆はトマトとバターのベースでさらにやわらかく煮ていきます。濃厚さの源は、生クリームを重ねることではなく、辛抱強く煮込む時間にあります。
ダルマカニとは、黒ウラド豆を煮込むパンジャーブの一皿

料理家ランヴィール・ブラー(Ranveer Brar)が公開しているレシピは、ダルマカニをインドのパンジャーブ料理に分類しています。主役は皮つきの黒ウラド豆(sabut urad。レシピ上の表記は sabuturad)で、赤いんげん豆のラジマ(rajma)を少量そえます。この記事は、その2人分の版にそろえています。
ただし、これは記録されている一つの版であって、唯一の正解ではありません。豆の割合、バターとクリームの量、トマトの扱いは、作り手や家庭、店によって変わります。ほかにも濃厚な黒豆の料理はありますが、名前が違うものは同じレシピとして扱いません。現在のダルマカニは、ある有名なレストランの話と結びつけて語られることが多いので、作る前に押さえておくと、この料理の見え方が少し変わります。
1947年の誕生譚と「マー・キ・ダル」
ダルマカニの始まりをたどる話は、たいてい1947年のデリーに行き着きます。インディアン・エクスプレス紙(The Indian Express)によると、この年、レストランのモティ・マハル(Moti Mahal)がダリヤガンジ(Daryaganj)に開店しました。創業者の一人にクンダン・ラール・ジャッギー(Kundan Lal Jaggi)の名があります。記事は、常連客が「ウラド豆をトマトとバターでゆっくり煮てはどうか」と提案し、メニューに並ぶベジタリアン料理の一つになった、という話を紹介しています。その後この料理は、北インドのレストランの定番になったと報じられています。
同じダリヤガンジのレストラン自身の説明は、家族の側から語っています。ジャッギー家はペシャワール出身のパンジャーブ人の一家で、1947年の分離独立のあとデリーに移り住んだとされます。ダルマカニは「マー・キ・ダル(maa ki dal)」から育った料理だと言います。黒いレンズ豆に、トマト、白いバター、ハーブ、スパイスを加えて一晩かけて煮込むもので、名前は makhan(バター)にちなむとも説明しています。
二つの話は細部まで一致せず、後者は店の側の語りです。どちらも、レストランの伝承と報道が伝えた逸話として読むのが妥当で、発明者が一人に決まる証拠や、誕生の正確な日付を示すものではありません。
名前の「makhani」は、バターを意味する makhan に由来するとレストラン側は説明しています。黒豆の料理にバターを重ねる発想は、材料にそのまま表れています。
この料理に使える食材・調味料
豆の選び方と代わりの材料
黒ウラド豆。 皮つきの黒いホールのウラド豆を探します。インド食材店や通販で、sabut urad、ホールウラドなどの名前で売られています。皮をむいて割ったウラド豆は、色も食感も煮崩れ方も変わるので、同じ料理としては扱いません。ふつうのレンズ豆でも、同じ歯ごたえやとろみにはなりません。
ラジマ。 乾燥の赤いんげん豆を使います。缶詰のラジマは缶詰の工程で加熱済みですが、乾燥豆と同じ量で置き換えられるわけではありません。浸水、圧力調理、水分の量がすべて変わるため、缶詰を使う版は別のレシピになります。ここでは扱いません。
唐辛子。 使うのはインドの赤唐辛子粉です。カイエンなど別の唐辛子粉は辛さが異なるので、少なめから始めてください。青唐辛子も好みで加減します。
生姜。 2インチの1片を使います。全部を刻んでから半分に分け、半量を豆に、残りをマサラに使います。
バターとクリーム。 無塩バターを使うなら、塩は別に調整します。ギーにすると、香りも水分も変わります。仕上げには少量の生クリームが合います。植物性のクリームでは風味が変わります。
トマト。 ベースには、よく熟した生のトマトをピューレにして使います。缶詰のトマトは、酸味も水分も異なります。
コリアンダー。 苦手なら省いても構いませんが、仕上がりの香りは変わります。
用意する道具
- 黒ウラド豆とラジマを別々に浸すボウル2つ
- ラジマを茹でるふつうの鍋
- 圧力鍋(メーカーの使用説明書どおりに使う)
- マサラと長い煮込みに使う厚手の鍋と木べら
- 計量カップと計量スプーン
- 豆を押して火通りを確かめる清潔なスプーン
鍋の中で起きる失敗の直し方
まず優先するのは安全です。圧力鍋の説明書どおりに圧を抜き、どの豆も完全に火が通っていることを確かめてください。
| 気づくこと | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 豆に硬い芯が残る | 古い豆、浸水不足、加熱不足 | 加熱後に数粒をスプーンで押して確かめる。硬ければ圧力鍋の説明書に従って再加熱する。ラジマは生煮えを味見して判断しない |
| 底が焦げつく、重たい仕上がりになる | とろみの強い煮込みは鍋底に張りつきやすい | 火を弱く保ち、底をこまめに混ぜ、熱湯を少し足す |
| 酸味が目立つ | トマトを煮詰めきる前に豆と合わせた | 次回は、トマトをペースト状にしてから豆を加える。塩やバター、クリームで酸味を隠すのではなく、トマトをしっかり煮詰める |
家庭で変えるときの方向
以下は方向性の案で、試して確かめた配合ではありません。レシピのバランスを変える内容については、自分で試しながら調整する新しい版として考えてください。
- 辛さを調整する。 食べる人に合わせて、赤唐辛子粉と青唐辛子を加減します。別の唐辛子粉を使う場合は、少なめから始めます。
- 軽い仕上がりにする。 クリームを控えめにし、コクはバターに任せます。
- トマトの酸味をやわらげる。 とても熟したトマトを使うと、ベースがやさしくなる場合があります。バランスが変わるので、別の版として自分で調整してください。
- 圧力鍋を使わない。 厚手の鍋でも豆を煮ることはできますが、このレシピにはその方法の時間がありません。ラジマにはやはり、先に別の激しい沸騰加熱が必要で、どの豆も硬い芯が残らなくなるまで加熱します。
- ラジマの割合を変える。 ラジマが増えても減っても、料理の性格が変わります。ここで紹介した標準の版とは、はっきり別のものとして扱ってください。
レストランのダルマカニと、日々の家庭の鍋は同じものではありません。どちらを作ってもよいのですが、自分がどちらを作っているのかは意識しておくと迷いません。
アレルギーと保存
ダルマカニには、バターとクリームという乳製品が入っています。乳アレルギーがある場合は、クリームを抜くだけでは足りず、バターも置き換える必要があり、味は変わります。豆類が土台の料理なので、豆類のアレルギーがある方も注意してください。市販のスパイスなどは、原材料表示を確認しましょう。
このレシピでは、保存期間や温め直しの時間は示しません。残りの保存や温め直しについては、お住まいの地域の食品安全機関の案内に従ってください。
よくある質問
黒ウラド豆とは何ですか?
皮つきの小さな黒い豆で、ホールの黒ウラド豆(sabut urad、ホールウラド)として売られています。このダルの主役で、黒っぽい色と食感を作ります。
ふつうのレンズ豆で代用できますか?
ダルは作れますが、同じ料理にはなりません。皮をむいて割ったウラド豆や一般的なレンズ豆では、色、歯ごたえ、とろみの出方が変わります。
圧力鍋なしでも作れますか?
豆を厚手の鍋で煮ることはできますが、このレシピにはその方法の時間がありません。どんな鍋を使っても、先にラジマだけを激しく沸騰させてください。乾燥ラジマを弱火の煮込みだけ、あるいはスロークッカーだけで調理するのは避けます。どの豆にも硬い芯が残らなくなるまで加熱を続けます。
ラジマを抜いてもいいですか?
この版ではラジマは少量の補助的な材料なので、省くことはできます。ただし、ここに記録したレシピとは別の版になります。
クリームは必須ですか?
必須ではありません。クリームは仕上げに少し渦を描く程度です。makhani のコクの核はバターなので、クリームを減らしてバターを残した版でも、この料理らしさは保たれます。
缶詰のラジマは使えますか?
缶詰の赤いんげん豆は、缶詰の工程で加熱されています。ただ、乾燥豆と同じ量で入れ替えると、浸水、加熱、水分の扱いが変わります。缶詰の版には専用のレシピが必要で、ここでは扱いません。














