タンドールがなくても、熱したフライパンで気泡と焼き色を
本来のナンは、とても高温になったタンドール(壺型の窯)の内壁に生地を貼りつけて焼きます。壁から外れたナンは、中がふんわりやわらかく、表面には焦げ目とふくらみが浮かんでいます。ナンは南アジアの料理で食べられる、発酵させた小麦のパンです。ただ、タンドールのある家庭はそう多くありません。そこで頼りになるのが、厚手の鋳鉄フライパンやグリドルです。
タンドールで焼くパンを、家庭のフライパンで焼けるようにした一案です。守るのは、やわらかくて少し弾力のある発酵生地、熱した乾いたフライパン、気泡を立たせて焼き色の斑点をつける短い焼き時間、そして焼きたてに塗る溶かしギー(またはバター)です。
「タンドールなしでナンは作れるの?」と聞かれたら、答えは「作れます」です。ただし、タンドール焼きの代わりではなく家庭向けの再現です。フライパンは片面ずつ下から火を当て、タンドールは四方からパンを包むように熱します。フライパンで得られるのは、気泡、焼き色の斑点、やわらかい中身。もっと深い焦げ目は、タンドールのほうが得意です。
配合はKing Arthur Bakingが公開している一つのレシピに従います。8枚分で、薄力粉系の粉(原典はall-purpose flour)と強力粉を組み合わせ、全脂のギリシャヨーグルトで生地をやわらかくし、溶かしたギーまたはバターを生地にも仕上げにも使います。原典の所要時間は全体で約2時間。大半は、生地を放っておく発酵と休ませる時間です。
この料理に使える食材・調味料
選び方と代用のポイント
粉について。2種類の粉(all-purpose flourとbread flour)は、国によってたんぱく質の量が違います。日本で作るなら、強力粉90gの部分は国産の強力粉、薄力粉系180gの部分は薄力粉か中力粉が候補になります。水の吸い方や食感が変わることがあるため、自分で調整してください。
ヨーグルトについて。濃厚な全脂のギリシャヨーグルトを使います。ふつうのヨーグルトに替えると、水分が多い分、生地はやわらかくべたつきます。
ほかの材料は次の点に気をつけてください。
- イーストはインスタントイーストを使う配合です。別の種類のドライイーストしかない場合は、その製品の説明で使い方を確かめてください。
- 砂糖を省いたり蜂蜜に替えたりすると、配合が変わります。
- 塩は、粗塩やフレーク状の塩のスプーン1杯と、細かい食卓塩のスプーン1杯では塩分量が違います。
- ニゲラは輸入食材店や通販で見つかります。なくても作れます。黒ごまを代わりに勧める人もいますが、香りが違うので代用品とは言えません。
- 有塩バターで仕上げると、その分塩気が加わります。
このナンは小麦(グルテン)と乳(ヨーグルト、ギーまたはバター)を含みます。アレルギー対応の置き換えは案内しません。材料を替えると配合も食感も変わります。市販品を使うときは表示を確認してください。生の生地は味見しないでください。
道具
- 大きめのボウル、秤、計量スプーン
- 生地をこねる作業台
- 生地にかぶせる蓋、皿、または清潔な布
- めん棒(なくてもよい。手で伸ばせます)
- 高温に耐える厚手の鋳鉄フライパン、またはグリドル
- 刷毛、フライ返し
- 焼けたナンの保温に使う清潔な布かアルミ箔
うまくいかないとき
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 生地が硬くて伸びない | 発酵不足、休ませ不足、または吸水の違う粉 | 分割後の休ませ時間をしっかり取る。次回、粉を足すなら少しずつにして、配合との違いを記録する |
| ナンがふくらまない | イーストの勢いが弱い、一次発酵が不十分、フライパンが熱くない | イーストを確かめ、生地がおよそ2倍になるまで待ち、焼く前に十分予熱する。生地をフライパンに押しつけない |
| 気泡が出る前に表面が焦げる | 火が強すぎる | 火を弱めるか、フライパンをコンロから少し外す。次の1枚で調整する。焼き時間は目安で、固定の決まりではない |
| 冷めると硬くなる | 覆わずに置いた | 1枚焼けるごとに清潔な布かアルミ箔で包み、温かいうちに食べる |
このレシピは、室温・冷蔵・冷凍のいずれの保存日数も案内しません。ナンは焼きたての温かいうちがいちばんおいしいパンです。焼けた順に包んで、すぐ食卓に出してください。
厚めか薄めか、プレーンか具をのせるか
- 厚めか薄めか。 2通りあります。やわらかく仕上げる厚めは、直径約15cmの丸か長さ約18cmの楕円。薄めは、直径約20cmの丸か長さ約25cmの楕円。1回に焼く分は同じスタイルにそろえると、焼き上がりが均一になります。
- プレーンか、仕上げをのせるか。 ギーかバターを塗るだけで完成です。ニゲラシードとパクチーは、足してもよい任意の仕上げで、必須ではありません。
- ギーかバターか。 どちらも生地と仕上げに使えます。味は違いますし、有塩バターなら仕上がりが塩辛くなります。
- 店のバリエーション。 ジャカルタのあるレストランのメニューには、プレーン、ガーリック、チーズのナンがタンドリーロティと並んでいます。これはその店のバリエーションであり、この記事はそれらの作り方を案内しません。
- まったく別の配合。 ナンの配合はさまざまで、牛乳と水を使い、ヨーグルトを入れないものもあります。家庭のオーブンやフライパンとブロイラーでタンドールの焦げ目に近づけます。別のレシピなので、上の材料や手順と混ぜないでください。
ナンとは何か、ロティやチャパティとの違い
ナンは、南アジアの料理で作られる、発酵させた小麦のパンです。典型的にはタンドールの壁に貼って焼き、中はやわらかく、表面には焦げ目がつきます。インドの観光・ホテル経営分野の教育資料は、国内のさまざまなパンとしてタワ(平鍋)で焼くロティ、タンドール焼きのロティ、ナン、クルチャ、ラッチャ・パラーターを挙げています。その中でナンは、タンドール焼きのロティよりも厚く、やわらかい、またはリッチなパンとして説明されています。
「ナン」という語は、ペルシア語でパンを意味する語と関係があるとされます。それ以上の歴史や正確な起源には諸説あり、起源は定説がないのが実際のところです。この記事では、発祥の場所や時代、発明の逸話を一つに決めて書くことはしません。
ナン、ロティ、チャパティの実用的な比べ方
| ナン | ロティ/チャパティ | |
|---|---|---|
| 生地 | 発酵させた小麦生地(このレシピはヨーグルトとギーまたはバターも使う) | 一般に無発酵 |
| 厚みと食感 | 厚め、やわらかく、気泡がある | 一般に薄い日常のパン |
| 伝統的な焼き方 | タンドールで焼く | 地域による。タワロティは平鍋、タンドリーロティはタンドール |
これは大まかな実用上の違いで、厳密な定義ではありません。ロティやチャパティとの違いは目安にとどめてください。パンの呼び名は地域や家庭によって違い、材料一つで決まるものでもありません。
インドネシアの食卓で出会うナン
ナンは南アジアのパンで、インドネシア発祥ではありませんが、インドネシアの食堂の卓に並ぶことがあります。2023年にパレンバンのナン店を伝えた報道では、店主が、インド人の料理人を雇い、輸入したアタ粉(全粒の小麦粉)を使っていると語っています。店ではカレーやタンドリーチキンとともにナンを出していたそうです。また、ジャカルタのHookah Habibi Cafeが公開しているインド料理のメニューには、数種類のナンがタンドリーロティと並んでいます。
どちらも一店舗の例で、インドネシア全体でどれだけナンが食べられているか、値段はいくらか、いつでも手に入るかを示すものではありません。
よくある質問
タンドールがなくても、本当にナンを作れますか?
家庭向けの再現としては作れます。とても熱くした乾いた鋳鉄フライパンやグリドルで、気泡、焼き色の斑点、やわらかい中身が得られます。タンドールの壁に貼って焼くのと同じにはならないので、結果はタンドールのナンに近づく、と考えてください。
フライパンに油を引きますか?
フライパンに油は引きません。中強火で、乾いたフライパンのまま焼きます。このレシピの油は発酵ボウルに塗るためだけで、ギーやバターは生地と焼き上がりの仕上げに使います。
ギリシャヨーグルトの代わりにふつうのヨーグルトを使えますか?
使えますが、配合の変更になります。ふつうのヨーグルトはゆるいので、生地がより水っぽくやわらかくなります。扱い方も食感も違ってくるでしょう。
何枚できますか?
8枚です。8枚は8人前ではありません。何人分になるかは、そのほかの料理次第です。
全部でどのくらい時間がかかりますか?
全体で約2時間が目安です。50〜60分の発酵、分割後の20分の休ませ、8枚を1枚ずつ焼く時間を含みます。台所の温度やコンロで変わります。
残ったナンは保存できますか?
保存日数は案内しません。焼いたそばから包んでやわらかさを保ち、温かいうちに食べてください。
同じ国のほかの料理は、インドの料理で紹介しています。

















