小さな半月の中に、スパイスのきいたツナ
揚げる前はしなやかに扱える柔らかい生地、ペースト状ではなくツナとじゃがいもの塊が残る具、そして油の中でも開かないフォークの閉じ目です。
縁にフォークの跡がついた、きつね色の半月形。割ってみると、中には刻んだじゃがいもとほぐしたツナが入っていて、ターメリック、クミン、シナモン、クローブ、黒こしょう、生のディル、ライムの酸味が混ざっています。まわりの生地は、小麦粉、バター、卵黄、ココナッツミルクで作ります。
これがフィッシュパティス、またはパティス(පැටිස්)。スリランカのショートイーツ(軽食)のひとつとして紹介されている一品です。魚のすり身を成形したさつま揚げや魚団子ではありません。具を先に火にかけ、丸い生地で包み、折って閉じて揚げる、というのが作り方の骨格です。家で作るときに成否を分けるのは、生地をしなやかに保つこと、具をきちんと量ったひとさじにとどめること、そして閉じ目を開かせないことの3点です。
以下のレシピは、スリランカの料理書として名前が挙がっている本に載ったひとつのレシピに沿っています。世界ごはん紀行では、このレシピを台所で試作していません。分量・時間・見分け方は公開されているレシピのとおりで、レシピが決めていない部分は、推測で埋めずにそのまま書いています。同じ国の他の料理は、スリランカのページからご覧ください。
フィッシュパティス(パティス)とは
フィッシュパティスは、成形した魚のすり身団子ではなく、具を包んだパイ状の揚げ物です。 ここで使う版では、丸く抜いた生地に火を通したツナとじゃがいもの具をひとさじのせ、半月形に折り、フォークで押さえて閉じ、数回に分けて揚げます。形は縁に模様のついた三日月で、球でも四角でも平らな丸い魚のケーキでもありません。
このレシピは、SBS Food が人気のスリランカの軽食として公開しているもので、Prakash K Sivanathan さんと Niranjala M Ellawala さんの著書『Sri Lanka the Cookbook』のレシピとして紹介されています。Hungry Lankan の筆者 Roshani Wickramasinghe は、この種のパイをパティス(පැටිස්)と呼んでいます。これらの資料から言えるのは、この料理がスリランカと結びつけて紹介されているということまでです。スリランカだけの料理だとは示されておらず、この記事の版が唯一の正統なレシピだとも言いません。Hungry Lankan 自身のフィッシュパティスのレシピは生地も具も異なっていて、同じ名前でも配合がひとつではないことがわかります。
ショートイーツとお茶の時間、そして筆者の学校の昼食の思い出
Roshani Wickramasinghe の説明では、ショートイーツは軽食のことで、ショーケースの並ぶショートイーツの店や、学校の昼食にショートイーツを持っていった思い出が語られています。これはご本人の思い出であり、誰にでも当てはまる決まりとして書かれたものではありません。
スリランカ観光振興局(Sri Lanka Tourism Promotion Bureau)は、パティ類をカツレツ、チャイニーズロール、フィッシュバンズ、ペストリーと並べてスリランカのショートイーツに挙げ、ショートイーツを夕方のお茶や手軽な朝食と結びつけています。同じ概説はスリランカ料理全体を多文化的なものと説明していますが、フィッシュパティスの歴史をたどったり特定の共同体と結びつけたりはしていません。この記事でも由来の物語は紹介しません。Roshani Wickramasinghe は、パティスをセイロンティーと一緒に楽しむのが好きだとも書いています。お茶を添えるのは楽しい食べ方ですが、レシピの一部ではありません。
この記事で使うレシピと、書かれていること・いないこと
この記事は、SBS Food に載っている『Sri Lanka the Cookbook』のレシピを使います。元のレシピは、生のツナ300gを蒸してほぐすか、缶詰のツナを水気を切った重量300gで使うかを選べます。ここでは缶詰のツナだけを使います。両者は代わりに使う選択肢であって、混ぜて使うものではありません。
公開レシピには、読むときに気をつけたい点がいくつかあります。
- 油は材料表で1行にまとめられています。 大さじ3と500mlが並んでいます。作り方では少量を具の炒めに、多めを揚げ油に使うので、この記事では大さじ3を具を炒める油、500mlを揚げ油と読みます。油の種類は指定されていません。
- 卵黄と卵白。 材料表には生地用の卵黄が1個あり、成形の手順では生地の縁に軽く溶いた卵白を使うとあります。卵白の量は書かれておらず、卵黄と同じ卵の白身かどうかも示されていません。この記事も、卵の個数を推測せず、どちらも未確定のままにしています。
- 具を冷ます指示はありません。 ライムを加えたあとは、鍋を火から下ろすとだけあります。生地に詰める前に具を冷ますのは、この記事の実用上の提案で、時間の指定はありません。
- 「沸点」は温度ではありません。 レシピは揚げ油を「boiling point」まで熱して中火で揚げるとしますが、数値は示していません。この記事は、この言葉を温度に置き換えません。レシピとは別の一般的な調理の目安(このレシピの数値でも、食品安全の基準でもありません)として、農林水産省は家庭で魚や肉を揚げるときの基本の温度帯を約175〜180°Cとしています。消防庁は、揚げ油を火にかけたまま離れると発火のおそれがあるため、その場を離れる前に火を止めるよう呼びかけています。
- 分量と時間。 レシピは「makes 12 serves(12人分)」としています。作り方では2つに分けた生地それぞれから6枚ずつ丸を抜くので、丸は全部で12枚になります。この個数は作り方から導いたもので、レシピが仕上がり数として明記しているわけではありません。準備20分、調理25分、そのほかに生地を冷やす30分が書かれていて、合計時間は示されていません。
この料理に使える食材・調味料
道具
- じゃがいもをゆでる鍋
- 具を炒めるフライパンと木べら
- 口の広いボウル
- ラップ
- めん棒
- 直径5〜6cm(2〜2.5インチ)の丸い型(生地を抜く用)
- フォーク
- 揚げ用の深めの鍋
- 網じゃくし
- キッチンペーパー
選び方と代用
ツナ。 缶詰は水気を切ってから量り、水気を切った重量で300gを使います。この版では最初から最後まで缶詰のツナです。
ディル。 細かく刻んだ生のディルを大さじ1使います。生ハーブの売り場で探します。
ココナッツミルク。 60mlを使うのは具ではなく生地のほうです。
そのほかの材料。 じゃがいも、玉ねぎ、にんにく、しょうが、粉末スパイス、小麦粉、バター、卵、ライムは、ふつうのスーパーの材料です。直径5〜6cmの丸い型は丸の大きさに合いますが、あると便利という程度で、特別に買い足す道具ではありません。
うまくいかないときに見るところ
次の項目を確認してください。試して確かめた対処法ではなく、新しい分量も足していません。
| 見えること | 確認すること | 対処 |
|---|---|---|
| スパイスを入れる前に香味野菜が色濃くなってきた | 具を炒める油の下の火加減 | 弱火を保つ。玉ねぎは柔らかく、色づき始める程度にとどめる |
| 具がペースト状になる | ツナとじゃがいもをどれだけ混ぜつぶしたか | ツナは塊にほぐし、じゃがいもはつぶさずに全体へなじませる |
| 生地がぼろぼろのまま | ココナッツミルクをどれだけ加えたか | こねながらココナッツミルクを少しずつ足し続ける。それでも必要なら水を少しだけ加える |
| 生地が濡れてべたつく | 液体を一度に入れすぎていないか | 打ち粉を少し混ぜ込み、30分の冷やし時間をしっかり取る |
| 閉じ目が開く、具が出てくる | 具の量、縁の卵白、フォークで押さえた範囲 | 具は大さじ1にとどめ、縁を汚さず、卵白を塗って曲線全体をフォークで押さえる |
| 成形中に生地が破れる | 破れた箇所 | 油に入れる前にふさぎ直す |
| 揚げ色にむらが出る | 一度に揚げる数と返し方 | 一度に5〜6個にとどめ、返しながら揚げ、きつね色になったら取り出す |
食べ方と、残ったときの扱い

油を切ったら、小さな軽食として、食欲に合わせて1人1個以上を出します。ショートイーツは夕方のお茶や手軽な朝食に添える軽食です。セイロンティーを添えてもよいですが、レシピの一部ではありません。
残ったものは、すぐに清潔で浅い容器に移して冷まし、冷蔵庫に入れます。室温に置いたままにしないでください。食べるときは、中心まで75°C以上になるよう十分に再加熱します。この料理の保存期間は示されていないので、この記事では日数の目安を挙げません。
このレシピの範囲でできる調整
- 缶詰のツナか生のツナか(ここでは缶詰を選択)。 水気を切った缶詰のツナ300gの代わりに、生のツナ300gを蒸してほぐして使う方法もあります。どちらか一方だけを使い、両方を一緒に使わないでください。
- 丸のサイズ。 型は5cmでも6cmでもよく、どちらでも具は1枚につき大さじ1にします。
- 食べる量。 軽食として1個でも、食欲に合わせてそれ以上でもかまいません。これはレシピの分量を変えるものではありません。
- お茶を添える。 セイロンティーは食べ方の提案で、材料表の外に置いています。
- 作業を分ける。 生地を冷やしている間に、具を炒めて冷ましておけます。2つの工程は手順13で合流します。同じ日の中での段取りの考え方で、作り置きの保存方法ではありません。
- 揚げ調理のみ。 このレシピは揚げ物です。オーブン焼きなど、ほかの加熱方法はここでは扱わず、すすめてもいません。
よくある質問
つまずきの多くは3点に戻ります。具を塊のまま残すこと、生地を柔らかくしなやかになるまでだけこねること、そして卵白とフォークで閉じ目を留めることです。
フィッシュパティスは、魚のさつま揚げ(フィッシュケーキ)と同じですか?
違います。この版では、火を通した魚とじゃがいもの具を生地で包み、半月形に折って、フォークで閉じて揚げます。フィッシュケーキや魚団子は、魚の混ぜ物そのものを成形したもので、まわりに生地はありません。
缶詰のツナを使えますか?
使えます。ここで選んでいるのが缶詰のツナで、水気を切った重量で300gです。SBS Food のレシピは、先に蒸してほぐした生のツナも認めています。その場合は、厚生労働省が家庭で食品に十分に火を通すよう呼びかけています。生のツナと缶詰のツナを同じ回に混ぜて使うのはやめてください。
ディルやココナッツミルクは、ほかのもので代えられますか?
レシピはどちらにも代わりの材料を示していません。そのため、この記事も代用品をうまくいくものとしては紹介しません。生のディルとココナッツミルクは、この版の一部です。
卵は何個必要ですか?
材料表には生地用の卵黄が1個あり、成形の手順には縁に塗る軽く溶いた卵白があります。レシピは卵白の量を示しておらず、卵黄と同じ卵の白身かどうかも書いていません。そのため、この記事は卵の個数を書きません。
生地が割れる、または油の中でパティスが開くのはなぜですか?
レシピの目安に戻ってください。生地が柔らかくしなやかになるまでココナッツミルクを少しずつ加え、30分冷やし、丸1枚につき具は大さじ1、縁に卵白を塗って、曲線全体をフォークで押さえます。生地の調整が必要なときは、打ち粉か水を少し足してよいとされていますが、量は示されていません。組み立てる前に具を冷ますのは、この記事の提案であり、レシピの手順ではありません。
揚げ油は何度にすればよいですか?
SBS Food のレシピは、油を「boiling point」まで熱して中火で揚げるとしていますが、温度は示していません。この言葉を文字どおりの数値と受け取らないでください。別の一般的な目安として、農林水産省は家庭で魚や肉を揚げる基本の温度帯を約175〜180°Cとしています。これは調理の仕上がりの目安であって、このレシピで確かめた数値でも、食品安全の基準でもありません。消防庁は、揚げ油は弱火でも、その場を離れる前に火を止めるよう呼びかけています。
残ったものはどのくらい保存できますか?
レシピに保存期間は書かれていません。厚生労働省は、残った料理を清潔で浅い容器に移して早く冷まし、室温に置かずに冷蔵し、食べるときは75°C以上になるよう十分に再加熱するよう呼びかけています。この料理について日数の目安は示されておらず、この記事でも示しません。
お茶と一緒に食べないといけませんか?
いいえ。お茶は食べる場面の話です。スリランカ観光振興局はショートイーツを夕方のお茶や手軽な朝食と結びつけ、Hungry Lankan の Roshani Wickramasinghe はパティスをセイロンティーと楽しむのが好きだと書いています。パティスはお茶がなくても完結した軽食です。



























