まだ暗いうちから、大きな土鍋がかまどの上でことことと音を立てています。中で煮えているのは、繊維を裂いた青いジャックフルーツ。ココナッツミルクとヤシ砂糖を吸い込み、チークの葉の色に染まって、赤茶色につやつやと光っています。ジャワ島の古都ジョグジャカルタで、この街の名物として知られるグドゥッ(Gudeg)です。王宮のそばの通りには、グドゥッを出す店が十数軒も並び、甘い香りが漂っています。
一日がかりで煮る、古都ジョグジャカルタの甘い煮物

グドゥッの材料は、熟す前の若いジャックフルーツです。ジャワ語で「ゴリ」と呼ばれるこの青い実を細かく裂き、ココナッツミルクとパームシュガーで、弱火で何時間も煮込みます。香りづけは、にんにく、エシャロット、キャンドルナッツ、コリアンダーシード、ガランガル、サラムリーフ。そこにチークの葉を加えると、ジャックフルーツが赤茶色に染まります。インドネシア観光省は、土鍋に入れて薪や炭の火で煮るのがいちばんおいしいとし、完璧なグドゥッを作るにはほぼ一日かかると紹介しています。
できあがったグドゥッは、白いご飯と一緒に盛り、いくつかのおかずを添えて食べます。鶏肉をココナッツミルクで煮たオポール・アヤム、スパイスで煮た卵のテロール・ピンダン、甘く煮た豆腐やテンペのバチェム、そしてサクサクに揚げた牛の皮を唐辛子とピーナッツで煮たサンバル・ゴレン・クレチェッ。甘いグドゥッと辛いクレチェッを交互に食べるのが、ジョグジャカルタの味です。
ジョグジャカルタでいちばん有名なグドゥッの店が集まるのは、王宮の近くのウィジラン通りで、17軒以上の店が並びます。もう一つの中心は、ガジャ・マダ大学に近い市の北のバレッ地区です。持ち帰りのグドゥッは、竹で編んだ箱や素焼きの壺に詰めて売られ、缶詰になったものもあります。
グドゥッには大きく分けて2種類あります。ココナッツミルクを多めに残してソースのように仕上げるウェット・グドゥッと、さらに長く煮てココナッツミルクを飛ばし、ジャックフルーツをカラメルのように深い茶色に仕上げるドライ・グドゥッです。ドライ・グドゥッは甘みが強く、日持ちもします。隣町ソロのグドゥッは汁気が多く、チークの葉を使わないので白っぽい色をしています。
日本の台所で作るときに知っておきたいこと

日本で生の若いジャックフルーツやチークの葉を手に入れるのは、まず無理です。この記事では、インドネシア料理研究家スリ・オーウェンのレシピを基にした料理ブログ「What To Cook Today」の作り方にならい、ヤングジャックフルーツの缶詰と紅茶のティーバッグで作ります。紅茶がチークの葉の代わりに赤茶色の色をつけてくれます。鶏肉とゆで卵も同じ鍋で煮込み、ひと鍋でグドゥッとおかずがそろう形です。
ヤングジャックフルーツの缶詰は、アジア食材店や通販で手に入ります。シロップ漬けの熟したジャックフルーツの缶詰とは別物なので、「ヤング」「グリーン」「塩水漬け」と書かれたものを選んでください。キャンドルナッツ(ククイの実)はインドネシア食材店で手に入り、なければマカダミアナッツで代用できます。
サラムリーフは、インドネシア料理で使う香りの葉で、ローリエとは別の植物です。手に入らなければローリエで代用できますが、ローリエは香りが強いので、枚数を半分の2枚にしてください。
パームシュガーは、ヤシの樹液を煮詰めた砂糖です。黒糖に似た、こくのある甘さがあります。なければきび砂糖や黒糖で作れますが、黒糖の場合は量を少し減らすと、くどくなりません。
途中で見つける、味の決め手
甘いグドゥッに、辛いサンバルを

グドゥッは、はじめてだと「おかずなのにこんなに甘いのか」と驚く人が多い料理です。パームシュガーの甘さがしっかり効いているので、辛いサンバルを必ず添えるのがおすすめです。唐辛子の辛さとグドゥッの甘さが交互に来ると、ご飯がどんどん進みます。
サンバルは市販のサンバルオレックでもかまいません。手作りするなら、インドネシアの生のサンバルサンバル・マタが手軽です。同じジャワ島の料理と並べるなら、甘辛く揚げた鶏のアヤム・ゴレンや、ソト・アヤムのスープと一緒に出すと、インドネシアの食堂のような食卓になります。
グドゥッにはジャックフルーツを使わないものもあり、ココナッツの花(マンガル)で作るグドゥッ・マンガルという料理もあります。花といっても、ココナッツの木の若い花房を煮たもので、ジャックフルーツとは違う、こりっとした食感があります。
アレンジの楽しみ方

鶏肉を入れずに、ジャックフルーツとゆで卵だけで作ると、グドゥッそのものの味がよく分かります。ゆで卵も省けば、野菜だけの料理になります。厚揚げを2cm角に切って、ゆで卵と同じタイミングで加えると、甘い煮汁を吸って、ジョグジャカルタの甘い豆腐の煮物のようなおかずになります。
What To Cook Today の作り方では、4時間水に浸けた赤いんげん豆を半カップほど、鶏肉と一緒に加えています。豆を入れると、ほくほくした食感が加わり、食べごたえのある一品になります。缶詰の金時豆を使うなら、水気を切って手順5で加えれば十分です。
よくある質問

紅茶を入れると、紅茶の味がしませんか?
ティーバッグ1個を1時間煮て取り出すだけなので、紅茶の香りはほとんど残りません。役割は色づけです。長く入れたままにすると渋みが出ることがあるので、卵を加えるタイミングで取り出してください。
作り置きはできますか?
粗熱が取れたら保存容器に入れて冷蔵し、2日以内に食べきってください。インドネシア観光省によれば、汁気を飛ばしたドライ・グドゥッは冷蔵で24時間ほど日持ちするとされています。温め直すときは、少し水を足して弱火でゆっくり温めます。
ココナッツミルクが分離してしまいました。
長く煮るとココナッツミルクの油分が分離して、表面に油が浮くことがあります。グドゥッではこれは失敗ではなく、むしろ煮詰まってきた合図です。焦げつかないよう、底から混ぜ続けてください。
熟したジャックフルーツで作れますか?
作れません。熟したジャックフルーツは甘い果物で、煮込むと崩れてしまいます。グドゥッには、熟す前の青い実を使います。缶詰を買うときは、ラベルの「ヤング」「グリーン」の表示を確かめてください。















