チムチュム:ハーブが香る豚だしの鍋を、食卓で煮る
鍋のだしは澄んだまま、塩を加えない豚だしにレモングラス、こぶみかんの葉、ガランガルを移したものにします。明るい酸味と辛みはたれに預けます。炒り米粉は最後に、鍋とたれへ別々に加えます。
塩を加えない豚だしが、勢いよく煮立っています。叩いたレモングラス、ちぎったこぶみかんの葉、薄切りのガランガルを入れ、3〜5分ほど勢いよく煮立てて香りを移したら、鍋を食卓に運びます。マリネした薄切りの豚肉、白菜、空心菜、タイバジル、戻したガラス麺を少しずつ入れて煮ます。火が通ったものを引き上げて、ナンプラー、ライム、タマリンド、炒った唐辛子、炒り米粉の入った小さな器のたれにつけて食べます。
この記事のレシピはそんな鍋です。Pailin ChongchitnantがHot Thai Kitchenで「Jim Jum」(จิ้มจุ่ม)として公開しているタイの鍋を土台にしています。そのレシピの中でも、澄んだ豚だしで肉は豚肉だけという一つの枝に絞りました。人数の調整、野菜の選び方、食品安全の注意は後で説明します。なお、この版は世界ごはん紀行の台所で試作したものではありません。
同じ国の料理はタイの料理でも紹介しています。
このレシピの出どころと、名前の揺れ
ここで手本にしているのは、Pailin Chongchitnantの「Thai Hot Pot 'Jim Jum' จิ้มจุ่ม แจ่วฮ้อน」です。このページではJim Jumをタイ東北部の鍋と説明し、イサーン方言ではjeaw honとも呼ぶと書いています。家族や友人と一緒に調理して分け合う食事、という紹介の仕方です。
著者のプロフィールでは、南タイのハジャイ(Hat Yai)で育った訓練を受けたシェフとされています。カナダのUBCで栄養科学を学び、プロの厨房で働き、サンフランシスコのル・コルドン・ブルーの料理学校にも通ったそうです。これはレシピを書いた人の背景であり、このレシピがこの料理の唯一の正しい形だという意味ではありません。
名前の扱いは、資料によって分け方が違います。
| 資料 | 使われている名前 | 料理の位置づけ |
|---|---|---|
| Pailin Chongchitnant(Hot Thai Kitchen) | Jim Jum、จิ้มจุ่ม、แจ่วฮ้อน(jeaw hon) | タイ東北部の鍋。題名と本文で名前を並べている |
| タイ国政府観光庁(TAT)のメディアページ | 「Chim Chum or Chaeo Hon」。タグにJim JumとJaew Honを含む | 人気の東北タイ料理。一つの説明文に名前を並べている |
| ミシュランガイド・タイランド | Chim ChumとJaew Honを二つの名前として扱う | 似ているが同じではないイサーン風の鍋。Chim Chumは澄んだハーブのだし。Jaew Honは牛や豚の血、場合によってはphiaを加えた濃いだしで、たれも違う |
どの呼び方が「正しい」かは、この記事では決めません。発祥の町、考案者、年代も書きません。作るのはPailinのレシピにある、ハーブを煮出した澄んだ豚だしの版だけです。血もphiaも入れず、別のたれも使いません。
2人分に整える:豚肉は倍、だしは変えない
Pailinのレシピカードの分量表示は「2」と「Serves 2–3」です。肉は薄切りの牛肉、豚肉、鶏肉のいずれか150 gで、次のものでマリネします。
- オイスターソース、しょうゆ、油を各小さじ1
- 卵白 大さじ1
- タピオカでんぷんまたはコーンスターチ 小さじ1/2
一方、同じページの本文では、たんぱく質は1人分で約150 gが目安とされています。
この版は豚肉を食べる2人分です。本文の1人分の目安に合わせて、豚肉は300 gにしました。倍にしたのは肉のマリネ材料だけで、増粘にはタピオカでんぷんを選んでいます。だし、鍋の香味、たれ、野菜、麺はカードの2〜3人分の量のままです。これはこの記事のために行った単純な計算上の調整で、カードに印刷された数字ではありません。
カードにある、加熱前の生肉を生卵黄にくぐらせる任意の工程は、この版では省きました。卵白は豚肉のマリネにだけ使います。
この料理に使える食材・調味料
道具
- 豚肉を冷蔵庫でマリネするためのふた付きの器
- たれを混ぜるボウルとスプーン
- 炒り米粉を取り分けておく小さな別の器
- ガラス麺を戻すための水を入れたボウル
- キッチンばさみ
- 食卓で煮立たせ続けられる、だし用の小鍋または鍋
- 野菜、麺、生の豚肉を分けて置く別々の皿
- 生の豚肉専用のトング
- 清潔な鍋用の網じゃくし
- 食べる用の清潔な箸と、たれ用の小さな取り皿
選び方と代用
豚だし。 塩を加えない豚だしを使います。一から作るなら、豚骨を水で2時間煮ます。
ノコギリコリアンダーとパクチー。 たれにはノコギリコリアンダーを使います。代わりにパクチーも使えますが、まったく同じものではありません。
タピオカでんぷんとコーンスターチ。 マリネにはどちらも使えます。ここではタピオカでんぷんを使い、2つを併用はしません。
野菜と麺。 白菜、空心菜、タイバジル、ガラス麺を使います。タイバジルは欠かせません。
生の豚肉をたれに近づけない
以下はレシピの著者ではなく、FoodSafety.govの案内によるものです。
- 肉のマリネは調理台の上ではなく冷蔵庫の中で行う。
- 生肉と、加熱済みの食品やそのまま食べる食品とでは、皿と器具を分ける。
- 生肉や卵に触れた後は手を洗う。
- 生肉に触れた調理台や器具は洗う。
- 生の豚肉に触れたマリネ液を、たれとして使わない。
このレシピには鍋で薄切りの豚肉を煮る時間の記載がなく、この記事でも目安の時間は示しません。FoodSafety.govは食品用温度計の使用をすすめています。その温度表では、豚のステーキ、ロースト、チョップは145°F(63°C)で、その後3分置くとされています。ただしこれは塊肉の項目で、鍋用の薄切り肉のものではありません。ここから「何分」という数字を推測することは避けてください。色だけでは安全の目安になりません。
うまくいかないとき
| 状況 | 対処 |
|---|---|
| たれの砂糖がまだざらつく | 炒り米粉を入れる前に、砂糖が溶けるまで土台を混ぜ続ける |
| 炒り米粉をいつ入れるか迷う | 2回分を別々の器に分けておく。食べる直前に、山盛り大さじ1を鍋(ナンプラーの後)へ、大さじ1をたれへ入れる |
| 麺が長くて扱いにくい | 7〜10分戻した後、キッチンばさみで数回切る |
| 豚肉に火が通ったか分からない | 色だけで判断しない。煮立っただしに入れたままにして、数値で確かめたいなら食品用温度計を使う |
| 生肉用のトングや箸が、たれや火の通ったものに触れた | そのたれや食べ物は口にしない。器具を洗ってから続ける |
レシピ内のアレンジ
Pailinのレシピカードでは、豚肉のほかに牛肉か鶏肉も選べます。同じ150 gの行で、マリネも同じです。ページには、魚介、レバー、豆腐も挙げられていて、これらはマリネ不要とされています。この記事で扱うのは豚肉の枝だけです。
ほかの野菜として、別の青菜、ほうれん草、にんじん、アジア系のきのこ、パクチーの茎、チャイニーズセロリも挙げられています。この版には含めていませんし、レシピにもそれらの分量はありません。カードには、肉を鍋に入れる前に生卵黄につける任意の工程もありますが、ここでは省きました。参考までに、FoodSafety.govの表では、生卵は黄身と白身が固まるまで加熱するとされています。
鍋を囲む
Pailinのページは、この鍋を家族や友人と一緒に調理する食事として紹介しています。ミシュランガイド・タイランドの記事は、鍋料理がタイで広く親しまれていると述べています。ジェウホンはとくにイサーンでよく見られ、家族や友人で鍋を囲むものだとしています。これらは資料が語る楽しみ方であり、タイのすべての家庭に当てはまる決まりではありません。
共有の鍋で調理しながら食べる形は、食卓で火を通すほかの料理とも共通しています。ただ、その形が同じだというだけでは、ほかの料理と同じ料理だということにはなりません。
よくある質問
チムチュムとジェウホンは同じ料理ですか?
資料によって見解が分かれます。Pailinのレシピとタイ国政府観光庁のメディアページは、二つの名前を並べています。ミシュランガイド・タイランドは、似ているが別の鍋として扱っています。その説明では、チムチュムは澄んだハーブのだし、ジェウホンは血、場合によってはphiaを含む濃いだしです。この記事で作るのは、Pailinのレシピにある澄んだ豚だしの版だけです。
ノコギリコリアンダーの代わりにパクチーを使えますか?
Pailinのレシピは、たれにパクチーを代わりに使えるとしています。この版ではノコギリコリアンダーを使っています。パクチーはレシピ自身が挙げている代わりの選択肢で、両者の味が同じという意味ではありません。
豚肉は鍋で何分煮ればいいですか?
レシピに時間の記載がなく、この記事でも目安は示しません。煮立っただしで1枚ずつ火が通るまで煮てください。色だけに頼らず、数値で確かめたいなら食品用温度計を使います。
豚だしは自分で作れますか?
作れます。レシピの注記には、豚骨を水で2時間煮るとあります。骨と水の量は書かれていないので、ここでも加えていません。必要なのは、塩を加えないだし4カップです。
日本のすき焼きのタイ版ですか?
違います。どちらも共有の鍋を囲んで食べますが、この記事ではチムチュムをすき焼きとも、その一種とも扱いません。
この版は試作済みですか?
いいえ。この版は世界ごはん紀行の台所で試作したものではありません。Pailin Chongchitnantの書面レシピをもとに、上で説明したとおり豚肉とそのマリネを2人分に倍にしています。

















