ムルフェ — 氷のように冷たい生魚と野菜と赤い汁の一杯
この料理には生の魚が入ります。米国食品医薬品局(FDA)は、食中毒のリスクが高い人は生の魚を避けるよう案内しています。妊娠中の方、5歳未満の子ども、高齢の方、がん、糖尿病、HIV/AIDS、臓器移植、自己免疫疾患など免疫力が低下している方が対象です。これらの方に作る場合は、韓国料理のレシピから、加熱した別の料理を選んでください。
韓国国際交流財団(Korea Foundation)の雑誌『Koreana』は、ムルフェ(물회)を、漁師が船の上で火をおこさずに食べた食事として紹介しています。ただ、これが料理の起源のすべてかどうかは別の問題で、同誌の記事は記録に残る始まりというより、語られてきた一つの物語として読むのがよさそうです。それでも、そこから浮かぶ情景は印象的です。生の魚、辛い味つけ、冷たい水が一つの器に入っています。
ムルフェは温かい魚のスープではありません。汁をとことん冷たくして、辛さと酸味にほんの少し甘みを添える、冷製の生魚料理です。この記事で紹介するのは、Maangchi が公開している4人分のレシピに沿った作り方です。魚の細切り、玉ねぎ、にんじん、トマト、青唐辛子、レタスをコチュジャンと酢の汁で和え、細いそうめん(somyeon)を別添えにして、食卓で混ぜながら食べます。
Maangchi のレシピでは、新鮮な魚か、冷凍の刺身用の魚を使ってよいとされ、ニューヨークで冷凍の刺身用マグロを使って作った例にも触れています。ここで使うのは、その冷凍マグロだけです。白身魚、サバ、自分で釣った魚、鮮度だけで選んだ魚は、このレシピには含めません。
このレシピは編集部で試作していません。分量と手順は Maangchi が公開しているレシピに、生魚の扱いについての案内は公的機関の資料にもとづいています。どちらも、生魚のリスクをなくすものではありません。
この料理に使える食材・調味料
魚の選び方と扱い
最初に決めるのは魚です。これが、ほかの準備すべてを左右する買い物になります。
販売者が生食用と案内している冷凍マグロを買ってください。 購入時に、生で食べるものとして売られているか、どのように冷凍したかを確認します。「sashimi grade(刺身用)」は呼び名であって、安全の保証ではありません。販売者が答えられない魚は、この料理には使わないでください。
公的機関が示している冷凍の条件を確認します。 販売者に尋ねるときの目安です。
| 機関 | 示されている冷凍条件 | 対象 |
|---|---|---|
| 日本の厚生労働省 | −20°Cで24時間以上 | アニサキス対策。事業者向けの案内 |
| FDA | −20°C以下で7日間(合計時間) | 寄生虫対策。水産業界向けの指針 |
| FDA | −35°C以下で固まるまで凍らせ、−35°C以下で15時間保管 | 同上 |
| FDA | −35°C以下で固まるまで凍らせ、−20°C以下で24時間保管 | 同上 |
FDAは、これらの条件が非常に大きな魚には合わない場合があるとしています。また、これらは事業者が行うべきことを述べたもので、家庭に持ち帰る特定の商品を保証するものではありません。
家庭の冷凍庫を当てにしないでください。 厚生労働省が家庭向けに示している冷凍庫の目安は−15°C以下で、上の条件を満たすとは限りません。自分で魚を凍らせても、販売者がこうした条件で凍らせた商品を買うことの代わりにはなりません。
マグロなら大丈夫とは考えないでください。 厚生労働省は、アニサキスの宿主になりうる魚にマグロを挙げています。また、新鮮さだけでは寄生虫のリスクはなくなりません。
冷たいまま保ちます。 魚は帰宅後すぐに冷凍庫か冷蔵庫に入れ、解凍は冷蔵庫の中で行います。厚生労働省の家庭向けの目安は、冷蔵庫が10°C以下、冷凍庫が−15°C以下です。
道具
- 魚専用の包丁とまな板
- 野菜用の別の包丁とまな板
- 切った魚を冷やしておくための、ふたつきの皿か容器
- 大きな鍋
- ざる
- 大きくて深いボウル
味と安全
味。 目指すのは、とことん冷たく、辛くて酸っぱく、ほんの少し甘い汁です。魚、しゃきっとした野菜、麺が、それぞれ別々の食感で感じられるようにします。辛さ、酸味、甘みは、すでに器に入っている調味料の範囲で好みに合わせて調整できます。汁が濃すぎると感じたら、氷のように冷たい水を少しずつ足してください。
酢と唐辛子は風味であって、守りではありません。 厚生労働省は、ふつうの酢、塩、しょうゆ、わさびではアニサキスは死なないとしており、唐辛子も寄生虫対策とは考えないでください。FDAも、塩水漬けや酢漬けは寄生虫の危険を減らしても、なくすことはできないとしています。冷たい汁にしても、この点は変わりません。
衛生。 厚生労働省の家庭向けの案内では、生の魚の汁がほかの食べ物にかからないようにし、手を洗うことを求めています。生魚に使った包丁とまな板は、洗ってから熱湯をかけて使い直します。魚用と野菜用の道具を分けるのも、同じ案内にそった方法です。調理した食べ物を室温に長く置かないでください。
避けたほうがよい方。 FDAは、妊娠中の方、5歳未満の子ども、高齢の方、がん、糖尿病、HIV/AIDS、臓器移植、自己免疫疾患など免疫力が低下している方に、生の魚を避けるよう案内しています。厚生労働省も、子どもや高齢の方など抵抗力の弱い人に特に注意するよう呼びかけています。こうした方には、別の料理を作ってください。
ここに挙げた対策はどれもリスクを下げるものですが、生魚のリスクをなくすものではありません。
うまくいかないとき
| 困りごと | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 汁の味が強すぎる | 水が好みに対して少ない | 氷のように冷たい水を少しずつ足し、味を見ながら調整する |
| 汁があまり冷たくない | 水が十分に冷えていなかった | すぐに出す。次回は本当に氷のように冷たい水を使うか、下の「アレンジ」にある水と氷の方法を使う |
| 麺に硬い芯が残る | ゆで時間が足りない | 次回は芯が残らなくなるまでゆで、すすいで水気を切る |
| 麺が崩れる | ゆですぎ | 次回は早めに状態を見る |
| 麺がぬるい、水っぽい | 冷水ですすぐ時間が短い、水切り不足 | 冷たい流水でもっと長くすすぎ、しっかり水を切る |
| 魚の冷凍方法や、生食用として売られているかを確認できない | 販売者が答えられなかった | その魚はこの料理に使わず、別の料理を作る |
| 切っているときに寄生虫を見つけた | マグロにも寄生虫がいることがある | 取り除く。目で見る確認は、きちんと冷凍された魚と併せて行うもので、代わりにはならない |
アレンジ
| アレンジ | やり方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 水と氷 | Maangchi の任意の方法では、氷のように冷たい水2カップの代わりに水1カップと氷1カップを使う | 上の作り方は冷水だけを使う |
| 辛さ、酸味、甘み | 入っている調味料を好みに合わせて加減する | 味の調整であり、魚の安全には関係しない |
| 梨や果物の汁、ご飯 | 『Koreana』は、果物ベースの冷たい汁やご飯を使う形が、ほかの地域にあると伝えている | このレシピには含まれず、分量も示さない |
魚を加熱するバージョンは別の料理になるので、ここでは紹介しません。上で説明した冷凍マグロ以外の魚も、このレシピの対象外です。
船と浦項と、姿を変えてきた一杯
『Koreana』には、この料理の位置づけを知る手がかりになる記事が2本あります。どちらも文化を伝える報道で、起源を正確に記録したものではありません。
フードコラムニストのパク・サンヒョン(Park Sang-hyun)は「Mulhoe – A Uniquely Korean Summer Delicacy」で、この料理を漁師が船上でとる食事という文脈で紹介しています。また、汁、魚や海産物、しゃきっとした野菜、そしてご飯か麺という、よく見られる組み合わせのバランスにも触れています。
『ハンギョレ』記者のパク・ミヒャン(Park Mee-hyang)は、「Delicacies that Originated in Traditional Markets」の「The Fishermen's Humble Meal」の節で、ムルフェを浦項の北部市場(Bukbu Market)と結びつけ、1980年代に広まったと伝えています。この特集によれば、初期の説明は生魚、ご飯、コチュジャン、水を合わせたもので、1990年代からはご飯の代わりに麺を使うこともありました。のちには、きゅうり、赤身魚、豆の粉を加えたものや、果物と甘酸っぱさを取り入れた冷たい汁を使うものも登場しました。
つまり、ムルフェにただ一つの決まった形はありません。具、汁、麺かご飯かは、地域や店によって違います。このページの一杯は、Maangchi の魚、野菜、冷たいコチュジャン酢の汁、そうめんという組み合わせで、浦項の唯一の型ではなく、韓国全体の標準として読むものでもありません。
よくある質問
ムルフェは温かい料理ですか?
いいえ。生の魚と、氷のように冷たい水で作る汁を中心にした冷たい料理です。
生食用ではない魚を使えますか?
使えません。販売者が生で食べるものとして案内している冷凍マグロだけを使い、どのように冷凍したかも確認してください。
Maangchi のレシピでは新鮮な魚も使えますか?
使えるとされています。新鮮な魚か、冷凍の刺身用の魚です。ここでは、生食用の冷凍マグロに絞りました。公的機関の案内が寄生虫対策として示しているのは冷凍の条件で、新鮮さだけではそのリスクがなくならないためです。
酢や唐辛子で生魚は安全になりますか?
なりません。厚生労働省は、ふつうの酢、塩、しょうゆ、わさびではアニサキスは死なないとしており、唐辛子も寄生虫対策にはなりません。
魚を自宅で凍らせてもいいですか?
頼りにしないでください。厚生労働省が示す家庭の冷凍庫の目安は−15°C以下で、機関が示す条件に届くとは限りません。販売者がその条件で冷凍したと案内している商品を買ってください。
梨は必要ですか?
必要ありません。Maangchi のレシピには梨は入っていません。果物をベースにした汁は、『Koreana』が伝えるムルフェの幅広いバリエーションの一つです。
麺はどう食べますか?
冷やして水気を切った麺を別添えにして出し、食卓で器に入れて混ぜます。
残りは保存できますか?
Maangchi は、残りを冷蔵せず、一度で食べきるよう勧めています。この記事もそれにならい、保存期間は示しません。食べきれる分だけ作ってください。

















