モンゴルのボーズ。蒸し上がった羊肉の蒸し餃子が木の蒸し器に並んでいる
🔪下準備1時間
🔥調理20分
🍽️分量4
🌍料理モンゴル料理
東アジアレシピ

ボーズの作り方|モンゴル羊肉蒸し餃子

22分で読めます世界ごはん編集部

草原の恵みを包む——モンゴル遊牧民の蒸し餃子

マイナス30度の冬のモンゴル高原。ゲル(移動式住居)の中では家族全員が丸いテーブルを囲み、手づかみで蒸し餃子にかぶりついています。皮を噛み破った瞬間、中から熱い肉汁がじゅわっとあふれ出し、白い湯気が立ちのぼります。これがボーズ(Buuz / Бууз)——モンゴルの国民的な蒸し餃子です。

ボーズはモンゴル語で「蒸したもの」を意味し、その名の通り、羊肉(マトンまたはラム)と玉ねぎを小麦粉の皮で包んで蒸し上げた料理です。見た目は中国の小籠包や日本の肉まんに似ていますが、決定的に違うのは**羊肉100%**で作ること。モンゴルの草原で放牧された羊の肉は、日本で流通するラムやマトンとは別次元の風味を持つと言われます。

モンゴルでは一年を通じて食べられていますが、特に重要なのがツァガーンサル(Tsagaan Sar / Цагаан Сар)——モンゴルの旧正月です。この時期、モンゴルの家庭では何百個ものボーズを仕込み、訪問客に振る舞います。ボーズの数が多いほど、もてなしの心が深いとされるのです。

ボーズとは

モンゴル語で「ボーズ(Бууз)」は「蒸す」の意。チベット語の「モモ(Momo)」、中国語の「包子(バオズ)」と語源的に関連するとされ、中央アジアから東アジアにかけて広がる蒸し餃子文化の一環に位置づけられる。英語圏では「Mongolian Steamed Dumplings」「Buuz」と表記される。形は上部に小さな穴を残して包むのが特徴で、蒸しあがるとこの穴から肉汁の蒸気が立ちのぼる。

モンゴルのボーズ。蒸し上がった羊肉の蒸し餃子が木の蒸し器に並んでいる
ボーズ。モンゴル高原の風が育てた羊の肉汁を、小麦の皮に閉じ込めた国民食

4人分

材料(4人分・約24 個)

材料 分量 代替・備考
薄力粉 300 g 中力粉でも可。強力粉は硬すぎるので不可
熱湯 150 ml 生地に伸びとしなやかさを出す
小さじ1/2
サラダ油 小さじ1 生地の扱いやすさ向上

餡(具材)

材料 分量 代替・備考
羊肉(ラムまたはマトン)ミンチ 400 g 牛豚合いびきでも可だが、羊肉が本場の味
玉ねぎ 1 個(みじん切り)
にんにく 2 片(みじん切り)
小さじ1
黒こしょう 小さじ1/2
クミンパウダー 小さじ1/2 モンゴル式の風味づけに重要
大さじ2〜3 餡に加えることで蒸したとき肉汁が生まれる

仕上げ・つけダレ

材料 分量 備考
醤油 大さじ2 つけダレ用
大さじ1 お好みで
ラー油 小さじ1 お好みで
ボーズの材料。羊肉ミンチ、玉ねぎ、薄力粉、クミンなどが並ぶ
ボーズの材料一覧。羊肉の赤身とクミンの香りがモンゴルの食卓を思わせる
羊肉の選び方と入手先

日本のスーパーではラム肉は比較的手に入りやすくなっていますが、ミンチ(ひき肉)は見つけにくいかもしれません。ラムの肩ロースやもも肉を購入し、包丁で粗く刻むかフードプロセッサーで挽くのが最善です。マトン(成羊の肉)のほうが風味が強く本場に近い味になりますが、臭みが気になる方はラム(仔羊)を選んでください。業務スーパーや成城石井、カルディ、ハラルフードショップではラムミンチを扱っていることがあります。Amazon等の通販でも冷凍ラムミンチが入手可能です。

この料理に使う食材・道具

ラム肉 ミンチ 500 g(冷凍)
ラム肉 ミンチ 500 g(冷凍)
¥1,280(税込・変動あり)
GABAN クミンパウダー 65 g
GABAN クミンパウダー 65 g
¥448(税込・変動あり)

調理手順

1

生地を棒状に伸ばし、24等分に切る

休ませた生地を手のひらで転がして細長い棒状にし、スケッパーや包丁で24等分に切り分けます。1個あたり約15gになります。

手順1: 生地を棒状に伸ばし、24等分に切る
2

1つずつ丸め、麺棒で直径8cmの円形に伸ばす

手のひらで丸く押しつぶしてから麺棒で伸ばします。**中心を厚めに、縁を薄めに**するのがポイントです。中心が薄いと蒸したときに底が破れて肉汁が漏れます。

手順2: 1つずつ丸め、麺棒で直径8cmの円形に伸ばす
3

皮の中央に餡を大さじ1ほど載せる

餡の量は皮の大きさに対して「ちょっと多いかな」と感じる程度が適量です。少なすぎると蒸したときに肉汁がたまるスペースがなくなります。

手順3: 皮の中央に餡を大さじ1ほど載せる
4

皮の縁をつまみ上げ、ひだを寄せながら包む。上部に小さな穴を残す

左手で皮の手前をつまみ上げ、右手でひだを寄せながら時計回り(または反時計回り)に一周します。最後に上部を完全に閉じず、**直径5mmほどの穴を残す**のがモンゴル式。この穴が蒸し上がりの目印にもなります。穴から肉汁の蒸気が立ちのぼったら完成のサイン。

手順4: 皮の縁をつまみ上げ、ひだを寄せながら包む。上部に小さな穴を残す
5

蒸し器にクッキングシートを敷き、ボーズを並べる。間隔を2cm以上空ける

ボーズ同士がくっつかないように間隔を空けます。蒸すと生地が膨らむため、隣とくっつくと破れて肉汁が漏れてしまいます。

手順5: 蒸し器にクッキングシートを敷き、ボーズを並べる。間隔を2cm以上空ける
6

強火で蒸気を上げた蒸し器に入れ、15〜18分蒸す

蒸し器に十分な蒸気が立ってからボーズを入れます。冷たい蒸し器から蒸し始めると、生地がべたつき、仕上がりが悪くなります。**15分を目安に、上部の穴から透明な肉汁が見えたら完成**です。

手順6: 強火で蒸気を上げた蒸し器に入れ、15〜18分蒸す
📊 栄養情報(1人分)
95
kcal
5.5g
タンパク質
4.5g
脂質
8.0g
炭水化物
0.5g
食物繊維
130mg
ナトリウム
※ 目安値です。材料や調理法により変動します。

この料理の歴史——草原帝国の食卓から現代のウランバートルへ

ボーズのルーツをたどると、中央アジアの遊牧民文化に行き着きます。

モンゴル高原の遊牧民は数千年にわたって**五畜(馬・牛・羊・ヤギ・ラクダ)**を飼育し、その乳と肉を主食としてきました。厳寒の冬を乗り越えるために高カロリーの羊肉が重要なエネルギー源であり、ボーズのように肉をたっぷり使った料理が発達したのは自然なことでした。

モンゴルの草原とゲル。遊牧民の生活風景
モンゴルの草原。ボーズは厳寒の遊牧生活を支えるエネルギー食として生まれた

ボーズの直接の起源については二つの有力な説があります。

第一の説:チベット経由。チベットの蒸し餃子**モモ(Momo)**がモンゴルに伝わったとする説です。チベット仏教がモンゴルに広まった16〜17世紀に、僧侶や商人を通じてモモの製法が伝わり、モンゴルの羊肉文化と融合してボーズになったと考えられています。実際、「ボーズ」という語はチベット語の「モグモグ(Mog Mog)」に由来するという言語学的な指摘もあります。

第二の説:中国経由。元朝(1271〜1368年)の時代に中国の包子(バオズ)がモンゴルに逆輸入されたとする説です。フビライ・ハーンの宮廷では中国の料理人が多数雇われており、中国式の蒸し物の技法がモンゴル料理に取り入れられた可能性があります。「ボーズ(Buuz)」と「包子(Baozi)」の音の類似もこの説を裏付けます。同様の歴史的文化交流はナシゴレンフェイジョアーダなど、植民地支配や交易路を通じた料理の伝播にも見られるパターンです。

いずれの説にせよ、モンゴルの厳しい気候と遊牧文化が、ボーズを現在の形に発展させたのは間違いありません。冬のマイナス30〜40度の環境では、屋外に並べておくだけでボーズは天然の冷凍庫で保存でき、食べるときに蒸し直すだけで済みます。この「保存食」としての利便性が、ボーズがモンゴルの国民食になった重要な理由の一つです。

現代のモンゴルでは、首都ウランバートルの「ボーズの店(Buuzny Gazar / Буузны Газар)」が街中にあり、日本のラーメン屋や牛丼チェーンに相当する庶民の外食文化の一部になっています。テイクアウトで冷凍ボーズを買い、自宅で蒸すのも一般的です。コシャリがエジプトの国民的ファストフードであるように、ボーズはモンゴルの庶民の味そのものです。


調理のコツ——ボーズを完璧にする5つの技術

1. 餡に水を加えて「肉汁の池」を作る

ボーズの最大の魅力は噛んだ瞬間にあふれる肉汁です。この肉汁を生み出すために、餡に大さじ2〜3の水を加えるのが重要です。水分が少ないと蒸しても中がパサパサになり、「ただの蒸し餃子」になってしまいます。水の代わりに牛骨スープや鶏ガラスープを使うと、さらにコクのある肉汁になります。

2. 皮は「中心厚め・縁薄め」

ボーズの皮の厚さの違いを示す断面図
皮の断面イメージ。中心を厚くすることで底が破れず、肉汁を逃がさない

ボーズの皮は餃子の皮より厚いですが、均一な厚さではありません。中心(底になる部分)を厚めに、縁(ひだを寄せる部分)を薄めに伸ばします。底が薄いと蒸したときに肉汁の重みで破れ、せっかくのスープが流出してしまいます。麺棒で伸ばすとき、皮の中心に麺棒を押し当てず、縁の部分だけを転がすようにすると自然に中心が厚くなります。

3. ひだの数は最低8つ

モンゴルの熟練した料理人は1つのボーズに33のひだを寄せると言われますが、家庭料理では8〜12個のひだで十分です。ひだが少なすぎると包みが甘くなり、蒸したときに開いてしまいます。最初は8つのひだを目標にし、慣れてきたら徐々に増やしてください。

4. 蒸し器は「蒸気が十分に立ってから」

ボーズを蒸し器に入れるタイミングは、蒸し器のフタの隙間から蒸気がもうもうと噴き出している状態がベストです。蒸気が不十分な状態で入れると、生地がべたついて蒸し器にくっつき、取り出すときに皮が破れます。

5. 蒸し時間は15〜18分——上部の穴が目印

蒸し時間の目安は15〜18分です。上部の穴から透明な肉汁が見えるようになったら完成のサイン。肉汁がまだ赤っぽい場合は加熱不十分なので、さらに2〜3分蒸してください。逆に蒸しすぎると皮がふやけて破れやすくなります。


ボーズのバリエーション——モンゴルの肉料理ファミリー

モンゴルには、ボーズと兄弟関係にある肉料理がいくつかあります。いずれも「羊肉を小麦の皮で包む」という共通の発想から生まれたものです。

ホーショール(Khuushuur / Хуушуур)——揚げボーズ

ホーショールはボーズとほぼ同じ餡を使いますが、半月形に包んで揚げるのが違いです。外はカリカリ、中はジューシーという食感のコントラストが魅力です。モンゴルのナーダム祭り(夏の国民的スポーツ祭典)では、会場周辺にホーショールの屋台がずらりと並びます。モンゴル人にとってホーショールは「夏の味」、ボーズは「冬の味」です。

バンシ(Bansh / Банш)——小さな水餃子

バンシはボーズのミニ版で、親指の先ほどの小さな餃子です。スープに入れて食べるのが一般的で、モンゴルのツォイワン(Tsuivan / Цуйван)(焼きうどん)と並ぶ日常食です。風邪を引いたときやお腹の調子が悪いときに食べる「モンゴルのお粥」的な存在でもあります。

周辺地域の蒸し餃子との比較

ボーズは東アジアから中央アジアにかけて広がる蒸し餃子文化の一つです。

料理 国・地域 皮の特徴 調理法
ボーズ モンゴル 厚め・上に穴 羊肉 蒸す
モモ チベット・ネパール やや薄い 水牛・ヤク肉 蒸す・揚げる
マンティ ウズベキスタン・トルコ 厚め・大型 羊肉+かぼちゃ 蒸す
包子 中国 発酵生地 豚肉 蒸す
小籠包 中国(上海) 極薄 豚肉+ゼラチンスープ 蒸す
ヒンカリ ジョージア 厚め・上にねじり 牛豚・羊肉 茹でる
ピエロギ ポーランド 厚め ジャガイモ・チーズ 茹でる→焼く
ボーズとホーショール。蒸しボーズと揚げホーショールが一緒に盛られた皿
ボーズとホーショール。同じ餡を蒸すか揚げるかで全く異なる料理になる

ツァガーンサル——ボーズが主役のモンゴル正月

ボーズの文化的重要性を語るうえで欠かせないのが、ツァガーンサル(Tsagaan Sar / Цагаан Сар)——モンゴルの旧正月です。

ツァガーンサルは太陰暦に基づくため毎年日付が変わりますが、おおむね1月末から2月にかけて行われます。この時期、モンゴルの各家庭では数百個から千個以上のボーズを仕込みます。家族全員で台所に集まり、皮を伸ばし、餡を包み、蒸し器で蒸す。この「ボーズ仕込み」自体が、年末の重要な家族行事なのです。

ツァガーンサルの初日、家庭は訪問客を迎えます。客人にはまずミルクティー(スーテーツァイ / Сүүтэй Цай)が出され、次にボーズが蒸したて熱々で提供されます。客人は最低でも1つのボーズを完食するのが礼儀です。ボーズを残すことは、もてなしを拒否する意味になるからです。

ある英語圏の旅行記によれば、ツァガーンサルの3日間で家庭を訪問し続けると、合計で100個以上のボーズを食べることになるそうです。モンゴルの正月は、まさに「ボーズの祭り」と言っても過言ではありません。

ツァガーンサルとは

モンゴル語で「白い月」を意味する。「白」は乳製品を象徴し、豊穣と純粋を表す。旧正月にあたり、中国の春節、韓国のソルナルと同じく太陰暦の新年。ボーズのほか、**アーロール(乾燥チーズ)ウル(積み上げ菓子)**がテーブルに並ぶ。家族の長老が最初にボーズに手をつけるのがしきたり。


保存と冷凍——モンゴル式「天然冷凍庫」を日本で再現

冷凍保存用にバットに並べたボーズ
冷凍保存。バットに並べて急速冷凍し、固まったらジップロックに移す

ボーズは冷凍保存との相性が抜群です。モンゴルでは冬場、屋外に並べておくだけで天然の冷凍庫になりますが、日本ではバットやトレーに並べて冷凍庫に入れればOKです。

冷凍手順:

  1. 蒸す前の状態のボーズをクッキングシートを敷いたバットに並べる
  2. ボーズ同士が触れないように間隔を空ける
  3. 冷凍庫に入れ、2〜3時間で表面が固まる
  4. 固まったらジップロック等の保存袋に移す
  5. 冷凍保存で約1ヶ月

蒸し直し方: 冷凍のまま蒸し器に入れ、18〜22分蒸します。解凍せずにそのまま蒸すのがポイントです。電子レンジでの解凍は皮がべたつくのでおすすめしません。

週末まとめ作りのすすめ

ボーズは「包む」工程が最も時間がかかります。週末に家族で50〜60個まとめて包み、冷凍保存しておけば、平日は蒸し器に入れて20分で本格モンゴル料理が食べられます。モンゴルの家庭でもツァガーンサル前に大量に仕込んでおくのと同じ発想です。


よくある質問

ボーズを初めて作る方へ

最初の数個は包み方がうまくいかないかもしれませんが、形が不格好でも味は同じです。モンゴルの家庭でも、子どもが手伝って包んだいびつなボーズが食卓に並ぶのは日常風景。包む練習を楽しんでください。

Q1. 羊肉以外の肉でも作れますか?

はい。 牛肉、豚肉、牛豚合いびき肉でも作れます。ただし、モンゴルのボーズの独特の風味は羊肉から来ているため、可能であれば羊肉(ラム)を使うことを強くおすすめします。牛肉を使う場合は脂身が少ないため、サラダ油大さじ1を餡に加えるとジューシーに仕上がります。

Q2. 蒸し器がない場合は?

フライパンで代用できます。フライパンにクッキングシートを敷いてボーズを並べ、水を1cmほど注いで蓋をし、中火で15分蒸し焼きにします。底がカリカリに焼けた「焼きボーズ」になり、これはこれで美味しいです。中国の焼き小籠包(生煎包)に近い仕上がりになります。

Q3. 上部の穴を閉じてしまってもいい?

閉じても食べられますが、穴がないと蒸し上がりの判断ができず、中が生焼けになるリスクがあります。また穴があることで蒸気が均一に回り、皮の食感が良くなるメリットもあります。最初は穴を残す包み方に挑戦してみてください。

Q4. 冷凍ボーズを電子レンジで温められる?

おすすめしません。 電子レンジで温めると皮がゴムのようにべたつき、底がべちゃべちゃになります。冷凍ボーズは蒸し器で蒸すのが最善です。時間は冷凍のまま18〜22分。蒸し器がなければQ2のフライパン法で対応できます。

Q5. 子どもでも食べられますか?

はい。 クミンや黒こしょうの量を半分にすれば、子どもでも食べやすい味になります。ただし中の肉汁が非常に熱いので、小さなお子さんには穴を広げて蒸気を逃がし、3〜5分冷ましてから渡してください。


参考文献

モンゴルの食文化を紹介する書籍や資料のイメージ
参考文献。モンゴル食文化の研究は英語圏で活発に行われている

学術論文・書籍:

報告・記事:

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