ビンデトック:熱い油の中で音を立てる、厚い緑豆の生地
浸した緑豆ともち米を丸ごと挽いて厚めの生地にし、豚肉、キムチ、ゴサリ(わらび)、もやしを混ぜ込みます。外側がきつね色でカリッとするまで焼き、中の豚肉まで火を通します。
厚くて淡い色の生地をひとすくい、熱した油に落とすと、フライパンがパチパチと音を立てて応えます。Korea.netは、ビンデトック(빈대떡)を宴席の料理であり、雨の日に好まれる料理だと紹介しています。生地が油で焼ける音は、よく雨音にたとえられるそうです。これは韓国でよく聞かれる連想で、ひとつの決まった物語ではありませんが、この料理がどれほど身近かを物語っています。
ビンデトックは、市販の粉を溶いた生地では作りません。皮をむいた乾燥緑豆と少量のもち米を8時間浸水してから挽き、厚い生地にします。そこへ豚ひき肉、よく発酵した白菜キムチ、ゴサリ(わらび)、緑豆もやしを混ぜ込みます。
この記事のレシピは、Maangchiが公開しているものに従っています。Maangchiは、義理の両親が北朝鮮の生まれだという韓国人の友人から教わったレシピだと紹介しています。直径約6インチのものが6枚できます。分量は、米国式のカップ・オンス・大さじ・小さじのままです。世界ごはん紀行では、このレシピを自分たちの台所では試していません。分量と時間はMaangchiの版に従っているので、目安として読んでください。
韓国語では빈대떡(ビンデトック)と書きます。Maangchiは、関連する呼び名として「緑豆のチョン」を意味する녹두전(ノクドゥジョン)も挙げています。材料や背景を調べるときは、両方で検索すると見つけやすくなります。
ビンデトックとは:トックとつくけれど、餅ではない
名前の終わりは、ふつう餅を指す「トック」です。でも、ビンデトックは餅ではありません。Korea.netも韓国観光公社も、挽いた緑豆を焼くパンケーキで、「チョン(전)」と呼ばれる韓国料理の仲間として紹介しています。韓国観光公社の概要は、材料として緑豆、豚肉、もやし、わらびを挙げています。この記事のレシピと同じ骨格です。
韓国観光公社は、このパンケーキを平安道(現在は北朝鮮にある北部の道)の名物だと説明しています。Maangchiのレシピの背景にある家族の歴史とも合う話ですが、この記事では、平安道のただ一つの正統な配合とは位置づけません。北部にルーツをもつ家庭版のひとつとして紹介します。
Korea.netは、17世紀の料理書に「binjyabeop」という料理の記録があるとも伝えています。古い文字記録として知っておく価値はありますが、この料理の起源は定まっていません。この記録だけで、ビンデトックの始まりがわかるわけではありません。
北から南へ:避難民と市場とマッコリ
韓国財団の雑誌Koreanaは、朝鮮戦争のあと、北部の道から避難してきた人々とともにビンデトックが南へ渡り、ソウルの市場や食堂街の料理になった経緯を伝えています。ソウルでビンデトックで知られる場所として、Koreanaは広蔵市場と乙支路を挙げています。そこでは、白く濁った韓国の米のお酒、マッコリと一緒に食べることが多いそうです。Koreanaは、そうした店で牡蠣やタコなど具を変えて焼く料理人がいることにも触れています。
この記事のレシピも、人の移動と記憶という同じ流れの中にあります。ただし、舞台は市場の屋台ではなく、ひとつの家族の台所です。同じ食卓の料理は韓国のページでも紹介しています。
この料理に使える食材・調味料
選び方と代用
緑豆ともち米がこの料理の中心です。 皮をむいた乾燥緑豆と、もち米を用意します。韓国食材店や通販で探してください。この生地では、ふつうの米や米粉をもち米の代わりにはできません。
緑豆粉を使うと、別のパンケーキになります。 浸した豆と米を緑豆粉に替えると、食感も配合の割合も変わってしまいます。そのため、このレシピでは扱いません。
ゴサリは省いてもかまいません。 ゴサリは土のような風味を加えます。見つからなければ、なしでも作れます。その場合は、土っぽい香りと歯ごたえが少し弱くなります。使うときは、生のものか、戻して水気を切ったものを使います。
キムチはよく発酵したものを。 よく発酵した白菜キムチを刻んで使います。
豚肉を抜くのは、代用ではなく別の料理です。 豚肉は旨みを加え、生地をまとめる役目もします。豚肉なしの版は、別に試す必要があります。
生地には生の豚肉と生卵が入っています。焼く前に味見をしてはいけません。どの1枚も、中心の豚肉まで完全に火が通るまで焼いてください。醤油には大豆と、多くの場合小麦が含まれます。キムチには魚介由来の原料が入っていることもあります。買ったものはすべて、表示を確認してください。
道具
- フードプロセッサー
- 大きめのボウル
- 浸水用のボウル
- 大きめのフライパン
- スプーンまたはお玉
- 幅広のフライ返し
- たれ用の小さな器
焼いている途中のトラブル対処
| 状態 | 対処 |
|---|---|
| 縁が固まる前に底が焦げそう | 火を少し弱めて焼き続ける。底が金色でカリッとする前に返さない |
| 1〜2枚焼くとフライパンが乾いたように見える | 次の1枚の前に、植物油を少し足す |
| 外は焼けたのに中が生に見える | 両面を焼き続け、中心の豚肉に完全に火が通るまで焼く。分数は目安でしかない |
| 1枚のまま返しにくい | 幅広のフライ返しを使う。次回は小さめに焼く(アレンジの項を参照) |
冷凍と温め直し
Maangchiは、焼き上げたものを冷凍することを勧めています。この記事では、冷凍期間や解凍・温め直しの方法は案内しません。
アレンジ
| アレンジ | 変わること |
|---|---|
| ゴサリなし | 材料は集めやすい。土っぽい香りと歯ごたえは弱まる。Maangchiは省いてもよいとしている |
| 糸唐辛子なし | 彩りも辛みも加わらない。飾りなので、なくてもよい |
| 小さめに焼く | 返しやすくなる。焼き時間が同じとは限らないので、色と、豚肉に火が通っているかで判断する |
| 豚肉なし | 代用ではなく別の版。旨みと生地のまとまりが変わり、ここでは試していない |
| 牡蠣やタコを入れる | Koreanaは、市場の料理人がこうした具を使うと伝えている。水分や火の通り方は別に見極める必要があるため、このレシピには混ぜない |
よくある質問
緑豆を浸さず、緑豆粉で作ってもよいですか?
別のパンケーキになります。このレシピの生地は、皮をむいた緑豆ともち米を浸して水と一緒に挽くことが前提です。粉の生地とは、食感も配合の割合も違います。
ゴサリが見つからないときはどうしますか?
省いてください。Maangchiも省いてよいとしています。土のような風味と歯ごたえは少し減りますが、ほかの作り方は変わりません。
なぜ8時間浸水するのですか?
乾燥した豆と米は、8時間浸水してはじめて、厚い生地になるまで挽けるようになります。食べたい時間から逆算して、浸水を始めてください。
何枚できて、大きさはどのくらいですか?
Maangchiのレシピでは6枚できます。1枚は約1カップの生地を、直径約6インチに広げたものです。何人分かは示されていません。
作り置きはできますか?
Maangchiは、焼いたものを冷凍することを勧めています。保存期間や解凍・温め直しの方法は、ここでは案内しません。
ビンデトックには何を添えますか?
醤油と酢のたれです。MaangchiとKoreanaはどちらも、マッコリとの組み合わせに触れています。マッコリはお好みで添えるもので、レシピの一部ではありません。
ビンデトックは餅の一種ですか?
いいえ。名前に「トック」とつきますが、フライパンで焼く緑豆のパンケーキで、「チョン」の仲間です。














