切り分けた断面を見れば、この料理の組み立てはひと目でわかります。下に太く中空のパスタ、真ん中にトマト味の肉ソース、その上にもう一度パスタ、いちばん上には焼き色のついた厚いベシャメル。ギリシャのオーブン焼きパスタ、パスティチオ(pastitsio)です。ギリシャの観光部門が運営するDiscover Greeceは、独自のパスタ料理をもつクレタ島のタベルナ(食堂)でも出会えるギリシャの定番料理の一つとして、パスティチオを挙げています。国じゅうで食べられている一皿だということがわかります。
太いパスタ、トマトの肉ソース、黄金色のベシャメルを一皿に
パスタ、濃く煮詰めた肉ソース、もう一度パスタ、卵黄とケファロティリ(kefalotyri)入りのベシャメルという層の見え方です。パスタは短めに茹で、ソースはとろみがつくまで煮て、焼いたあとは休ませてから切り分けます。
この記事では、ギリシャのパスタメーカーMISKOが公開しているパスティチオのレシピを、原典どおりの10人分で紹介します。牛ひき肉に加えて刻んだソーセージ、にんじん、少量のクミンを肉ソースに使うところが、この配合の個性です。パスタ、肉ソース、ベシャメルの3つを並行して仕上げ、最後に耐熱皿の中で合わせる料理なので、作り始める前に手順を最後まで通して読んでおくと段取りがつかめます。
なお、このレシピは今回の記事のために台所で試作したものではありません。分量、時間、オーブンの温度は、MISKOのレシピに書かれているとおりです。ギリシャのほかの料理はギリシャの料理にまとめています。
名前のよく似たパスティチアダ(pastitsada)は、トマトで煮込んだ肉をパスタにかける料理です。パスティチオは、重ねてオーブンで焼く料理です。
この料理に使える食材・調味料
道具
- 水5 litersが入る大きな鍋と、ざる
- 肉ソース用の浅めの鍋
- ベシャメル用の小鍋と泡立て器
- トマトとチーズ用のおろし器
- 耐熱皿
- オーブン
選び方と代用
パスタ。 MISKOのPastitsio No2という、この料理のための太い管状パスタを使います。手に入りにくい場合は、太さと形が近いブカティーニやジーティのような太い管状パスタが候補になります。長さや層のまとまり方は変わります。どれを使う場合も、茹で時間はその商品の袋の表示を基準にして、手順1のとおり2〜3分短くします。
チーズ。 ケファロティリはギリシャの硬質チーズです。見つからなければ、ほかの硬いおろし用チーズで代えられますが、塩気、硬さ、香りは変わります。チーズの塩気を考えて味つけをしてください。生の卵黄を加えたあとのベシャメルは味見しないでください。
トマト。 すりおろしトマト500 gを使います。
食べ方

焼いたあとの15分の休ませ時間は原典の指定で、守る価値があります。オーブンから出してすぐ切ると、きれいに取り分けにくくなります。レシピは10人分で書かれていますが、実際に何人で食べきれるかは、食卓によって変わります。
うまくいかないとき
| 状況 | 確認すること | 対処 |
|---|---|---|
| パスタを何分茹でるか迷う | 使うパスタの袋に書かれた時間 | 袋の表示より2〜3分短く茹でる。原典は決まった分数を示していない |
| 肉ソースが水っぽい | 15〜20分しっかり煮たか | 層にする前に、とろみがつくまで弱火で煮る |
| ベシャメルの粉が早く色づく | バターと粉の混ぜた色 | 原典は粉がわずかに色づく程度を求めている。中火のまま絶えず混ぜる |
| 牛乳を入れるとダマになる | 牛乳を入れた速さ | 原典のとおり、少しずつ加えながら素早く混ぜる |
| 卵黄を入れる時機がわからない | 鍋がまだ火の上にないか | 先に鍋を火から外し、そのあとで卵黄とチーズを混ぜる |
| 表面に散らすチーズの量 | 原典の記載 | 原典に量の記載はない。材料表の分量は再配分していない |
| 切り分けると崩れる | 休ませたか | 焼いたあと15分休ませてから切る |
この料理の中の幅
サヴール(Saveur)誌に寄稿したアグライア・クレメジ(Aglaia Kremezi)は、パスティチオは家庭ごとに、配合や層の組み立てが違うと書いています。この記事で紹介しているのはMISKOの一つのレシピで、牛肉とソーセージ、にんじん、クミンを使う肉ソースはこの配合を特徴づけています。ほかの出典のレシピは混ぜていません。
このレシピの中で、材料から考えられる変更は実用的なものにとどまります。Pastitsio No2の代わりに太い管状パスタを使うこと、ケファロティリが手に入らなければ別の硬いおろし用チーズを使うことです。どちらも、「選び方と代用」で書いたとおり編集部の提案で、違いも添えています。
ギリシャでのパスティチオ
Discover Greeceのクレタ島のガイドには、パスティチオがクレタ島のタベルナで見つかるギリシャの定番料理の一つとして出てきます。同じページでは、島独自のパスタ料理スキウフィフタ・マカロニア(skioufichta makarounia)など、クレタ固有の食べ物も別に説明されています。ここでのパスティチオは、国じゅうで食べられている料理として紹介されていて、クレタ名物としては書かれていません。
サヴール誌のクレメジの記事は、いま広く知られているベシャメルをのせるパスティチオと、それ以前にあった、パイ生地で包む地域ごとの形を分けて説明しています。彼女によれば、ベシャメルを使う形は20世紀初頭のフランスの影響を反映していて、料理本の著者ニコラオス・ツェレメンテス(Nikolaos Tselementes)とフランスの技法に結びつけられています。これは一人の書き手による料理史の説明です。単一の発明の瞬間があったというより、この料理がさまざまな形をとってきたことを示しています。
よくある質問
パスティチオとパスティチアダは同じですか?
違います。パスティチアダは、トマトで煮た肉をパスタにかける料理です。パスティチオは、パスタ、肉ソース、ベシャメルを重ねてオーブンで焼く料理です。
パスタを袋の表示より短く茹でるのはなぜですか?
このあとオーブンで焼くからです。原典は、袋の表示より2〜3分短く茹でるよう指示しています。何分茹でるかは、買った商品によって変わります。
表面に散らすチーズの量は?
原典はケファロティリを表面に散らすよう書いていますが、量は示していません。また、別項目のすりおろし100gをどこに使うのかも書かれていません。この記事は、割り振りを推測せず、2つの分量を載せたとおりに残しています。
全体で何分かかりますか?
手順に書いた時間は原典のものです。たとえば、肉ソースを煮るのが15〜20分、180°Cのオーブンで40分、休ませるのが15分です。作業が重なり合い、台所での試作で確かめてもいないので、全体の所要時間は一つの数字では示していません。
このレシピは試作済みですか?
いいえ。今回の記事のために台所で試作してはいません。MISKOが公開している分量、手順、温度、時間をそのまま掲載しています。















