ルクセンブルクの国民食といえば、まず名前が挙がるのがこの一皿です。厚めに切った燻製の豚肉が皿に並び、その横には、淡い緑のそら豆をとろりとしたクリームソースで煮たものがたっぷり。ゆでたじゃがいもと、ルクセンブルクのマスタードがひとさじ添えられます。ユッド・マット・ガーデボウネン(Judd mat Gaardebounen)は、ルクセンブルク語で「ユッドとそら豆」。燻製の豚肉とそら豆という、ただそれだけの組み合わせが、この小さな国の誇る国民食です。
作り方は、燻製の豚肉を香味野菜と一緒に2時間ほど静かに煮て、その煮汁でそら豆のソースを作るだけ。豚肉の燻香と塩気が煮汁に移り、それがそのままソースの味になります。煮汁を捨てずにソースに使うところが、この料理のいちばんの要です。
そら豆の村と、名前をめぐる2つの説

ユッド(Judd)は、燻製した豚の肩ロースのことです。ルクセンブルクの肉屋では、加熱済みのものと生のままのものの両方が売られています。ガーデボウネン(Gaardebounen)は直訳すると「庭の豆」で、そら豆のことです。ルクセンブルクの料理を紹介するLuxtodayは、この料理を「多くの人がルクセンブルクの国民食と考えている」料理として紹介し、農村の暮らしに根ざした料理だと説明しています。
この料理と深く結びついているのが、ルクセンブルク南東部の村ゴスティンゲン(Gostingen)です。村のそら豆はよく知られていて、村の人たちは「ボウネパッチャーテン(Bounepatscherten)」という、そら豆にちなんだあだ名で呼ばれてきました。村ごとに豆のあだ名がつくほど、そら豆はこの土地の暮らしに溶け込んでいます。
「ユッド」という言葉の由来ははっきりしていません。言語学者ジャン=クロード・ミュラーは、スペイン語で豆を意味する「フディア(judía)」から来たという説を唱えています。スペイン北西部のガリシアには、豚肉とそら豆を合わせた「フディア」という似た料理があり、16〜17世紀にスペインの軍隊がルクセンブルクに持ち込んだのではないか、という考えです。もしそうなら、料理名は「豆と豆」という意味になります。
ルクセンブルクは、フランス、ドイツ、ベルギーに囲まれた小さな国です。燻製の豚肉と豆を組み合わせるこの料理には、農家の素朴な保存食の知恵が表れています。豚肉を燻製にして保存し、庭や畑で採れた豆と一緒に煮る。そんな農家の台所の料理が、今では国を代表する一皿になりました。
食べるときは、ゆでたじゃがいもを添え、ワインかビールを合わせるのが定番です。ルクセンブルクはモーゼル川沿いにブドウ畑が広がるワインの産地でもあり、豚肉を煮るときにモーゼルワインをグラス1杯加える作り方もあります。
途中で見つける、味の決め手
ゆでじゃがいもとマスタードで、ルクセンブルクの食卓に

皿に並んだ燻製の豚肉は、ほんのり桜色で、噛むと燻香と塩気がじわりと広がります。そこにクリーミーなそら豆のソースと、ほくほくのじゃがいもを合わせ、マスタードをひとさじ。マスタードの酸味が、豚肉の脂とソースのこくを軽くしてくれます。日本で手に入る粒なしのマスタードで十分です。
飲み物は、ワインかビールを合わせるのが定番です。ルクセンブルクのモーゼル川沿いはブドウ畑が広がるワインの産地なので、すっきりとした白ワインを選ぶと土地の取り合わせに近づきます。
燻製の豚肉と豆やキャベツを合わせる料理は、ヨーロッパ各地にあります。ドイツのバイリッシュクラウトは、ベーコンとキャラウェイでキャベツを煮るバイエルンの温かい付け合わせです。アイルランドのダブリン・コドルは、ソーセージとベーコンをじゃがいもと重ねて煮る素朴な鍋料理です。
よくある質問

かたまりベーコンがない場合は何で代用できますか?
ロースハムのかたまりでも作れます。ハムはすでに加熱されているので、手順2の煮込みは30分ほどにして、煮汁に香りと塩気を移す程度にしてください。燻製の香りは弱くなります。
セイボリーが手に入りません。
乾燥タイムで代用できます。セイボリーより香りが強いので、小さじ2くらいから加えてください。乾燥のセイボリーは、ハーブ専門店や通販で「サマーセイボリー」の名前で売られています。
そら豆アレルギーが心配です。
そら豆は、まれに体質によって重い症状を起こすことがあります。心配な場合は、グリーンピースや白いんげん豆で作ると、同じソースで別の豆料理として楽しめます。このソースには小麦と乳(バター、生クリーム)も含まれます。
作り置きはできますか?
豚肉は煮汁に浸したまま冷まし、煮汁ごと冷蔵庫に入れて、早めに食べきってください。そら豆のソースは別の容器で冷蔵し、温め直すときは弱火で混ぜながら、中まで熱くなるまで加熱します。














