ナバーラのアホアリエロは、鍋を回して鱈とトマトをなじませる
鱈は冷蔵庫でゆっくり塩抜きし、火は最初から最後まで弱火のまま。そして、スプーンではなく鍋のほうを動かして、鱈の身をほぐれた形のまま残します。
細かくほぐした塩鱈を、土鍋に入れます。鍋ではすでにオリーブ油の中で、にんにく、じゃがいも、乾燥チョリセロ唐辛子の濃い赤の果肉が柔らかくなっています。そこへトマトソースを加え、かき混ぜずに鍋ごと小さく円を描くように動かして、約10分、静かに火を通します。スペイン政府観光局(Spain.info)がナバーラの料理として紹介するバカラオ・アル・アホアリエロの核心は、ここにあります。鱈が主役で、トマトとにんにくと唐辛子がそれをまとめる家庭の煮込みです。
Spain.infoは、アホアリエロをナバーラの代表的な料理のひとつとして、細かくほぐした鱈にトマト、にんにく、じゃがいも、ピーマン類を合わせる料理と紹介し、他の地域にも広まったと説明しています。ただし、レシピがひとつに決まっているわけではありません。ナバーラの中にもトマトを使わない型があり、アラゴンには材料の違う型があります。配合はひとつに固定されていないので、この記事ではSpain.infoがナバーラ版として掲載している4人分のレシピを軸にしました。分量がそろっていて、家庭の台所で試しやすいからです。
同じ鱈でも、イベリア半島にはまったく違う仕立てがあります。カタルーニャの冷たい塩鱈のサラダ「エスケシャーダ」は、同じ魚の別の扱い方を見せてくれます。ポルトガルの「バカリャウ・ア・ブラス」にはじゃがいもと卵が加わります。スペインの別の郷土料理なら「カルソターダ」もあわせてどうぞ。
スペイン語では bacalao al ajoarriero と書き、短くアホアリエロ(ajoarriero)とも呼びます。この記事で使った資料には名前の由来を確定できる記述がなかったため、語源についてはここでは触れません。
道具
- 土鍋(スペインの素焼きのカスエラ)。なければ厚手の浅鍋
- 鱈が浸かる大きさのふた付き容器(冷蔵庫用)
- ざる
- 清潔な布かキッチンペーパー
- 唐辛子を戻すためのぬるま湯のボウルと、小さなスプーン
しょっぱい、水っぽい、崩れる:失敗したときの直し方
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| しょっぱい | 鱈の塩抜きが足りなかった | 煮上がりに水を足して薄めるより、次回は鱈の厚みを見て、塩抜きの時間と水替えを見直す |
| 水っぽい | 鱈の水切りが甘い、またはトマトソースがゆるい | 鱈は入れる前に水気をしっかり押さえる。元のレシピの指定ではなく家庭での調整として、トマトソースを先に軽く煮詰めておく手もある |
| 鱈が崩れる | 返す回数が多すぎた | 混ぜずに、鍋をそっと揺すったり回したりする |
| にんにくや唐辛子が焦げる | 火が強すぎた | 最初から弱火で始め、色が急に濃くなる前に次の工程へ進む |
バリエーション:味のバランスを変える
主レシピとは分けて紹介します。最初の3つは、じゃがいもと卵を任意とするVisit Navarraのナバーラのレシピをもとにしています。残りの2つは、日本で作るための調整です。
- じゃがいもなし。 じゃがいもを抜くと、鱈と唐辛子が前に出ます。
- 溶き卵を加える。 仕上げに溶き卵を回し入れ、火を通します。
- 卵を添える。 卵は別に火を通し、料理に添えます。
- 辛さを抑える。 手元の乾燥唐辛子が辛いときは、戻した甘みのある乾燥唐辛子に替えると辛さが和らぎます。香りはチョリセロとは違ってきます。
- 生の鱈で作る。 塩抜きは不要で、塩は味を見ながら加えます。塩蔵鱈の版と同じ味にはなりません。
同じ名前でも、鍋はいろいろ:ナバーラとその周辺のアホアリエロ

材料表を並べるだけでも、アホアリエロの幅がわかります。ここで使ったSpain.infoのナバーラ版は、家庭風トマトソース、チョリセロ唐辛子、少量のじゃがいもを使います。Visit Navarraが載せるナバーラのレシピにはトマトがまったくなく、塩鱈1 kg、にんにく4片、カイエンヌ唐辛子1本、チョリセロ3本、オリーブ油150 mlで、じゃがいもと卵は任意の追加とされています。料理人カルロス・アルギニャーノ氏のHogarmaniaのレシピは、また別の道筋で、赤ピーマンを190°Cで30分焼き、じゃがいもを弱火で約12分火にかけ、最後に5分ほどかけてすべてを合わせます。
Spain.infoには、アラゴンの版として載せられたレシピもあります。鱈700 g、じゃがいもとトマトが各500 g、赤ピーマン、玉ねぎ、にんにくを使うので、これは別のレシピです。ナバーラ版の材料には混ぜていません。
Spain.infoは、アホアリエロをナバーラの代表的な料理で、ほかの地域にも広がったものと説明していますが、いつ、どのように広がったかには触れていません。掲載されているレシピも、特定の祝祭と結びつけず、主菜として紹介しています。ひとつの「正解」を探すより、鱈とにんにくを核にした親戚のような鍋が並んでいる、と見たほうが実態に近いのでしょう。
よくある質問
薄塩の鱈の切り身で作れますか?
作れますが、塩分は商品によって違います。塩抜きのあとに塩加減を確かめ、仕上がりも味を見て調整してください。風味や食感は、塩蔵鱈とまったく同じにはなりません。
じゃがいもは必須ですか?
すべての版に入るわけではありません。ここで追ったナバーラのレシピには入っていますが、Visit Navarraのレシピではじゃがいもは任意です。抜くと、鱈と唐辛子がより前に出ます。
前日にどこまで準備できますか?
塩抜きです。冷蔵庫で最低1日前から始め、厚い切り身ならもっと早く始めてください。
残りはどう保存しますか?
レシピの資料には保存期間が書かれていません。残りは早めに粗熱を取って冷蔵し、なるべく早く食べきってください。温め直すときは、全体がしっかり熱くなるまで加熱します。
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