小皿から揚げたてをひとつ取って、そのまま割ってみます。薄いパン粉の衣がさくっと崩れ、中からなめらかで厚みのあるクリームが現れます。ところどころに、ピンク色の小さなハムの粒。外はかりっと、中はとろり。このコントラストを狙うのが、スペインのテレビ局RTVEが紹介するハモン・クロケタス(croquetas de jamón)のレシピで、スペインの食卓でハム入りのクロケタスがおなじみの存在になっている理由もここにあります。
外はさくっと、中はハム香るベシャメル
薄くて軽い衣の中に、形は保つのに舌の上ではやわらかくとろけるベシャメル。その全体に、刻んだ生ハムの粒が散っている状態です。
ハモン・クロケタスは、生ハム(jamón)を混ぜたベシャメルを小さな楕円に整え、卵とパン粉をつけて揚げた料理です。スペイン政府観光局のSpain.infoは、クロケタスをスペインで人気のタパスのひとつに挙げ、ハム入りをもっとも伝統的な型と紹介しています。ただし具は地方や店によって変わるため、全国共通の決まった配合があるわけではありません。この記事では、RTVEのレシピをひとつの基準にして話を進めます。
クロケタスが活躍するのは、小皿(タパス)や大皿(ラシオン)を何品か頼み、飲み物を片手に分け合う食べ方の中です。ひとつずつつまむのにちょうどいい大きさで、家で再現するうえで大事なのは二つだけ。ちょうどいい厚みに煮詰めたベシャメルを、成形できるまでしっかり冷やすこと、そして、ハムとだしがすでに塩気を持っているので塩を足しすぎないことです。
RTVEのレシピでは、生地を冷蔵庫で12〜24時間休ませます。手を動かすのは2回に分かれます。1日目にベシャメルを作り、寝かせたあとで成形・衣付け・揚げ作業をします。
途中で見つける、味の決め手
道具
- 包丁とまな板
- 底が厚い中くらいの鍋(ベシャメル用)
- 泡立て器と、耐熱のゴムべらまたは木べら
- 生地を冷やす浅い容器
- 食品用ラップ
- 成形したクロケタスを置くバット
- 卵とパン粉用の浅いボウル2つ
- 揚げ用の深くて安定した鍋
- 揚げ物用の温度計
- 網じゃくし
- バットに置く網
ハム・だし・衣・油の選び方
ハム。 RTVEのレシピが指定するのは、ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ(jamón ibérico de bellota)の系統にあたる jamón de bellota です。スペインの外では、ハモン・セラーノ(jamón serrano)のほうが手に入りやすく、現実的な代用になりますが、別の製品です。脂、塩気、熟成の香り、そして値段も違うので、同じハムとして扱わないでください。ほかの生ハムを使う場合は、加熱調理に向くかどうかを商品の表示で確かめてください。
ハムのだし。 50mlのだしは、ハムの風味に厚みを出す役目です。なければ、同量の牛乳に置き換えられます。その分、肉の風味と塩気は控えめになります。市販のだしを使うときは塩分を確認してください。
パン粉。 薄く均一な衣にするなら細かいものがおすすめです。日本のパンコのように粗いパン粉でも作れますが、衣の食感は変わります。
油。 RTVEはオリーブオイルを使っています。菜種油のようなくせのない精製油も代わりになりますが、仕上がりの香りは油で変わります。
破裂する、流れ出す、塩辛いとき
油の中で割れたり、中身が流れ出したりするのは、たいてい生地の冷え不足、衣の穴、油温の低下のどれかです。揚げる前の確認で、ほとんどは防げます。
| 困りごと | 確認すること | 直し方 |
|---|---|---|
| 油の中で割れる、破裂する | 生地の冷え不足、衣のすき間、油温の低下 | 成形したものをもう一度冷やし、パン粉で全体を均一に覆い、一度に揚げる数を減らす |
| 中身が流れ出す | ベシャメルの煮詰めが足りない | 冷やした生地の小片を先に試す。形を保たないなら揚げず、鍋に戻してさらに煮詰め、もう一度冷やす。生の小麦粉を後から練り込むと、粉っぽい味が残るので避ける |
| 塩辛い | ハムとだしの塩分は商品でかなり違う | ベシャメルを仕上げる前に味見し、足す塩は最小限にする。冷めると塩辛く感じることも考える |
| 中が温まる前に衣が濃くなる | 油が高温すぎる | 温度計を見ながら火を弱める。色ではなく、割って中心を確認する |
アレンジ
ここに挙げるのは、それぞれ独立した方向で、上のレシピの分量は変えません。
- ベジョータではなくセラーノで。 手に入りやすい代わりに、塩気、脂、熟成の香りが違います。
- ハムのだしを牛乳に。 50mlのだしを同量の牛乳に替えると、ハムの奥行きが控えめな簡単版になります。
- 小さな丸い一口サイズに。 生地を小さく丸めて一口タパスにします。大きさが変わるので揚げ時間を調整してください。
- ほかの具で。 Spain.infoは、きのこ、カニ、イカ、エビ、タラ、風味の強いチーズなどの具を挙げており、鶏肉のものも一般的です。これらは別のレシピとして扱い、このレシピの材料を入れ替えるものではありません。
- オリーブオイルか、くせのない油か。 オリーブオイルと菜種油のような精製油とでは、仕上がりの香りがはっきり違います。
タパスの中のクロケタス
Spain.infoはクロケタスをスペインで愛されるタパスに数え、そのなかでもハム入りをもっとも伝統的と位置づけています。一方で同じ資料は、具が地方や店ごとに違うことも示しており、クロケタスは固定されたひとつのレシピというより、ひとつのファミリーと考えたほうが実情に合います。衣でさえ一様ではなく、小麦粉・卵・パン粉をつける人もいれば、卵とパン粉だけの人もいます。
どの型にも共通するのは、かりっとした衣となめらかなクリームの対比と、食べる場面です。外で小皿をつまみ歩く「tapear」や、卓を囲んでラシオンを分け合うときに、飲み物のそばでひとつずつ口に運ぶ。家でも、トルティージャ・エスパニョーラのようなほかのスペイン料理と並べたり、パエリア・バレンシアーナやコシード・マドリレーニョの前の一品にしたりできます。
よくある質問
ハモン・セラーノでも作れますか?
作れます。RTVEのレシピにあるjamón de bellotaの現実的な代用になりますが、塩気、脂、熟成の香りは変わります。塩を足す前に、ベシャメルの味見をしてください。
パン粉は何でもいいですか?
作れますが、このレシピが目指す薄く均一な衣には、細かいパン粉が合います。パンコのような粗いパン粉では、衣がより固く、ざらっとした食感になります。
生地を一晩冷やしてもいいですか?
大丈夫です。RTVEのレシピも、浅い容器に広げて表面にラップを密着させた生地を、冷蔵庫で12〜24時間休ませます。室温で一晩置くのはやめてください。
油の温度はどのくらいにしますか?
RTVEは温度を指定していません。La Vanguardiaに載った別の料理家のレシピが180°Cで揚げているので、それを目安にして、まず1個で試し、鍋とクロケタスの大きさに合わせて調整してください。
何個できますか?
元のレシピは個数を示していませんし、成形する大きさで変わります。個数を合わせるより、ひとつひとつの量をそろえるほうが、均一に揚げるうえでは大切です。














