トルコのお茶の集まりで、テーブルの真ん中に赤い粒のサラダが山になっています。誰かがレタスの葉を一枚取り、スプーンでクスル(Kısır)をのせて、くるりと指で包む。そのまま口へ運ぶ、あの手つきです。クスルは細挽きブルグルにトマトや赤唐辛子のペースト、ハーブ、酸味を合わせた一皿で、レタスで包む赤いサラダとして親しまれています。
お茶の食卓に、穀物のサラダが並ぶ
家庭や友人との午後のお茶、家族の集まりで、クスルは甘いものの隣に置かれます。紅茶に合わせる献立には、ボレキやドルマ、バクラヴァの名前も挙がります。バクラヴァの甘さの合間に、酸味と塩気のあるクスルをひとつ。お茶の時間の一皿と呼びたくなるのは、そんな取り合わせがあるからです。もちろん、すべての家庭が毎日そうしているわけではありません。
タブーレを思い浮かべた方もいるでしょう。クスルの主役はブルグルで、トマトと赤唐辛子のペーストで赤く色づきます。タブーレはパセリの比重が高いサラダです。葉っぱを主役にしたいときは、レバノンのタブーレをどうぞ。クスルのほうは、細挽きの粒を食べるサラダ。粒のぷちぷちした食感と、赤い味付けを楽しみます。
手軽そうに見えて、手仕事は意外と多い料理です。熱湯で粒を戻している間に、野菜を刻めます。ペーストは、炒めてから使う型と、そのまま混ぜる型があります。今回は玉ねぎを炒める型で作ります。炒めたペーストを粒に絡め、冷ましてから葉を混ぜる順番です。日本向けの4人分は副菜としての量にしました。加水は製品の指示を優先してください。全体で35分は作業と待ち時間を含む目安で、試作して測った値ではありません。
酸味はレモンだけの配合もあれば、ざくろの酸味を使う配合もあります。ざくろシロップがないとクスルでなくなる、ということはありません。ただし、生のざくろ果汁と濃縮調味料は、同じ量で入れ替えられません。
途中で見つける、味の決め手
べたつきを防ぎ、ハーブの香りを残す
10分たっても粒の芯が硬いときは、調整用の熱湯15mlを加えて混ぜ、ふたをして5分置きます。それでもまだ硬ければ、残りの15mlを同じように使ってください。最初から追加の30mlを全部入れるのは避けます。粗挽きブルグルの調理を、この補正で代わりにすることもできません。商品ごとに粒や加熱処理が違うので、時間が過ぎたから完了、とは考えないでください。
ブルグルが硬いことと、底に水が残っていることは、別の問題です。水が余ったときは、清潔なざるで余分な水を切り、粒をほぐします。底の水だまりを残さないようにしてください。完全に軟らかく崩れてしまった粒は、元の食感には戻りません。乾いた未戻しの粒を後から混ぜて、ごまかすのもやめましょう。
刻んだ葉は、ペーストと一緒には炒めません。赤い粒を浅いボウルで冷まし、湯気が消えてから混ぜると、ハーブの色と香りが残ります。葉は洗ったあと水気を拭いてから刻みます。粒の水分とは別に、ハーブから余分な水を持ち込まないためです。
塩は2gから始めます。塩気のあるペーストとピクルスも合わさるので、塩と酸味は一口ずつ確かめるのが近道です。調整用の塩1gは、味を見ながら足すもので、無条件に使い切るものではありません。酸味はレモン汁を5mlずつ。酸っぱくなりすぎたときに、ざくろシロップを重ねて足すのはやめましょう。ペーストが焦げて苦くなったときは、粒を入れる前なら作り直してください。混ぜてしまった苦みを砂糖で消せるとは言い切れません。
レモンの明るさ、ざくろの深さ
レモンだけでも作れるのは、現地にもレモンだけの配合があるからです。ざくろシロップを省くときは、レモン汁30mlから味を見て、足りなければ加えます。甘い飲料用シロップと、酸味のある濃縮調味料は別のものです。製品ごとに甘さも酸味も違うので、同じ糖度だと決めつけないでください。
生野菜を足す配合もあります。トマト、ピーマン、生ミントを合わせる型と、ピクルスを加える型があり、どちらかが偽物ということはありません。ピクルスの代わりに生きゅうり60gを使うのは、編集部が考えた家庭向けの案です。5mm角に切って水気を拭いてください。ただ、ピクルスの酸味と塩気がなくなるので、最後に味を確かめます。ピクルスの酸味も味付けの一部なのです。辛さを抑えたいときは、甘口の赤唐辛子ペーストと辛くないパプリカを選びます。辛口の品を量だけ同じにして、穏やかな味になるとは言えません。
小麦を避けたい場合は、ブルグルを使いません。別に調理して冷ました米などに、赤い味付けとハーブを合わせる家庭向けのアレンジになります。クスル本来の粒の食感を再現するものではありません。ブルグルの加水量や10分の戻し方を、ほかの穀物へ当てはめるのもやめてください。米や代替穀物の専用レシピはここでは紹介せず、選択肢と限界のみお伝えします。
この料理の背景、南部から広がる呼び名と包み葉
トルコ文化観光省は、クスルを地中海地方の料理として紹介しています。現在は全国で広く知られている、とも記されています。一方で、発祥の都市や発明者、年代、語源は、資料から確かめられません。古代から同じ配合で続いてきた、といった歴史も書けません。
地域によって、包む葉にも調理の仕方にも違いがあります。包む葉にも地域差があるのです。文化観光省の掲載例では、キリスに野菜を入れず、トマトペーストで色を付け、湯通ししたぶどうの葉で包むİçの型があります。同じ資料はキリスをガズィアンテプの地区と記していますが、ここでは掲載例としてお伝えするにとどめます。アダナの Çiğ Kısır İçi は、ロメインレタスやゆでキャベツで食べる例です。Pişmiş Kısır は、ブルグルのピラフのように調理する例として紹介されています。いずれも、その地域の全家庭が同じ配合で作るという意味ではなく、紹介された型として読んでください。
同じ文化観光省の記録には、レモンのほかに、未熟なぶどう、プラム、ざくろの酸っぱい果汁を使う例があります。果実の酸味を生かす幅の広さを示す話で、一般に売られている甘いぶどうジュースを代わりに勧めるものではありません。
クスルを副菜にした食事に、温かい一品を足したいときは、トルコの赤レンズ豆スープ、メルジメッキ・チョルバを添えてみてください。全国共通の伝統的な献立というわけではなく、家庭で献立を組むときの一案です。
よくある質問
ブルグルはゆでなくてよいですか?
この記事は、細挽きブルグルを熱湯で戻す型です。製品の表示がゆで調理を指定しているなら、そちらを優先します。粗挽きは、同じ10分で同じ食感になるとは限りません。まず粒の表示を確認してください。
ざくろシロップがない場合は?
省いて構いません。レモン汁30mlで始め、足りなければ調整用を5mlずつ足します。飲料用のシロップを同じ量で使うのは避けましょう。果実の濃い風味は、同じにはなりません。
どのくらい保存できますか?
清潔な浅い容器に入れ、4℃以下で冷蔵します。家庭向けの控えめな目安は翌日までです。室温に置いた時間が長ければ、日数だけで安全とは言えません。調理後2時間以内に冷蔵し、気温が32℃を超える環境では1時間以内に冷蔵してください。ピクニックには保冷して持ち出し、必要な量だけ出します。翌日は葉がしんなりし、粒が酸味を吸います。少量を味見して、レモンで整えてください。冷凍は葉の食感が落ちるので、積極的にはお勧めしません。
小麦アレルギーでも食べられますか?
ブルグルは小麦由来なので、小麦アレルギーの方には出さないでください。グルテンフリーの料理でもありません。代替穀物を使う場合も、調味料の含有や混入は別に確認します。小麦アレルギーとグルテンの回避は、同じ診断ではありません。
特別な器具や栄養の目安は?
耐熱ボウル、ふたか皿、フライパン、包丁、木べらで作れます。専門の器具を買う必要はありません。栄養は基本の材料を全量で数えた概算で、約1360kcal、たんぱく質29g、脂質49g、炭水化物210gです。4等分すると約340kcalになります。実測ではなく、調整用の材料や代替品を使えば変わります。
レモンやざくろを加えたからといって、常温保存が安全になるわけではありません。室温に長く置いたものを冷蔵へ戻せば安全になる、においが正常なら安全、ということもありません。












