緑の薄皮をむくと、中からつやのある青いトマトのような実が出てきます。メキシコのトマティーヨ(tomatillo、現地ではtomate verde=緑のトマトとも呼ばれます)です。これをゆでて青唐辛子と香菜と一緒にミキサーにかけると、酸味の立った明るい緑のソースになります。鶏肉を巻いたトルティーヤにそのソースをたっぷりかけ、白いクリームとチーズをのせたものがエンチラーダス・ベルデス(緑のエンチラーダ)です。
「唐辛子をまぶした」という名前のトルティーヤ料理

エンチラーダ(enchilada)は、メキシコのスペイン語で「唐辛子を加える」という意味の動詞enchilarの過去分詞です。スペイン王立アカデミーの説明として英語版ウィキペディアが紹介しているもので、名前そのものが唐辛子のソースをまとわせる料理であることを表しています。ナワトル語(アステカの言葉)ではchīllapītzalliと呼ばれ、「唐辛子」と「笛」を組み合わせた語だとされます。巻いたトルティーヤを笛に見立てた名前です。
トウモロコシのトルティーヤで食べ物を包む習慣はとても古く、メキシコ盆地の湖のほとりで暮らした人々は、小魚をトルティーヤで巻いて食べていたと伝えられています。エンチラーダという名前は、1831年の料理書『エル・コシネロ・メヒカーノ(El cocinero mexicano)』や、1845年のマリアノ・ガルバン・リベラの『料理辞典(Diccionario de Cocina)』にもう登場します。もとは屋台の食べ物で、具を巻かずにトルティーヤを唐辛子のソースにくぐらせただけのものだったそうです。
同じエンチラーダでも、ソースで呼び名が変わります。牛乳やクリームを使った白いソースのものはエンチラーダス・スイサス(スイス風)と呼ばれ、メキシコで酪農を始めたスイス系移民に由来する名前とされています。サン・ルイス・ポトシのエンチラーダス・ポトシナスは、チーズを詰めた唐辛子入りの生地で作ります。
緑のエンチラーダは、そうした仲間のなかでも家庭や食堂でとくに親しまれている一皿です。白いトウモロコシのトルティーヤに、ゆでた鶏むね肉を巻き、サルサ・ベルデ(緑のソース)をかけて、ケソ・フレスコ(フレッシュチーズ)をのせるのが典型的な形です。赤い唐辛子のソースに比べると、トマティーヨの酸味が前に出る軽い味で、辛さは青唐辛子の量で家ごとに調整されています。
この料理に使える食材・調味料
メキシコの台所から、日本の台所へ

材料表のなかで、代用が利かないのはトマティーヨだけです。パティ・ヒニッチは読者への返信で、トマティーヨに近い代わりはなく、青いトマトでは代わりにならないと答えています。逆に、鶏肉とチーズは代用で十分に成り立ちます。彼女のレシピも、鶏肉は家でゆでたものでも市販のロティサリーチキンでもよいとしています。日本ならサラダチキンをほぐせば、下ゆでの手間もいりません。
作り方にも家ごとの幅があります。鶏肉を巻いたトルティーヤを油で揚げ、温めた緑のソースに1分ほど浸してから皿に盛り、豆のペースト、クリーム、チーズを添える作り方もあります。オーブンを使わない分、ソースに浸す時間で柔らかさを決めます。
付け合わせには、ごはんや豆、軽いグリーンサラダが合います。ソースが残ったら、チラキレスやタキートにも使えます。
よくある質問

トマティーヨの代わりにピーマンや青いトマトは使えますか?
おすすめしません。パティ・ヒニッチも、トマティーヨに近い代わりはなく、青いトマトでは代わりにならないとしています。生が見つからなければ、トマティーヨの缶詰を使ってください。
オーブンがない場合は?
トースターやフライパンでも作れます。フライパンの場合は、温めたソースにトルティーヤで巻いた鶏肉を入れて弱火で数分温め、皿に盛ってからソースを上からかけます。オーブンで焼くより柔らかい仕上がりになります。
前日に作っておけますか?
緑のソースだけなら前日に作れます。トルティーヤに巻いてソースをかけたまま置くと、トルティーヤがソースを吸って崩れやすくなるので、巻くのと焼くのは食べる直前にしてください。
辛さを抑えたいのですが
青唐辛子を1本にするか、種とわたを取ってください。仕上げのサワークリームを多めにかけると、口当たりがさらにやわらぎます。















