南部のフライドチキン、骨付き肉をごつごつの金色の衣で包む
このレシピで守りたいのは、肉に染みるバターミルクの漬け地、しっかり押さえつける1回の味付き粉衣、177°C前後に保つ油、そして最も厚い肉の中心74°Cを示す温度計です。衣の色は衣の状態を教えてくれますが、鶏に火が通ったかどうかを教えてくれるのは温度計だけです。
骨付きの鶏が油から上がり、網の上で衣がまだぱちぱちと鳴っています。ごつごつとした衣の凹凸は深い金色。食卓では手で引きちぎるようにして食べます。外は味のついたカリッとした殻、骨のまわりはしっとりとした肉。衣と肉の対比こそ、この料理の核心です。
アメリカ全体に共通する「唯一のフライドチキン」はありませんし、この記事もそれを示すものではありません。ここで紹介するのは、南部風バターミルク・フライドチキンの一例です。骨付き・皮付きの鶏を味付けしたバターミルクに漬け、味付きの小麦粉をまぶして、厚手のフライパンで揚げます。主な手がかりは、スミソニアンの国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館(NMAAHC)がまとめたSweet Home Caféの料理書にあるバターミルク・フライドチキンのレシピで、それを家庭の台所向けに組み直しました。
同じ博物館の資料は、この料理の歴史の一端も記録しています。奴隷制のあと、バージニア州ゴードンズビルの黒人女性たちがフライドチキンを売って生計を立てたこと、大移動(Great Migration)の時代には家族が靴箱に詰めて北や西への旅に持って行ったこと。詳しくは後半で触れます。台所で大切なのは3つです。早めに始める冷蔵の漬け込み、安定した油温、そして肉に差す温度計。
博物館が公開しているページは、別立てのPoultry Brine(鶏用の塩水)とSeasoned Flour(味付き粉)に触れていますが、配合の全量は載せていません。このレシピは塩水漬けを省いており、衣の粉・塩・香辛料の分量は博物館のものではなく、この媒体の編集部が組んだ配合です。つまり博物館の完成レシピをそのまま再現したものではなく、翻案です。
使う道具
- 深くて厚手のフライパンか鍋(深型の鋳鉄など、底の厚いもの)
- 油温を保つためのクリップ式の揚げ物用温度計
- 鶏の中心を測る、すぐ読み取れる肉用温度計
- 長いトング
- 漬け込み用の蓋つきボウル(または蓋つき容器)
- 味付き粉を入れる浅い容器
- バットに載せた網
2種類の温度計が必要です。一方は油の温度、もう一方は肉の安全を測ります。役割が違うので、どちらも片方では代わりになりません。
材料の選び方と代用、バターミルク・小麦粉・油
鶏肉。 このレシピは、大きさのそろった骨付きのももとドラムスティックを前提にしています。骨なしの胸肉は火の通る時間が違う別のレシピです。よくある質問も見てください。
バターミルク。 写真の基本版はバターミルクを使います。肉に味をつけ、粉が付く足場になります。手に入らなければ、牛乳とプレーンヨーグルトを混ぜたものが代用の候補ですが、割合は試していません。酸味ととろみもバターミルクとは違うので、同じ結果になるとは期待しないでください。
タイム。 生の枝が手に入らなければ乾燥タイムも試せますが、香りの強さが違います。ひとつまみから始めてください。
パプリカ。 甘口をスモークパプリカに替えると、燻した香りが加わります。
小麦粉。 土台は一般的な小麦粉です。軽めでたんぱく質の少ない粉も使えますが、衣の食感は変わることがあります。
油。 ピーナッツ油を使います。油自体の風味が出ます。コーン油やキャノーラ油でも代用できます。鋳鉄のフライパンが昔ながらの鍋です。
衣がはがれる、油っぽい、中が生、直し方
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 衣がはがれる | 漬け地が残りすぎ、粉の押さえが足りない、早く動かしすぎた | 漬け地をよく落とし、粉をしっかり押さえ、揚げ始めは触らずにおく |
| 衣が濃く色づき、中が生 | 切れの大きさに対して火が強い | 火を弱め、一度に揚げる数を減らす。中心を温度計で確認する。衣が早く濃くなるなら、原典の時間より火通りを優先し、次は大きさをそろえる |
| 衣が油っぽい | 一度に入れすぎ、油温が大きく下がった | 1回に入れる数を減らし、回の間に油を戻し、網で油を切る |
| 塩辛い | 切れの重さや漬け時間に対して塩が強い | 次回は漬け地の塩を減らす。塩気は中まで火の通った1切れだけで確かめ、生の粉では絶対に確かめない |
| 火が通っていない切れがある | 切れの大きさがばらばら | 大きさのそろったものを選び、いくつかの切れのいちばん厚い所を測る。針は骨に当てない |
衣の黄金色と肉の安全は別の話です。油温は衣のでき方を左右し、肉に火が通ったかどうかは肉用温度計が教えてくれます。
食べ方とアレンジ

家庭では、ピクルスやビスケットがよく合います。チキンとワッフルを合わせる組み合わせもありますが、添えるものは地域、店、家庭によって違うので、どれも決まった全国共通のセットではありません。
| アレンジ | 変わること |
|---|---|
| バターミルクなし、塩水で下味をつける方式 | バターミルクの代わりに塩水で肉に味をつける別の方法。ここでは詳しく扱わない |
| 控えめな辛さ | ホットソースを省く |
| スモークパプリカ | 甘口パプリカをスモークパプリカに替え、燻した香りを出す |
| ももとドラムスティックだけ | 切れの大きさがそろい、火の通りが均一になる |
| 骨なしの胸肉 | 別のレシピ。よくある質問を参照 |
南部アメリカの食卓をもう少し巡りたければ、レッドビーンズ・アンド・ライス、シュリンプ・アンド・グリッツ、ガンボもどうぞ。なお、名前に反して、シティ・チキンは豚肉を鶏肉に見立てて串に刺す中西部の料理で、このレシピとは無関係です。
フライドチキンの歴史、博物館が記録していること
アメリカのフライドチキンにはさまざまな形があります。骨付きか骨なしか、バターミルクに漬けるかどうか、衣や香辛料、揚げ方にも違いがあります。この記事が扱うのはそのうちの一つで、フライドチキンの起源や発明者を一つに決めるものではありません。
NMAAHCの料理書は、レシピとあわせて短い歴史を載せています。奴隷制のあと、バージニア州ゴードンズビルの黒人女性たちは、駅でフライドチキンを売り、限られた選択肢のなかで収入と、ある程度の経済的な自立を得ました。大移動の時代、南部から北や西へ向かう家族は、旅に持って行くために靴箱にフライドチキンを詰めました。のちに、ソウルフードのレストランの定番になりました。これは、この料理の歴史のうち記録された一本の糸です。黒人女性の働きと黒人家族の移動が、家庭の料理を各地の食卓へ運んだ物語の一部です。
ここで使った、骨付き鶏、バターミルクの漬け地、味付き粉、厚手の鋳鉄のフライパンという組み合わせは、一つの作り方です。たとえばFood Networkのイナ・ガーテンのバターミルク・フライドチキンも、バターミルクに漬けて350°F(177°C)で揚げますが、均一な厚さに叩いた骨なしの胸肉、2回づけの衣、ベーキングパウダーを使います。
保存と温め直し
残りは、2時間以内に冷蔵または冷凍してください。どれくらいの日数もつかは、この記事では示しません。
温め直しは、鶏を網に載せてオーブンかオーブントースターで温める方法が、衣の食感を戻すのに向いていますが、決まった温度や時間は確認できていません。どの方法でも、鶏が中まで熱くなっていることを確かめてください。
よくある質問
バターミルクが手に入らないときは?
牛乳とプレーンヨーグルトを混ぜたものが代用の候補ですが、ここでは試していません。酸味ととろみがバターミルクと違うので、味や衣のつき方が変わることがあります。
骨なしの鶏でも作れますか?
骨なしの肉でもフライドチキンは作れますが、この骨付きのレシピとは別のレシピで、揚げ時間も違います。均一な厚さに叩いた胸肉を使うイナ・ガーテンのFood Network版が一例です。その時間を骨付きに当てはめたり、このレシピの時間を骨なしに当てはめたりしないでください。
油の温度は何度ですか?
鶏を入れる前に177°C(350°F)を目指し、鍋に詰め込みすぎないで温度が大きく下がらないようにします。揚げている間はおよそ170〜180°Cが目標です。油の温度は火通りの判定ではありません。いちばん厚い肉が74°C以上になれば揚がりです。
少ない油のフライパンでも作れますか?
鍋の形や油の深さで火の通り方が変わるので、このレシピの揚げ時間の目安は当てにしないでください。すべての切れを肉用温度計で確認します。
辛いですか?
辛さは主に、漬け地のホットソースによるものです。量を減らすか省くと、穏やかな味になります。















